2022年12月31日土曜日

スウェーデンのインクルーシブ教育の歴史ダイジェスト版!

この投稿は、旧ブログのインクルーシブ教育に関する投稿の中の歴史に関連した内容をまとめて、リライトして、再投稿しています。

発達と学ぶ権利を守る、スウェーデンの特別支援学校とインクルーシブ教育」に続き、「スウェーデンのインクルーシブ教育の歴史ダイジェスト版」を、旧ブログの投稿をリライトしながらご紹介していきます。

1.1968年、全ての子どもに教育を受ける機会が与えらる

 世界でも有数の福祉国家スウェーデンでも、障害がある子どもや大人の権利獲得は、常に戦いの道のりでした。日本と同様に、学ぶ権利をはく奪された時代は長く、「馬鹿者」と呼ばれて、生まれると施設に預けらえていた時代もありました。そんなスウェーデンの歴史の中で重要とされるのが、1968年。この年に、やっと、すべての子どもに教育を受ける機会が与えられました。日本より11年早く制度化されましたが、この時点では、私の生徒たちの教育は、社会庁の管轄で、ほかの学校と同様に学校庁の管轄になったのは、1990年代になってからです。この歴史により、スウェーデンの特別支援学校は長らく医療や福祉の分野が強く、教育や特別支援教育色が薄いところがあったのですが、ここ10年で大きく変わったと思います。

2.インテグレーション「場の統合」

 インクルーシブ教育が叫ばれるようになる前、ちょうど私が大学生だったころは、インテグレーションという「場の統合」が注目される時代でした。スウェーデンでは、上記の1968年以降、1970年代や80年代は、この場の統合が盛んにおこなわれ、ノーマライゼーションの動きとともに、スウェーデンは「大型施設」を廃止しました。現在のスウェーデンでは、ほかの国で見られるような障害者だけが集められた大きな施設は存在しません。特別支援学校は、例外や民営の学校を除き、基礎学校と呼ばれる小中学校に併設する形になっており、支援学校の組織は、学校全体の1割以下が望ましいといわれています。これらは法制度されているものではないので、国内に支援学校単体で立っているものももちろんありますし、その存在が問題視されることもあります。

 この「場の統合」の歴史は、私は重要であると思っていて、日本の支援学校のように遠く離れたところにあるということはなく、多くのスウェーデン人たちが、小さなころから学校の中にいろんな子どもがいたことを思い出します。社会の縮図としての学校として、この場の統合は大きく、高校でも同様で支援学校の高等部の職業コースができる限り、高校の職業コースと同じ場所に設置され、可能な限りともに学ぶように工夫されています。

3.スウェーデンのインクルーシブ教育の始まり

 では、どこがスウェーデンのインクルーシブ教育の転換期かというと、2010年の学校改革です。スウェーデンはサラマンカ条約も障害者権利条約も批准しており、子どもの権利条約にいたっては、国内法になっています。なので、一人一人の権利を守り、持続可能なインクルーシブ教育を模索し続けています。大きな変化があった点を以下にまとめます。

  • 特別支援学校へは知的障害のある子どものみ入学可能となったこと。それまでは、知的障害がない自閉症などの発達障碍児も入学が可能であったが、特別支援学校は知的な障害があることが、医療、社会、心理、教育の4判定で明白である生徒のみが入学の権利が与えられる学校という風にかわりました。これにより、普通学級で面倒が見れないから、特別支援学校という流れ、特に移民難民のスウェーデン語ができないから、支援学校という流れはなくなりました。
  • 生徒の健康チームという、専門職の集まった特別支援教育のための組織が法的に制度化された。これにより、何かしらの理由で、最低限度の到達目標に到達しない危険のある生徒は、専門的な支援や援助が受けられるというシステムが構築されました。
  • 2011年のカリキュラムは、集められたカリキュラムといい、同じ場所でいろんなカリキュラムを教えることを可能としたものになりました。私は、授業するときに2つのカリキュラムを併用して教えています。これにより、同じ場所で学んでいても、その子にあった教育内容を提供できるようになりました。

4.盲学校の廃止と、聾学校

 スウェーデンは、盲学校がありません。上記の学校改革の流れで、盲学校は廃止され、盲児が入学する場合の支援を国の特別支援教育庁が行います。例外は、聾学校になります。聾学校は、国の管轄で今も残っており教育が行われています。スウェーデンでは、手話は一つの言語として1981年に認められており、手話で教える学校は聾学校、英語で教える学校は、インターみたいな感じで、学校が残っています。聾重複の子どもは、親が国に8か所ある聾学校か近くの支援学校かを選びます。

5.インクルーシブ教育の議論

 2010年が転換期なので、あれから10年以上たち、実はスウェーデン、インクルーシブ教育というと、すごく反応が悪い場合も多いのが事実です。特別支援学校にかかわる人々は、歴史的に何度も、支援学校廃止の議論をしてきた話をします。今まで、いろいろ議論したけれど、たいていの人がインテグレーションのイメージが強く、難色を示します。過去に行われて国の大きな調査でも、支援学校廃止反対派が多く、スウェーデンでは、現在でも支援学校が一つの学校形態として残っています。

 これに加えて、2010年以降、スウェーデンでは、登校しない子どもが増え、その理由の一つとして、知的障害のない発達障害児に対する支援の薄さがあげられます。2010年の改革の時に、知的障害のない自閉症児は基礎学校に戻され、それまでよく見られた少人数の学習集団も減らされたために、教室の中でやっていけない生徒たちが増え、それらの子どもたちが不登校になったと考えられています。これがインクルーシブ教育の議論に大きな影響を与えたことは言うまでもありません。それまでのスウェーデンの制度もかなり問題で、特別支援学校には、障害判定が降りていない子も「反対のインテグレーション」という名前で通っていたこともあり、先生が面倒見切れなくなると、生徒を移動させていた時代もあり、訴訟になったこともあります。そんなことを考えると、法制度は正しかったと思うのですが、急に普通学級に戻された生徒も、受け入れるように言われたりする教師側も大変だったと思います。

6.基礎学校で、特別支援学校のカリキュラムを学ぶ支援学校対象生徒の増加 

 スウェーデンは、知的障害の有無でまずは分離をしているということで、私が、分離統合型インクルーシブ教育と説明することもあります。知的障害がある生徒は、支援学校への入学の権利が与えられますが、入学しなければいけないということではないので、基礎学校で学んでいる生徒も多くいます。これまで支援学校対象児が基礎学校で学んでいる割合は、12%くらいだったのですが、徐々に増え、今は20%前後まで担っています。これらの生徒は、基礎学校の教室で、支援学校のカリキュラムのどちらか(2つあります)に沿って学んでいます。これにより、学び発達する権利を保障しながら、基礎学校という場の中で学ぶインクルーシブ教育を実現しています。


 昔は、「スウェーデンでは、さぞかし、インクルーシブ教育が進んでいるでしょう」と質問されると、そんなことはないと答えていましたが、あれから、10年、スウェーデンは、「社会の変化に合わせ、個人の願いを聞きながら、子どもの持っている力を最大限に伸ばすことができるインクルーシブ教育」を行う基盤があるということができます。また、その実現をしている学校や現場も多くあり、そのよい例に学びながら、よりよりインクルーシブ教育、そして、共生社会を目指していると感じます。また、数年後に、この投稿をリライトしたときに、さらなる発展したスウェーデンの姿をかけることを願って、2022年最後の投稿にしたいと思います。数あるブログの中から私のブログに足を運んでくださった皆様本当にありがとうございます。

ストックホルムにある国の特別支援庁


(旧ブログの2009年5月12日、2009年7月15日、2012年9月9日の投稿をもとに、リライトしました。)

2022年12月30日金曜日

スウェーデンで教員をする私が見聞きする、フィンランドの教育とは

 この投稿は、旧ブログの投稿をリライトして投稿しています。

2022年7月16日に、初の単著「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」を刊行。是非ご一読を😊


 引き続き旧ブログからのリライトをしていこうと思います。旧ブログは、夏の休暇の時に記事を移行させてなくしてしまったのですが、放置してあった時もかなり多くの方が訪問してくださったようで、感謝しかありません。ありがとうございます。何年たっても興味深いと思う内容を少しずつリライトして再投稿していこうと思います。

 今日はお隣、フィンランドンの教育についてです。フィンランドの教育は日本でも大変有名になりましたよね。コロナ前はものすごい数の訪問者があったとも聞いています。

1.フィンランドの公用語は?

日本ではあまり知られていないかもしれませんが、フィンランドの公用語は、フィンランド語とスウェーデン語なのです。なので、フィンランドの道路や観光表示は両方の言語でされています。フィンランドでは、1919年に独立した2年後からこの2つの言語を公用語としてきています。1970年代に入ってからは、フィンランドの学校では高校と同様に7年生から9年生でスウェーデン語を必修言語としたそうです。この投稿は2010年にしたもので(12年前ってすごいと思ってしまった。)その当時の調査では、多くの人がスウェーデン語を必修言語とするのはどうかという意見をもっていたようです。いったいどのくらいの人がスウェーデン語を母国語としてを話しているのかというと、約290,000人、人口の約5%だそうで、今調べてみてもこの数字にあまり変化はないようです。

2.スウェーデン語話者が多い地域とは?

 多くのスウェーデン語話者は、オーランドという島に住んでおり、スウェーデンよりの海岸沿いに住んでいる場合が多いので、オーランドや、ヴァーサなどは有名です。そんなにたくさんの人が使っているわけではないようで、流れ的には、上記にも書いたように、学校でのスウェーデン語の授業はやめたいという方向にあるのは理解できます。あれから10年、この議論どうなったのだろう。スウェーデンは、フィンランドとNATO加盟に向けて動いていることもあり、今年は、フィンランドとスウェーデンは、場所的に近いということだけではなく、国同士としても今まで以上に強固な関係を新たに作り出したと感じます。

 この言葉の問題は、国の憲法に定めてあるだけあって、スウェーデン語でどこでも授業をうけられるとか、医者にかかるときは、スウェーデン語が使えないといけないとかで、ただ、やめるとかやめないという議論ではなかったと記憶しています。

3.男女平等の進んだ大学教育

 過去の投稿によると、12年前は、フィンランドの大学教育が一番男女平等だったようです。フィンランド、オランダ、ノルウェー、アメリカ、オーストラリアで行われた調査結果で、大学教育レベルの男女平等について調べたら、フィンランドが一番平等だったというもの。フィンランドのような小国は、男女かまわず力のあるものを伸ばすことによって国力を上げていく必要があると書かれていたようです。今の状況はわかりませんが、この考え、そろそろ日本も取り入れるとよいかもしれないと思います。少子化が叫ばれて既に20年とかになり、一向に改善される気配はありません。こうなると、日本は、人口が少なくてもやっていける国に変えていく方が変実的なのではと思います。スウェーデンは北欧最大の国ですが、それでも、日本の人口よりはるかに少ないです。でも、ちゃんと国としてやっていけるので、人という価値について今一度考えなおして、10年、20年後を見据えて国づくりが必要ではないかとおもいます。

4.北欧といってもかなり違う教育

 日本から見ると、北欧という大きな地域で見られることが多いのですが、実は教育の在り方はかなり異なる部分があります。私の個人的な印象ですが、ノルウェーはやり方をあまり変えない傾向があるのに対して、スウェーデンは変更していくスピードが速く、そのスウェーデンの様子をうかがいながら、よい結果を出したところをまねしていこうとしているのがフィンランドみたいな感じです。ここ数年は、残念ながら、フィンランドから聞こえることは、「スウェーデンのマネしなくてよかった」的な発言です(泣)。スウェーデンは、フィンランドの良いところを取り入れていて、近年大きく変わったのが、小学校の3年生までにできる限り早い段階で、支援を増やすというものです。これにかかわって、読み書き計算保障もされました。

5.カリキュラムの違い

 過去ブログの投稿に、「フィンランドの学校のカリキュラムは、賢くて実践的な内容になっており、合理的な目標が掲げられており、相対的に明確な用語で表現されている。」と。この発言は、ルンド大学の先生の発言で、こまではっきり書かれるとスウェーデンのカリキュラムがいかなるものか、頭を抱えたくなります。この2022年秋学期より、カリキュラムの改定が行われ、こうした意見や批判を取り入れたのだろうと思うのですが、今回のものは、より、教える内容が整理され、評価の段階も前よりもわかりやすくなりました。そして、フィンランドの低学年で重要視されているのが、読解力だそうです。かなり重要で力を入れているそうです。今もかな。今のフィンランド教育事情もいつか書けたらと思いますが、いつになることか。。。

6.学校生活の違い

 フィンランドの子どもたちには、月曜日から木曜日まで宿題が出るそうです。(注2011年の情報)そして、学校はたいていの場合、午後の14時には終わるそうです。14時に終われば、十分に放課後の自由時間がとれ、運動をしたり遊んだりできるし、日本の子どもたちとは異なる日常を送っていると想像できます。過去ブログですでに、フィンランドの全ての学校がそうではないかもと書いているし、多少今の情報とずれるところがあるかもと思いますが、ご了承ください。

 スウェーデンの場合、宿題はかなり先生によって個人差があるように思います。宿題と一言でいっても、どんな内容かにもよるので、このあたりは詳しくは比較できないですが、宿題を出さないという議論もされましたが、今は宿題はできる限り教科の先生で連携を取り、一度にたくさんにならないようにするといった工夫はされていますが、なくす方向は聞かないです。学校の終了時間にはあまり差がないように思います。高学年になるとスウェーデンでは、もう少し長い時間やっているとは思いますが、この新聞の記事でははっきりと学年など詳しく書いていないのでこちらも比較しにくいです。ただ、どちらにしても、学校の時間は明らかに日本よりも少ないと思います。低学年などは12時に終わったりします、3年生でも金曜日などはかなり早い時間に終わります。スウェーデンが学校併設の学童保育が12歳まであるので、子どもたちは学校には残っています。このブログにも学童についての投稿があるのでぜひ。

 7.補習授業の充実

 次に補習授業の充実があげられていました。フィンランドでは、きちんとしたシステムが作り上げられており、それにより、進度の遅れている子どもを取り出して援助し、早いうちにその遅れを取り戻すことができるシステムがあるとのことでした。これは、この投稿から10年、スウェーデン真似しています。フィンランドほどシステム化していないように思うのですが、「宿題のヘルプ」という日が週に1から2日設けられていることは、どの学校でもめずらしくなくなりました。数学ヘルプの日が別にあったりと、日本の塾のようなシステムがあまりない国なので、こうした活動が、学校や学校外の団体などが図書館などで行うなどして、行われるようになりました。
 
 過去ブログには、以下のような記述もありました。
「この前、日本から来てくださったお客様が、フィンランドで研究をされている方で、興味深い話をしてくださいました。フィンランドの低学年のクラスでは、クラスを半分に分け、(確か、、、)隔日で12時までの日と14時まで授業をする日に分けてあり、午後は少人数で勉強をするとのことでした。いいシステムだよなあと思いました。低学年はたいてい12時くらいで終わるので、その終わる日を変えることにより、少人数での授業が可能になるのだから、やりやすいよいシステムではないかと思ったのです。これも、補習授業のシステムの中の最も初めのものであるのだろうと予想します。
 
 あんまり子どもの生活自体は代わりがないように思うのですが、ちょっとした工夫がされているのがフィンランドだなあと思いました。このちょっとが大きな差を生むんだろうなあとは、つくづく思う今日のこの頃です。
 

8.数多くある選べる高校の職業コース

 スウェーデンであまり知られていないフィンランドの教育システムとして上がっていたのが、たくさんあり、選べる高校の職業コースでした。これも、スウェーデン、見習う価値あるかもと書いていました。高校の教育の在り方が、スウェーデン何度も議論されていますが、あまり変わり映えしないようにも思います。今の数字が知りたいところですが、この2011年の新聞によれば、フィンランドでは、15歳の若者の50%が職業コースを選ぶそうです。詳しくどんなコースがあるとは書かれていませんでしたが、幅広い職業訓練課程があり、魅力的なコースがたくさんあるとのことでした。そうなると、本当に大学進学を希望し、理論的な教科を学びたい生徒のみが大学進学コースに進学するとなるようですね。昔の投稿には、いろいろ高校情報を書いていたのですが、情報が古い可能性が高いなあと思って削除しました。また、スウェーデンとフィンランドの高校事情もいつかご紹介できればと思います。

9.先生が人気のある職業

フィンランドでは教師はなりたい人が多い職業であるのに対して、スウェーデンでは、なり手がない、人気のない職業なんです。日本も先生人気ないですよね。残念です。ここは、とても重要なところで、教育って、人材が命ですから(泣)。フィンランドでは、5人から10人の入学希望者が1席を争うのにたいして、スウェーデンでは、入学希望者が少なく、教員養成課程はがらがら。。。入った学生もやめていくので大変だとか。。。(2011年の数字)フィンランドでは教員養成課程に入るためにかなりの高得点が必要になるのにたいして、スウェーデンでは、入学を希望すれば入れるような状態。。。そうなれば、教師の質に大きな差が出て当然ともいえます。あれから10年たち、あまり状況は大きく変わっていませんが、多少教員養成課程の希望者が増えたこと、お給料があがったので、先生に戻った人もいるということで、先生足りないですが、状況は多少改善されました。
 
フィンランドの教員養成課程に入る人材は、高校の成績、③で少し紹介した筆記試験のようなものの成績、インタビューを含む入学試験によって選ばれるそうです。インタビューではもちろん教師に向くか向かないかを見るそうです。これをまねたのか、一時期、スウェーデンの教員養成課程で、試験的に適性検査してましたが、導入するにはいたりませんでした。

10.スウェーデンが力をいれてきた教育とは

 過去ブログの投稿は、新聞記事をもとにしたもので、その中にスウェーデンの教育が力を入れてきた内容があげられていました。
  • 作業の仕方
  • 支援器具の向上
  • 自主的な学習
  • グループでの学習
  • パソコンを使った学習
 
上記のような内容は確かにスウェーデン発達しています。で、こういった学習方法だと、教師は、教師ではなく、「スーパーアドバイザー」的な存在になり「教えるという能力」よりもほかの能力が求められます。そうこうしているうちに、教員が教員でなくなってしまい、いわゆる「授業」ができなくなってきてしまったかとありました。現在はやはり見直されて、授業の形についての研修などもあったりとして、かなり変わったように思います。前の生徒の自主性を重んじる参加型学習とともに、講義型学習の力もつけてきたスウェーデンの学校は課題も多いですが、学ぶところもたくさんある学校教育をしていると感じます。

 
フィンランドとスウェーデンの国境沿いの小さな町より


この記事は、旧ブログの2010年1月14日と4月8日、2011年6月24日、25日、28日の投稿をリライトしたものです。


 
 

2022年12月29日木曜日

専業主婦がいない男女平等の国、スウェーデンの女性たち

 この投稿は、旧ブログの投稿をリライトして投稿しています。

2022年7月16日に、初の単著「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」を刊行。是非ご一読を😊

 学校も休みに入り、1週間。友達に会ったり、出かけたりと楽しく過ごしている反面、やらなければいけないことがなかなか簡単に終わる内容でない今年の冬は、心は少し焦ってし舞う感じです。とりあえず対策として、FacebookとTwitter を休止しました。文章を書く練習も考えるとブログを残すことにしました。それにブログは、だらだら時間を費やすことはなのでよいのですが、Facebookなどは、どうしても逃避行動増えてしまう、弱い私です。

 さて、今日は、旧ブログから、専業主婦とスウェーデン関係の投稿を読見直すと、同僚たちと話した内容など興味深いなあと思います。タイトル通り、スウェーデンには、専業主婦という選択肢はありません。男女平等が当たり前であり、女性も男性と同じように働いて、税金を納めて一人前という国です。今日はそんなスウェーデンの専業主婦事情についてです。

 1.昔は、スウェーデンにもいた専業主婦

 スウェーデンにも専業主婦がいた時代があります。だいたい、今60代になるくらいの世代の方は、「母親が専業主婦だった」というのは珍しくありません。もう少し上の方だと、「私は専業主婦だったけど、働き始めた」というような話をされる方もいます。その時代には、専業主婦が存在し、家事を家庭内労働として行い、税金の控除もありました。この制度は無くなり、「いつ無くなったのか」という友人の説明をそのまま訳すると、

「政府が主婦も外で働くべきだと思ったときになくなった。」

とのことでした。専業主婦だったという人の話を聞くと、あの頃はよかったという印象を受けるので、福祉国家というと聞こえはいいけれど、みんなが働き納税するという基本姿勢がそんなに簡単物でもないということを感じます。これに関連して、やっぱり選択肢があれば、家にいたい人はいるんだなあと感じることはあります。

3.中立国と戦争と専業主婦

 第2次世界大戦後、ヨーロッパの多くの国々が国内の復興に力を注いでいた時期に、スウェーデンは、中立国であったために、国内の工場などはそのまま残っており、戦後すぐに工業などを復活させることができました。こうした戦後の混沌とするヨーロッパの中で、北の果ての貧しい国であったスウェーデンは、チャンスを生かして、今の国を築いてきました。その陰には、専業主婦の在り方も関わってきたといわれています。

3.スウェーデンの家事と専業主婦

 スウェーデン人に聞くと、専業主婦は、その昔、洗濯機も掃除機も何もない時代であれば必要性があったが、今のような便利な時代には、夫婦で協力して行えばいいという声をよく聞きまます。もちろん、スウェーデンでも家事や子育ては大変だという話もしますし、私も同感ですが、しかしながら、ここはスウェーデン。例えば、夕食はソーセージとパスタとか、冷凍食品とか普通ですし、洗濯も気候からして、毎日必ずしなければならないというものでもなく、掃除も基本的に週1という家庭も多いように思います。ちなみに週1の掃除は金曜日にする家が多いです。なので、夫婦で協力しあえば十分仕事と両立可能です。残業の習慣もない国ですし。

 育児休暇は、お父さんかお母さんのどちらかがとり、両方一緒に取ることはありません。(出産直後などのはあります)なので、私の同僚の女性などは、お父さんが育児休暇で家にいるときは、夕飯からすべてやってもらうということで、楽だとはなしていました。共働きの時は、どちらが作るかもめたとも。うんうん、あるあるだなあと聞いていました。


4.女性の就業率は?

2009年の女性の就業率は以下のようになっています。就業率の高い順に、(EU国内)

  1. デンマーク 74%
  2. スウェーデン 72%
  3. オランダ 71%
  4. フィンランド 69%
  5. エストニア, イギリス、オーストリア 66%

とありました。他の国では、ドイツ 65%,フランス 61%、スペイン 55%などなど。一番低かったのは、マルタの37%でした。EU非加盟国では、アメリカ66%、アイスランド80%、日本60%とありました。

 以下の統計が2020年のものなのですが、日本の女性の就業率は、70.6%となっており、働く女性が増えています。スウェーデンも増えている感じですが、数%ですね。

男女共同参画局のホームページより

  今の時代では、働くことは当然のことになり、だからこそ、ライフワークバランスなどがしっかりとれないと難しい時代になっているのでしょう。そこには、国の制度からによる改革も必要ですが、ともに、自分はどうしたいのかという、自己の中での考えを明確にすることも大切であると感じます。

 5.専業主婦がしたい人もいる

 日本は、専業主婦がまだ存在するという話をすると、「そんな国に住みたかった」という率直な感想を口にする同僚もいます。少し、最初にも書きましたが、家にいたい人、仕事をしたくないと思っている人ももちろんいます。そうした人たちは、自分の中で折り合いをつけて、生活していくのに必要なだけのお金を稼ぎ、人生を謳歌している人もいるし、こういう国なので、学生に戻って勉強をしてみる人もいます。そこでも語られるのが、税金だからなあという話で、常識がある方たちは、無駄に税金を使わないという話はされますし、ちゃんと働いて税金を納めて、国に貢献しようという話もよく聞きます。

6.戦うスウェーデン女性たち

 その昔は、隣の農場の娘と結婚させて農場を広げていたとか、いわゆる政略結婚もあり、子どもは女より男の方がいいと言われていた時代もあったスウェーデン。「スウェーデンは世界で一番女性に優しい国らしい」という話をすると、スウェーデン人女性たちは、冷静に、「それは、育児休暇や子どもの看護休暇などの制度の面よね」といいます。スウェーデン女性たちは、力強く、「今のスウェーデンがあるのは、多くの女性が頑張って勝ち取ったもので、昔に比べればよくなったけど、まだまだ改善すべきところは多い」と話します。男性にできることは女性にもできると、常に思って努力しており、この根性と気持ちが大切なのだと感じさせられます。誰かが作ったわけではなく、スウェーデンの女性たちが作ったのが今のスウェーデンで、そこには、専業主婦という選択肢はなく、男女ともに働いて税金を納め、国を支えるという女性の強い姿勢があります。



今回は、 2009年5月13日、7月13日、10月19日の過去のブログをリライトしています。



2022年12月28日水曜日

東京大学バリアフリー教育開発研究センターの12月のインクルーシブ教育定例研究会

 冬休みに私がしたいことの一つが、たまりにたまっている動画を一つずつ見ていくことです。オンラインの会で、アーカイブ配信があるものは、できる限り申し込んでおき、見れるときに見て勉強しています。その中の一つが東京大学のバリアフリー教育開発教育センターが行っているオンラインのインクルーシブ教育の勉強会です。時間が合えば、ライブでも参加しますが、時差もあり、最近は動画を後で見て勉強しています。無料でここまでの内容を定期的に行うことは容易ではないと思うので、いつも素晴らしい内容に感謝して勉強させてもらっています。まだ、参加されたことがない方は、是非試しに参加されてみるとよいと思います。次回の案内があったら、インスタとブログでも紹介しますね。

 今回は、12月のインクルーシブ教育定例研究会の動画を見ての感想や思うところを少しまとめて記録しておこうと思います。12月4日に行われた会のテーマは、

「来年度からのインクルーシブ教育はどうなる?4.27通知について文科省の人に聞いてみよう」

東京大学バリアフリー教育開発研究センターのホームページより

でした。この会は、4月に出された文部科学省からの「特別支援学級及び通級による適切な運用について」という通知をもとにしたもので、文部科学省の初等中等教育局特別支援教育課長の山泰造さん、障害当事者の保護者を2名のか招いての勉強会でした。思うことはたくさんあったのですが、5点、動画を見て数日たった後に書いているので、少しうろ覚えのところもありますが、記録して共有しますので、感想などあれば、是非。

1.インクルーシブ教育は「場の統合」どまり

 話を聞いていて、説明が、これって「場の統合」どまりだよね、っと思うところが何回かありました。その説明では、本当にインクルーシブ教育なんだろうかとか、分離教育の考えが根強いなあと思いました。インクルーシブ教育は、理念が重要というか、基盤となる考えがしっかり理解され、共有されることが重要だと思っており、その面からもどうなのだろうかと疑問を持ちました。場の統合を考えるなら、特別支援学校は、小中学校の中、もしくは隣にするといいと思います。

 あの4月の通知ですが、この通知のみしか知らないのですが、通知と同時に何かしらの手立てが打たれたのならば、説明にあったような通知の意図が理解できますが、その通知だけなら、こうして大きく話題になる理由もよくわかります。スウェーデンなら、この通知とともに、きっと、対応策も出されたような気がしてなりません。もちろん予想ですが。。。

2.児童生徒数減少にも関わらず、増える特別支援教育対象児

 これは何度もメディアなどで取り上げられていますが、児童生徒数が減少しているにも関わらず、増加しているのが特別支援教育対象児。スウェーデンでも同じ減少があり、全児童生徒数の20%を超える子供たちが支援教育の対象児となり、これは、普通教育に問題があるとされ、大きな教育改革が行われました。通常学級の教育を大きく変え、支援教育の対象児が減るようにされたのですが、日本もこの時期にあるように思います。この時の改革のことは、もう5年以上前に読んだままなので、もう一度読み直してみたいと思っています。今の日本の現状であれば、通級指導と支援学級を見直し、その分の予算や人材で、普通学級の生徒数を減らすことや、学校で教える内容を見直すなどもあるかなあと思います。

3.仲間と学ぶ大切さ

 もっと、子供たちが持っている力を信じてもいいのかなとも思いました。仲間と学ぶ大切さが議論の中でも出ており、感想の中でも書かれていましたが、近年の私がかかわっているスウェーデンの教育でも、コラボティブラーニングの価値が言われています。このコラボティブラーニングを特別支援学校レベルで研究しているかたもいて、「人間はソーシャルな生き物」という、ともに学ぶというのが、どんなに障害が重くてもあると実感しています。分けて必要に応じて教えるという通級のありかたは、スウェーデンの研究者によれば、縦つながりの社会性であり、子供たちには、横つながりの社会性がもっと必要なのかもしれないと思いました。スウェーデンでよく言われるのが、人ひとりが関係を持てる、人間関係をそれなりに築ける数というのは限りがあり、あまりにも多い人数でクラスが形成されている日本は、その母体数を減らすだけでも、異なった人間関係作りがみられるようになると思います。

4.特別支援教育が特別でなくなり、教育となる

 スウェーデンにある議論に、特別支援教育自体をなくす、特別な教育なんてなくて、教育があり、その中に、支援が必要な子供たちの教育があるという考え方で、この方針をとっている大学は、教育学部の中に支援教育関係が入っているところもあります。それとは逆に、特別支援教育を別個にしている大学もあり、ここにも考え方の違いがあります。そうした流れを見ながら、大学で学び研究していると、できる限り、教育と特別支援教育の境目が低くなり、わからなくなればなるほどよいのではと思います。理念の話に戻れば、ここは重要かなと思っており、教育に関わる人は、特別支援教育は違う人が行うという考えではなく、教育の中にあり、ある程度までは、すべての教員が知識を持つべき時代になっていると思いまし、理念や概念はしっかりと教員養成課程で学ぶべきものであると思います。


5.特別支援教育コーディネーターや支援員の活用

 私が今とっている資格は、特別支援教育コーディネーターのようなイメージの資格で、内容は「インクルーシブ教育者」に近いものであると思いますが、資格を取るためには、スウェーデンは、基礎教員免許を持ち、その資格で3年以上フルタイムで働いたのちに、入学できるコースで1年半、もしくはハーフなら3年学んでとれる資格です。そこで学ぶ内容も興味深いのですが、また別で紹介したいと思いますが、それと比べると明らかに、日本の資格は付焼刃的なイメージがあり、活用不足なのではないかと思います。支援員などの方と合わせて、学校の中の教員以外の役職や大人を有効に活用していくことが重要であると思います。

スウェーデンは、特別支援教育士などの専門職も多いですが、高卒の方が多い、生徒のアシスタントなども多くいて、教員ができる限り教えることに集中できる環境が目指されています。

と、書き出したら、きりがないので、このあたりでおしまいにしておきます。ちょっと残念なのが、当事者保護者がいつも同じ方で、ほかの人の例もそろそろ聞きたいかなあと思いました。それでも、これだけの内容をアーカイブで学べることに感謝です。


2022年12月27日火曜日

スウェーデンの性教育で重要とされること9項目をご紹介!

 前回の「世界で最初に性教育が取り入れられた、スウェーデンの性教育最新情報2022年版」の続きです。この内容は、教員組合で行われたオンライン講演会の内容をまとめて勉強したものを皆様と共有させていただいています。このオンライン講演会は、評判通り、本当に良かったです。今回は、彼が講演の最後にまとめた内容をもとに書いていきたいと思います。

1.広い視野、意識を広げることが重要

 話の中心でとても印象的だったのが、「普通、常識、規範」についてです。スウェーデン語では、「Norm」というのですが、私は、文脈によって訳を多少変えながら使うこと、理解することが多いです。取り上げられていたのは、「社会的規範、普通」対「法的規範」についてでした。法的な規範は、どの国でも明確で、スウェーデンでも然りです。これに対して、社会的な常識や普通となると、その国や社会、持っている文化、育った環境などなど、五万とあります。それでも、若者たちに聞くと、(私もだけど)「みんなと一緒、普通がいい」と思います。そんなときの、普通やみんなと一緒ほど、実は不確定なものはないのですが。普通について考え、自分のことについて考え、そうした自己内省を行うことで、意識や物事に対する認識を高めていくことは、本当に大切な性教育の根幹です。

2.話す機会を増やす

 性教育発祥の地スウェーデンでも、性について話す機会は少ないといわれており、どのように、性、セックス、体、自尊心、同意といった内容について話す機会を増やしていくかは大きな課題です。スウェーデンの性教育では昔から、3つの三角形(以下の写真)で話されることが多く、教科の中で教える、日常生活の中で出る疑問を拾い上げる、テーマに沿って取り上げる話されます。どの機会も大切で、学期に一回行われる内容では決してなく、常に行われるべき、価値教育の一環となっていることが重要です。
Skolverkt より

3.避妊についての知識と精神的不健康の予防

 スウェーデンでは、若者の精神的不健康は大変大きな課題です。そうした精神的不健康の予防と避妊や体についての知識をしっかりと教えることは重要です。こうした内容は、性教育全般とともに、「なぜ、学校で教えるのか」という疑問が、実はスウェーデンでもあります。いろんな考え方があるので、当然ですよね。そんな個人のプライベートなことを学校で教える必要があるのかというものです。しかしながら、プライベートを教えるわけではなく、知識を教えるのであり、決して、教員が自分のプライベートな話をする必要もなければ、生徒が自分の話をする必要もないのです。プライベートなことを話さなくても、個人的に話すことはでき、話したくなければ、「同意」に立ち返り、話さないという選択肢が教える側にも、生徒側にもあるのです。

4.セックスについて話すことを普通にしていくことが大切

 セックスや性や体について話すことを、もっと日常的に普通にしていくことが重要であるとも。なかなか話しにくい内容であるというのは、もちろんで、家庭で教えることが可能ならいいが、親だとなおさら話しにくいこともあると思います。話しやすい、聞きやすいようにするためのアイデアとしては、事前に、最初に質問や疑問を集めておくという方法です。最近はデジタル化が進んでいるので、そのような形で集めてもいいし、昔ながらの紙に無記名で質問や疑問を書いてもらい、集めて置き、それをもとに話をするというのもよいと思います。これにより、教師側もその場で答えにくいものも、じっくり考えて準備できる良さがあります。

5.やっぱり、少ない支援や援助

 性教育の分野は、やはり、まだまだ支援や援助が少ないといわれています。そんな中でも、優秀なのが、ユースクリニックが運営しているUMOというサイト。特に、自由に質問できるとこがよくて、若者が若者に聞くところと、若者が専門家に聞くという2か所あり、様々な質問や疑問が寄せられています。このサイトは私もよく見ます。こうした、安心してう情報を得ることができるサイトがあるというのはほんとに素晴らしいです。

UMOのサイトより

6.練習が結果や知識を生み出す

講演の中ではどのように授業をしたらいいかなどの具体的な提案ももちろんありました。短い講演で本当に内容が濃い!先ほどの、質問疑問を生徒から集めるというのはもちろんですが、例えば簡単な授業として、黒板に「セックス」と書き、そこから対話をしていくという方法。年齢によっては、「第2次性徴、体毛」などもいいのではと。言葉にして、話す中で学ぶことって多いですよね。あとは、「普通ってなんだろう」とか。テーマで学習するなら、例えば「同意、HIV、人間関係、家族、規範、インターネット、感情」などもよいのではということでした。そんなテーマ学習の時の具体的な方法としては、短めの講演を聞く、映像やPODDを見たり聞いたりして話し合う、本を読む、文章を書く、質問やケーススタディをするというもので、どの方法をとったにしても、最も重要なのは、「対話」であると。言葉にして、話し、人の意見を聞き、自分の意見を考えるといった行動が大切ですよね。話はずれますが、だからこそ、学校教育を常に点数化して順位やテストで見る教育は、問題が多いとも思います。


まとめとは別に最後に3点ご紹介して終わりたいと思います。

7.生徒の健康チームとの連携の大切さ

 スウェーデンの学校には生徒の健康チームというのがあります。こちらについては、私の本を読んでいただければと思います。この生徒の健康チームとと、いかに連携していくかは、私のヘッドテーチャーとしての大きな責任でもあります。学校医、学校看護師、心理士、学校社会福祉士、特別教育士との連携と協働をしながら、医療、心理、心理社会、特別支援教育の分野の取り組みを学校教育に生かしていくことはとても重要です。そこには、健康の促進的部分と予防的な内容が大きくかかわってきており、教師が行えない部分や、行いにくい部分などを連携しながら補足しあっていくということが重要になります。

8.ポルノが教える内容になったこと

 今回の改定で大きく変わったのが、「ポルノ」が教える内容に入ったことです。これは、大きな変化で、この点を大きく議論したものがいくつも出ました。今回の講演では、子どもオンブズマンが様々な研究をまとめて出した2021年の報告書の要点をもとに話がされました。これだけでも、投稿できる内容ですが、いかに簡単にまとめます。

  • 男子の方が女子よりもポルノに抵抗が低い。
  • ポルノ見ることによって、暴力行為やポルノの模倣が増えるという事実的関係性はみられなかった。(一部の人を除いて)
  • 若者たちは、ポルノは本当のセックスを映したものではなく、誰かが作ったものだという認識があるが、そこで見られる「体」には、ルッキズムの影響があり、これがいいからだというイメージが出来上がる危険性がある。
  • 大人が批判的ににポルノについて話すことは、若者たちが大人に話す気をなくさせ、話し方には注意が必要。
  • ポルノを見すぎる傾向は、精神の不健康に関係する。
以上でした。この報告書もいつか時間があったらじっくり読みたいです。

9.よい性教育とは

 最後に、よい性教育に含まれるとよい内容が提案されましたので、その紹介をしますね。

  • 生徒の健康チームとの連携と協働
  • 生徒の声を聴き、願いを取り入れる。
  • 規範意識を考える。
  • 教科に交えていく。
  • 明確な方針とフォローアップ(校長の責任)

以上でした。長くなりましたが、私のヘッドテーチャーとしての役割にもかかわる内容で、勉強しておきたかったので、今回の講演は本当に良かったです。感想などありましたら、ぜひ!


2022年12月26日月曜日

世界で最初に性教育が取り入れられた、スウェーデンの性教育最新情報2022年版!

教員組合のウェブ講演会での内容が、すごくよかったと教職員間で話題になっていたので、期限が切れる前に見て勉強しておこうと思いました。その内容を記録して、皆様と共有できればと思います。

スウェーデンの性教育最新情報2022年

1.性教育と呼ばなくなった、スウェーデン

スウェーデンでは、「性教育」という言葉は既に使われていません。2022年7月1日より、

「Sexualitet, samtycke och relationer:セクシャリティー、同意と関係」

に変更になっています。それまでは、もう少し日本の「性教育」に近い名称「Sex / och samlevnad」が用いられていました。この名称変更は、カリキュラムの改定とともに行われました。数年前から、この改定に向けていろいろと動きはあったのですが、実際に変更となると、現場でも戸惑う部分はもちろんありました。

2.「同意」の難しさ

「同意」というと「はい、いいえ」と「どちらでもない」という選択肢で話がされそうですが、子どもや若者は、その「はいといいえ」の持つ意味や、結果までを理解しているか、決定をする自分を理解しているかなど、様々な問題があるという話が、まずは、印象的でした。

 話をされた方は、「Kalle Norwald」さんという性の専門家の方でした。彼が出した本がこちらです。

この表紙の絵にも意味があるそうで、「この話は、話せるのか、話せないのか、赤信号なのか、黄色信号なのか、自分の中でどうなのか」と振り返る、そういう意味合いもあるという話とともに紹介され、教師でも生徒でも、この話はしてもいいのか、ちょっと嫌なのか、正直になることは重要であると思います。私もスウェーデンで教えてきて、この自分の中で話せるか話せないかの判断をすることは重要だと思っていて、話せないと感じることは、正直に生徒に「今は話せない、今度ちゃんと準備してから話します」と話すようにしていますし、いいたくないことは、「話したくないので話しません」といいます。ここにも「同意」とは何なのかということを考える基盤があるなあと思って聞いていました。

3.なぜ、SEXを時間割にいれるのか(学校で教えるのか)?

なぜ、学校で教えるのか、もうこれは、まずは何といっても「知識を与える」に限ります。知識は何物にも代えがたい宝となります。彼も面白おかしく、生徒たちはとても知りたがっていると。うん、そうなんです、生徒たちはとても知りたいけれど、誰に聞いていいのかわからない場合も多いし、聞きにくい内容だからこそ、学校で教える意味があります。

二つ目は「自尊心が強化される」と。自尊心が高まれば、精神的に健康に過ごせる若者が増え、大人も増えていきます。わかりにくいことやいいにくいことを、どんなふうに言葉で表現するとよいのかを学ぶことによって、生徒たちは、言葉を習得していき、より良い表現ができるようになり、自分と物事に対する意識を育てることができます。ご存じのように「言葉は力」になります。

そして、この自尊心をしっかり育てていくことで、「若者たちの将来と現在の人との関係づくりに寄与」することができると続けます。そして、偏見を減らし変えていくことができるというのも、学校で教えることの大きな意味であると思います。

4.1955年に世界で最初に性教育を取り入れたスウェーデン

タイトルにも書きましたが、性教育を取り入れた最初の国は、スウェーデン。1955年に始まり、長い歴史が今を作り上げています。この1955年のときから、性教育は様々な教科の中で取り入られるべきであるとされてきました。日本から、時々、性教育の授業を見たいというご連絡をいただきますが、実は、とても難しい。性教育という授業があるわけではなく、歴史、生物、価値教育、社会、家庭科、宗教などなどの教科の中で様々な形で教えています。その昔の性教育は、スウェーデンでも「リスク」について教えることが多かったと。おそらく多くの方が納得されると思うのですが、いかに危険を回避するかということに焦点を当てた、リスクについての内容が中心だった時代があります。


講演の内容はまだまだ続きますが、ここでまずは、第1回を終わりたいと思います。続きは、「常識、何か普通なのか」という話から広がっていきます。


みんなのねがい 世界の風 最終原稿完成

  この半年間、「みんなのねがい」という全国障害者問題研究会の雑誌で「世界の風」という連載をしてきました。今日はその最終原稿が完成しました。半年間何度もメールでやり取りをしてくださった担当の方には、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。

 「みんなのねがい」は、1970年に創刊された歴史のある雑誌で、障害のあの人やその家族、実践者など、様々な人々の願いを伝えることができる雑誌です。残念ながら、私は毎月購読はしておらず、スウェーデンには、3冊あるのみです。この雑誌での読書会をされている方がいたり、メールで感想があったりと、この本の良さは、いつも遠くから感じています。



10月号のみんなのねがい

みんなの願いのホームページから、1月号の特集ページがあり、そこから、私の世界の風をPDFで読むことができます。見本誌を無料で送ってくださるので、興味を持たれた方は、ぜひ、連絡をしてみてください。

最終回は、最後にふさわしい内容になったと思います。願いを持ち、それを言葉にできるからこそ、そこから変えていけるように思います。あなたの願いはなんですか。あなたが生きている世界や社会に願うことは何ですか。


いつか皆さんとそんなお話ができることを楽しみにしております。






2022年12月25日日曜日

スウェーデンのクリスマスの風物詩、大きなわらのヤギ

  皆様、クリスマスをいかがお過ごしでしょうか。私は、無事に秋学期を終え、冬休みを満喫しています。秋学期は、ヘッドテーチャーになったり、学校検査庁が来たり、新しいプロジェクトに参加したりと本当に目まぐるしく過ぎていきました。Twitterやインスタグラムでは少し紹介したいのですが、ブログできちんと文章化していきたいと思います。どのくらいできるかはわからないのですが、ブログの良さは、やはりある程度の文章が書け、残っているという点だと思うので、頑張ります。

 今日は、先日公開されたScania Japan のGriff in Magazine の私の記事のご紹介です。本当に久しぶりに記事を書かせていただきました。内容は、スウェーデンのクリスマスの伝統、イェブレの大きなわらのヤギについてです。私は何度も訪れたことがあるこの町、この大きなヤギが燃やされずにクリスマスを越せるかは、私のクリスマスの最大の関心かもしれません。詳しくは以下の記事をどうぞ!

サステナビリティにも配慮したスウェーデンの12月の風物詩、イェブレの藁のヤギ


この藁の大きなヤギの様子は、ソーシャルメディアでも見ることができます。ぜひ~!


 皆様もよいクリスマスを!