2023年12月31日日曜日

ストックホルム市の教育予算削減 その2

  前回に続き、2023年回顧録ということで、ストックホルム市の教育予算削減についての投稿になります。その1はこちらを

3. 組合を含む会議による人員削減プロセス

 その1の2で書いたのですが、教育予算削減の関してのリスク分析が行われ、それと並行して、かなりのスピードで行われたのが、人員削減を法律や決まりにのっとり、できる限り透明に行うために、普段は月1の関連会議が頻繁に行われました。といっても、私はこの会議には出席しないので、はっきりと内容などを書くことはできないのですが、この会議は、職員側の代表として、組合の係りの職員が出席します。うちの学校の場合、教員は教員組合で、この当時は2組あり、それに加えてアシスタントなどは所属する組合があり、その代表が出席します。そこに、ほかの組合の代表がいれば入り、校長や副校長、経営担当者などが、会議を行っていました。多いときは週1くらいで行っていたような記憶があります。もしくは、長い会議を行っていたような気がします。この会議で、雇用する側されている側双方の理解を図り、できる限り迅速に行うことで、削減される人は、ストックホルム市内での配置換えを申請し、秋学期からほかの学校や職に移ってもらうということになります。

 この過程で私たち全職員が行ったのは、ストックホルム市の職員としてどこで何年働いたかという確認書類にサインをすることです。この雇用年数の短い人から削減対象になるので、間違いがないようにという配慮です。生徒数650人ほど、職員は、100人ほどいるので、作業としてはそれなりに時間がかかるものでもあります。そして、削減対象の人が決まり、この最終決定の会議が行われたのが、4月頭だったと思います。


4.リスク分析会議

 私たち全職員が行ったのが、リスク分析会議です。スウェーデンの学校では、1年に1回職員アンケート調査が行われ、その結果に基づいて、職場の改善プランを立てます。これに基づいて作られた改善プランに加えて、今回の職員削減、教育予算削減がどのようなリスクをもたらすか、影響を与えるかを書いていきます。それ用の用紙があり、項目に従い、リスクのあるなし、その程度などを話し合い書きます。これを各グループでしました。私は、支援学校の先生たち、9人と行いました。今振り返ると、あの会議は、生徒のアシスタントとも行うべきものであったと感じますし、先生だけで行うと、職種が違うので、リスクが低いとしたものも、生徒のアシスタントにとっては、大きかったりと、思うところはいろいろあります。このリスク分析会議の結果も上記の関連会議で話し合われます。


5.人員削減による職員の転職

 最終的には、何かしらの事情による転職も含めるとかなりの人数がやめ、支援学校では5名のアシスタントが市内の配置換えとなりました。全校では、おそらく10名ほどだったのではと思います。近隣の学校の中では最も多い数であったと地方紙にも取材されました。支援学校は、誰も読んでいないかもと書きながらも、やっぱり、ブログでは書きにくいような事件や発言が相次ぎ、疲れました。これだけが原因ではないのですが、副校長が辞職し、直属の上司が不在となったことにより、私の仕事も増えました。

 そして、夏の休暇中に転職しますという報告が数名あり、また体調不良などで休む職員も出て、ふたを開けて秋学期になったら、職員不足で新たに雇用開始という始末に。。。これもあるあるで、スウェーデンのように学校に雇われる場合、自分で決めて転職できるので良いと思う反面、こういう事態になると、ほかのところに移っていく職員が出ます。今書いていてもため息が出ますが、それぞれ個人の事情があるのですし、仕方がないことです。仕方がないで済まされないのが、私のアシスタント、秋学期開始から秋学期終了まで残っているのは、なんと1名。5名中です。全員がやめたわけではなく、ほかのクラスの事情から、できる職員を配置換えさせたりしているので、ほかの先生は何でOKしたのかといわれましたが、ほかのクラスの窮状もほかってはおけないし。。。ここには書く気力も起きないような出来事もあり、二転三転し、今の職員で何とか春学期を乗り切りたいと思っている次第です。

6.1クラスの生徒数の増加

 人員削減で何がおこったかというと、基礎学校を含めて、1クラス当たりの生徒数が増えました。うちの学校は、ストックホルムでも1、2を争う大規模の支援学校ですが、クラス数は7クラスと少なく、全国の支援学校の先生と話すと、いかに1クラスの生徒数が大きいかがおわかります。基礎学校も生徒の出入りがありますが、例えば、1クラス減らしたので、その分1クラス当たりの生徒数が増えるという状況になります。ただ、基礎学校は支援学校以上に生徒の出入りがあったりするので、クラス自体を減らすことは珍しくないのです。近隣の私立の学校などに席が空くとそっちに数人移っていくというのもめずらしくないです。

 ということで、減らされた職員で人数の多いクラスを見ることになり、私の場合、軽中度の知的障害の重複障害児を見ているので、上記のように職員の入れ替わりも激しく、人員も削減された中での秋学期は大変でした。そして、こうして言葉にすると、「私よくがんばりました」と振り返ることは多いのですが、心から自分をほめてあげたい。


 ということで、このあたりで、教育予算削減に関わる回顧録を終え、2023年のブログを終えたいと思います。もっと、書きたい事実やシステムなどもありますが、それはまた別の機会に。


 皆様、今年も私の更新頻度の少ないブログに足を運んでいただき、本当にありがとうございました。インスタグラムに挙げた今年の選りすぐりの9枚の写真とともに、皆様の大晦日が穏やかなものとなり、幸多き2024年となりますように心から願っております。

 


 

2023年12月30日土曜日

ストックホルム市の教育予算削減 その1

 私はストックホルム市の教員、公務員をしています。スウェーデンの公教育に関わって、もうすぐ20年になろうとしていることに驚きを隠せません。日本の方と話が合わないことがあるのも当然だと思いながら、昨日の今年の振り返りで、さらに振り返っておかなくてはと思ったのが、教育予算削減です。せっかく、現場で働いているのだし、このブログ、もう読んでいる人はほとんどいないのだし、現場から見た事実を書こうと思う。表面的な情報は、ネットでいくらでも見つけられる時代だし。ということで、時系列に、記憶をたどって、スウェーデン、首都ストックホルム市の教育予算削減の影響を振り返ります。

1.2023年1月、教育予算削減の第一報が入る


 ちょうど1年前になりますね。年が明けるとスウェーデンでは春学期が始まります。学期初めの初日は職員の研修日です。その日は私は振り返ると、ヘッドティーチャーとして、今やっている全国の支援学校との共同プロジェクトのスタートを切る会議を前の副校長と計画し、2時間の研修会議を受け持っていました。というのは、良い方の記憶で、このころから、風向きが怪しくなってきていました。スウェーデンの学校での予算削減の影響を受けるのは、今回が初めてではなく、前に勤務していたストックホルム郊外の小さな市や少しだけ勤務した市でも働いていた10か月の間、ずっといかに予算削減に対応するかという会議でした。このあたりが、日本でもそうなのかなと、この夏の帰国で日本の先生と議論したいところですが、お金が削減されるという予算計上が出されると、市から校長会などを通じて校長に連絡が入り、そん後の学校の会議は、この内容でほぼ一色になります。

2.2023年2月から始まった、教育予算削減に関するリスク分析


 記憶が正しければ、うちの学校の定例水曜日大会議(学校中の先生が集まって30分の会議がある)にて、詳しい説明を受けました。どのくらいの削減で、どう影響をうけるのかなど。記憶しているユニークな説明は以下の通り。

  • ストックホルム市の予算が厳しいのは世界情勢や物価高もあるが、スルッセンの工事にお金が予想以上にかかってしまったこと。もちろん、この理由は公では言われませんので、冗談半分でいわれる事実であると私は認識していますが、時折出てきます、この話。。。スルッセンとは、ストックホルムの旧市街とその隣の島を結ぶ地域で、数年前から開発が行われています。写真は借りてきたものです。


  • 政権交代の影響も当然ですが、出ました。日本の学校で働いていた時は若かったし、立場も講師だったし、と振り返るのですが、スウェーデンの学校は、政治に強く影響を受けると常々感じています。この辺りはきっと日本でもいっしょなのかなとか想像しながらも、ここまで直結している感じは受けないのですが。スウェーデンの選挙は4年に1回なので、2022年の選挙でストックホルム市は、赤緑路線になりました。スウェーデン社会民主労働者党側です。これにより、教育福祉への予算が増えるかと思いきや、選挙公約は実現することなく、各学校は予算削減の対応に追われることになりました。こうした政権交代の余波は、基礎自治体でも出るもので、互いに交代を理由にするというか、方針転換というか、いろいろと思うことはあります。
  • 私の勤務校は、ストックホルムの予算配分に関する移民や難民の多い地域リストの真ん中くらいなので、一応予算が余分につきます。この加配分の予算が曲者で、例えば、学校の人気が上がったり、頑張って9年生の成績結果をよくしたりすると、生徒が増えたり、これらのランクが上がったりして、なんと、加配金が減るのです。まあ、当然と言えば当然ですが、今年のように、何もしていなくても、物価がも上がっていくし、普通にしていてもお金がかかるのに、予算削減では、慌てるのも仕方がないです。
  • 学校で削減できるところは、実はそんなにないのです。学校運営って、いろいろ削減できそうであまりできない。一番削減してその成果が出やすいのが、人件費。スウェーデンは特に人件費にお金がかかる国でもあるので、この人件費をいかに削減するかによります。といっても、うちの学校はなかったけど、購入ストップがかかった学校も多くて、フェイスブックなどで、そんな就学前学校などの情報も流れました。ランチにかけるお金が少し減らされたり、遠足の時は、必ずジュースだった飲み物が、お水に変わったりと、様々な削減対策も練られているという印象を受けました。

ということで、人件費が削減されるという報告がされ、会議以降、組合と学校の関連会議を通じながら、削減される人のリスト作成が始まったのです。これと並行して、各グループで、これらの削減による「リスク」の洗い出しが始まりました。


と、書き出すと、思っている以上に私の2023年に影響を与えているという印象をうけます。仕事は日中の多くの時間を過ごしますしね。これに加えて勉強と家族と、子どもがいればこどもと、私たちの人生は、生きているだけでまるもうけといったさんまさんの言葉を思い出します。ちなみに、私はいまるさん好きなんです。犬好きのいまるさんのインスタをフォローしては、うちの2匹を眺めています。と、長くなったのでこれくらいに今日はしておきます。ではまた~!

2023年12月29日金曜日

2023年を振り返り

  2023年も残り数日となりました。AIに年の瀬に書くとよいブログのテーマを提案してくださいと頼んだら、ちゃんと素晴らしい候補をいくつか挙げてくれ、その中から、今年の出来事や成果を振り返り、新しい年に向けての抱負や目標を語る記事を書きたいと思います。今年は、年初めから波乱万丈で、私のSNSをフォローしてくださっていた方は、ご存じの通り、ツイッターは閉鎖し、Youtubuチャンネルは休止、このブログは不定期更新、かろうじてインスタグラムが更新され、連動してフェイスブック更新という感じで、アウトプットが少なめの年でした。そんな2023年の締めくくりにまとめる今年の出来事は以下のようになるかなと思います。

1.特別支援教育士(Specialpedagog)資格習得

 2023年の大きな出来事は、やはりこちらになるかと思います。長らくとるか取らないかと、うだうだしていた資格をついに取り終えました。一区切りついた感はありますし、最後の論文書くのが大変でした。二人で書く予定が、途中から一人で書くことになり、書き始めたと思ったら、義理の父が心臓発作で倒れ、その後亡くなりまして、もうあきらめようかなと思ったのですが、何とか書き終えて卒業したという、こうして振り返ると、なんてことない感じですが、実際には大変でした。

 資格習得をして何か変わったかというと、何も変わっていません。この資格で働ける仕事に転職しようというプランや起業しようという考えはありますが、今受け持っている生徒たちを卒業させたいのと、学校でかかわっているプロジェクトは終わらせたいという思いもあり、現状維持しています。特別支援学校で働いているので、学んだ知識は日々に生かしつつ、今後を考えていこうと思っています。

2.世界情勢と財政削減の影響を深く受けた1年

 2023年は、世界情勢の不安定さ、それにより財政削減の影響を深く受けた年であったと振り返ります。職場は、ストックホルム市の予算により、年明け早々に人員削減の影響を深く受け、それに伴う会議や対策に追われました。夏前には、かなりの数の職員が削減され、その余波を秋学期は深く受け、仕事量も心労も多かったと振り返ります。こうした世界情勢などの影響は、ニュースなどを通じて自分が思う以上に、心身に影響を与えているのだと実感した1年でした。

3.今後の人生を深く考えた1年

 人生はよいこともそうでないことも起こりますので、私も今までの人生でいろんな事件や出来事に出会いました。それでも、ここまで健康であること、生きているということを考えた年はなかったように思います。パートナーが長らく病気であることに加えて、義理の父の死、自分も年齢相応に衰えを感じ、人生も折り返し地点を超えて、先を見ていくことが重要になってきて、同僚や友人との話もそんな内容が増えました。人生は長いようで短く、いかに残りの人生を生きていくかと考えながら、自分がそんな年齢になったのだと深く感じました。

4.感謝の多い1年

 2023年はつらいことが多い年であったと振り返り、残り数日となり、内心やれやれと思っています。年の瀬にこんな風に思う年もあまりなかったように思いながら、それでも、今振り返りながら感謝の多い年であったと思います。年の初めに「ふたりぱぱ」のYoutubeに出演したことから、何人か新しい出会いをいただきました。ああして声をかけてくださる方がいることに感謝です。つらいなあといえる友人が数人いて、必ず話を聞いてくれます。仕事に行けば、楽しませてくれる生徒がいて、同僚がいます。新しく来た副校長にも感謝されることが多く、同僚たちにも恵まれています。パートナーは、なかなかよくなりませんが、それでも二人で何とかやってこれれています。愛犬は、一進一退でどうなるかわからないのですが、それでも一緒に年越しができそうです。義理の父の形見であるもう片方の犬は、その様子が義理の父に似ていて笑えます。今日は、日本からプレゼントが届き、涙です。書き出したらきりがない感謝の多い年です。このたくさんの感謝を何かの形で誰かに返していけたらと思う限りです。

5.アウトプットの少なかった1年

 今年は、アウトプットが少なかった1年であると振り返ります。上半期は、特別支援教育士の論文に追われ、SNSシャットダウンでしたし、義理の父の死とパートナーの病気でなかなか心に余裕がなく、マスター論文を書こうと四苦八苦して、結局アウトプットのあまりできない1年でした。アウトプットは時間がない時こそするべきかなと思いなおし、とりあえず、新しいことを始めるよりは、インスタグラムとブログを有効利用していくのがいいかなと、ほぞ細と、どちらも更新しています。マスター論文は、遅々として進まず、どうなるかわからない状況なので、書き終わったらという甘い夢は捨てようかと思い始めています。2024年は、2月の終わりにオンラインでインクルーシブ教育について話すというのが入っているのと、夏に日本帰国、連続学習講座、視察依頼など既にいろいろ入っているので、日本語の練習も含めてアウトプットを増やしていこうと思っています。


こんな感じかなと振り返っています。AIは新年の抱負や目標ものことでしたが、長くなったし、このあたりで終わりたいと思います。昔のブログから移行した記事が200くらいあって、それを読み返しながら、昔を振り返り、リライトしてあげてこうと思います。初心を今一度思い出し、気分も新たにしていきたいと思う年の瀬です。皆様の年の瀬が穏やかで笑顔あるものであることを願っております。



義理の父の忘れ形見、シーズー犬のピモです。フィンランド語で「きれいな女の人」というような意味だと聞いています。

2023年12月10日日曜日

2022年のスウェーデンのPISA学習到達度調査の結果考察

  今学期も残り僅かになり、私も疲れを感じるノーベル章授賞式の日曜日です。今週は、2022年のPISA学習到達度調査の結果が公開され、スウェーデンの教育界では大きなニュースとなっています。せっかくスウェーデン語もわかりますし、学校庁のメディア向け報告や様々なニュースをまとめて考察してみようと思います。


1. 学校庁がまとめたPISAの結果

 スウェーデンの学校庁がメディアを集めてPISAの学習到達度調査の結果を発表したのが火曜日でした。そこで発表されたのが以下の結果です。
  • スウェーデンの15歳児の数学的リテラシーと読解リテラシーが低下した。科学的リテラシーは前回と同位。この結果は、多くの他国と同様の傾向にある。
  • 数学的リテラシーと読解リテラシーは、2012年の「PISAショック」の時と同じレベルまで低下した。
  • スウェーデンの15歳児の数学的リテラシー、読解リテラシーと科学リテラシーの結果は、OECD平均を上回った。
  • スウェーデンの学校教育の均等性は悪化した。OECDレベルではあるが、スカンジナビア諸国に比べると劣化している。
順位を以下の表から見ると、数学的リテラシーは、日本が1位でスウェーデンは、18位です。読解リテラシーは、日本は2位で、スウェーデンは14位。科学的リテラシーは、日本は1位で、スウェーデンは17位です。スカンジナビア諸国を比べると、フィンランドとデンマークはスウェーデンより良く、ノルウェーとアイスランドはスウェーデンより悪いという結果になっています。

2.2012年のPISAショックの記憶

 スウェーデンの2012年のPISAショックの記憶は私も思い出すことができるほど、大きなニュースでした。あの2012年並みまで、今回は結果が下がったということで、またまた、スウェーデンの教育界は揺れそうです。少し、2012年と比べて結果を見ていきます。

 数学的リテラシーは上記の図にあるように、2012年にドーンと落ちた後回復傾向にあったのですが、今回またドーンと落ちました。

 読解リテラシーも、同様の結果です。せっかく回復したのに、それがまた落ちたということですが、学校庁側はこれを新しいトレンドとかショックという風には言いたくないようで、そんな感じがいたるところで読み取れます。2012年のあの大騒ぎとその後の様々な対策を考えると、教育現場にいるものとしては、落ち着いて情勢を見てもらった方がいいように思いますが、危機感も持ってほしいところです。

3.今回の結果の要因

 今回のPISAの結果の悪さの要因は、コロナ禍の影響があるというのが、スウェーデンでも、多くの諸外国でも言われています。スウェーデンの結果も多くの諸外国と同様の傾向にあるということも、学校庁が繰り返し話します。ただ、国内外の研究者や現場からは、これに関して冷ややかな意見も聞かれます。スウェーデンは、コロナでも学校を閉鎖しませんでしたし、それを第一要因とするのはどうかという感じです。また、ほかの国も低下したのだからというのは、国の説明としてはいまいちのようにも感じます。このあたりのコロナの影響は、想像するしかないのですが、学校を閉鎖していたら、もっと結果が悪かっただろうという見方もあれば様々です。

 スウェーデンは、学校教育は基礎自治体が運営自体は行っているので、なんとなく、そちらへの責任転嫁のような感じも読み取れ、私もどうなんだろうかと思ってしまいます。今回の結果が今後どのように学校教育に影響を与えていくのか、気になるところです。早々と出てきた案が、学校での携帯電話の使用の禁止。あとはやっぱり、就学前からのスウェーデン語の強化などです。

4.排除率は?

 2018年のpisaの時に大きな問題となったのが、スウェーデン語や障害などを理由に排除された生徒の割合でした。2012年のショックから、2015年でなんとか持ち返したので、それを下げないためにも、また、あの時よく言われたのが、ほかの国はスウェーデンよりも生徒を排除しているのだからというような感じの話でした。今回もこの点については注目されています。学校庁によれば、各学校において、スウェーデン語の問題や障害によって、pisa対象生徒であっても、適切に各学校で判断が行われ、できる限りの対象15歳児が今回のpisaを受けたとのことです。以下がその排除率に関する図になります。2018年よりも、少し減った程度で、結果に配慮するほどではないとのことでした。



 このpisaのテストは、各個人の障害などにテストを合わせることができないので、障害がある場合などは、免除という形で結果から排除されます。どこの国も行っているのですが、図を見ると、デンマークの排除率が今回は高めです。


 もっと詳しく見ていくといろいろあるのですが、今回の結果のまとめとして学校庁が出したものは、
  • コロナの影響が大きいこと
  • 近年の移民や難民の増加の影響は、今回の結果の低下の説明にはならないこと
  • これまでの前向きなトレンドはなくなったこと
  • 学校教育の均等性がさらに悪化したということ
と上げています。書きたいことは多いのですが、長くなりましたので、このあたりで。今回は、少しだけ、ピサの結果をまとめてみました。いろんな記事が次々と出ていて気になります。また、少しずつご紹介できればと思います。

全ての情報は、学校庁のものです。




2023年12月5日火曜日

スウェーデンの特別支援学校の教育も様々

 私は、現在スウェーデンストックホルム市の公立の基礎特別支援学校で勤務しています。これまでに、2つの基礎自治体の基礎特別支援学校で働いた経験があります。学校見学は、いくつも見てきているので、それなりに国内事情は知っているのではと思います。スウェーデンでも、学校によって教育の仕方や特色には違いがあり、それは、在籍している生徒のニーズに合わせてというのが、大きいように思います。今の学校で行われていない、前の学校で行われていた内容で思い出すのが、例えば、「車いすダンス」の授業。車椅子利用の生徒が多かったので、車いすダンスは、人気がありました。金曜日の最後の授業が車いすダンスだったときもあり、みんなでダンスを踊って終える1週間は、楽しかったなあと思いだします。生徒たちも笑顔がいっぱいで。

 一番長く勤めていた学校は、まだ経済的に余裕があった時代で、ICTの先生が特別支援学校専任でいて、その人が行ってカラオケの授業もありました。衣装まで変えてノリノリでやっていたことを思い出します。ああいう授業もやっぱり特別な先生がいるからこそできるものという感じがします。

 あとは、「アフリカ太鼓」の授業。どんなふうにたたいても楽しめるアフリカ太鼓を、職員でみんなで音楽博物館に学びに行って、授業に取り入れてと、思い出します。同僚たちと楽しんでいたなあと思います。

 今の学校は、基礎学校と併設していて、その良さはありますが、経済的に一緒に運営されているので、たまに疑問に思うこともあるのが事実です。また、いつかそんなこともかければと思います。



2023年12月3日日曜日

世界障害者デーと車椅子と雪

 今年のスウェーデンは、早々と雪が降り、ストックホルムのあたりも雪で真っ白です。11月は日照時間も少なく、薄暗い日が続くので、この雪の白さは心を和ませてくれます。しかしながら、困るのが、車椅子での移動です。

  雪道って、本当に大変です。特に、こっちでは、滑り止めに土と砂利を混ぜたようなものをまくので、それが余計に車椅子の移動を困難にします。先週も、特別支援学校の高校のオープンハウスへ出かける予定でしたが、キャンセルし、再来週も特別支援学校の高校に行く予定なのですが、どうなることかと思っています。

 今日は、国際障害者デーです。あまり注目されることがない日のように感じるのは私だけでしょうか。その歴史は、実は割と長く、1982年12月3日に国際連合総会において、「障碍者に関する世界行動計画」が採択されたことを記念して、1992年から毎年国際デートして12月3日に国際障害者デーを設けています。スウェーデンでは、年によっては、デモが行われたりとするのですが、今年は、そんな話も聞いていません。雪のために車いすでのデモが難しいためかなとか勝手に思っていますが、こうした国際デーに注目して、少しでも障碍者問題の理解や促進を行っていくことは大変重要であると思います。

 

美しい雪景色と太陽です。