普段フルタイムで働き、勉強もしていると、なかなか隅々まで掃除ができないので、夏の休暇中は大掃除をするようにしています。スウェーデンでも、クリスマス前に大掃除をしたり、イースター前に掃除したりする習慣はあるのですが、私は、夏の休暇中が一番時間もあって気分がよいので、この時にやるようにしています。ということで、昨日は、キッチンとバスルームの大掃除。きれいになりました。
今日は、日本で見てきた施設や学校の中から、児童心理療育施設について書こうと思います。私は岐阜県出身で、今回見てきた施設は、岐阜県関市にある
社会福祉法人、桜友会の児童心理養育施設、桜学館です。
この施設は、2005年6月に岐阜県内初の施設として建てられました。児童心理療育施設ということで、心理的な要因により、学校生活になじむことができず、不登校やひきこもりや、いじめなどの問題を抱えた子どもたちが、一時的に、親元から離れて施設で暮らしながら、心理治療と生活指導を受けることができる施設です。近くの小学校と中学校の分級という形で、正規の義務教育を受けることができるように設置された特別支援学級が敷地内に併設されており、子どもたちは、衣食住を一体化させた総合環境療法というものを受けているとのことです。
私はこういった施設があることを知らず、前回帰国したときに大学時代の友人から聞きました。2005年にできたとあるので、私がスウェーデンに渡った後にできた施設ということで、時代の流れの中でできてきた施設なのであろうと思います。県内唯一のこの施設、全都道府県に作られるように国から指示があったということですが、いまだにないところもあるようです。
施設内の印象は、家庭的な雰囲気が漂っていて、病院のような感じはせず、温かみを感じました。3回建ての生活棟には4ユニットあり、各ユニットは12人定員ということでした。ただ、12人だと少し多いと感じるようで、状況に合わせて定員よりも少ない人数の場合が多いそうです。今回もだいたい8人程度ということでした。部屋は、個室2部屋二人部屋2部屋4人部屋一部屋になっており、2人部屋を一人部屋に直したりして、できる限りプライベートを重視していることもわかりました。部屋には漫画などもあり、少し物が少ない普通の子どもの部屋という感じでした。浴室は3部屋あり、自分で入り、洗濯も自分でするそうです。生活指導はこの施設の一つの要になっており、基本的生活習慣を身に着けることはもちろんですが、独り立ちをしていくための様々な課題を身に着けていくことにも力をいれているそうです。
施設には、指導員さんに加えてセラピストいて、心理治療を行っています。ひきこもりや不登校の子どもは昼夜を逆転させていたり、生活のリズムがつかめていなかったりする場合が多く、そういうところから順番に支援、援助していくそうです。学校に行ける子は、敷地内の学校に行き、登校が難しい子は施設内で勉強をするそうで、学校の先生とは常に連携をとっていて、確かに隣接しているとやりやすいだろうと感じました。
脱施設化が叫ばれるようになり、子どもを施設に入れるということがあまりなくなったスウェーデンでは、里親などを利用する場合はあっても、このような施設を一般的には見かけません。(全くないわけではありません。)里親になりたい人の数にも限界がありますし、当たり外れがあるのも事実である現実を踏まえると、できる限り、家庭的な環境で、専門的な援助を受けながら、問題と向き合えるというのは、一つの形ではあるかなと感じました。
分級になる学校も見学をして、分級というくらいなので、小さな教室をイメージしていましたが、そんなこともなく、明るい学校で、先生と子どもたちが頑張って勉強していました。籍を残したままで、分級で学ぶので、スウェーデンでその昔あった、「リソース学校」と呼ばれる学校によく似ていると思いました。スウェーデンの場合、入所という形はとりませんが、籍を残し、元の学校に戻すことを目的としているというところでは似ています。ただ、なかなか元の学校に戻れない、戻せないという問題が出てきて、リソース学校そのものが問題視されてしまったスウェーデンの現状を伝えると、同じような状況がなきにしもあらずだと。
本校とはあまり交流がないそうで、分級は分級で、年間を通じて様々な行事を行い、子どもたちが前向きに問題と向き合いながら、学習している姿が見えました。先生方は、心理的な問題を抱えた子供たちということで、難しいことも多い中、頑張っていらっしゃるのだと思いました。
スウェーデンでも、引きこもりや不登校の子が増えていることは、問題になっています。こういった施設は現実的ではないにしても、専門的なケアと生活指導を一体化させた方法を家庭と融合させて行えれば、何かしらの糸口が見えるのではないかと感じた訪問でした。