2022年12月27日火曜日

スウェーデンの性教育で重要とされること9項目をご紹介!

 前回の「世界で最初に性教育が取り入れられた、スウェーデンの性教育最新情報2022年版」の続きです。この内容は、教員組合で行われたオンライン講演会の内容をまとめて勉強したものを皆様と共有させていただいています。このオンライン講演会は、評判通り、本当に良かったです。今回は、彼が講演の最後にまとめた内容をもとに書いていきたいと思います。

1.広い視野、意識を広げることが重要

 話の中心でとても印象的だったのが、「普通、常識、規範」についてです。スウェーデン語では、「Norm」というのですが、私は、文脈によって訳を多少変えながら使うこと、理解することが多いです。取り上げられていたのは、「社会的規範、普通」対「法的規範」についてでした。法的な規範は、どの国でも明確で、スウェーデンでも然りです。これに対して、社会的な常識や普通となると、その国や社会、持っている文化、育った環境などなど、五万とあります。それでも、若者たちに聞くと、(私もだけど)「みんなと一緒、普通がいい」と思います。そんなときの、普通やみんなと一緒ほど、実は不確定なものはないのですが。普通について考え、自分のことについて考え、そうした自己内省を行うことで、意識や物事に対する認識を高めていくことは、本当に大切な性教育の根幹です。

2.話す機会を増やす

 性教育発祥の地スウェーデンでも、性について話す機会は少ないといわれており、どのように、性、セックス、体、自尊心、同意といった内容について話す機会を増やしていくかは大きな課題です。スウェーデンの性教育では昔から、3つの三角形(以下の写真)で話されることが多く、教科の中で教える、日常生活の中で出る疑問を拾い上げる、テーマに沿って取り上げる話されます。どの機会も大切で、学期に一回行われる内容では決してなく、常に行われるべき、価値教育の一環となっていることが重要です。
Skolverkt より

3.避妊についての知識と精神的不健康の予防

 スウェーデンでは、若者の精神的不健康は大変大きな課題です。そうした精神的不健康の予防と避妊や体についての知識をしっかりと教えることは重要です。こうした内容は、性教育全般とともに、「なぜ、学校で教えるのか」という疑問が、実はスウェーデンでもあります。いろんな考え方があるので、当然ですよね。そんな個人のプライベートなことを学校で教える必要があるのかというものです。しかしながら、プライベートを教えるわけではなく、知識を教えるのであり、決して、教員が自分のプライベートな話をする必要もなければ、生徒が自分の話をする必要もないのです。プライベートなことを話さなくても、個人的に話すことはでき、話したくなければ、「同意」に立ち返り、話さないという選択肢が教える側にも、生徒側にもあるのです。

4.セックスについて話すことを普通にしていくことが大切

 セックスや性や体について話すことを、もっと日常的に普通にしていくことが重要であるとも。なかなか話しにくい内容であるというのは、もちろんで、家庭で教えることが可能ならいいが、親だとなおさら話しにくいこともあると思います。話しやすい、聞きやすいようにするためのアイデアとしては、事前に、最初に質問や疑問を集めておくという方法です。最近はデジタル化が進んでいるので、そのような形で集めてもいいし、昔ながらの紙に無記名で質問や疑問を書いてもらい、集めて置き、それをもとに話をするというのもよいと思います。これにより、教師側もその場で答えにくいものも、じっくり考えて準備できる良さがあります。

5.やっぱり、少ない支援や援助

 性教育の分野は、やはり、まだまだ支援や援助が少ないといわれています。そんな中でも、優秀なのが、ユースクリニックが運営しているUMOというサイト。特に、自由に質問できるとこがよくて、若者が若者に聞くところと、若者が専門家に聞くという2か所あり、様々な質問や疑問が寄せられています。このサイトは私もよく見ます。こうした、安心してう情報を得ることができるサイトがあるというのはほんとに素晴らしいです。

UMOのサイトより

6.練習が結果や知識を生み出す

講演の中ではどのように授業をしたらいいかなどの具体的な提案ももちろんありました。短い講演で本当に内容が濃い!先ほどの、質問疑問を生徒から集めるというのはもちろんですが、例えば簡単な授業として、黒板に「セックス」と書き、そこから対話をしていくという方法。年齢によっては、「第2次性徴、体毛」などもいいのではと。言葉にして、話す中で学ぶことって多いですよね。あとは、「普通ってなんだろう」とか。テーマで学習するなら、例えば「同意、HIV、人間関係、家族、規範、インターネット、感情」などもよいのではということでした。そんなテーマ学習の時の具体的な方法としては、短めの講演を聞く、映像やPODDを見たり聞いたりして話し合う、本を読む、文章を書く、質問やケーススタディをするというもので、どの方法をとったにしても、最も重要なのは、「対話」であると。言葉にして、話し、人の意見を聞き、自分の意見を考えるといった行動が大切ですよね。話はずれますが、だからこそ、学校教育を常に点数化して順位やテストで見る教育は、問題が多いとも思います。


まとめとは別に最後に3点ご紹介して終わりたいと思います。

7.生徒の健康チームとの連携の大切さ

 スウェーデンの学校には生徒の健康チームというのがあります。こちらについては、私の本を読んでいただければと思います。この生徒の健康チームとと、いかに連携していくかは、私のヘッドテーチャーとしての大きな責任でもあります。学校医、学校看護師、心理士、学校社会福祉士、特別教育士との連携と協働をしながら、医療、心理、心理社会、特別支援教育の分野の取り組みを学校教育に生かしていくことはとても重要です。そこには、健康の促進的部分と予防的な内容が大きくかかわってきており、教師が行えない部分や、行いにくい部分などを連携しながら補足しあっていくということが重要になります。

8.ポルノが教える内容になったこと

 今回の改定で大きく変わったのが、「ポルノ」が教える内容に入ったことです。これは、大きな変化で、この点を大きく議論したものがいくつも出ました。今回の講演では、子どもオンブズマンが様々な研究をまとめて出した2021年の報告書の要点をもとに話がされました。これだけでも、投稿できる内容ですが、いかに簡単にまとめます。

  • 男子の方が女子よりもポルノに抵抗が低い。
  • ポルノ見ることによって、暴力行為やポルノの模倣が増えるという事実的関係性はみられなかった。(一部の人を除いて)
  • 若者たちは、ポルノは本当のセックスを映したものではなく、誰かが作ったものだという認識があるが、そこで見られる「体」には、ルッキズムの影響があり、これがいいからだというイメージが出来上がる危険性がある。
  • 大人が批判的ににポルノについて話すことは、若者たちが大人に話す気をなくさせ、話し方には注意が必要。
  • ポルノを見すぎる傾向は、精神の不健康に関係する。
以上でした。この報告書もいつか時間があったらじっくり読みたいです。

9.よい性教育とは

 最後に、よい性教育に含まれるとよい内容が提案されましたので、その紹介をしますね。

  • 生徒の健康チームとの連携と協働
  • 生徒の声を聴き、願いを取り入れる。
  • 規範意識を考える。
  • 教科に交えていく。
  • 明確な方針とフォローアップ(校長の責任)

以上でした。長くなりましたが、私のヘッドテーチャーとしての役割にもかかわる内容で、勉強しておきたかったので、今回の講演は本当に良かったです。感想などありましたら、ぜひ!


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