年が明けて、選挙を意識した各政党の動きが見られ、教育関係のニュースも飛び交っている、ここスウェーデン。今日はその中から、現政府が出してきた義務教育を10年にするという案について書こうと思います。
現在のスウェーデンの義務教育は、基本が9年です。小学校1年生の前に、就学前クラスという6歳児クラスがあります。この6歳児クラスが、現在は義務ではなく、このクラスを義務化するというのが今回の提案です。この案の陰にはもちろん、PISAの学力到達度テストの結果が良くなく、OECD加盟34カ国の中で最も伸びが悪かったというのが大きな要因であるのは、明白です。あの結果に、やはり政府の焦りが見えます。詳しいPISAの学力到達度テストの記事はこちらを。1、2、3
なぜ、基本9年と書いたかというと、特別支援学校の中でも特別学校とされる学校は9年生の後にもう1年、10年生をとることが可能なので、既に10年の学校形態もあるからです。ちなみに、全ての特別支援学校の生徒に10年生が保障されていたのに、3年ほど前にその制度がなくなり、現在は9年になっています。この1年大きかったんですよね。なくなったときはものすごく残念に思いました。
現在のスウェーデンの6歳児教育は、国内の6歳児のほぼ全員、統計で最後に見たときは、97、8%の子どもが通っていましたので、生徒側から見ると義務化に関しては、それほどかわりはありません。選挙という面で見てみても、この6歳児教育の義務化は既に社会民主労働党や環境党が早くから掲げていた内容なので、新しいという案でもなく、私の印象も「この制度化は固いかな」というものでした。
もともとスウェーデンの学校教育システムの中でこの6歳児教育は中途半端な位置にあり、批判が大きかったのも事実です。例えば、よくいわれるのは、カリキュラム。幼稚園のカリキュラムがあり、小学校のカリキュラムがしっかり出ているのに、6歳児教育のカリキュラムはちょっと中途半端なんですよね。その上、幼稚園を卒園して学校の中にある6歳児教育のクラスに入ると新しい先生になり、多くの場合はその後1年生になると新しい先生になります。これには、教員の免許なども関わってきているのですが、この先生の変更に関しても、批判が多く出ています。どうせ学校の敷地にあり、同じ組織内で動いている6歳児教育ならばしっかり義務教育化して1年生にしてしまったほうがいいという声が今までもなかった訳ではありません。
じゃあ、今回の義務化はすんなり行くだろうというと、そうは問屋がおろさないといった所でしょう。基本的にこの提案は前向きに受け取られているという印象を受けますし、今までの流れをみても、順当だと感じます。組合も前向きな意見を出しました。問題は、こういった改革にはやはりお金がかかるということと人材です。就学前クラスは、幼稚園の延長であり小学校ではないので、基本的に幼稚園教諭が教えることになっています。内容も幼稚園よりで遊びの中で学ぶという学校への橋渡し的な役割をしており、このクラスが小学校1年生になったら、小学校教諭か幼稚園教諭のどちらが受け持つのかという問題があります。提案では、小学校の区分が1年生から4年生(現在の就学前クラスから3年生)が低学年区分になるので、小学校の先生というのがいいのかなとも思います。スウェーデンの教員免許のシステムは時代によって変わっていて、その免許にもよるとはおもいます。という問題が一つ。どちらにしても教員の研修も必要になりますし、様々な調整も必要です。変更時期は未定ですが、選挙後の次の4年のうちには行うということだったので、今までの学校改革に加えてこの改革を行うことに抵抗を感じる人がいてもおかしくありません。そして、なんといっても、教員不足という問題が。。。教員が大量に定年の時期を迎えているスウェーデンでは、今後ものすごい数の教員が不足すると予想されており、かなりの危機感を持って報道されています。この教員不足についてはまた改めて書くとして、おそらく制度化されると思うこの10年生化。どんな風になるのかなと興味津々です。
特別支援学校に限れば、重度の子どもの場合は、6歳児クラスへの受け入れが難しいという現実があり、多くの場合は、幼稚園に1年余分にいくか、小学校に1年早く入ってくるかで、ケースバイケースになっています。この辺りは、スウェーデンの良いところで、子どもの障がいの程度や家庭環境などなどにあわせて選べるというのはいいなと思っています。