この投稿は、旧ブログの投稿をリライトして投稿しています。
2022年7月16日に、初の単著「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」を刊行。是非ご一読を😊
引き続き旧ブログからのリライトをしていこうと思います。旧ブログは、夏の休暇の時に記事を移行させてなくしてしまったのですが、放置してあった時もかなり多くの方が訪問してくださったようで、感謝しかありません。ありがとうございます。何年たっても興味深いと思う内容を少しずつリライトして再投稿していこうと思います。
今日はお隣、フィンランドンの教育についてです。フィンランドの教育は日本でも大変有名になりましたよね。コロナ前はものすごい数の訪問者があったとも聞いています。
1.フィンランドの公用語は?
日本ではあまり知られていないかもしれませんが、フィンランドの公用語は、フィンランド語とスウェーデン語なのです。なので、フィンランドの道路や観光表示は両方の言語でされています。フィンランドでは、1919年に独立した2年後からこの2つの言語を公用語としてきています。1970年代に入ってからは、フィンランドの学校では高校と同様に7年生から9年生でスウェーデン語を必修言語としたそうです。この投稿は2010年にしたもので(12年前ってすごいと思ってしまった。)その当時の調査では、多くの人がスウェーデン語を必修言語とするのはどうかという意見をもっていたようです。いったいどのくらいの人がスウェーデン語を母国語としてを話しているのかというと、約290,000人、人口の約5%だそうで、今調べてみてもこの数字にあまり変化はないようです。
2.スウェーデン語話者が多い地域とは?
多くのスウェーデン語話者は、オーランドという島に住んでおり、スウェーデンよりの海岸沿いに住んでいる場合が多いので、オーランドや、ヴァーサなどは有名です。そんなにたくさんの人が使っているわけではないようで、流れ的には、上記にも書いたように、学校でのスウェーデン語の授業はやめたいという方向にあるのは理解できます。あれから10年、この議論どうなったのだろう。スウェーデンは、フィンランドとNATO加盟に向けて動いていることもあり、今年は、フィンランドとスウェーデンは、場所的に近いということだけではなく、国同士としても今まで以上に強固な関係を新たに作り出したと感じます。
この言葉の問題は、国の憲法に定めてあるだけあって、スウェーデン語でどこでも授業をうけられるとか、医者にかかるときは、スウェーデン語が使えないといけないとかで、ただ、やめるとかやめないという議論ではなかったと記憶しています。
3.男女平等の進んだ大学教育
過去の投稿によると、12年前は、フィンランドの大学教育が一番男女平等だったようです。フィンランド、オランダ、ノルウェー、アメリカ、オーストラリアで行われた調査結果で、大学教育レベルの男女平等について調べたら、フィンランドが一番平等だったというもの。フィンランドのような小国は、男女かまわず力のあるものを伸ばすことによって国力を上げていく必要があると書かれていたようです。今の状況はわかりませんが、この考え、そろそろ日本も取り入れるとよいかもしれないと思います。少子化が叫ばれて既に20年とかになり、一向に改善される気配はありません。こうなると、日本は、人口が少なくてもやっていける国に変えていく方が変実的なのではと思います。スウェーデンは北欧最大の国ですが、それでも、日本の人口よりはるかに少ないです。でも、ちゃんと国としてやっていけるので、人という価値について今一度考えなおして、10年、20年後を見据えて国づくりが必要ではないかとおもいます。
4.北欧といってもかなり違う教育
日本から見ると、北欧という大きな地域で見られることが多いのですが、実は教育の在り方はかなり異なる部分があります。私の個人的な印象ですが、ノルウェーはやり方をあまり変えない傾向があるのに対して、スウェーデンは変更していくスピードが速く、そのスウェーデンの様子をうかがいながら、よい結果を出したところをまねしていこうとしているのがフィンランドみたいな感じです。ここ数年は、残念ながら、フィンランドから聞こえることは、「スウェーデンのマネしなくてよかった」的な発言です(泣)。スウェーデンは、フィンランドの良いところを取り入れていて、近年大きく変わったのが、小学校の3年生までにできる限り早い段階で、支援を増やすというものです。これにかかわって、読み書き計算保障もされました。
5.カリキュラムの違い
過去ブログの投稿に、「フィンランドの学校のカリキュラムは、賢くて実践的な内容になっており、合理的な目標が掲げられており、相対的に明確な用語で表現されている。」と。この発言は、ルンド大学の先生の発言で、こまではっきり書かれるとスウェーデンのカリキュラムがいかなるものか、頭を抱えたくなります。この2022年秋学期より、カリキュラムの改定が行われ、こうした意見や批判を取り入れたのだろうと思うのですが、今回のものは、より、教える内容が整理され、評価の段階も前よりもわかりやすくなりました。そして、フィンランドの低学年で重要視されているのが、読解力だそうです。かなり重要で力を入れているそうです。今もかな。今のフィンランド教育事情もいつか書けたらと思いますが、いつになることか。。。
6.学校生活の違い
フィンランドの子どもたちには、月曜日から木曜日まで宿題が出るそうです。(注2011年の情報)そして、学校はたいていの場合、午後の14時には終わるそうです。14時に終われば、十分に放課後の自由時間がとれ、運動をしたり遊んだりできるし、日本の子どもたちとは異なる日常を送っていると想像できます。過去ブログですでに、フィンランドの全ての学校がそうではないかもと書いているし、多少今の情報とずれるところがあるかもと思いますが、ご了承ください。
スウェーデンの場合、宿題はかなり先生によって個人差があるように思います。宿題と一言でいっても、どんな内容かにもよるので、このあたりは詳しくは比較できないですが、宿題を出さないという議論もされましたが、今は宿題はできる限り教科の先生で連携を取り、一度にたくさんにならないようにするといった工夫はされていますが、なくす方向は聞かないです。学校の終了時間にはあまり差がないように思います。高学年になるとスウェーデンでは、もう少し長い時間やっているとは思いますが、この新聞の記事でははっきりと学年など詳しく書いていないのでこちらも比較しにくいです。ただ、どちらにしても、学校の時間は明らかに日本よりも少ないと思います。低学年などは12時に終わったりします、3年生でも金曜日などはかなり早い時間に終わります。スウェーデンが学校併設の学童保育が12歳まであるので、子どもたちは学校には残っています。このブログにも学童についての投稿があるのでぜひ。
7.補習授業の充実
次に補習授業の充実があげられていました。フィンランドでは、きちんとしたシステムが作り上げられており、それにより、進度の遅れている子どもを取り出して援助し、早いうちにその遅れを取り戻すことができるシステムがあるとのことでした。これは、この投稿から10年、スウェーデン真似しています。フィンランドほどシステム化していないように思うのですが、「宿題のヘルプ」という日が週に1から2日設けられていることは、どの学校でもめずらしくなくなりました。数学ヘルプの日が別にあったりと、日本の塾のようなシステムがあまりない国なので、こうした活動が、学校や学校外の団体などが図書館などで行うなどして、行われるようになりました。
過去ブログには、以下のような記述もありました。
「この前、日本から来てくださったお客様が、フィンランドで研究をされている方で、興味深い話をしてくださいました。フィンランドの低学年のクラスでは、クラスを半分に分け、(確か、、、)隔日で12時までの日と14時まで授業をする日に分けてあり、午後は少人数で勉強をするとのことでした。いいシステムだよなあと思いました。低学年はたいてい12時くらいで終わるので、その終わる日を変えることにより、少人数での授業が可能になるのだから、やりやすいよいシステムではないかと思ったのです。これも、補習授業のシステムの中の最も初めのものであるのだろうと予想します。」
あんまり子どもの生活自体は代わりがないように思うのですが、ちょっとした工夫がされているのがフィンランドだなあと思いました。このちょっとが大きな差を生むんだろうなあとは、つくづく思う今日のこの頃です。
8.数多くある選べる高校の職業コース
スウェーデンであまり知られていないフィンランドの教育システムとして上がっていたのが、たくさんあり、選べる高校の職業コースでした。これも、スウェーデン、見習う価値あるかもと書いていました。高校の教育の在り方が、スウェーデン何度も議論されていますが、あまり変わり映えしないようにも思います。今の数字が知りたいところですが、この2011年の新聞によれば、フィンランドでは、15歳の若者の50%が職業コースを選ぶそうです。詳しくどんなコースがあるとは書かれていませんでしたが、幅広い職業訓練課程があり、魅力的なコースがたくさんあるとのことでした。そうなると、本当に大学進学を希望し、理論的な教科を学びたい生徒のみが大学進学コースに進学するとなるようですね。昔の投稿には、いろいろ高校情報を書いていたのですが、情報が古い可能性が高いなあと思って削除しました。また、スウェーデンとフィンランドの高校事情もいつかご紹介できればと思います。
9.先生が人気のある職業
フィンランドでは教師はなりたい人が多い職業であるのに対して、スウェーデンでは、なり手がない、人気のない職業なんです。日本も先生人気ないですよね。残念です。ここは、とても重要なところで、教育って、人材が命ですから(泣)。フィンランドでは、5人から10人の入学希望者が1席を争うのにたいして、スウェーデンでは、入学希望者が少なく、教員養成課程はがらがら。。。入った学生もやめていくので大変だとか。。。(2011年の数字)フィンランドでは教員養成課程に入るためにかなりの高得点が必要になるのにたいして、スウェーデンでは、入学を希望すれば入れるような状態。。。そうなれば、教師の質に大きな差が出て当然ともいえます。あれから10年たち、あまり状況は大きく変わっていませんが、多少教員養成課程の希望者が増えたこと、お給料があがったので、先生に戻った人もいるということで、先生足りないですが、状況は多少改善されました。
フィンランドの教員養成課程に入る人材は、高校の成績、③で少し紹介した筆記試験のようなものの成績、インタビューを含む入学試験によって選ばれるそうです。インタビューではもちろん教師に向くか向かないかを見るそうです。これをまねたのか、一時期、スウェーデンの教員養成課程で、試験的に適性検査してましたが、導入するにはいたりませんでした。
10.スウェーデンが力をいれてきた教育とは
過去ブログの投稿は、新聞記事をもとにしたもので、その中にスウェーデンの教育が力を入れてきた内容があげられていました。
- 作業の仕方
- 支援器具の向上
- 自主的な学習
- グループでの学習
- パソコンを使った学習
上記のような内容は確かにスウェーデン発達しています。で、こういった学習方法だと、教師は、教師ではなく、「スーパーアドバイザー」的な存在になり「教えるという能力」よりもほかの能力が求められます。そうこうしているうちに、教員が教員でなくなってしまい、いわゆる「授業」ができなくなってきてしまったかとありました。現在はやはり見直されて、授業の形についての研修などもあったりとして、かなり変わったように思います。前の生徒の自主性を重んじる参加型学習とともに、講義型学習の力もつけてきたスウェーデンの学校は課題も多いですが、学ぶところもたくさんある学校教育をしていると感じます。
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フィンランドとスウェーデンの国境沿いの小さな町より |
この記事は、旧ブログの2010年1月14日と4月8日、2011年6月24日、25日、28日の投稿をリライトしたものです。