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7月, 2016の投稿を表示しています

痛ましい障がい者襲撃事件。。。

 テロや襲撃事件など、痛ましい出来事が頻繁に起こるようになり、自分の気持ちがまとまらないことが多々あり、そういった事件に関してブログで書くことを控えてきました。しかし、今回の日本での出来事には、特別支援教育に関わり、障がいを持った人々と多く関わってきたものとして、大きなショックを受けました。  何よりもまず、亡くなられた19人の方のご冥福と、今も病院で治療を受けている方たちのご回復を心よりお祈り申し上げます。  スウェーデンの夜中に入ってきたこのニュースをツイッターで読んだ時は、信じられず、最初は読み流してしまいました。あまりにもありえないことだと。朝方、この事件が本当に起こったことだと、日本とスウェーデンのサイトで知りました。朝のスウェーデンのニュースでもトップニュースで伝えられていました。アメリカで起こった同性愛者に対する襲撃事件、ヨーロッパで頻繁に起こるテロ事件、そして、日本の障がいを持った方たちを襲った今回の事件。世界は、どこに向かっているのだろうかと、朝から考えてしまいました。    事件を起こした男性は、この施設で働いていた元職員と報道されています。実際に障がいを持った方たちと接した人が、このような事件を起こしたことに、私は驚きが隠せません。この施設には中度から重度の障がいを持った方が多く入所されており、年齢も高齢の方が多いようで、日常生活は大変なことも多かったと想像ができます。でも、ともに時間を過ごし、どんな難しさを抱えている人でも、同じ人間であるということを感じられなかったのだろうかと。。。      この事件により、いつもとは違う施設に様子に戸惑う障がいを持った方たちがいたのではないか、施設の職員の方は、自分たちもショックを受けながら、どうやって対応に当たっているのだろうか、今後心のケアはされるのだろうかなど、いろいろと考えます。まとまりのない文章でごめんなさい。  

やっぱり家族が面倒を見るスウェーデンの介護問題

 「 スウェーデンの老人ホームの種類とは? 」と「 スウェーデンの老人ホームの変遷 」の続きです。老人ホームのあり方が変わり、在宅介護という考え方になり、老人ホームに入るのが難しくなってきた近年、スウェーデンでも、かなり多くの娘や息子が親の介護をしているという現状が明らかになりました。  ストックホルム大学のペトラさんが行った研究結果によると、 すべての男性と女性の四人に一人が、どちらか片方の親の面倒を見ている。 中年の男性と女性のどちらも同じくらい親の面倒を見ているが、女性の方がネガティブな影響を受けることが多い。 女性(娘)で48%、男性(息子)で27%が、精神的に辛いと感じ、女性(娘)で27%、男性(息子)で16%が、仕事に集中できないと回答。 男女共に7%の人が、介護のために労働時間を短縮し、1%の人が仕事を辞めた。  1990年代の大きな改革で在宅介護が推進されたことによる社会の変化が、彼女の研究で明らかになりました。それまでの研究結果では、女性が親の面倒を見るというのはありましたが、この研究では、男性(息子)が今までよりも多く介護の責任を持つようになったとあります。しかしながら、年老いた親は、息子や娘の力を借りることを望んでおらず、それよりは老人福祉を利用したいとあります。その昔は、スウェーデンの個人社会の所以で多くの人がそう思うのだろうと思ってきましたが、少ない私の日本の情報でも、日本でも同じような傾向があるということで、どんなに血の繋がった親子でも面倒をかけたくないという気持ちは同じなのだろうかと考えさせられます。  ホームヘルパーさんの利用で在宅という形が増え、娘や息子たちに加え、友人たちや隣近所の力を借りている人も多いようです。親の介護の責任を持ち、いろいろと手伝いをしている人は、私の周りにも多いのですが、研究結果にもあるように、ネガティブな影響を与えている場合も多いようです。興味深い研究結果がもう一つ出ていて、ウメオー大学のオーサさんによれば、勤務時間を短縮したりして親の面倒を見ていて、もうダメだとなって、老人ホームにやっと入れたとしても、罪悪感を感じて、精神的にストレスを感じる人が多いということでした。この結果、ちょっと意外でした。親は望んでいるのだし、子供も大変だったのだから、やっと入れてよかったとならないと...

スウェーデンの老人ホームの変遷

 前回の「 スウェーデンの老人ホームの種類とは? 」の続きで、今日は、スウェーデンの老人ホームの歴史を少し振り返ろうかと思います。 1970年代 それほど介護の必要でない高齢者向けにある程度のサービス付きの住居を提供する目的で、高齢者用住居施設が多く建設された。 ホビールーム、レストラン、図書室といった共有スペースが確保されていた。 自分でできるうちは自分で行い、ヘルパーさんなどの介入度は自分で決め、さらに介護が必要となった時には、建物内に職員がすでにいた。 1980年代 新しい社会福祉の法律が施行され、ストックホルムに「サービスホーム」という住居形態が試された。 1990年代 老人ホームの改革が行われた。老人福祉に関わる責任がコミューンに移行し、「 できる限り長く自宅で暮らすように 」という方向になった。 サービスホームに入所する人は、介護が必要な何か特別な理由がいるようになった。 サービスホームに入所しても、高齢者が住んでいたコミューンや責任地域がその後にかかる経費を持つという形をとるようになった。 2000年代 「在宅介護」の時代。個人の家で介護が行われるようになり、ホームヘルパーが多く投入された。サービスハウスは、安心ホームやシニアホームへと変わった。  ざっと書かれていただけですが、大まかな流れはわかります。1970年代のように、わりと元気なうちから老人ホームに入っていると、家で暮らしたいという思いがあっただろうと思うし、現在のように老人ホームに入るのがものすごく難しくなってくると、老人ホームの良さが見直されるのだろうと思います。在宅からいつホームに移るかは、個人の置かれた状況によって大きく変わってくると思います。早い段階でも老人ホームを希望する人がいれば、入所できるようなシステムがあれば良いと思います。新聞記事の中に登場するご老人も2名ともストックホルムの中心部にある老人ホームに入所できて本当に満足しているとあります。一昔前のように老人ホームに入れられたという感じの印象は全くなく、入れた人は本当にラッキーだというのが、印象的です。  今後新しい取り組みとして上がっているのが、高齢者だけに対応した地域診療所がストックホルムに幾つかできるようです。20カ所程度とありますが、75歳以上の...

スウェーデンの老人ホームの種類とは?

 時間があるので、ためてあった新聞記事を読んで片付けています。ブログに書くのもあれば、さらっと読んで捨てるものもあります。今度のテーマは、老人福祉です。記事を読んでいて、まず気になったのが、いわゆる老人ホームの種類です。2016年3月現在の形をまとめていこうと思います。  スウェーデンには、老人のための住居というと、まず、大きく二つに分けることができます。一つ目は、社会福祉の法律によって認められた場合に入れるホームで、もう一つは、法律など関係なく、個人で順番待ちに並び入ることができる住居になります。それぞれに、また複数のタイプの住居があります。 グループ1:法律適用で入れる住居 老人ホーム(Äldreboende):24時間職員がいる、いわゆる老人ホーム。一度入所すると理由がない限りは、そのまま最後の時まで住むことになります。自分の家具などを持ち込むことができ、部屋が与えられます。入所できる人は、かなり介護の必要なレベルの老人になります。入所するのは難しく、入ってから半年から1年で亡くなる人が多いとも聞いています。 サービスホーム(Servicehus):各自自分のアパートに住むのですが、ホーム内に職員がいるのが大きな特徴です。ホームヘルパーを利用して、必要な介護を得ることになります。サービスホームの数が減っている現状では、入れる方は、アルコールや薬など何らかの依存症であったり、心の病にかかっていたりするなど、老人で何らかの大きな問題を抱えていることが前提のようです。 短期入所施設/ショートスティホーム(Korttidsboende):ある一定の決められた期間だけ入所できる施設で、病院に入院した後に短期で入所したり、介護者の休養の間入所したりします。職員は24時間体制。 プロフィールホーム(Profilboende):例えば、65歳以下の認知症の方のための老人ホームといったような、特別なプロフィールを持った老人ホーム。 グループ2:個人で自由に入れる住居 シニアホーム(Seniorboende):たいていのアパートグループや会社が持っている、55歳以上の人だけが入れるアパート。場所が街の中にあったり、共有スペースがあったり、アパートの作りや大きさが老人向けになっていたりするアパートになります。 安心ホーム(Trygghetsbo...

ストレス軽減を目的とした新しいスウェーデンの労働環境法

「 増加の一途をたどるストレスによる病休 」と「 病気でも仕事をするスウェーデン人増加中 」の続きです。2016年3月に施行された新しい労働環境に関する法律があります。この法律ができるぞ、できたぞっという時は、私の職場でも話題になりました。今までよりも、雇用主の義務が厳しくなるので、管理職は不安そうだったし、職員は、ストレスフルな労働環境に対する文句が溜まっていたので、今だという感じでした。  どんな新しい決まりができたかというと、 仕事の責任や量に関して:雇用主は仕事内容とそれに対する条件を整えることと。例えば、仕事の量を減らす、優先順位を変える、仕事の内容に変化をつける、人員を増やす。 労働時間:雇用主は、仕事の計画段階で健康に影響を与えないように配慮しなければならない。休養/回復の可能性を含んだものとする必要がある。 いじめ:雇用主は、職場での差別的、虐待的な行為を許さないことを明確にし、揉め事やいじめなどが起きないように対策をしなければならない。 というものです。スウェーデンには、こうした労働環境に関する文書が80ほどあり、その中の一つになります。ストレスによって病休を取る人が増え、特に長期で取る人が増え、その経済的なコストが政府の予算を圧迫してきているために、雇用主がもっと責任を持って対策を打たないと、長期病気休暇の際の雇用主の負担も増やすぞと半ば脅しをかけながらの今に至ります。  この法律が学校関係で、どのように影響を与えるかというと、学校は毎年度生徒が変わるし、労働の条件が変わってくるので、上記の項目を一度見直したらおしまいというわけではなく、常に見直していく必要性があるとあります。雇用主に対する義務が明確になったわけですが、もちろん働いている人々にも不満や心配ごとを感じた時に上に伝える必要があるともあります。相互関係が重要ですし、学校などは上は現場の状況を逐一知ることはできないので、何かあれば、伝えることが重要であると思います。  こういった法律によって、どのくらい職場が改善されるものか興味があります。確かに組合関係の人は上に強く言う場面はありますが、どのくらい効果を発揮するんだろうかと。今回の記事では、違反の場合については書かれていないので、今まで通り、労働環境の問題は労働環境局に訴え、その後罰金という...

病気でも仕事をするスウェーデン人増加中

 病気休暇というシステムが確立されているスウェーデンだからこそ、できる調査だなと思った記事があります。見出しは、「病気でも仕事に行く理由」。「体調が悪いので、病休を利用して仕事を休むべきだ」と思いながら出勤したことが、ここ12ヶ月で1回もしくはそれ以上ある人の割合が載っていました。         男性      女性 2007年     67%     73% 2009年     66%     69% 2011年     68%     73% 2013年     67%     76% 2015年     66%     75%  数字自体にそれほど推移が見られませんが、女性の方が高いです。スウェーデンは病休が日本よりも取りやすいですし、文化もシステムも違うので比べることなどできませんが、結構、みんな無理して仕事に行っているんだなあというのが私の印象。。。みんなもっと、パッと休んでいるのかと思っていました。もちろん、偏見です。。。こっちで働くようになり、朝出勤して、あの人病休、あの人看護休暇なんて、聞かされてきたので、みんなよく休むなあという思いが染み込んでいます。。。    しかしながら、統計では、10人に7人は体調がイマイチでも出勤していますし、10人に4人は休みの日でも上からの連絡には対応できるように求められていると感じているとあります。また、多くの人が、できる人であり、生産性のある人であることを求められていると感じているようです。病休は30〜49歳の女性に多く、これらの人々の8人に10人は、病気でも仕事に行ったことがあると答えています。これらの女性は、幼稚園や学校、学童で働いていることが多く、そうすると、職場で病気をもらってくることが多いのが原因ともあります。医療関係や老人福祉関係で働いている人も多いですし、小さな子どもがいる年齢でもあると思うので、仕事と家庭の両立をしながらというのは容易ではないと想像できます。  病気でも仕事に行く理由幾つかあるのですが、その一つ目が、自分がいないと代わりが必要になる仕事というのがあります。病院や学校の先生などもそうがそうです。ある一定の役職についている方は、病気で休むと仕事が滞ったり、代わりが見つけにくかったりするため、とりあえず、出勤するという人が多いそうです。うちもこれあるかも...

増加の一途をたどるストレスによる病休

 何回か第一教諭について書きましたが、テーマを変えて、スウェーデンにおける現代の心の病について書いていこうと思います。  スウェーデンでも、ストレスが健康に与える影響が問題となっており、ストレスを原因とする病気休暇の増加が社会問題となっています。これについて、Visionという組合が行ったアンケート結果を行いました。  まず、数字で見てみると、 ストレスによって病休となった社員によって、雇用主にかかる経済的負担は、最低でも150,000スウェーデンクローネ(日本円で約200万円ほど)。 病休が長引き、燃え尽き症候群やそれに伴ううつ病となった場合、雇用主にかかる経済的負担は、最低でも500.000スウェーデンクローネ(日本円で約650万円ほど)。  ストレスによって病休となる人が年々増加をし、その増加率は驚くほど高いです。男女比で見ると、男性より女性の方が高く、職種としては、心理学者やセラピスト、ソーシャルワーカーや学童の職員などが最も多いとあります。これらの職種は、福祉に関わっており、学歴も要求されるし、日常的に多くの人々接していかなければならず、これらの職種では、女性のみならず、男子も多いということでした。  記事には直接書かれていませんが、私でも想像できる原因としては、福祉の分野はここ数年効率化が強く求められているし、移民や難民の増加に対応するのはこの分野であり、仕事量が増えているのだろと思います。私の知り合いでもソーシャルワーカーだった方が、あまりの仕事の多さと無理難題に転職しました。そういう状況で真面目にやっていれば、きっとストレスが原因で病気になってしまうのだろうということは、想像に難くありません。  記事の中では、福祉に関わる職種で多いという結果に、この状況を改善しなければ、福祉の質が落ちていってしまうだろうとあります。この状況を見て、2016年3月末に導入された新しい法律があり、この法律によってなんとか状況が上向きならないかと多くの方が思っているようです。その法律などについて、次で見ていきたいと思います。 読んだ新聞の記事:"Jobbstressen börjar bli ett allvarligt hot mot vår hälsa", DN, 2016-03-31

第一教諭に与えられた時間は?

 「 スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状 」と「 他の先生から批判が多いキャリアアップ制度 」の続きです。読んだり書いたりしていると、今年悩んだことなどが整理できてきました。今回は、実際に第一教諭として働いている人の視点から少し書こうと思います。  私もだけど、何がこの改革で足りなかったかというと、これに尽きます。 「時間」 です!今回のキャリアアップ制度は、お給料の上乗せの額も決まっていたし、その資格も大まかに決まっていたし、大体の数も決まっていたけれど、実際の仕事内容は大雑把で、しかもそれに対する労働時間に指針はあっても決まりはなかったのです。そのため、実際に働いている第一教諭たちは、したいこと、できること、必要なこと、とにかくたくさんあるけれど、時間がないのです。私もですが、それまでの仕事が減らされたわけではないので、その仕事はそのまま残り、その上、仕事が加算されました。そうなるとどうしても時間が足りない。  一応、授業を行う時間をそれまでの80%にするといいとか、意見はありますが、実際の統計は次の通り。 第一教諭の仕事に当てられた労働時間の割合 全労働時間の 0−4%     41%       5−14%    23%       15−24%   21%       25−34%   2%       35−44%   1%       45−50%   1% 知らない、わからない    10% (943人の第一教諭にアンケートして回答数は67%)  アンケート結果を見れば一目瞭然といった感じです。ちなみに私は0%。時間の方は与えられませんでした。最初の頃は、同僚から「お金もらっているんだから」と言われ、結構傷つきましたが、第一教諭の集まりではそういうこと言われている人が結構いると知り、ちょっと納得。時間は与えられていないのに、他の人と同じように仕事をした上で、プラスの仕事をした結果を見せないといけないというプレッシャーを感じる第一教諭も多くて、「5000クローネ分働いたって見せないと」という声も聞かれます。  私はというと、一応、言われた仕事をこなし、それに加えて、うちの生徒にとって必要と思われる内容を実現しようと奔走し、ほかの先生から、「いつ、ああいう資料作っているの」と聞かれ、ほぼ時間...

他の先生から批判が多いキャリアップ制度

 前回の「 スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状 」の続きです。キャリアアップ制度が導入されてから数年たち、六千人の先生に対して制度をどう思うかアンケートが行われました。その結果が教員組合の新聞にちょこっと載っていたので、紹介します。 半分以上の先生が、キャリアアップ制度に対して、とても批判的、多少批判的である。 半分以上の先生が、キャリアアップ制度は第一教諭や講師になった人のみに利益があると思っている。 多くの先生は、キャリアアップ制度は、お給料に大きな差が出るので、教員のグループには良くないと思っている。  やっぱり、他の先生はあんまりよく思ってないんでしょうね。その理由には、やっている内容が不透明で、他の先生にあまり伝わっていないというのも大きいように思います。コミューンの教育担当科や管理職がしっかりと目的を持って第一教諭などを有効に使っているかというとそうではないところが多いので、上からも不透明で、下には伝わっていないという現状があるように思います。このキャリアアップ制度は、役職に就いた人には手当が出るので、こう言った役割とお給料が直結したタイプの改革はあまり良くないとも言われています。  個人的には、スウェーデン社会にある平等意識が深く関わっており、同じ仕事なのに、数名の人がキャリアを積み、お給料もグンと上がることに対して、よく思っていない人が多いのだろうと思ってしまいます。たまに同僚から言われる言葉に、深くは傷つきませんが、勘ぐってしまうのも事実だし。  このキャリアアップ制度がうまく浸透しなかった理由は幾つかあると思うのですが、その中でも、特に実際に働いている第一教諭側から聞かれる大きな問題を次で取り上げたいと思います。 読んだ記事:"Kritik mot förstelärare", Lärnarnastidning, nr.2 2016

スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状

 何回かに分けて、私が2年前からなっている「Förstelärare(フォシタラーラレ)」について書こうと思います。名称は、前半部分の「Förste」が一番という意味で、後半は先生の意味の「lärare」になります。なので、Förstelärareになれなかった人のことを、「Andralärare(アンドララーラレ)」と言ったり、できる先生ではなく「Sistelärare(システラーラレ)」と呼び、あまり力のない先生にこそ、力をつけさせるべきであるという皮肉も聞かれます。そのため、この名称については、問題が多いという人も多く、名前を変えるべきだという声もあります。  スウェーデンのキャリアアップ制度は、前にも書いたと思うのですが、2種類あります。私がなっているのが、第一教諭で教員免許を持っていることが条件で、その他の条件はコミューンによって多少変わりますが、私の場合は、4年以上教員としての良い実績があること、特に生徒の成績を伸ばした結果がることというのが条件でした。もう一つは、「Lektor(レクトル)」と呼ばれるもので、最低でもマスターの資格を持っている講師に当たる職業です。このLektorレベルになると、大学でも働けるので、実際に学校で働いている人に私はまだあったことがありません。特別支援学校に限っては、十人いないと聞いています。そのため、ここでは、第一教諭についてのみ書こうと思います。  このキャリアアップ制度の実態を、実際に働いている人々にアンケートし、(私も参加しました!)それをまとめたものが出されました。その結果をもとに講演会が行われ、その時の資料より、少し現状をまとめてみました。 1、スウェーデンのキャリアアップ制度の目的は? より多くの生徒が国の到達目標に到達することができるように、その可能性を増やしていく。 上手な教師に、教師として授業を行いつつ、キャリアアップの可能性をもたらす。  最初の目的は、私もよく聞かされることで、生徒の持っている力を最大限に伸ばすためにはどうしたら良いのかというのが私たちの大きな課題、仕事になります。2番目の目的は、スウェーデンでは教員を辞めていく人が多くいて、その原因が、ある程度年数を重ねると、キャリアアップする方法がなかったために、転職して学校去ってしまう人が出てきたためとされています。第...

デンマークの特別支援教育を学ぶ

 北欧やスカンジナビアとひとくくりにされがちですが、結構違いのある北欧諸国。スウェーデンの教育は、それなりに詳しいつもりですが、デンマークやノルウェーの教育についてはあまり知りません。フィンランドは、よくスウェーデンとの引き合いに出されるので、デンマークやノルウェーよりは知っているかも。  そんなお隣の国、デンマークから、デンマークの特別支援学校で働いている日本人の方が、遊びに来てくれました。連絡を頂いた時は、「えー、いるんだー」と驚きと喜びでいっぱいになり、メールですでに質問してしまいました。主人が、「そんなによく話すことがあるねえ。ブラーブラーブラー」とか言ってましたが、久しぶりに、日本語をたくさん話し、自分の興味のあることを同じように興味を持って話し、聞いてくださる方との楽しい時間を過ごしました。  デンマークの実情を聞き、驚いたことは、 「特別支援学校」という学校区分がなく、インクルーシブが進んでいると聞いていたが、そうではなかったこと。 特別支援学校が、日本と同じように障害種別であったこと。スウェーデンは、障害種別は、基本的に聾学校のみです。 給食がなかったこと。その理由が、どうも移民の増加にあること。 特別支援学校で働く職員の職種が、スウェーデンより多くあること。デンマーク語や数学を教えることができる先生、芸術系の科目などを教える先生、アシスタントに近い職員、毎日所属が変わるフリーに近い先生に加えて、2年で習得できる1科目のみを教える先生もいるようで、現在のスウェーデンよりも職種が多くありました。 クラスに複数先生がいること。これはいいなあと思いました。私は、先生一人にアシスタントがつくので、なかなか教育的方針を詳しく話せる人がいません。 うちの学校よりも、トレーニングをしっかり行っていたこと。学校がTeacchを採用しているということで、うちの学校よりも学校の方針に統一性がありました。うちは、重度の障害を持った子が通う学校で、その障害は様々で、方針も先生によってかなり変わります。教材の話にトレーニング、アセスメントの話などを色々きいて、アドバイスを的確にくださるので、すごく感動してしまいました。いろいろ行き詰まっていたので、「ああ〜間違ってなかったんだ」とか、「そうか、そうすればいいんだ」とか、本当に勉強になりました。 ...

スウェーデンの学校の現状を変える組合の案

 昨日の「 スウェーデンの教員組合の組合長のインタビューより 」の続きです。記事には、スウェーデンの学校の現状を変えるための4つの明確な案が提案されていました。 1、教育面で指導力を発揮できるように、校長にさらに時間を与える。  スウェーデンの学校の校長は、教員の指導や授業の向上といった教育面で指導力を発揮するような時間は、はっきり言ってありません。管理職の仕事は、いかに経済的な予算をしっかりと守って学校運営をするかにあり、日々の仕事は、 学校の運営、特に経済面 学校の建物に関する問題 教員などの職員の確保 法律面の問題対応 などがあり、これらを他の人材が行うことによって、校長が本来の校長職である学校の運営、教育に関わることが重要であると。その通りであると思います。校長が授業をみにくるなんて、学期に1回あるかないかです。うちの学校は副校長がいるので、副校長は会議には出ることが時々あるけど、校長は姿を見せない。。。電話の対応や日々起こる問題の対応で手いっぱいの模様。ここは確かに改善の余地ありで、コミューンの教育委員会に当たる部署からもう少し、援助があってもいい気がします。 2、社会的教育員を増やし、教員の仕事をへらす。  おそらく、今後、スウェーデンで注目される教育に関わる仕事の一つが、この「社会的教育員」と直訳したけど、「Socialpedagog」と呼ばれる職業です。もう一つの注目される仕事は、先生のアシスタント。生徒のアシスタントはいるけど、今後は先生のアシスタントが増えると思います。  この社会的教育員は、生徒の社会性を育てる役割をする先生で、担任と生徒の健康に関わるチームの橋渡しとなって、様々な問題解決に尽力していくことになります。現在は、この部分を担任や、有能な特別支援教育専門員が行っており、授業以外の仕事として、生徒の面々によっては、かなり時間を取られます。グレーゾーンの子が一人でもいれば、先生は結構大変で、ソーシャルな面を見てくれる教育者が、例えば休み時間などに、適切に子供達のちょっとしたケンカなどに対応してくれて、その後の処理もしてくれたり、ケンカにならないように改善してくれたりしたら、いじめや不登校など、いろんな問題が少しずつ改善されていくように思います。 3、先生のアシスタントの導入。  上記に書きま...

スウェーデンの教員組合の組合長のインタビューより

 前回の記事「 数字で見るスウェーデンの学校教育 」の元とのなっている新聞記事には、教員組合の組合長のインタビューも載っていましたし、学校の現状を変えるための案も載っていました。余談ですが、休暇も3週間目に入り、やっと教育関係の本とか読んでも、興味深いと思えるようになりました(笑)。休暇に入った当初は、転職も考えたほど嫌気がさしていましたが、家族や友人の励ましや応援、のんびりしたことで、復調しました。いろんな人の支えに感謝するばかりです。  スウェーデンの学校教育に興味がある人ならば、珍しいニュースでもなんでもないことですが、スウェーデンではここ3年間に約9万人の教員が新たに必要になると言われています。どういう数え方をするかによって、出てくる数字が毎回違いますが、今回の新聞ではそう書かれており、パッと思ったのが、移民のためのスウェーデン語クラスや幼稚園教諭、学童などの先生を総括した数字であろうと思いました。スウェーデンには、教員組合が2団体あり、この教員組合は幼稚園などを含む、組合になる方の制限がゆるい方なので、おそらくと。  それにしても、9万人大変な数です。いろんな要因が考えられますが、まずは人口増加でしょうね。ベビーブームと言われなくなり、その人口増加が一般化した今、年々人口が着実に増加しています。そして、移民、難民の増加。ちらっと読んだ新聞記事で、イギリスのEU離脱が決まってから、スウェーデンに帰化したイギリス人が増加したとか。今後のEU情勢により、さらにスウェーデンで移民問題が起こってくる可能性があるでしょうね。そうなると、今でも移民の教育に関わる人材が問題になっているのですから、9万人でも足りなくなるかも。  インタビュー形式で書かれていた中で次に気になったのが、免許を持った教員を採用することがたいへん難しいという話。こちらでは、学校ごとの採用になるので、校長などが採用に関わりますが、募集をかけてもその資格にあった人を採用するのは至難とか。私の学校も今年は教員2名アシスタント4名新規に採用しなくていけなくて、大変でした。教員免許を持っていても教員として働いていない人もある一定数いるし、学生の中でも教員になってもいいけど、ならないという人が多くいるらしい。そういう人たちの理由としては、お給料が低いことと仕事量が多いこと。  この2点ですが...

数字で見るスウェーデンの学校教育

 今年も夏の恒例、ゴットランド島でアルメダーレン(Almedalen)と呼ばれる政治週間が始まりました。去年は母が来ていたこともあり、いつやっていたかも覚えていなかったのですが、今年は、テレビや新聞をチェックして楽しんでいます。この期間は、毎日党首演説が聞けるだけではなく、多くの団体や期間が様々な活動をするので、そちらも興味深いです。  教員組合の特集記事に現在のスウェーデンの現状が載っていたので、紹介しようと思います。*元は学校局より スウェーデンの学校教育形態別の総数 幼稚園・就学前施設:9774園、うち2668園が民営 義務教育学校・小中学校:4845校、うち827校が私立 高校:1303校、うち443校が私立 スウェーデンの学校教育形態別の児童・生徒数 幼稚園・就学前施設:493,609人 就学前クラス・6歳児教育:116,312人 義務教育学校・小中学校:985,620人 一般の義務教育の特別支援学校:9774人 特別な特別支援学校:553人 高校:323,141人 特別支援学校の高等部:6410人 成人のための特別な教育:4245人 コミューンの成人教育:216,251人 外国人のためのスウェーデン語教育:124,750人 教員一人に対する児童・生徒数(2015年秋学期) 幼稚園・就学前施設:先生一人に対して、子ども5,2人 義務教育学校・小中学校:先生一人に対して、子ども12,2人 高校:先生一人に対して、生徒11,9人 児童・生徒一人あたりにかけた教育予算(2014年) 幼稚園・就学前施設:133,500スウェーデンクローネ 学童保育:34,900スウェーデンクローネ 義務教育学校・小中学校:97,700スウェーデンクローネ 一般の義務教育の特別支援学校:488,000スウェーデンクローネ 高校:112,400スウェーデンクローネ 特別支援学校の高等部:398,600スウェーデンクローネ コミューンの成人教育:45,200スウェーデンクローネ 外国人のためのスウェーデン語教育:39,000スウェーデンクローネ 自分で調べようと思えばできるけど、こうして書かれていると一目瞭然でわかりやすいです。民営化が進んだと言っても、民営の幼稚園は全体の約...

ダブレット子守はそんなに悪くない?!

 久しぶりの連続投稿です。あまり天気が良くない上に、出かける予定もないと読書が進みます。  6月初旬に 「Att låta surfplattan vara barnvakt är okej:タブレットに子守をさせても大丈夫」 という新聞記事がありました。多くの親たちは、タブレットや携帯で子どもを遊ばせることに罪悪感を感じる場合が多いがそんな必要はないということでした。疲れ切った土曜日の朝、もう1時間寝るために、子どもにタブレットを渡すのは悪いことでもなんでもないと。  この研究を行ったのは、Malin Bergström(マーリン・バリィストローム)さんで国のメディア研究機関と共に子どもを持つ親たちのIT使用を討論するために行ったそうです。結論を言えば、きちんとルールを決めて使用すれば、問題ないということだと思います。新聞に書かれていた使用に関する親へのガイドは以下のとおり。 保護者として子どものメディアの利用に対してできる援助(元は、Rikshandboken i barnhälsovårdより) 何をやったのか、その経験を共有する 何を思ったのか、その考えを共有し、何を見たのか、やったのか、経験したのか、その内容を言葉で示してあげる 子どもが何を学んだか、それを他の人に伝えられるかといった知識を共有する 心配事や疑問は、信頼の置ける人に聞くように教える 指導や説明を受けるようにする メディアや情報に対して批判的な姿勢を身につけさせる メディアがどのようなものか教える 広告の目的を教える 利用する内容を制限する メヂィアの利用時間を制限し、他の活動もするようにする  子どもがタブレットで何をしたのか、そのやっていることややった内容に興味を示し、会話をすることが重要であるとも書かれています。親として、メディアの正しい利用の仕方を教えていくことは、現代の親にとっての大きな課題であると思います。これからの世代は、こうしたメディアとうまく付き合っていけなければ、仕事も難しいし、お金の使用も難しいし、余暇活動も難しいし、社会活動も難しいという時代になっていくと予想されます。小さい頃から、自然な形で触れ、うまく付き合っていく方法を教えていくことが重要なのであろうと思います。記事にも、全面的に禁止するよりも、タブレットフリーゾーンやフ...

ストックホルムのおすすめカフェ:特別支援教育編

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 休暇に入り、あの忙しかった生活は存在しなかったかのように、のんびりした毎日を送っています。ブログの更新頻度がグーンと減ったここ1年ほど、何度かもうやめようかと思いましたが、ブログを通じていろんな方から連絡をもらえるので、やっぱり続けようかと。そんな出会いが今回もあり、その方と一緒に障害を持った方が働いている、デイケアセンターのカフェに行ってきました。ということで、ストックホルムのおすすめカフェ、特別支援教育編として、紹介したいと思います。  場所は、ストックホルム中央駅から歩いて20分ほど、地下鉄やバスを利用することも可能な、ストックホルムの人々の憩いの場、Vasaparken(ヴァーサ公園)内にあります。デイケアセンターと訳して良いのか、いまいちわかりませんが、こうした成人の障害を持った方たちのための施設をスウェーデン語では、Dagilga verksamheter(ダーギリガ・ヴァルクサムヘテール、日々の活動)と呼び、いろんなタイプがあります。ここは、カフェの運営と庭仕事、音楽などの芸術グループとあるようです。年度末に前年度の卒業生が通っている施設に面談に行ったのですが、そこは犬の幼稚園がありました。日中犬を預かって散歩をさせたりする施設で、人気があるタイプです。そこは、ガラス製品を作成するグループなどもありました。こうした施設では、特色を打ち出して、できる限り、「仕事」をするように構成されています。  カフェの名前は、「Café Katarinahuset、カフェ・カタリーナヒューセト」。ヴァーサ公園は、サッカー場もある大きな公園で、その一角の古い建物にありました。  中はこんな感じ。可愛らしい、スウェーデンによくあるタイプのカフェです。ランチは、2種類から選べます。メインにサラダ、パンとコーヒーがついて80クローネ。  言われなければ、ここで障害を持った方が働いているとはわからないかもしれません。職員もいるので、障害を持っている方はおそらく5から6名ほどだと思います。知っている人なら、わかるかもしれないのが、こんな絵の表示がちょくちょくしてあることでしょうか。  これは、働いている人たちに使うものがずらっと並んでいました。ナイフはナイフ、フォークはフォークなどの絵もありました。  いろんな方から問合せを頂くので、普通のカフェ...