2020年2月27日木曜日

スウェーデンの学校局が出した教員の労働環境対策

 日本のコロナウィルスで学校休校というニュース、スウェーデンでも話題になっています。日本全国の地方自治体がどのような対応をするのか気になるところで、その対応によって地方自治体の力というのが垣間見れる気がします。今日は、スウェーデンの学校局が今週出した教員の過重労働をいかに減らすかという対応策について書こうと思います。このブログ、その時の思いつきで書いているので、この内容の続きが聞きたいなどあれば、コメント、もしくはメッセージくださればと思います。じゃないと、次書きますとか書いてあるのに、次がない記事多いですよね。すみません。

 教員の最も重要な仕事って何でしょうとスウェーデンの学校局に聞けば、「授業をすること」と返ってくるでしょう。授業をするということは、その準備をし、授業をし、評価などのフォローをし、次につなげていくという一連の作業を意味します。ただ、単に授業を行っている時間のみをさすのではありません。このブログを読んでくださる方はきっとこんな説明する必要ないのですが、このあたりなかなか理解されないことがあります。スウェーデンの先生たちも日本の先生同様に労働環境の悪化について問題としており、ここ数年は、教員のなり手を探すのが難しくなっています。その対策として学校局が出した策は、学校という組織の中に、教員以外の職種、「先生のアシスタント」とかを増やし、現在教員が行っている仕事を分担することにより、教員の資格を持っている教員がよりよい労働環境で授業に集中できるようにというものです。これに対する先生方の反応をSNSで見ていると、

そんなことをするよりも、教員を増やせ、クラスの生徒数を減らせ
これによって、より一層1週間の授業時間数が増えるのではないか

などといった声が上がっており、すんなりとこれらの対策を良しとはしていないという感じを受けます。では、具体的な策を見ていきましょう。対策は6分野に分かれています。

1.落ち着いて安心して学習できる環境
 スウェーデンの学校は、一昔前の日本で「学級崩壊」という言葉がありましたが、そんな言葉が必要なクラスがあるくらい、もちろん程度にもよりますが、落ち着いて安心して学べる環境ではない学校もあるのが事実です。その対策として、先生のアシスタントなどに個別指導やグループ指導、休み時間の指導や、給食の時の巡回などを教員以外の職員に任せるというもの。その昔は校務員さんと書いたらしいですが、削減で減らされており、複数の大人の目が普通に学校の日常に存在することは有効であると思います。休み時間の指導などは既に順番で行われているところが多いと思うので、このあたり、その学校のやり方次第でいろんな工夫ができると思われます。ただ、先生一人に、各クラスにアシスタントがつくのだろうか、その予算はどうするのかはなどは不明で、実際にうまく回る学校は少ないきもしないではない。。。

2.授業の簡単な準備
授業準備の中の簡単な作業を先生のアシスタントがするというもの。これは私も生徒のアシスタントが3名いるので、できる限り計画を早めにたて、彼女たちに頼めることは頼むようにしており、例えば、コピーとか、簡単な○うちとか(私はないけど)、ラミネートとか頼めることはあるように思います。

3.教材などの管理
スウェーデンでは文房具もすべて支給されるので、その管理と注文なども先生の重要な仕事であり、このあたりはみんなで協力して、例えば、誰かが係でやっているというのも多いと思うのですが、そんな仕事も先生のアシスタントに任せられるかなと。教材なども選ぶのは教員でも注文や管理はアシスタントでもいい気がします。ただ、2と同様にこの項目も実際にはそんなに時間かからないような気もするし、ちょっと経験があり、うまく回っている学校なら問題にならない気もしますが、誰かに頼める内容であることは事実です。

4.パソコン、IT関係
これは、先生のアシスタントとかがやってくれると助かります。私は生徒4名なのでいいですが、25名もいたら、パソコンやアイパッドの準備など授業前も授業中も結構かかると思いますし、大変だという話をよく聞きます。

5.メンターの仕事
これは、どうなんだろうか。生徒の年齢にもよる気がしますが、教員であれば、自分のクラスの生徒の親とのコンタクトや生徒の健康グループとの連携など、自分で把握しておきたい気がするのですが、どうなんでしょうか。この部分を先生のアシスタントという、おそらくあまり資格がない方に任せるのはどうかと。先生のアシスタントとの連携がうまくいけばいいのですが、恐らくこういった仕事はあまり労働時間や契約期間がよいものではないので、いまいち不安感が。欠席報告や無断欠席の管理などは任せてもよい気もしますし、任せられる部分もあるとは思いますが。

6.合理的配慮や特別な支援
これも、教師側が明確に指示をすればいいのですが、まさか先生のアシスタントが考えて実行するということではないとは思うのですが(ここ批判多い部分です)、どうなんでしょうか。合理的配慮や特別な支援にも様々なやり方があり、先生のアシスタントができる部分はあると思いますが、線引きがない、難しいので、これまた、支援援助を受けられない生徒が出てくるのではないかと、すでに危惧しているのは私だけでしょうか。


これらの対策、基本的に先生のアシスタントを雇い解決することをもとに出されています。ただ、この先生のアシスタント政策も問題山積みで。またこれについて書きたいと思いますが、雇える学校はいいんです、きっと学校もそれなりに回っている可能性も高いような。ただ、時代と社会の流れと変化に合わせて、学校という組織も変わっていく必要があり、先生のアシスタントの導入のような形は増えていくように思います。

2020年2月24日月曜日

スウェーデンの特別支援教育専門員の資格について

 スポーツ休暇ですが、春の訪れを感じさせる、イースター休暇と間違えるような良い天気が続いています。今日はスウェーデンの特別支援教育の専門教員の資格についてご紹介します。スウェーデンには、特別支援教育を専門とする資格が2種類あります。両方とも、準マスタークラスになり、学士である教員課程を終え、その資格で3年働いたのちに、大学に通うことができます。

 2種類の資格は
1.Speciallärare (スペシャルラーラレ):特別教員
2.Specialpedagog (スペシャルペダゴーグ):特別教育士

です。この日本語の名称は、あまり明確ではなく、私はいつも訳に困ります。どちらも専門職です。もともとスウェーデンにあった資格は、1番の特別教員で、インクルーシブ教育が提唱され始めたころ、1992年に作られたのが2番の特別教育士。これに伴い、一時的に特別教員の養成課程がなくなったのですが、その後、2番の特別教育士のみでは、やはりうまく回らないということで、2008年にまた始まりました。こちらは、5専攻、読み書き、算数、知的障害、盲ろう、言語障害となっています。この特別教員が実際に生徒に関わって教えることを目的としているのに対して、2番の特別教育士は、コーディネーター、コーチングを主として行い、教員や組織に関わっていく点が大きく違います。といっても、どちらも不足しているため、各学校その職務はまちまちといったのが現状で、仕事内容は千差万別といったところです。

私は、日本の免許を書き換えたときに1番の特別教員の資格が認められたので、マスターをとったら、2番の特別教育士を取ろうと思っていたのですが、学校から支援してもらえるということで、急遽順番を変え、2番目の特別教育士の資格を取っています。この資格をとると15hp何かを勉強し、その後15hpで論文を書くとマスターが取れます。私は既にマスターの授業を15hp分とっているので、資格を取ったら、15hp分の論文を書けばマスターもとれます。といってもそこまで順調にいっても3年半かかり、スウェーデン人の友人には、「それで大きくなったら何になるの?」と聞かれております。まあ、趣味なのでと答えている次第です。

コースはフルタイム100%の場合は1年半、ハーフの場合は3年となり、たいていの人が働いているので、ハーフ50%を好み、仕事しながら勉強している人がほとんどです。私のコースも多くの人が50から80%くらい働いている感じです。私のように国からお金をもらっている人も多いです。私はハーフで20%お給料をもらって勉強していますので、上記の通り、3年半くらいかけてマスターまで取れればいいほうで、途中で何かあれば、さらに伸びますねえ。

大学の勉強は最初のうちは一緒に行い、途中で専攻によって分かれます。今のコースが混ざっていて、それはそれでいろんな話が聞けて興味深いところです。また今度今の課題、最初の学期について書こうと思います。では、また。

2020年2月22日土曜日

保護者に寄り添って

 今日からスポーツ休暇です。スウェーデンにはスポーツ休暇というウィンタースポーツを推奨する休みが2月もしくは3月に1週間あります。その昔は、冬の嵩む暖房費のためだったり、風邪などの病気の蔓延を防ぐための休暇だったと聞いています。今年のように雪も少なく、南部スウェーデンのように春が訪れているとスポーツ休暇もウィンタースポーツにこだわらず、子どもたちがいろんな活動を楽しめる休暇となってきています。ここ数年は、各コミューンが様々な子どものためのアクティビティを用意しており、多くの子どもたちに参加してほしいなと思っている次第です。

 この職業だからだと思うのですが、時折、障害がある子どもの親である知り合いや友人から連絡をもらいます。友達という人もいれば、知り合いという人も。会いたいという子とで会うこともあれば、メールのみのやりとりであったり。そして、生徒の親であった人もいます。私たち夫婦には子どもがいないので、子育ての苦労ということは理解ができないのですが、できる限り、友人や知り合い、保護者に寄り添って話を聞くことができればと思い、連絡をもらうと話をその機会を大切にするようにしています。少し年をとり、若いころほど、話を聞いて私が何かしてあげようというような奢った感情は減り、話を聞くということに重きを置き、私が知っている知識で話せることを少しばかり話すようにしています。

 日本でもスウェーデンでも、障害がある子どもの親としての悩みは共通することが多く、スウェーデンにも日本にも様々な福祉制度がありますが、いかに使いこなして、自分たちの生活を成り立たせていくかは、容易なことではありません。障害があるといっても、その障害の種類や程度は様々で、いろんな人の話を聞くと、また、そこに難しさ、複雑さがあります。少し落ち着いていた子が、思春期を迎えるころに、大きく精神的に不安定さを抱えて親が悩むというのも何度も経験してきました。青年期に入り、発達というよりは、現状維持の時期に入り、容体が芳しくないというのもあります。できるかぎり、話を聞くことに徹し、できる限り、適切だとその時思われることを話すようにするのですが、自分の無力さを感じることも多々あります。保護者が抱えている悩みやつらさをすべて理解することはできないのですが、それでも、そばに寄り添い、この人に連絡をしてみようと思っていただき、連絡をいただいていることを光栄に思います。お茶を飲みながら、近況を報告し、話をしている時が何かをもたらしていると願ってやみません。

 このブログを通しても、何人もの方から連絡をもらいました。残念ながら、長年にわたり私のほうでは収拾がつかなくなっておりますが、便りがないのは良い知らせだと思うようにしております。時折もらう近況で、そうだったこの方ということがあります。また、いつか話をしたり、お会いしたりすることができることを願いつつ、皆様の健康と充実した日々を願うばかりです。

 私もこのスポーツ休暇は9連休なので、早速病院の予約をとりました。ちょっとばかし気になる痛みがあるので、見てもらいに行ってきます。あとは、大学の課題をこなすのと、スポーツ休暇明けの先生向けの会議の準備、数名の友人と会う予定になっています。楽しみです。皆様もよい週末を


2020年2月16日日曜日

スウェーデンの重度障害児の教育権保障の歴史

 入っていた予定がキャンセルになり、久しぶりにまったく予定のない週末でした。色々とあって疲れていたので、彼と一緒にゆっくりと過ごすことができ、休養ができました。学校はあと1週間でスポーツ休暇です。

 今日はスウェーデンの重度障害児の教育権の歴史に関して少し。障害児、障害者といっても、障害によってかなりその歴史は異なります。スウェーデンも盲、聾の方たちの教育はかなり早く始まりました。しかしながら、私が関わっているような重度の障害児の教育が制度化されるまでには、かなりの年数を要しました。軽度の知的障害児たちの教育義務化に数年遅れて、知的障害がある、重度重複の障害児の教育が義務化された年は1968年。しかしながら、この子たちの教育は、日本の文部科学省にあたる学校局ではなく医療の管轄化に置かれ、他の学校種別同様に学校局の管轄区になったのは1986年で、最終期限である1996年1月1日までに医療管轄から、コミューンと呼ばれる行政自治団体に移行されました。大体90年代初めに移行されているコミューンが多いようです。

 こうした医療のもとに置かれていたという歴史は、私が働き始めたころもまだ残っていて、教育を行うことの難しさを感じたものでした。この子たちの教育には、社会福祉やハビリテーリング、病院など多くの機関が関わっており、当然といえば当然なのですが、守られるだけの存在ではなく、この子たちも学べる、成長するんだという考えとその権利があると訴えていくことはなかなか簡単ではありません。

 1986年に学校局への移行が決定されたのち、1989年には、障害児者に関する社会福祉局やハビリテーリングなどの、各所の分担などに関しての調査が行われました。このあたりの経緯や結果など、もっと調べてみたいなあと思うのですが、少し気になったのがこの陰にある、財政的な部分の影響。やはり、財政的に問題があり、この調査が行われ、いかに効率化合理化するかが焦点であったようです。一文献では何とも言えないのですが、ふと、今のスウェーデンの状況が頭をよぎりました。重度の障害児のみでなく、発達障害などの生徒の予算も削減されています。これらの影響がどのように出るのか、本当に気になります。

 いつか日本との歴史の比較などもできたら、興味深いだろうなあと思う、日曜日の午後です。明日から新しい1週間の始まりです。皆様にとってもよい1週間となりますように。

2020年2月10日月曜日

スウェーデンの学校の研修システム

 先週は忙しかったので、夜もほとんど家におらず、ブログ更新とか言っておきながら、早速イマイチな感じのスタートでした。そんな週もありますよね😊。

 今日はスウェーデンの学校の研修システムについて、少し。忙しかったのは、研修で2日間会議に参加したためでした。会議の名前は、「未来の特別支援学校2020」。昨年も同じのに出たのですが、昨年の方が良かったかな、内容😥 校長と同僚2名の4人で参加したので、色々と話ができたのは楽しかったですし、それなりに収穫もありました。

 スウェーデンの研修システム、日本の先生方に聞くような、「何年目研」というのはありません。教員採用のシステム自体が大きく異なりますし、研修のシステムも違います。今回私が出席したような単発的な会議や研修は、各学校で校長などの判断により行われることが多く、一人当たり結構な値段がするので、いけると結構ラッキーみたいな感じはあります。

 このほかに校内で研修を組んで行うものもありますし、私のようなヘッドティーチャーによる研修もあります。また、学校局のサイトにも研修サイトがあり、そこを利用するのもあります。

 とここまで読むとおわかりのように、これというシステムがあるというよりは、教員の希望をもとに現場の質向上のシステムに基づき、学校、校長判断でされるというのがスウェーデン流でしょうか。簡単にいえばですが、もちろん。

 最後にカンファレンスからの写真を少し。




2020年2月1日土曜日

スウェーデンの幼稚園のおむつ問題勃発中

 妹たちの子どもが保育園に通っていた時に不思議だなあと思っていたのが、おむつに名前を書いたり、おむつをもって帰ったりしていたこと。その子たちも大きくなり、年末年始には姪っ子が3人遊びに来てくれました。その昔、といっても、なんともう10年も前!に私がスウェーデンの幼稚園で働いていた時は、園におむつがあり、それを使用していました。ということで、子どもたちが持参するということはなかったということになります。

 2019年11月にストックホルム郊外のコミューンにある民営の幼稚園が親に保育料を上限まで支払っている保護者におむつ代の負担を要求したことは、法に反しているという判決を行政裁判所が下しました。すでにおむつを支給し始めているコミューンもあるということで、そうか、スウェーデンでもおむつは支給されていないところがあったんだなあと思いました。ストックホルム、ストックホルム近郊のコミューンの多くはおむつは園で支給という形が多いようです。判決は明確で、おむつ代は不正な請求を親にしているとあり、高等行政裁判所も同様の判決をだしたとあります。最上限度まで保育費を負担している場合に、それ以上の費用を請求するのは違反と。

 あるコミューンでは、おむつ問題に注目しつつ、これまで同様におむつは持参してもらい、支給はしないとあり、やっぱり、おむつ支給されていないところが国内にはあったんだと。すっごい違和感あるのですが、私がスウェーデンの文化に慣れすぎたからかしら。フェイスブックの議論を読む限り、半々くらいかなという印象を受けます、この問題。おむつの合うあわないもあるし、持参でいいのではというかたもやっぱりいました。

 うちの学校の生徒はおむつを使用している子が多いのですが、こちらは、生徒持参です。それぞれサイズも違うし、おむつ代は別のところから出ており、年に何回かの支給型になっていたはず。また、保護者に聞いてみようと思います。

 今回の幼稚園おむつ問題は、今のところ、スウェーデンのコミューンとレギオンの組織が、判決が出たのは、上限まで保育費を負担している保護者への更なる費用請求の違反ということで、おむつ代を幼稚園がもち、支給しなければいけないという判決ではないということで、組織としての方針は出していません。このSKLは大きな力を持っているので、ここが方針でも出さない限りは、コミューンは今までの慣習に合わせていく、もしくは、コミューンの縮小財政により、親に持参させる園が増えないとよいのですが、今後どうなるか気になるところです。