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スウェーデンの再選挙が教育に与える影響

忙しさも増してくる12月。病気休暇や介護休暇がとれて、お給料もそれなりに保障されるこの国では、この時期、学校職員不足でてんてこまい。。。学期末のうえに、この2週間に、ノーベルパーティー、ルシア祭、クリスマスマーケットと行事が続くうちの学校では、みんな疲れでぴりぴりしています。おお・・・金曜日には、電車と地下鉄を乗り継いで、マクドナルドに生徒を連れて出かけましたが、アクシデント続出で胃炎になるかとおもいました。無事に週末になってよかったです。    そんな中、私は密かに水曜日、どうなるだろうかと気になっていました。もともと、このブログでも選挙の話を書いたときにしたとおり、予算が通らない限り、現政府はうまくいかないと思っていたので、スウェーデンの再選挙の流れは、予想通りでした。テレビのニュースで「再選挙に本当になると思わなかった。」というのを聞いて、「ヘェ〜」と思ったくらいです。また、「こういった状況は、他の国ではよくある」という話をしていて、「その通り」だと思いました。このちょっと前に、日本の衆議院解散、選挙という話をニュースで知り、「またか」と思ってしまった私には、スウェーデンという国の政治がいかにある意味安定したものだったかと思いました。新聞でも、スウェーデンの政治がいよいよEU諸国の政治に似てきたともありました。  選挙に関して思うところはたくさんありますが、ここでは、この再選挙がスウェーデンの教育に与える影響について書きたいと思います。この再選挙の報道があった翌日に職員会議があり、早速話題になっていました。   今回通った予算案からみていくと、再選挙でどの政党が政権握っても、多少修正が可能ではありますが、そのまま有効になります。これにより、現政府が公約としてあげた学校関連の投入予算が変わってきます。それほど差がないと言えども、通過したアリアンセンと呼ばれる野党4政党の学校関連の予算は、現政府の予算よりも少なかったので、すでに不安の声が聞こえます。  現政府の予算が特に投入される予定だったのが、成人教育、生徒の成績が伸びていない学校に対する特別金、幼稚園に対する調査の3項目とありました。与党と野党の予算での差額は5億と新聞でも大した差がないとはありますが、それでも、最終的に学校に入ってくるお金には差が出てきます。ニュースでは、マ...

教員免許のない先生が教える国、スウェーデン

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久しぶりの更新です。1週間なんてあっという間という感じで、毎日が過ぎていっています。ここ数日、めっきり暗くなったなあと感じるスウェーデン。私も同僚達も、あくびがよく出たり、疲れ気味だったり、身体の不調の出やすい時期です。  先週だったと思うのですが、スウェーデンの学校局が教員免許の有無に関するレポート発表しました。スウェーデン、予想以上にひどい状況です。 日本では考えられないことですが、スウェーデンでは、教員免許を持たない教員が教鞭をとっています。現場では、実力があればいいのではないかというような声も聞こえますが、私は、どんな職業にもプロ意識というのは重要であり、きちんと教員養成課程を経て教員になり、教員免許を有した上で、教育を行うというのは基本中の基本だと思います。なので、今のスウェーデンの状況、本当に心配なんですよね。何か本当に手だてをうたないと、未来を担う子ども達を育てる教師がいなくなると。  どんな状況か数字で見てみていきます。この数字は、学校局が何人教員がいて、そのうち何人が免許保有者かを調べたものです。 教員免許を有しない教員の割合 スウェーデン全国:32,7% ストックホルムレーン(県レベル):38,3% ヨーテボリコミューン(市レベル):35,2% マルメコミューン        :35,6% ストックホルムレーンの中でも教員免許保持者率が低いコミューン ソデタリエ(Södertälje)コミューン:49,9% スンドビーバリイ(Sundbyberg):49,1% ボートシリカ(Botkyrka):47,8% ソルナ(Solna):45.3% シグチューナ(Sigtuna):45.3% 高校の教員免許保有者率:52% *職業科目の教師は免許がなくても教えられることになっているために保有者率が下がる傾向にあります。 就学前クラス(6歳児クラス)の免許保有者率:65%  教員免許制が導入されるにあたり、免許を持っていない教師、もしくは免許を持っていない教科を教えている有資格者に対して、免許取得の援助がされてきました。しかし、この援助が十分なものではなく、多くの教員が免許を取得しないまま現在に至っています。外国の教員養成課程を出た人に対するコースもありますし、特別支援教育に関するものもあり...

スウェーデンの学校給食

長かった夏の休暇も今日が最後です。去年は主人が夏に休暇を取らなかったことに加えて、前の犬を亡くして寂しかったのですが、今年は、本当に楽しい夏休みでした。新しい挑戦に加えて学期早々大きな出来事のある今年度ですが、日々努力を重ねていければと思います。  新年度にあたり、今日は、スウェーデンの学校給食について。ちょっと前に学校給食に関して質問を受けたのですが、そういえば、そんな新聞の記事があったとごそごそ。。。  スウェーデンの学校給食は、2011年までたいした規定はなく、あった規定は一つ、 無料であること でした。無料であるということは、とても重要で、スウェーデンの学校では、お弁当をもってきてくださいと簡単にいうことができません。学校によって多少差がありますが、学期に1、2度まで、限度額も決まっている場合が多く、私たち教員には、持ってこない/持ってこられない子どものために何かしらを用意しておく必要があります。そんな学校給食ですが、2011年からはもう少し規定が増えました。どんな規定かというと、 学校給食は、栄養のあるものであること ちょっと、まってくれと思った方、そうです、この規定はなかったんです。2011年7月1日からは、学校給食は無料かつ栄養のあるものでないといけなくなり、その栄養のある給食に規定は次の通り。 脂肪分の質 繊維と全粒穀物の量 鉄 ビタミンD  この4項目が栄養の判断の基準となります。もちろん、学校で出される給食は、安全なものであり、食品をしっかりとした衛生管理の中で扱うといったような決まりはあります。 ストックホルムの学校の給食がどんな感じか調べた新聞の記事には、「良い」の判定を付ける基準を、以下のようにもう少し具体的にもうけています。 2種類以上のメニュー 週に4から5日、ベジタリアン/菜食のメニューがある 水、牛乳、パン、バター、サラダのバイキングがある 甘い飲み物やアイスクリームは、週1回以下 この基準でみていくと、ストックホルムの学校のうち、69%の学校がおそらく基準を満たしていないということでした。いろいろ問題のあると言われているスウェーデンの学校給食、やっぱり、そうなんだなと裏付ける結果になっています。 ただ、新聞の記事の中では、スウェーデンで食品衛生を扱っている省庁...

質低下が危惧されるスウェーデンの学童保育

楽しい時間はあっという間に過ぎて、主人は仕事の戻り、私の夏の休暇も残り2週間となりました。やりたいことリスト、やっておくといいことリストがまったくといっていいほど消化されておらず、ちょっと焦っております。この2週間で、秋学期の準備と引き受けてある仕事を片付け、家の掃除を少しできたらと思っているところです。  スウェーデンは共働きが基本なので、多くの子どもが6歳児教育が始まり学校教育に関わるようになると、学童保育にも通います。ほとんどの場合、学校が併設して学童を持っているので、というか、学校が同じ組織内で学童を運営しているので、子どもはそのまま学校に残っている形になります。その昔は、学童はもっと学童として個別に運営されていた時代もあるようですが、今ではすっかり学校教育に組織上は吸収されており、学童の先生は、日中は学校教育に何らかの形で関わっている場合が多くあります。これに関して、学童の先生側からは、不満の声も聞こえますし、学童の質の低下も叫ばれるようになりました。  スウェーデンの学童の先生方は、「Fritidspedagog」という「学童の先生」の資格があり、大学で、120ポイントから180ポイント(フルタイムの学生で1年半くらい)勉強します。最初は免許が出なかった学童の先生ですが、現在は、教師と同じように免許が出ます。私の印象としては、見た目の仕事や周りからの話で感じる学童の先生の立場は、大学での勉強からするとかなり低いように思います。残念なことですが、子どものおもりをしている人たちと言う印象があるように感じます。  そのためかどうかわからないのですが、 学童の先生一人あたりの子どもの数がかなり増えている 資格のない学童の先生が増えている と新聞にありました。1990年には、学童で働く大人一人あたりの子どもの数は、 7.5人 だったのにたいして、2014年には 12.9人 と5人も増えています。パーセンテージにして、34%増だということで、かなり増えています。スウェーデンで学童に通う6歳から12歳の子どもは、42万5900人ほど。1グループの子どもの数は、40人前後となっています。学童によっては、100人を1グループで見ているところも。 資格のない学童の先生も増えており、大学で学んだ学童の先生の割合は、統計ととり始めて最低の56%...

問題のある生徒を救う携帯やパソコン

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その昔、日本人補習学校で努めていたときに、そこで学ぶ子どもたちを見ながら、日本語の文章はパソコンで書ければいいんじゃないかと思っていました。日本を離れて10年以上になり、私の日本語はかなり怪しくなりました。こうしてブログを書いたり、ちょこちょこと書かせていただいている観光ガイドを書いたりしなかったら、私の日本語力は、とうの昔に地に落ちていただろうと思います。そんな私を救ったのは、やはり、パソコンなどの技術です。  今日の新聞をちらちらっとめくっていて、こういった様々な技術が問題のある子どもたちを救っているいう結果が出ていました。時間の管理や記憶、注意力に多少問題のある生徒が、パソコンやスマートフォンなどのカレンダー機能や文章を読み取る昨日のあるマウスといった技術の利用を促した結果、欠席率が減り、73%の生徒の成績が良くなったという結果が出たそうです。この調査には、不安定な体に対する援助としてボールの入ったマットみたいなものも用いられたそうです。写真を探したのですが、見つからなかったので、説明を少しすると、ボールが入った布団みたいなのがあり、多くの自閉症の方などが夜寝るときなどに使用しています。不安定さを和らげるために、普通の布団よりも多少重みがあるほうがよいとされ、効果があります。ボールよりも重いものとなると、鎖の入ったものもあり、うちの生徒でも使用している子がいます。  この調査で使われたのは、そういったボールの布団の小さいタイプで、膝掛けくらいの形のものではないかと想像しています。値段は高いのですが、前々から、うちの学校にあればと思うのがこちら。  同じような考えで、座るとちょうど肩とおなかのあたりにちょっと重さのあるカバーをして座ることで、不安定な気持ちを和らげ、体を落ち着かせる効果があります。こういった補助器具を他のものと同様に使用したそうです。  障がいを持たない子どもが、早期にこういった様々な支援技術によって、少し問題がある程度の頃に手だてをうつというのは重要であるように思います。今後、より多くの研究がされることによって、多くの子どもたちが早期に様々な支援機器を使用できるようになればよいと思うばかりです。

スウェーデンの義務教育が10年になるかも?!

年が明けて、選挙を意識した各政党の動きが見られ、教育関係のニュースも飛び交っている、ここスウェーデン。今日はその中から、現政府が出してきた義務教育を10年にするという案について書こうと思います。  現在のスウェーデンの義務教育は、基本が9年です。小学校1年生の前に、就学前クラスという6歳児クラスがあります。この6歳児クラスが、現在は義務ではなく、このクラスを義務化するというのが今回の提案です。この案の陰にはもちろん、PISAの学力到達度テストの結果が良くなく、OECD加盟34カ国の中で最も伸びが悪かったというのが大きな要因であるのは、明白です。あの結果に、やはり政府の焦りが見えます。詳しいPISAの学力到達度テストの記事はこちらを。 1 、 2 、 3  なぜ、基本9年と書いたかというと、特別支援学校の中でも特別学校とされる学校は9年生の後にもう1年、10年生をとることが可能なので、既に10年の学校形態もあるからです。ちなみに、全ての特別支援学校の生徒に10年生が保障されていたのに、3年ほど前にその制度がなくなり、現在は9年になっています。この1年大きかったんですよね。なくなったときはものすごく残念に思いました。    現在のスウェーデンの6歳児教育は、国内の6歳児のほぼ全員、統計で最後に見たときは、97、8%の子どもが通っていましたので、生徒側から見ると義務化に関しては、それほどかわりはありません。選挙という面で見てみても、この6歳児教育の義務化は既に社会民主労働党や環境党が早くから掲げていた内容なので、新しいという案でもなく、私の印象も「この制度化は固いかな」というものでした。  もともとスウェーデンの学校教育システムの中でこの6歳児教育は中途半端な位置にあり、批判が大きかったのも事実です。例えば、よくいわれるのは、カリキュラム。幼稚園のカリキュラムがあり、小学校のカリキュラムがしっかり出ているのに、6歳児教育のカリキュラムはちょっと中途半端なんですよね。その上、幼稚園を卒園して学校の中にある6歳児教育のクラスに入ると新しい先生になり、多くの場合はその後1年生になると新しい先生になります。これには、教員の免許なども関わってきているのですが、この先生の変更に関しても、批判が多く出ています。どうせ学校の敷地にあり、同じ組織内で動いている6歳...