投稿

12月, 2022の投稿を表示しています

スウェーデンのインクルーシブ教育の歴史ダイジェスト版!

イメージ
この投稿は、旧ブログのインクルーシブ教育に関する投稿の中の歴史に関連した内容をまとめて、リライトして、再投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著 「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」 を刊行。是非ご一読を😊 今日は、「 本で知ることができない、スウェーデンのインクルーシブ教育とは 2017年版 」 「 発達と学ぶ権利を守る、スウェーデンの特別支援学校とインクルーシブ教育 」に続き、「スウェーデンのインクルーシブ教育の歴史ダイジェスト版」を、旧ブログの投稿をリライトしながらご紹介していきます。 1.1968年、全ての子どもに教育を受ける機会が与えらる  世界でも有数の福祉国家スウェーデンでも、障害がある子どもや大人の権利獲得は、常に戦いの道のりでした。日本と同様に、学ぶ権利をはく奪された時代は長く、「馬鹿者」と呼ばれて、生まれると施設に預けらえていた時代もありました。そんなスウェーデンの歴史の中で重要とされるのが、1968年。この年に、やっと、すべての子どもに教育を受ける機会が与えられました。日本より11年早く制度化されましたが、この時点では、私の生徒たちの教育は、社会庁の管轄で、ほかの学校と同様に学校庁の管轄になったのは、1990年代になってからです。この歴史により、スウェーデンの特別支援学校は長らく医療や福祉の分野が強く、教育や特別支援教育色が薄いところがあったのですが、ここ10年で大きく変わったと思います。 2.インテグレーション「場の統合」  インクルーシブ教育が叫ばれるようになる前、ちょうど私が大学生だったころは、インテグレーションという「場の統合」が注目される時代でした。スウェーデンでは、上記の1968年以降、1970年代や80年代は、この場の統合が盛んにおこなわれ、ノーマライゼーションの動きとともに、スウェーデンは「大型施設」を廃止しました。現在のスウェーデンでは、ほかの国で見られるような障害者だけが集められた大きな施設は存在しません。特別支援学校は、例外や民営の学校を除き、基礎学校と呼ばれる小中学校に併設する形になっており、支援学校の組織は、学校全体の1割以下が望ましいといわれています。これらは法制度されているものではないので、国内に支援学校単体で立っているものももちろんありま...

スウェーデンで教員をする私が見聞きする、フィンランドの教育とは

イメージ
 この投稿は、旧ブログの 投稿をリライトして投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著「 医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム 」を刊行。是非ご一読を😊  引き続き旧ブログからのリライトをしていこうと思います。旧ブログは、夏の休暇の時に記事を移行させてなくしてしまったのですが、放置してあった時もかなり多くの方が訪問してくださったようで、感謝しかありません。ありがとうございます。何年たっても興味深いと思う内容を少しずつリライトして再投稿していこうと思います。  今日はお隣、フィンランドンの教育についてです。フィンランドの教育は日本でも大変有名になりましたよね。コロナ前はものすごい数の訪問者があったとも聞いています。 1.フィンランドの公用語は? 日本ではあまり知られていないかもしれませんが、フィンランドの公用語は、 フィンランド語とスウェーデン語 なのです。なので、フィンランドの道路や観光表示は両方の言語でされています。フィンランドでは、1919年に独立した2年後からこの2つの言語を公用語としてきています。1970年代に入ってからは、フィンランドの学校では高校と同様に7年生から9年生でスウェーデン語を必修言語としたそうです。この投稿は2010年にしたもので(12年前ってすごいと思ってしまった。)その当時の調査では、多くの人がスウェーデン語を必修言語とするのはどうかという意見をもっていたようです。いったいどのくらいの人がスウェーデン語を母国語としてを話しているのかというと、約290,000人、人口の約5%だそうで、今調べてみてもこの数字にあまり変化はないようです。 2.スウェーデン語話者が多い地域とは?  多くのスウェーデン語話者は、オーランドという島に住んでおり、スウェーデンよりの海岸沿いに住んでいる場合が多いので、オーランドや、ヴァーサなどは有名です。そんなにたくさんの人が使っているわけではないようで、流れ的には、上記にも書いたように、学校でのスウェーデン語の授業はやめたいという方向にあるのは理解できます。あれから10年、この議論どうなったのだろう。スウェーデンは、フィンランドとNATO加盟に向けて動いていることもあり、今年は、フィンランドとスウェーデンは、場所的に近いということだけではなく、国同...

専業主婦がいない男女平等の国、スウェーデンの女性たち

イメージ
 この投稿は、旧ブログの 投稿をリライトして投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著「 医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム 」を刊行。是非ご一読を😊  学校も休みに入り、1週間。友達に会ったり、出かけたりと楽しく過ごしている反面、やらなければいけないことがなかなか簡単に終わる内容でない今年の冬は、心は少し焦ってし舞う感じです。とりあえず対策として、FacebookとTwitter を休止しました。文章を書く練習も考えるとブログを残すことにしました。それにブログは、だらだら時間を費やすことはなのでよいのですが、Facebookなどは、どうしても逃避行動増えてしまう、弱い私です。  さて、今日は、旧ブログから、専業主婦とスウェーデン関係の投稿を読見直すと、同僚たちと話した内容など興味深いなあと思います。タイトル通り、スウェーデンには、専業主婦という選択肢はありません。男女平等が当たり前であり、女性も男性と同じように働いて、税金を納めて一人前という国です。今日はそんなスウェーデンの専業主婦事情についてです。  1.昔は、スウェーデンにもいた専業主婦  スウェーデンにも専業主婦がいた時代があります。だいたい、今60代になるくらいの世代の方は、「母親が専業主婦だった」というのは珍しくありません。もう少し上の方だと、「私は専業主婦だったけど、働き始めた」というような話をされる方もいます。その時代には、専業主婦が存在し、家事を家庭内労働として行い、税金の控除もありました。この制度は無くなり、「いつ無くなったのか」という友人の説明をそのまま訳すると、 「政府が主婦も外で働くべきだと思ったときになくなった。」 とのことでした。専業主婦だったという人の話を聞くと、あの頃はよかったという印象を受けるので、福祉国家というと聞こえはいいけれど、みんなが働き納税するという基本姿勢がそんなに簡単物でもないということを感じます。これに関連して、やっぱり選択肢があれば、家にいたい人はいるんだなあと感じることはあります。 3.中立国と戦争と専業主婦  第2次世界大戦後、ヨーロッパの多くの国々が国内の復興に力を注いでいた時期に、スウェーデンは、中立国であったために、国内の工場などはそのまま残っており、戦後すぐ...

東京大学バリアフリー教育開発研究センターの12月のインクルーシブ教育定例研究会

イメージ
 冬休みに私がしたいことの一つが、たまりにたまっている動画を一つずつ見ていくことです。オンラインの会で、アーカイブ配信があるものは、できる限り申し込んでおき、見れるときに見て勉強しています。その中の一つが東京大学のバリアフリー教育開発教育センターが行っているオンラインのインクルーシブ教育の勉強会です。時間が合えば、ライブでも参加しますが、時差もあり、最近は動画を後で見て勉強しています。無料でここまでの内容を定期的に行うことは容易ではないと思うので、いつも素晴らしい内容に感謝して勉強させてもらっています。まだ、参加されたことがない方は、是非試しに参加されてみるとよいと思います。次回の案内があったら、インスタとブログでも紹介しますね。  今回は、12月のインクルーシブ教育定例研究会の動画を見ての感想や思うところを少しまとめて記録しておこうと思います。12月4日に行われた会のテーマは、 「来年度からのインクルーシブ教育はどうなる?4.27通知について文科省の人に聞いてみよう」 東京大学バリアフリー教育開発研究センターのホームページより でした。この会は、4月に出された文部科学省からの「特別支援学級及び通級による適切な運用について」という通知をもとにしたもので、文部科学省の初等中等教育局特別支援教育課長の山泰造さん、障害当事者の保護者を2名のか招いての勉強会でした。思うことはたくさんあったのですが、5点、動画を見て数日たった後に書いているので、少しうろ覚えのところもありますが、記録して共有しますので、感想などあれば、是非。 1.インクルーシブ教育は「場の統合」どまり  話を聞いていて、説明が、これって「場の統合」どまりだよね、っと思うところが何回かありました。その説明では、本当にインクルーシブ教育なんだろうかとか、分離教育の考えが根強いなあと思いました。インクルーシブ教育は、理念が重要というか、基盤となる考えがしっかり理解され、共有されることが重要だと思っており、その面からもどうなのだろうかと疑問を持ちました。場の統合を考えるなら、特別支援学校は、小中学校の中、もしくは隣にするといいと思います。  あの4月の通知ですが、この通知のみしか知らないのですが、通知と同時に何かしらの手立てが打たれたのならば、説明にあったような通知の意図が理解できますが、その通知だけなら、こうして大...

スウェーデンの性教育で重要とされること9項目をご紹介!

イメージ
 前回の「 世界で最初に性教育が取り入れられた、スウェーデンの性教育最新情報2022年版 」の続きです。この内容は、教員組合で行われたオンライン講演会の内容をまとめて勉強したものを皆様と共有させていただいています。このオンライン講演会は、評判通り、本当に良かったです。今回は、彼が講演の最後にまとめた内容をもとに書いていきたいと思います。 1.広い視野、意識を広げることが重要  話の中心でとても印象的だったのが、「普通、常識、規範」についてです。スウェーデン語では、「Norm」というのですが、私は、文脈によって訳を多少変えながら使うこと、理解することが多いです。取り上げられていたのは、「社会的規範、普通」対「法的規範」についてでした。法的な規範は、どの国でも明確で、スウェーデンでも然りです。これに対して、社会的な常識や普通となると、その国や社会、持っている文化、育った環境などなど、五万とあります。それでも、若者たちに聞くと、(私もだけど)「みんなと一緒、普通がいい」と思います。そんなときの、普通やみんなと一緒ほど、実は不確定なものはないのですが。普通について考え、自分のことについて考え、そうした自己内省を行うことで、意識や物事に対する認識を高めていくことは、本当に大切な性教育の根幹です。 2.話す機会を増やす  性教育発祥の地スウェーデンでも、性について話す機会は少ないといわれており、どのように、性、セックス、体、自尊心、同意といった内容について話す機会を増やしていくかは大きな課題です。スウェーデンの性教育では昔から、3つの三角形(以下の写真)で話されることが多く、教科の中で教える、日常生活の中で出る疑問を拾い上げる、テーマに沿って取り上げる話されます。どの機会も大切で、学期に一回行われる内容では決してなく、常に行われるべき、価値教育の一環となっていることが重要です。 Skolverkt より 3.避妊についての知識と精神的不健康の予防  スウェーデンでは、若者の精神的不健康は大変大きな課題です。そうした精神的不健康の予防と避妊や体についての知識をしっかりと教えることは重要です。こうした内容は、性教育全般とともに、「なぜ、学校で教えるのか」という疑問が、実はスウェーデンでもあります。いろんな考え方があるので、当然ですよね。そんな個人のプライベートなことを学校で...

世界で最初に性教育が取り入れられた、スウェーデンの性教育最新情報2022年版!

イメージ
教員組合のウェブ講演会での内容が、すごくよかったと教職員間で話題になっていたので、期限が切れる前に見て勉強しておこうと思いました。その内容を記録して、皆様と共有できればと思います。 スウェーデンの性教育最新情報2022年 1.性教育と呼ばなくなった、スウェーデン スウェーデンでは、「性教育」という言葉は既に使われていません。2022年7月1日より、 「Sexualitet, samtycke och relationer:セクシャリティー、同意と関係」 に変更になっています。それまでは、もう少し日本の「性教育」に近い名称「Sex / och samlevnad」が用いられていました。この名称変更は、カリキュラムの改定とともに行われました。数年前から、この改定に向けていろいろと動きはあったのですが、実際に変更となると、現場でも戸惑う部分はもちろんありました。 2.「同意」の難しさ 「同意」というと「はい、いいえ」と「どちらでもない」という選択肢で話がされそうですが、子どもや若者は、その「はいといいえ」の持つ意味や、結果までを理解しているか、決定をする自分を理解しているかなど、様々な問題があるという話が、まずは、印象的でした。  話をされた方は、「Kalle Norwald」さんという性の専門家の方でした。彼が出した本がこちらです。 この表紙の絵にも意味があるそうで、「この話は、話せるのか、話せないのか、赤信号なのか、黄色信号なのか、自分の中でどうなのか」と振り返る、そういう意味合いもあるという話とともに紹介され、教師でも生徒でも、この話はしてもいいのか、ちょっと嫌なのか、正直になることは重要であると思います。私もスウェーデンで教えてきて、この自分の中で話せるか話せないかの判断をすることは重要だと思っていて、話せないと感じることは、正直に生徒に「今は話せない、今度ちゃんと準備してから話します」と話すようにしていますし、いいたくないことは、「話したくないので話しません」といいます。ここにも「同意」とは何なのかということを考える基盤があるなあと思って聞いていました。 3.なぜ、SEXを時間割にいれるのか(学校で教えるのか)? なぜ、学校で教えるのか、もうこれは、まずは何といっても「 知識を与える 」に限ります。知識は何物にも代えがたい宝となります。彼も面白おかしく、生徒たち...

みんなのねがい 世界の風 最終原稿完成

イメージ
  この半年間、「 みんなのねがい 」という全国障害者問題研究会の雑誌で「 世界の風 」という連載をしてきました。今日はその最終原稿が完成しました。半年間何度もメールでやり取りをしてくださった担当の方には、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。  「みんなのねがい」は、1970年に創刊された歴史のある雑誌で、障害のあの人やその家族、実践者など、様々な人々の願いを伝えることができる雑誌です。残念ながら、私は毎月購読はしておらず、スウェーデンには、3冊あるのみです。この雑誌での読書会をされている方がいたり、メールで感想があったりと、この本の良さは、いつも遠くから感じています。 みんなの願いのホームページ 10月号のみんなのねがい みんなの願いのホームページから、 1月号の特集ページ があり、そこから、 私の世界の風 をPDFで読むことができます。見本誌を無料で送ってくださるので、興味を持たれた方は、ぜひ、連絡をしてみてください。 最終回は、最後にふさわしい内容になったと思います。願いを持ち、それを言葉にできるからこそ、そこから変えていけるように思います。 あなたの願いはなんですか。あなたが生きている世界や社会に願うことは何ですか。 いつか皆さんとそんなお話ができることを楽しみにしております。

スウェーデンのクリスマスの風物詩、大きなわらのヤギ

イメージ
  皆様、クリスマスをいかがお過ごしでしょうか。私は、無事に秋学期を終え、冬休みを満喫しています。秋学期は、ヘッドテーチャーになったり、学校検査庁が来たり、新しいプロジェクトに参加したりと本当に目まぐるしく過ぎていきました。Twitterやインスタグラムでは少し紹介したいのですが、ブログできちんと文章化していきたいと思います。どのくらいできるかはわからないのですが、ブログの良さは、やはりある程度の文章が書け、残っているという点だと思うので、頑張ります。  今日は、先日公開されたScania Japan のGriff in Magazine の私の記事のご紹介です。本当に久しぶりに記事を書かせていただきました。内容は、スウェーデンのクリスマスの伝統、イェブレの大きなわらのヤギについてです。私は何度も訪れたことがあるこの町、この大きなヤギが燃やされずにクリスマスを越せるかは、私のクリスマスの最大の関心かもしれません。詳しくは以下の記事をどうぞ! サステナビリティにも配慮したスウェーデンの12月の風物詩、イェブレの藁のヤギ この藁の大きなヤギの様子は、ソーシャルメディアでも見ることができます。ぜひ~!  皆様もよいクリスマスを!