2016年7月26日火曜日

痛ましい障がい者襲撃事件。。。

 テロや襲撃事件など、痛ましい出来事が頻繁に起こるようになり、自分の気持ちがまとまらないことが多々あり、そういった事件に関してブログで書くことを控えてきました。しかし、今回の日本での出来事には、特別支援教育に関わり、障がいを持った人々と多く関わってきたものとして、大きなショックを受けました。


 何よりもまず、亡くなられた19人の方のご冥福と、今も病院で治療を受けている方たちのご回復を心よりお祈り申し上げます。


 スウェーデンの夜中に入ってきたこのニュースをツイッターで読んだ時は、信じられず、最初は読み流してしまいました。あまりにもありえないことだと。朝方、この事件が本当に起こったことだと、日本とスウェーデンのサイトで知りました。朝のスウェーデンのニュースでもトップニュースで伝えられていました。アメリカで起こった同性愛者に対する襲撃事件、ヨーロッパで頻繁に起こるテロ事件、そして、日本の障がいを持った方たちを襲った今回の事件。世界は、どこに向かっているのだろうかと、朝から考えてしまいました。

 
 事件を起こした男性は、この施設で働いていた元職員と報道されています。実際に障がいを持った方たちと接した人が、このような事件を起こしたことに、私は驚きが隠せません。この施設には中度から重度の障がいを持った方が多く入所されており、年齢も高齢の方が多いようで、日常生活は大変なことも多かったと想像ができます。でも、ともに時間を過ごし、どんな難しさを抱えている人でも、同じ人間であるということを感じられなかったのだろうかと。。。

 
 
 この事件により、いつもとは違う施設に様子に戸惑う障がいを持った方たちがいたのではないか、施設の職員の方は、自分たちもショックを受けながら、どうやって対応に当たっているのだろうか、今後心のケアはされるのだろうかなど、いろいろと考えます。まとまりのない文章でごめんなさい。




 

2016年7月24日日曜日

やっぱり家族が面倒を見るスウェーデンの介護問題

 「スウェーデンの老人ホームの種類とは?」と「スウェーデンの老人ホームの変遷」の続きです。老人ホームのあり方が変わり、在宅介護という考え方になり、老人ホームに入るのが難しくなってきた近年、スウェーデンでも、かなり多くの娘や息子が親の介護をしているという現状が明らかになりました。


 ストックホルム大学のペトラさんが行った研究結果によると、


  • すべての男性と女性の四人に一人が、どちらか片方の親の面倒を見ている。
  • 中年の男性と女性のどちらも同じくらい親の面倒を見ているが、女性の方がネガティブな影響を受けることが多い。
  • 女性(娘)で48%、男性(息子)で27%が、精神的に辛いと感じ、女性(娘)で27%、男性(息子)で16%が、仕事に集中できないと回答。
  • 男女共に7%の人が、介護のために労働時間を短縮し、1%の人が仕事を辞めた。


 1990年代の大きな改革で在宅介護が推進されたことによる社会の変化が、彼女の研究で明らかになりました。それまでの研究結果では、女性が親の面倒を見るというのはありましたが、この研究では、男性(息子)が今までよりも多く介護の責任を持つようになったとあります。しかしながら、年老いた親は、息子や娘の力を借りることを望んでおらず、それよりは老人福祉を利用したいとあります。その昔は、スウェーデンの個人社会の所以で多くの人がそう思うのだろうと思ってきましたが、少ない私の日本の情報でも、日本でも同じような傾向があるということで、どんなに血の繋がった親子でも面倒をかけたくないという気持ちは同じなのだろうかと考えさせられます。

 ホームヘルパーさんの利用で在宅という形が増え、娘や息子たちに加え、友人たちや隣近所の力を借りている人も多いようです。親の介護の責任を持ち、いろいろと手伝いをしている人は、私の周りにも多いのですが、研究結果にもあるように、ネガティブな影響を与えている場合も多いようです。興味深い研究結果がもう一つ出ていて、ウメオー大学のオーサさんによれば、勤務時間を短縮したりして親の面倒を見ていて、もうダメだとなって、老人ホームにやっと入れたとしても、罪悪感を感じて、精神的にストレスを感じる人が多いということでした。この結果、ちょっと意外でした。親は望んでいるのだし、子供も大変だったのだから、やっと入れてよかったとならないところに人間の奥の深さが見える気がしました。


 彼女の研究では、現在のシステムでは、当然のことながら、入所した老人に対してはいろいろケアが行われますが、家族や親類には何もケアが行われていないことが問題であるとして、罪悪感の緩和を目的とした「健康援助のためのトークセラピー」を行ったとあります。研究にか変わった看護師からは、家族の置かれた状況を客観的に理解する良い機会となり、効果があったとあります。


 歳をとったら、国が面倒を見るというのが当たり前であったスウェーデン、社会が変わり、人々がそれに合わせていけれればいいのですが、そんなに簡単ではないのだろうと思います。こうした研究結果により、新たな老人ホームの形が生まれたり、介護者のケアに目を向けられたりするようになり、高齢者にとっても介護者にとっても良い形が生まれればと思います。


読んだ新聞の記事:"Vuxna barn tar över omsorgen", DN, 2016-02-10, "Samtal får anhörigas skuldkänslor att lätta", DN, 2016-06-22

2016年7月22日金曜日

スウェーデンの老人ホームの変遷

 前回の「スウェーデンの老人ホームの種類とは?」の続きで、今日は、スウェーデンの老人ホームの歴史を少し振り返ろうかと思います。

1970年代

  • それほど介護の必要でない高齢者向けにある程度のサービス付きの住居を提供する目的で、高齢者用住居施設が多く建設された。
  • ホビールーム、レストラン、図書室といった共有スペースが確保されていた。
  • 自分でできるうちは自分で行い、ヘルパーさんなどの介入度は自分で決め、さらに介護が必要となった時には、建物内に職員がすでにいた。


1980年代

  • 新しい社会福祉の法律が施行され、ストックホルムに「サービスホーム」という住居形態が試された。


1990年代

  • 老人ホームの改革が行われた。老人福祉に関わる責任がコミューンに移行し、「できる限り長く自宅で暮らすように」という方向になった。
  • サービスホームに入所する人は、介護が必要な何か特別な理由がいるようになった。
  • サービスホームに入所しても、高齢者が住んでいたコミューンや責任地域がその後にかかる経費を持つという形をとるようになった。

2000年代

  • 「在宅介護」の時代。個人の家で介護が行われるようになり、ホームヘルパーが多く投入された。サービスハウスは、安心ホームやシニアホームへと変わった。



 ざっと書かれていただけですが、大まかな流れはわかります。1970年代のように、わりと元気なうちから老人ホームに入っていると、家で暮らしたいという思いがあっただろうと思うし、現在のように老人ホームに入るのがものすごく難しくなってくると、老人ホームの良さが見直されるのだろうと思います。在宅からいつホームに移るかは、個人の置かれた状況によって大きく変わってくると思います。早い段階でも老人ホームを希望する人がいれば、入所できるようなシステムがあれば良いと思います。新聞記事の中に登場するご老人も2名ともストックホルムの中心部にある老人ホームに入所できて本当に満足しているとあります。一昔前のように老人ホームに入れられたという感じの印象は全くなく、入れた人は本当にラッキーだというのが、印象的です。


 今後新しい取り組みとして上がっているのが、高齢者だけに対応した地域診療所がストックホルムに幾つかできるようです。20カ所程度とありますが、75歳以上の高齢者のみが登録できるようで、それによって、週末医療なども含めて、より適切で素早い対応をしていくことを目的としているようです。


 この間ニュースを聞いていたら、ホームヘルパーさんに死への恐怖を話してもなかなか真剣に受け取ってもらえない、話を聞いてもらえないということを話されている老人の方がいました。難しい問題であると思います。研修なども重要であると思いますが、それ以上に、その人自身が死に対してどのように考えているか、どのくらい経験しているかなどが関わってくるので、なかなか短時間でそういった質問に適切に答えられるという人は少ないのではないかと思います。高齢者を対象とした診療所が、今後ヘルパーさん達がカバー仕切れない部分も関わっていければ良いようにも思います。


読んだ新聞の記事:"Äldre&hemma, Äldre i Stockholm Del3: Här kan de äldre hålla gnistan vid liv", DN, 2016-03-16 

2016年7月21日木曜日

スウェーデンの老人ホームの種類とは?

 時間があるので、ためてあった新聞記事を読んで片付けています。ブログに書くのもあれば、さらっと読んで捨てるものもあります。今度のテーマは、老人福祉です。記事を読んでいて、まず気になったのが、いわゆる老人ホームの種類です。2016年3月現在の形をまとめていこうと思います。


 スウェーデンには、老人のための住居というと、まず、大きく二つに分けることができます。一つ目は、社会福祉の法律によって認められた場合に入れるホームで、もう一つは、法律など関係なく、個人で順番待ちに並び入ることができる住居になります。それぞれに、また複数のタイプの住居があります。


グループ1:法律適用で入れる住居

  • 老人ホーム(Äldreboende):24時間職員がいる、いわゆる老人ホーム。一度入所すると理由がない限りは、そのまま最後の時まで住むことになります。自分の家具などを持ち込むことができ、部屋が与えられます。入所できる人は、かなり介護の必要なレベルの老人になります。入所するのは難しく、入ってから半年から1年で亡くなる人が多いとも聞いています。
  • サービスホーム(Servicehus):各自自分のアパートに住むのですが、ホーム内に職員がいるのが大きな特徴です。ホームヘルパーを利用して、必要な介護を得ることになります。サービスホームの数が減っている現状では、入れる方は、アルコールや薬など何らかの依存症であったり、心の病にかかっていたりするなど、老人で何らかの大きな問題を抱えていることが前提のようです。
  • 短期入所施設/ショートスティホーム(Korttidsboende):ある一定の決められた期間だけ入所できる施設で、病院に入院した後に短期で入所したり、介護者の休養の間入所したりします。職員は24時間体制。
  • プロフィールホーム(Profilboende):例えば、65歳以下の認知症の方のための老人ホームといったような、特別なプロフィールを持った老人ホーム。


グループ2:個人で自由に入れる住居

  • シニアホーム(Seniorboende):たいていのアパートグループや会社が持っている、55歳以上の人だけが入れるアパート。場所が街の中にあったり、共有スペースがあったり、アパートの作りや大きさが老人向けになっていたりするアパートになります。
  • 安心ホーム(Trygghetsboende) :2008年にできた住居形態で、まだ新しいので数は少ないのですが、老人ホームに入るには元気だけど、一人もしくは自分たちで暮らすのは不安という方向けのもので、老人ホームとの大きな違いは、食事や医療などの部分が含まれていない点にあります。この安心ホームは、結構値段がするのが問題で、毎月の家賃を年金では払えない人が多く、入れる人が限られているようです。共有のスペースや食事ができるところが建物内にあるところはシニアホームと似ていますが、シニアホームよりも入る人の年代が上になるとあります。
  • 中間ホーム(Mellanboende):これが新しく今作られている、今後増えていくだろうと思われる老人のための住居になります。サービスホームに近い形で、アパートの建物内に共有のスペースがあり、食事やお茶を取ることができ、老人介護ができる職員がいる施設で、ホームヘルパーを利用しながら、暮らすことができる住居形態です。まだ数はないので、今後どのくらい増えるかはわかりませんね。



 グループ1と2では、よく似ているところがありますが、グループ1は、国からの福祉のお金が多く出て、2は自助努力というか、自分たちがもっている経済的な余力と知識でなんとかという感じがしました。スウェーデンは、こうしたシステムがちょくちょく変わるので、現状を整理してみました。引き続き、老人福祉について見ていこうと思います。


読んだ新聞の記事:"Äldre&hemma, Äldre i Stockholm Del2: Gunborg, 83, är för frisk för att få bostad", DN, 2016-03-15

2016年7月20日水曜日

ストレス軽減を目的とした新しいスウェーデンの労働環境法

増加の一途をたどるストレスによる病休」と「病気でも仕事をするスウェーデン人増加中」の続きです。2016年3月に施行された新しい労働環境に関する法律があります。この法律ができるぞ、できたぞっという時は、私の職場でも話題になりました。今までよりも、雇用主の義務が厳しくなるので、管理職は不安そうだったし、職員は、ストレスフルな労働環境に対する文句が溜まっていたので、今だという感じでした。


 どんな新しい決まりができたかというと、

  • 仕事の責任や量に関して:雇用主は仕事内容とそれに対する条件を整えることと。例えば、仕事の量を減らす、優先順位を変える、仕事の内容に変化をつける、人員を増やす。
  • 労働時間:雇用主は、仕事の計画段階で健康に影響を与えないように配慮しなければならない。休養/回復の可能性を含んだものとする必要がある。
  • いじめ:雇用主は、職場での差別的、虐待的な行為を許さないことを明確にし、揉め事やいじめなどが起きないように対策をしなければならない。

というものです。スウェーデンには、こうした労働環境に関する文書が80ほどあり、その中の一つになります。ストレスによって病休を取る人が増え、特に長期で取る人が増え、その経済的なコストが政府の予算を圧迫してきているために、雇用主がもっと責任を持って対策を打たないと、長期病気休暇の際の雇用主の負担も増やすぞと半ば脅しをかけながらの今に至ります。


 この法律が学校関係で、どのように影響を与えるかというと、学校は毎年度生徒が変わるし、労働の条件が変わってくるので、上記の項目を一度見直したらおしまいというわけではなく、常に見直していく必要性があるとあります。雇用主に対する義務が明確になったわけですが、もちろん働いている人々にも不満や心配ごとを感じた時に上に伝える必要があるともあります。相互関係が重要ですし、学校などは上は現場の状況を逐一知ることはできないので、何かあれば、伝えることが重要であると思います。

 こういった法律によって、どのくらい職場が改善されるものか興味があります。確かに組合関係の人は上に強く言う場面はありますが、どのくらい効果を発揮するんだろうかと。今回の記事では、違反の場合については書かれていないので、今まで通り、労働環境の問題は労働環境局に訴え、その後罰金という形になるのだと思います。病気休暇は、個人にとって辛いものであるし、社会にとっても負担が多いので、その原因が職場のストレスであるのならば、こういった法律によって改善の方向が見られるといいなと思います。今後、おそらく、今まで以上に雇用主の責任が問われるようになるだろうから、予防や対策を立てることは重要であると思います。


読んだ記事:"Stress ska minskas med nya regler," Lärarnas tidning, Nr 3, 2016

2016年7月19日火曜日

病気でも仕事をするスウェーデン人増加中

 病気休暇というシステムが確立されているスウェーデンだからこそ、できる調査だなと思った記事があります。見出しは、「病気でも仕事に行く理由」。「体調が悪いので、病休を利用して仕事を休むべきだ」と思いながら出勤したことが、ここ12ヶ月で1回もしくはそれ以上ある人の割合が載っていました。

        男性      女性
2007年     67%     73%
2009年     66%     69%
2011年     68%     73%
2013年     67%     76%
2015年     66%     75%


 数字自体にそれほど推移が見られませんが、女性の方が高いです。スウェーデンは病休が日本よりも取りやすいですし、文化もシステムも違うので比べることなどできませんが、結構、みんな無理して仕事に行っているんだなあというのが私の印象。。。みんなもっと、パッと休んでいるのかと思っていました。もちろん、偏見です。。。こっちで働くようになり、朝出勤して、あの人病休、あの人看護休暇なんて、聞かされてきたので、みんなよく休むなあという思いが染み込んでいます。。。

 
 しかしながら、統計では、10人に7人は体調がイマイチでも出勤していますし、10人に4人は休みの日でも上からの連絡には対応できるように求められていると感じているとあります。また、多くの人が、できる人であり、生産性のある人であることを求められていると感じているようです。病休は30〜49歳の女性に多く、これらの人々の8人に10人は、病気でも仕事に行ったことがあると答えています。これらの女性は、幼稚園や学校、学童で働いていることが多く、そうすると、職場で病気をもらってくることが多いのが原因ともあります。医療関係や老人福祉関係で働いている人も多いですし、小さな子どもがいる年齢でもあると思うので、仕事と家庭の両立をしながらというのは容易ではないと想像できます。



 病気でも仕事に行く理由幾つかあるのですが、その一つ目が、自分がいないと代わりが必要になる仕事というのがあります。病院や学校の先生などもそうがそうです。ある一定の役職についている方は、病気で休むと仕事が滞ったり、代わりが見つけにくかったりするため、とりあえず、出勤するという人が多いそうです。うちもこれあるかも。生徒一人に職員1名なので、誰か休むと代わりの職員を準備しなければならず、その度に予定を変更したりと大変で、結構なストレスになっています。

 二つ目の理由としては、経済的に余裕がないためとあります。病休のシステムがあると言っても、全額お給料が保証されるわけではありません。スウェーデンの場合、休んだ初日はお給料が出ず、二日目から約80%のお給料が出ます。ノルウェーは、聞いたところによると、一日目からお給料が何%か保証される代わりに医師による診断書が必要だと聞いたことがあります。(スウェーデンは医師による診断書は2週目からになります。)そのため、たとえば1週間仕事を風邪で休んだ場合、給料にもよりますが、数万円の損失になります。この損失ができるような経済的な余裕がないために病気でも出勤するという人も多いようです。

 
 記事の中では、関わっている人が、なぜこういう状況なのかを考えることが重要だとあります。病気で出勤することは他の人への感染を意味しており、よくないことではあるので、休めない理由が職場のしきたりなのかそれとも上からの指示が不明瞭なのかなど、しっかりと考えて見直す必要があるのだろと思います。仕事でのストレスが原因で長期の病気休暇が増えている今、小さなことからしっかり見ていく必要があるのかもしれないなあと思いました。



読んだ新聞の記事:"Därför går många till jobbet när de är sjuka", DN, 2016-06-15

2016年7月18日月曜日

増加の一途をたどるストレスによる病休

 何回か第一教諭について書きましたが、テーマを変えて、スウェーデンにおける現代の心の病について書いていこうと思います。

 スウェーデンでも、ストレスが健康に与える影響が問題となっており、ストレスを原因とする病気休暇の増加が社会問題となっています。これについて、Visionという組合が行ったアンケート結果を行いました。


 まず、数字で見てみると、

  • ストレスによって病休となった社員によって、雇用主にかかる経済的負担は、最低でも150,000スウェーデンクローネ(日本円で約200万円ほど)。
  • 病休が長引き、燃え尽き症候群やそれに伴ううつ病となった場合、雇用主にかかる経済的負担は、最低でも500.000スウェーデンクローネ(日本円で約650万円ほど)。


 ストレスによって病休となる人が年々増加をし、その増加率は驚くほど高いです。男女比で見ると、男性より女性の方が高く、職種としては、心理学者やセラピスト、ソーシャルワーカーや学童の職員などが最も多いとあります。これらの職種は、福祉に関わっており、学歴も要求されるし、日常的に多くの人々接していかなければならず、これらの職種では、女性のみならず、男子も多いということでした。

 記事には直接書かれていませんが、私でも想像できる原因としては、福祉の分野はここ数年効率化が強く求められているし、移民や難民の増加に対応するのはこの分野であり、仕事量が増えているのだろと思います。私の知り合いでもソーシャルワーカーだった方が、あまりの仕事の多さと無理難題に転職しました。そういう状況で真面目にやっていれば、きっとストレスが原因で病気になってしまうのだろうということは、想像に難くありません。

 記事の中では、福祉に関わる職種で多いという結果に、この状況を改善しなければ、福祉の質が落ちていってしまうだろうとあります。この状況を見て、2016年3月末に導入された新しい法律があり、この法律によってなんとか状況が上向きならないかと多くの方が思っているようです。その法律などについて、次で見ていきたいと思います。


読んだ新聞の記事:"Jobbstressen börjar bli ett allvarligt hot mot vår hälsa", DN, 2016-03-31

2016年7月17日日曜日

第一教諭に与えられた時間は?

 「スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状」と「他の先生から批判が多いキャリアアップ制度」の続きです。読んだり書いたりしていると、今年悩んだことなどが整理できてきました。今回は、実際に第一教諭として働いている人の視点から少し書こうと思います。

 私もだけど、何がこの改革で足りなかったかというと、これに尽きます。「時間」です!今回のキャリアアップ制度は、お給料の上乗せの額も決まっていたし、その資格も大まかに決まっていたし、大体の数も決まっていたけれど、実際の仕事内容は大雑把で、しかもそれに対する労働時間に指針はあっても決まりはなかったのです。そのため、実際に働いている第一教諭たちは、したいこと、できること、必要なこと、とにかくたくさんあるけれど、時間がないのです。私もですが、それまでの仕事が減らされたわけではないので、その仕事はそのまま残り、その上、仕事が加算されました。そうなるとどうしても時間が足りない。

 一応、授業を行う時間をそれまでの80%にするといいとか、意見はありますが、実際の統計は次の通り。

第一教諭の仕事に当てられた労働時間の割合

全労働時間の0−4%     41%
      5−14%    23%
      15−24%   21%
      25−34%   2%
      35−44%   1%
      45−50%   1%
知らない、わからない    10%

(943人の第一教諭にアンケートして回答数は67%)


 アンケート結果を見れば一目瞭然といった感じです。ちなみに私は0%。時間の方は与えられませんでした。最初の頃は、同僚から「お金もらっているんだから」と言われ、結構傷つきましたが、第一教諭の集まりではそういうこと言われている人が結構いると知り、ちょっと納得。時間は与えられていないのに、他の人と同じように仕事をした上で、プラスの仕事をした結果を見せないといけないというプレッシャーを感じる第一教諭も多くて、「5000クローネ分働いたって見せないと」という声も聞かれます。


 私はというと、一応、言われた仕事をこなし、それに加えて、うちの生徒にとって必要と思われる内容を実現しようと奔走し、ほかの先生から、「いつ、ああいう資料作っているの」と聞かれ、ほぼ時間外労働だと話しました。だいぶ理解してくれる人も増えたし、どうしても家でやりたくない仕事は、学校で配慮して貰って行うこともできます。ただ、継続して行うという感じは持てず、常に自分から動かないといけないのが痛い。一応、副校長にはなんとか時間を確保して欲しいとお願いしたが、どうなることか。。。

 アンケートの結果を見ると、半数の人は満足していないにしろ、時間も与えられているので、やはりそのコミューンや学校の考え方が大きいのだろうと思います。やろうと思えばいくらでもできる仕事でもあるので、時間といっても区切りが難しいのも事実です。今後、この点が少しずつ改善されていけば、より一層、キャリアアップ制度によってスウェーデンの学校が変わっていけるのではないかと思います。


読んだ記事:"Dat är vi lärare som är expertisen" Lärarnas tidning nr 12/14

 

2016年7月16日土曜日

他の先生から批判が多いキャリアップ制度

 前回の「スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状」の続きです。キャリアアップ制度が導入されてから数年たち、六千人の先生に対して制度をどう思うかアンケートが行われました。その結果が教員組合の新聞にちょこっと載っていたので、紹介します。


  • 半分以上の先生が、キャリアアップ制度に対して、とても批判的、多少批判的である。
  • 半分以上の先生が、キャリアアップ制度は第一教諭や講師になった人のみに利益があると思っている。
  • 多くの先生は、キャリアアップ制度は、お給料に大きな差が出るので、教員のグループには良くないと思っている。


 やっぱり、他の先生はあんまりよく思ってないんでしょうね。その理由には、やっている内容が不透明で、他の先生にあまり伝わっていないというのも大きいように思います。コミューンの教育担当科や管理職がしっかりと目的を持って第一教諭などを有効に使っているかというとそうではないところが多いので、上からも不透明で、下には伝わっていないという現状があるように思います。このキャリアアップ制度は、役職に就いた人には手当が出るので、こう言った役割とお給料が直結したタイプの改革はあまり良くないとも言われています。

 個人的には、スウェーデン社会にある平等意識が深く関わっており、同じ仕事なのに、数名の人がキャリアを積み、お給料もグンと上がることに対して、よく思っていない人が多いのだろうと思ってしまいます。たまに同僚から言われる言葉に、深くは傷つきませんが、勘ぐってしまうのも事実だし。

 このキャリアアップ制度がうまく浸透しなかった理由は幾つかあると思うのですが、その中でも、特に実際に働いている第一教諭側から聞かれる大きな問題を次で取り上げたいと思います。


読んだ記事:"Kritik mot förstelärare", Lärnarnastidning, nr.2 2016

2016年7月15日金曜日

スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状

 何回かに分けて、私が2年前からなっている「Förstelärare(フォシタラーラレ)」について書こうと思います。名称は、前半部分の「Förste」が一番という意味で、後半は先生の意味の「lärare」になります。なので、Förstelärareになれなかった人のことを、「Andralärare(アンドララーラレ)」と言ったり、できる先生ではなく「Sistelärare(システラーラレ)」と呼び、あまり力のない先生にこそ、力をつけさせるべきであるという皮肉も聞かれます。そのため、この名称については、問題が多いという人も多く、名前を変えるべきだという声もあります。

 スウェーデンのキャリアアップ制度は、前にも書いたと思うのですが、2種類あります。私がなっているのが、第一教諭で教員免許を持っていることが条件で、その他の条件はコミューンによって多少変わりますが、私の場合は、4年以上教員としての良い実績があること、特に生徒の成績を伸ばした結果がることというのが条件でした。もう一つは、「Lektor(レクトル)」と呼ばれるもので、最低でもマスターの資格を持っている講師に当たる職業です。このLektorレベルになると、大学でも働けるので、実際に学校で働いている人に私はまだあったことがありません。特別支援学校に限っては、十人いないと聞いています。そのため、ここでは、第一教諭についてのみ書こうと思います。

 このキャリアアップ制度の実態を、実際に働いている人々にアンケートし、(私も参加しました!)それをまとめたものが出されました。その結果をもとに講演会が行われ、その時の資料より、少し現状をまとめてみました。


1、スウェーデンのキャリアアップ制度の目的は?

  • より多くの生徒が国の到達目標に到達することができるように、その可能性を増やしていく。
  • 上手な教師に、教師として授業を行いつつ、キャリアアップの可能性をもたらす。

 最初の目的は、私もよく聞かされることで、生徒の持っている力を最大限に伸ばすためにはどうしたら良いのかというのが私たちの大きな課題、仕事になります。2番目の目的は、スウェーデンでは教員を辞めていく人が多くいて、その原因が、ある程度年数を重ねると、キャリアアップする方法がなかったために、転職して学校去ってしまう人が出てきたためとされています。第一教諭になりたいという人は、向上心が旺盛な方が多いので、新しいことに挑戦したり、管理職になったりして、授業を行わなくなってしまうため、それを止めようとしたようです。

2、第一教諭の仕事とは?


  • 主の目的は、授業を行うことで、授業とそれに伴う課題を行う。
  • 最低でも全労働時間の50%をそれに当てる。

と、一応政府の方針はありますが、2番目の労働時間はかなりあやふやですね。私の場合は、以前からの仕事が減ったわけではなく、上乗せなので、かなり仕事量が増えました。


3、具体的にはどんな仕事を?


  • 新採用の教員と教員養成課程の担当
  • 他の先生の支援と援助
  • 教育的議論のリードとより良い授業をこなうためのプロジェクを行う。
  • 一つの科目の責任を持つ
などです。うちの学校は5つの分野を行うことと言われ、その5分野を一つずつ4人の第一教諭の先生と行ってきて、2年経った今、学校形態によって方針の違いが出てきています。小学校と特別支援学校では、やはり同じことをするのは難しかったりします。この辺り、私は、校長と副校長に内容を明確にして欲しいと交渉中で、不明瞭なため、同僚から仕事を押し付けられたり、心ないコメントを聞かされたりするし、私も自分の仕事の線引きが難しいので、なんとかもう少しすっきり明確にしたいところです。

4、現在の総数は?


  • 14200人


2016/2017年度には、1万7千人まで数を増やすことが目標だそうです。

5、平均年齢は?


  • 46歳

確かに私は周りより若い方になります。しかも外国人は、少ないかな。。。今の所、数少ないですが、出会った第一教諭で移民のバックグランドを持つ人にはあったことがないです。

6、平均給与は?

  • およそ37,900スウェーデンクローネ (日本円で約50万円ほど。レートは約13円)

第一教諭はお給料が5000クローネ、講師は1万クローネ上乗せされます。約50万といえば多いのですが、手取りは、税金を引かれるので、ぐーんと減ります。。。

7、男女比は?

  • 男性23% 
  • 女性77%

女性が多いですね。話には聞いたことがありますが、まだ男性の第一教諭にはあったことがありません。

8、学校区分での人数は?

  • 小中学校:8608人
  • 高校:2809人
  • 成人教育:206人
  • その他:265人

私は、その他の区分になるのだと思います。国の特別支援教育研究所みたいなところがあるのですが、そこでは、定期的に第一教諭を集めて、話し合いをしているのですが、参加者は十人前後です。



 ざっと、現状を書いてみました。この改革に対する批判も多く出ており、それらについても書いていこうと思います。


読んだ資料:第一教諭の会議の講演会の資料、2016年4月、数字は2015年度のもので、元々の資料は学校局のレポートになります。名前は次の通りで、学校局のホームページより読むことができます。

  • Vem är förstelärare?
  • Vad gör förstelärare?


2016年7月14日木曜日

デンマークの特別支援教育を学ぶ

 北欧やスカンジナビアとひとくくりにされがちですが、結構違いのある北欧諸国。スウェーデンの教育は、それなりに詳しいつもりですが、デンマークやノルウェーの教育についてはあまり知りません。フィンランドは、よくスウェーデンとの引き合いに出されるので、デンマークやノルウェーよりは知っているかも。

 そんなお隣の国、デンマークから、デンマークの特別支援学校で働いている日本人の方が、遊びに来てくれました。連絡を頂いた時は、「えー、いるんだー」と驚きと喜びでいっぱいになり、メールですでに質問してしまいました。主人が、「そんなによく話すことがあるねえ。ブラーブラーブラー」とか言ってましたが、久しぶりに、日本語をたくさん話し、自分の興味のあることを同じように興味を持って話し、聞いてくださる方との楽しい時間を過ごしました。

 デンマークの実情を聞き、驚いたことは、


  • 「特別支援学校」という学校区分がなく、インクルーシブが進んでいると聞いていたが、そうではなかったこと。
  • 特別支援学校が、日本と同じように障害種別であったこと。スウェーデンは、障害種別は、基本的に聾学校のみです。
  • 給食がなかったこと。その理由が、どうも移民の増加にあること。
  • 特別支援学校で働く職員の職種が、スウェーデンより多くあること。デンマーク語や数学を教えることができる先生、芸術系の科目などを教える先生、アシスタントに近い職員、毎日所属が変わるフリーに近い先生に加えて、2年で習得できる1科目のみを教える先生もいるようで、現在のスウェーデンよりも職種が多くありました。
  • クラスに複数先生がいること。これはいいなあと思いました。私は、先生一人にアシスタントがつくので、なかなか教育的方針を詳しく話せる人がいません。
  • うちの学校よりも、トレーニングをしっかり行っていたこと。学校がTeacchを採用しているということで、うちの学校よりも学校の方針に統一性がありました。うちは、重度の障害を持った子が通う学校で、その障害は様々で、方針も先生によってかなり変わります。教材の話にトレーニング、アセスメントの話などを色々きいて、アドバイスを的確にくださるので、すごく感動してしまいました。いろいろ行き詰まっていたので、「ああ〜間違ってなかったんだ」とか、「そうか、そうすればいいんだ」とか、本当に勉強になりました。


他にもたくさん教えてもらって、お隣の国なのに、こんなに違うんだとびっくり。もちろんよく似ているところもありました。あとは、彼女のと私に共通点が多くあり、年齢的にも今後の行き方について考えているという話を聞き、共感をしました。この歳になると結論というよりは、同じように考えている人もいると知ることで安心し、また、前を向いていけるような気がします。


 最初に連絡をもらった時もとても嬉しかったのですが、まさかこんなに早く実際に会えるとは思っていなかったので、喜びでいっぱいです。スウェーデンにも日本人が多い職種はあるし、先生をしている人は多くいると思うのですが、特別支援教育に関わっている、特別支援学校で働いているという方には出会ったことがなかったので、感激でした。1年後に会う約束をし、その時に、こんなこと頑張ってやったよと話せるように、また頑張ろうと思いました。たくさんの元気とエネルギーを運んでくださって、本当にありがとうございました。


2016年7月10日日曜日

スウェーデンの学校の現状を変える組合の案

 昨日の「スウェーデンの教員組合の組合長のインタビューより」の続きです。記事には、スウェーデンの学校の現状を変えるための4つの明確な案が提案されていました。

1、教育面で指導力を発揮できるように、校長にさらに時間を与える。

 スウェーデンの学校の校長は、教員の指導や授業の向上といった教育面で指導力を発揮するような時間は、はっきり言ってありません。管理職の仕事は、いかに経済的な予算をしっかりと守って学校運営をするかにあり、日々の仕事は、

学校の運営、特に経済面
学校の建物に関する問題
教員などの職員の確保
法律面の問題対応

などがあり、これらを他の人材が行うことによって、校長が本来の校長職である学校の運営、教育に関わることが重要であると。その通りであると思います。校長が授業をみにくるなんて、学期に1回あるかないかです。うちの学校は副校長がいるので、副校長は会議には出ることが時々あるけど、校長は姿を見せない。。。電話の対応や日々起こる問題の対応で手いっぱいの模様。ここは確かに改善の余地ありで、コミューンの教育委員会に当たる部署からもう少し、援助があってもいい気がします。


2、社会的教育員を増やし、教員の仕事をへらす。

 おそらく、今後、スウェーデンで注目される教育に関わる仕事の一つが、この「社会的教育員」と直訳したけど、「Socialpedagog」と呼ばれる職業です。もう一つの注目される仕事は、先生のアシスタント。生徒のアシスタントはいるけど、今後は先生のアシスタントが増えると思います。

 この社会的教育員は、生徒の社会性を育てる役割をする先生で、担任と生徒の健康に関わるチームの橋渡しとなって、様々な問題解決に尽力していくことになります。現在は、この部分を担任や、有能な特別支援教育専門員が行っており、授業以外の仕事として、生徒の面々によっては、かなり時間を取られます。グレーゾーンの子が一人でもいれば、先生は結構大変で、ソーシャルな面を見てくれる教育者が、例えば休み時間などに、適切に子供達のちょっとしたケンカなどに対応してくれて、その後の処理もしてくれたり、ケンカにならないように改善してくれたりしたら、いじめや不登校など、いろんな問題が少しずつ改善されていくように思います。


3、先生のアシスタントの導入。

 上記に書きましたが、先生のアシスタントが今後増えていくと思います。教員が日々行っている仕事の一部を補う役割で、仕事の内容としては、

用紙の記入や情報の共有
コピー
パソコンなどIT関係の準備や手配

などで、事務に近いのですが、学校の事務員さんと先生の間みたいな感じでしょうか。今後は、増えると思う職業です。


4、生徒の健康チームの改善。

 スウェーデンの学校には、「Elevhälsoteam」という「生徒の健康チーム」の設定が義務付けられています。このチームの役割を改善、活性化させることは、私もとても重要であると思います。チームには、各専門家が揃っており、今回の案では、コミューンに特別な学校のチームを設ける必要性があると。学校関係の部署と福祉に関する部署が合同でチームを結成し、学校の生徒の健康チームと協力して、特に予防面で対策していくことが重要であるとあります。

 この部分は、学校検査局も力を入れて見て回っているようで、今後徐々に改善と予想されます。



 どの案も、実現されると良いと思われるものばかりです。今後少しずつ変わっていくことによって、教員になり、さらに続けていってくれる人が増え、スウェーデンの学校がさらに良いものとなっていくと良いと思います。



読んだ新聞の記事:Återupprätta Sverige som kunskapsnation, DN, annons från lärarförbundet, 2016-07

2016年7月9日土曜日

スウェーデンの教員組合の組合長のインタビューより

 前回の記事「数字で見るスウェーデンの学校教育」の元とのなっている新聞記事には、教員組合の組合長のインタビューも載っていましたし、学校の現状を変えるための案も載っていました。余談ですが、休暇も3週間目に入り、やっと教育関係の本とか読んでも、興味深いと思えるようになりました(笑)。休暇に入った当初は、転職も考えたほど嫌気がさしていましたが、家族や友人の励ましや応援、のんびりしたことで、復調しました。いろんな人の支えに感謝するばかりです。


 スウェーデンの学校教育に興味がある人ならば、珍しいニュースでもなんでもないことですが、スウェーデンではここ3年間に約9万人の教員が新たに必要になると言われています。どういう数え方をするかによって、出てくる数字が毎回違いますが、今回の新聞ではそう書かれており、パッと思ったのが、移民のためのスウェーデン語クラスや幼稚園教諭、学童などの先生を総括した数字であろうと思いました。スウェーデンには、教員組合が2団体あり、この教員組合は幼稚園などを含む、組合になる方の制限がゆるい方なので、おそらくと。

 それにしても、9万人大変な数です。いろんな要因が考えられますが、まずは人口増加でしょうね。ベビーブームと言われなくなり、その人口増加が一般化した今、年々人口が着実に増加しています。そして、移民、難民の増加。ちらっと読んだ新聞記事で、イギリスのEU離脱が決まってから、スウェーデンに帰化したイギリス人が増加したとか。今後のEU情勢により、さらにスウェーデンで移民問題が起こってくる可能性があるでしょうね。そうなると、今でも移民の教育に関わる人材が問題になっているのですから、9万人でも足りなくなるかも。

 インタビュー形式で書かれていた中で次に気になったのが、免許を持った教員を採用することがたいへん難しいという話。こちらでは、学校ごとの採用になるので、校長などが採用に関わりますが、募集をかけてもその資格にあった人を採用するのは至難とか。私の学校も今年は教員2名アシスタント4名新規に採用しなくていけなくて、大変でした。教員免許を持っていても教員として働いていない人もある一定数いるし、学生の中でも教員になってもいいけど、ならないという人が多くいるらしい。そういう人たちの理由としては、お給料が低いことと仕事量が多いこと。

 この2点ですが、確かにそうなんですよね。教員のお給料がすごく低いとは思いませんが、教員になるために大学に通う年数とその後のお給料という面から見ると安いと思います。私と同じ資格を持った人の場合、実に大学に5年半から8年ほどは通っており、最初の免許を取ってから一度現場に出なくてはなりません。これだけの時間をかけるということは、それだけ学生のローンも払っているということで、そう思うと安いと思います。仕事量に関しては、先生特有の問題でもあると思います。どこまでやっても終わりがないというか。でも、確かにここ数年の改革でお仕事量増えていると思います。


 そんなところに焦点を置いた組合の案を、次に紹介したいと思います。



 読んだ新聞の記事:Återupprätta Sverige som kunskapsnation, DN, annons från lärarförbundet, 2016-07

 

2016年7月7日木曜日

数字で見るスウェーデンの学校教育

 今年も夏の恒例、ゴットランド島でアルメダーレン(Almedalen)と呼ばれる政治週間が始まりました。去年は母が来ていたこともあり、いつやっていたかも覚えていなかったのですが、今年は、テレビや新聞をチェックして楽しんでいます。この期間は、毎日党首演説が聞けるだけではなく、多くの団体や期間が様々な活動をするので、そちらも興味深いです。

 教員組合の特集記事に現在のスウェーデンの現状が載っていたので、紹介しようと思います。*元は学校局より

スウェーデンの学校教育形態別の総数
  • 幼稚園・就学前施設:9774園、うち2668園が民営
  • 義務教育学校・小中学校:4845校、うち827校が私立
  • 高校:1303校、うち443校が私立

スウェーデンの学校教育形態別の児童・生徒数
  • 幼稚園・就学前施設:493,609人
  • 就学前クラス・6歳児教育:116,312人
  • 義務教育学校・小中学校:985,620人
  • 一般の義務教育の特別支援学校:9774人
  • 特別な特別支援学校:553人
  • 高校:323,141人
  • 特別支援学校の高等部:6410人
  • 成人のための特別な教育:4245人
  • コミューンの成人教育:216,251人
  • 外国人のためのスウェーデン語教育:124,750人

教員一人に対する児童・生徒数(2015年秋学期)
  • 幼稚園・就学前施設:先生一人に対して、子ども5,2人
  • 義務教育学校・小中学校:先生一人に対して、子ども12,2人
  • 高校:先生一人に対して、生徒11,9人

児童・生徒一人あたりにかけた教育予算(2014年)
  • 幼稚園・就学前施設:133,500スウェーデンクローネ
  • 学童保育:34,900スウェーデンクローネ
  • 義務教育学校・小中学校:97,700スウェーデンクローネ
  • 一般の義務教育の特別支援学校:488,000スウェーデンクローネ
  • 高校:112,400スウェーデンクローネ
  • 特別支援学校の高等部:398,600スウェーデンクローネ
  • コミューンの成人教育:45,200スウェーデンクローネ
  • 外国人のためのスウェーデン語教育:39,000スウェーデンクローネ


自分で調べようと思えばできるけど、こうして書かれていると一目瞭然でわかりやすいです。民営化が進んだと言っても、民営の幼稚園は全体の約27%、小中学校に至っては、17%と、そうでもないなあという印象を受けます。高校は民営化がもう少し進んでいます。そうなると民営の学校に対する法整備が遅れ、学校批判が出てくるのも仕方がないかと。

 各教育に対する生徒数に関して言えば、幼稚園と学童をのぞき、無料でこれらの人々に対する教育が行われているということは、改めてすごいなあと思います。教育批判も多くされますが、国の教育に対する姿勢という面で見れば、やはりスウェーデンは一目おくべき国であるように思います。コミューンの成人教育は、移民の方も多く入っているだろうし外国人のためのスウェーデン語教育は移民の方のものなので、自国民ではない人もたくさんこの国の教育システムの恩恵を受けていることになります。

 あとは、やはり教育予算。私が働いているような特別支援学校は予算が多く降りているとは聞いていますが、小中学校に比べると約5倍の予算が出ており、やはりお金がかかっているんだなあと思います。実際に働いていると、結構文句も多いし、問題も多いのですが。


 この政治週間には各党いろんな案を出してくるので、興味深いです。一番の注目は移民問題であるように感じますが、教育に関しても例年通り、注目されている分野ではあるので、多少新しいアイデアが出ています。たとえ与党であっても過半数を持っていない今、どの案も実行されるかどうかはわからないのですが、そういう考え方をするのかと私など日本と比べながら、思うことがいろいろあります。この政治週間に関して、今年は、テロの心配もされましたが、今の所大丈夫のようです。何事もなく、良い天気で残り半分終わると良いと思います。


読んだ新聞の記事:Återupprätta Sverige som kunskapsnation, DN, annons från lärarförbundet, 2016-07




2016年7月2日土曜日

ダブレット子守はそんなに悪くない?!

 久しぶりの連続投稿です。あまり天気が良くない上に、出かける予定もないと読書が進みます。

 6月初旬に「Att låta surfplattan vara barnvakt är okej:タブレットに子守をさせても大丈夫」という新聞記事がありました。多くの親たちは、タブレットや携帯で子どもを遊ばせることに罪悪感を感じる場合が多いがそんな必要はないということでした。疲れ切った土曜日の朝、もう1時間寝るために、子どもにタブレットを渡すのは悪いことでもなんでもないと。

 この研究を行ったのは、Malin Bergström(マーリン・バリィストローム)さんで国のメディア研究機関と共に子どもを持つ親たちのIT使用を討論するために行ったそうです。結論を言えば、きちんとルールを決めて使用すれば、問題ないということだと思います。新聞に書かれていた使用に関する親へのガイドは以下のとおり。

保護者として子どものメディアの利用に対してできる援助(元は、Rikshandboken i barnhälsovårdより)

  • 何をやったのか、その経験を共有する
  • 何を思ったのか、その考えを共有し、何を見たのか、やったのか、経験したのか、その内容を言葉で示してあげる
  • 子どもが何を学んだか、それを他の人に伝えられるかといった知識を共有する
  • 心配事や疑問は、信頼の置ける人に聞くように教える
  • 指導や説明を受けるようにする
  • メディアや情報に対して批判的な姿勢を身につけさせる
  • メディアがどのようなものか教える
  • 広告の目的を教える
  • 利用する内容を制限する
  • メヂィアの利用時間を制限し、他の活動もするようにする

 子どもがタブレットで何をしたのか、そのやっていることややった内容に興味を示し、会話をすることが重要であるとも書かれています。親として、メディアの正しい利用の仕方を教えていくことは、現代の親にとっての大きな課題であると思います。これからの世代は、こうしたメディアとうまく付き合っていけなければ、仕事も難しいし、お金の使用も難しいし、余暇活動も難しいし、社会活動も難しいという時代になっていくと予想されます。小さい頃から、自然な形で触れ、うまく付き合っていく方法を教えていくことが重要なのであろうと思います。記事にも、全面的に禁止するよりも、タブレットフリーゾーンやフリータイムを用いることによって、バランスをとる事が重要であるとあります。また、睡眠は重要なので、夜寝る前の1時間はタブレットフリータイムに適しているともあります。


 スウェーデンには、アストリッド・リンドグレーンの物語に出てくる「Bullebyn-idealen ブッレビー理想」というのがあります。今の母親世代などは、ブッレビーという物語に出てくる昔ながらの街並み、生活様式に憧れる、憧れて家を買ったなどという人に会うことがあるくらい、昔ながらの理想の子育て、子育て環境というのが頭に沁み込んでいます。それはそれで素晴らしいと思いますが、現代と寄り添いながら、タブレットもうまく利用しながらというのが、これからの時代には合うのだろうと思いました。10代になってから、ゲームにはまって昼夜逆転といったような生活になるよりは、小さい頃からしっかりと躾の一部に組み込んだ方が効率がいいようにも思います。と、子供のいない私が言う。。。



読んだ新聞記事:DN、20160604、Att låta surfplattan vara barnvakt är okej

ストックホルムのおすすめカフェ:特別支援教育編

 休暇に入り、あの忙しかった生活は存在しなかったかのように、のんびりした毎日を送っています。ブログの更新頻度がグーンと減ったここ1年ほど、何度かもうやめようかと思いましたが、ブログを通じていろんな方から連絡をもらえるので、やっぱり続けようかと。そんな出会いが今回もあり、その方と一緒に障害を持った方が働いている、デイケアセンターのカフェに行ってきました。ということで、ストックホルムのおすすめカフェ、特別支援教育編として、紹介したいと思います。

 場所は、ストックホルム中央駅から歩いて20分ほど、地下鉄やバスを利用することも可能な、ストックホルムの人々の憩いの場、Vasaparken(ヴァーサ公園)内にあります。デイケアセンターと訳して良いのか、いまいちわかりませんが、こうした成人の障害を持った方たちのための施設をスウェーデン語では、Dagilga verksamheter(ダーギリガ・ヴァルクサムヘテール、日々の活動)と呼び、いろんなタイプがあります。ここは、カフェの運営と庭仕事、音楽などの芸術グループとあるようです。年度末に前年度の卒業生が通っている施設に面談に行ったのですが、そこは犬の幼稚園がありました。日中犬を預かって散歩をさせたりする施設で、人気があるタイプです。そこは、ガラス製品を作成するグループなどもありました。こうした施設では、特色を打ち出して、できる限り、「仕事」をするように構成されています。

 カフェの名前は、「Café Katarinahuset、カフェ・カタリーナヒューセト」。ヴァーサ公園は、サッカー場もある大きな公園で、その一角の古い建物にありました。


 中はこんな感じ。可愛らしい、スウェーデンによくあるタイプのカフェです。ランチは、2種類から選べます。メインにサラダ、パンとコーヒーがついて80クローネ。


 言われなければ、ここで障害を持った方が働いているとはわからないかもしれません。職員もいるので、障害を持っている方はおそらく5から6名ほどだと思います。知っている人なら、わかるかもしれないのが、こんな絵の表示がちょくちょくしてあることでしょうか。


 これは、働いている人たちに使うものがずらっと並んでいました。ナイフはナイフ、フォークはフォークなどの絵もありました。


 いろんな方から問合せを頂くので、普通のカフェでのランチもいいけれど、この道ならではの場所でのランチもいいかなと思います。ここはストックホルム内でも立地もいいのですし、環境もいいので、興味のある方は是非訪れてみてください。夏の間は休暇で閉まることもあるかもしれませんので、事前に問い合わせておくことをお勧めします。電話するとその日のランチのメニューも教えてくれます。

Café Katarinahuset、カフェ・カタリーナヒューセト
住所:Eastmansvägen 35 vid Vasaparken
電話:08 302210
アクセス方法:地下鉄緑ライン Odenplan駅もしくはSankt Eriksplan駅下車、徒歩10分ほど。