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7月, 2022の投稿を表示しています

文理閣出版「人権としての特別支援教育」の読書会に参加

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 この春に、文理閣から出版された、 「人権としての特別支援教育」 の読書会が昨日ハイブリット方式で開催されたので、私はオンラインで参加しました。この本の最後の「展望」に「スウェーデンのインクルーシブ教育」について寄稿をさせていただきました。読書会で考えたこと、この本の素晴らしいことをまとめたいと思います。   アマゾンのこの本 の解説には、以下のように書かれています。 「 子どもの発達と学習を保証する権利としての障害児教育、決して「特別」ではない特別支援教育のために編まれた、学生・教員・ボランティアに向けた新しいテキスト 」 この本は、 「人権」 を軸にして「特別支援教育」が関わる全ての部分を網羅した、入門書と言えるのではと思います。本の編著者である、近藤真理子さんが読書会の始めに、この本に対する思いをお話しくださいました。心に残ったことがたくさんあるのですが、 人は誰もが、唯一無二の存在であり、その人らしく、仲間の中で育っていく権利があり、 その能力に応じて等しく教育を受ける権利がある と。こうして読むと、おそらく多くの方は、そんな当たり前のこと、と思われるかもしれません。それでも、その当たり前のことが実際にはとても難しいことが多くあります。スウェーデンの学校法の中にも、これと同じことを保障した部分があります。 唯一無二の存在 かけがえのない存在 全ての人に同じ価値がある ということは、簡単なようで、なかなか子どもに伝えることができないし、実感して生活できる人も少ないように思います。今日読んでいた本に、 友達と仲間の違い が書かれていました。スウェーデンの社会の教科書の中にあった、社会で生きる理由の一つが、この人とのつながりでした。私たちは、人と共に、仲間や友達、同級生やいろんな人々の中で学び、育っていきます。この本は、人権を軸にして、教育と共にある特別支援教育を書いた本であり、インクルーシブ教育の礎を語る本でもあると思います。実践が必ず書かれているのですが、そこには、子どもと向き合い、人権という視点から、振り返る教員や大人の姿、そこで苦しみ悩む子供と大人の姿があり、涙が出る場面も多くあります。 目次より はじめに ~この本の特徴 特別ではない特別支援教育~ (I) 特別支援教育の理念と課題 1-1 特別支援教育がめざすもの、そして特別支援教育に求められているもの...

スウェーデンの障害者のデイケアセンター・就労支援施設・作業所①

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   この投稿は、旧ブログの2014年11月1日のものを更新して、再投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著「 医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」 を刊行。是非ご一読を😊  もうずっと放置状態にある旧ブログをリライトしつつ、こちらに移行するという気長な作業をしています。その中から、スウェーデンのデイケアセンター(日本の就労支援施設B型、もしくは生活介護型に当たると思います)をご紹介します。今日の内容は、2点です。 どこのどんなデイケアセンター? 写真でみるスウェーデンのデイケアセンター どこのどんなスウェーデンのデイケアセンター?  私は、スウェーデンの特別支援学校の小学部から高等部まですべてで働いた経験があります。高等部は、6年働いていたので、その間にかなりの数の生徒の卒後の施設を見学にいったり、会議で訪れたりしました。その中の一つを写真になります。この施設は、見学に行ったデイケア施設の様子を紹介します。ここは、今は移転していて、現状のままでは残っていません。私は、その当時高等部では、重度重複障害の生徒を教えていたので、このデイケアセンターも、重度の障害がある成人のための施設になります。  このセンターは、その昔の作業所というよりは、デイケアセンターという感じで、スウェーデン語では、 「Daglig Varksamhet(ダーグリィギ・ヴァルクサムヘート)」 といいます。この場合の多くは、自閉症や発達障害系の障害を持った方たちがLSSと呼ばれる「Lagen om stöd och service till vissa funktionshindrade(特定障がい者のための支援とサービス法)」に基づいて、運営されている施設になります。コミューンが運営している場合もあれば、民間が運営しているものもあります。  写真で見るスウェーデンのデイケアセンター  まずは、廊下。ここにもありました。アッカ・プラッタという乗り物。詳しく知りたい方は、 「アッカ・プラッタという乗り物」 参照、こんな感じで楽しく作ってありました。     止まって、ボールで遊んだりできます。ボタンを押すと、牛さんがダンスします。こんな感じのがいくつかありました。 廊下のあるコーナー。ちょ...

アッカ・プラッタ Akka-Plattaというスウェーデンの車椅子で乗れる乗り物

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 この投稿は、旧ブログの2011年9月16日のものを更新して、再投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著「 医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム 」を刊行。是非ご一読を😊  今日は、この乗り物「アッカ・プラッタ」をご紹介します。旧ブログで、複数の方からご連絡をいただき、おそらく日本でも使用している発達支援センターなどがあると思います。残念ながら、そうしていただいた方とその後連絡が取れていないので気になるのですが、もしも、この投稿を読まれた方で、「見たよ、知っているよ」という方、ご一報くださると嬉しいです。  「 Akka-Platta アッカ・プラッタ というのはなんだ?」と思われた方は、簡単に説明すると、車椅子に乗っている子どもたちが自分の意思で自由に動くことができる機械という感じの乗り物です。どこにでも自由にいけるのではなく、床に張ってある黒いテープを読み取り、そこを自由に動けます。今は「アッカ・スマート(AKKA Smart)というものに進化しています。スウェーデンでは、知る人ぞ知る有名な乗り物です。 こちらが、最新型の 「AKKA Smart アッカ・スマート」です。会社のホームページは、こちらから。 写真のとおり、ただの平たい板に車輪が付いており、タッチボタンもしくは、ジョイスティックで動かすことができ、床に張り巡らされた黒いテープに沿って動くのです。この平たい板の上に車椅子などをしっかりと固定することにより、子どもたちは、自分でタッチボタン・ジョイステックを押して動くことができます。 この様子を見たい方は、 販売会社のホームページから、いろんなビデオ が見れます。この乗り物、すごいのです。たとえば、視覚、聴覚、触覚などに関するものをいろんな形でこの乗り物が通る部分に準備して、しかけておくと、子どもが好きな場所に自分で立ち止まって遊んだり、触ってみたりすることができます。そうした中で、子どもの自主性を養え、その子の興味関心が分かり、コミュニケーションの基礎を教えていくことができます。そんなこと、という、そこの方、これがなかなか難しいんです。重度の障害児で、車椅子に乗っており(車椅子に乗っていない子ども場合は、直接アッカ・プラッタに座ってもよい)自主的に何かするというのが難し...

スウェーデンの学童保育って、どう?!

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  この投稿は、2018年7月7日のものを更新して、再投稿しています。    2022年7月16日に、 初の単著「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」 を刊行。是非ご一読を😊  スウェーデンの学童保育の紹介をします。主な内容は、 スウェーデンの学童保育の名称 スウェーデンの学童には、何歳から入れる? スウェーデンの学童保育、有料、無料? 特別支援学校にも学童はあるの? 学童の時間はどうなっている? 学童で働く人って、だれ? 学童保育のカリキュラム? 学童保育の教員免許 スウェーデンの学童保育の名称  スウェーデンの学童保育は 「Fritids、Fritidshem」 と呼ばれ、発音は「フリーティース、フリーティスヘム」となります。スウェーデン語の意味は「自由な時間」みたいな意味なので、「余暇、学校がない自由時間の時の家」みたいな感じになります。 スウェーデンの学童には、何歳から入れる?  スウェーデンの学童保育は、義務教育になるとは入れます。義務教育は6歳からはじまるので、それまでは、就学前学校(日本の幼稚園・保育園などにあたる)に通い、基礎学校と呼ばれる小学校に入学すると、希望すれば学童に入れます。夏休みが終わる直前、新学期が始まる前の場合が多いように思いますが、6歳で初めて学校にやってくる子ども向けの学童の受入日があり、多くの新入生がその日にやってきて、学童に通い始めます。対象年齢は、12歳までになります。 スウェーデンの学童は有料?無料?   スウェーデンの学童保育は、有料です。各基礎自治体が定めた「最高額で払う金額」が決まっており、収入に応じて、利用料を払います。各自治体によって多少差がありますが、支払うとしても最高で日本円2万円くらいが一般的なようです。収入がない、低い場合は、支払いは生じません。 特別支援学校にも学童はあるの?  特別支援学校にも学童保育があります。基礎学校同様に学校内にあり、学校の規模によりますが、基礎学校とは別のチームで運営している場合が多いです。同じ学校内にあるので、子どもの人数が減る時間や特別な日の学童では、合同という場合もよくあります。特別支援学校の学童は、学童保育の対象年齢に当たらない児童生徒もいて、その場合は、異なる社会福祉法によって、学童を利用します。...

スウェーデンの性教育の歴史とは

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 今日は、 スウェーデンの性教育の歴史 を振り返ります。 背景 性教育の名称変更 性教育の歴史 についてみていきます。 1.背景  スウェーデンの義務教育のカリキュラムが、今年の7月1日より改訂されました。今回の改定には、いろいろポイントがありますが、中でも注目されるのが性教育。私も春学期は新カリキュラムの内容についての研修、他の学校の先生との話し合いがありました。夏の休暇中に、今一度、学校庁のサイトなどから勉強し直しています。ブログでは、アウトプットの意味もかねて、少しずつ紹介をしていきます。その第1弾が性教育です。 2.性教育の名称変更 性教育 と書きましたが、今回の改訂で、これまで 「Sex och samlevnad(セックスと共に生きる)」 と言われていたのが、 「 Sexualitet, samtycke och relationer(セクシャリティー、同意と関係) 」 に変わりました。この名称の変更を読んでいただくとわかるように、時代の変化に合わせて、セックスを教える性教育から、多様な性、同意の意味、そして、互いの関係などを教えるというものに変わりました。 3.性教育の歴史 だいぶ前に教員組合(Läraren nr 9-2021) の雑誌に、性教育特集が載っていたので、その中の歴史の部分を紹介していきます。この特集もとても勉強になったので、少しずつ紹介できればと思います。時は遡り、1778年より始まっています。 1778年:未婚の女性が匿名で出産できるようになる。それまでスウェーデンでは、父親の名前を言わなければならなかったが、これにより、助産師が父親の名前を聞くことが禁止される。 (1842年:国民学校が設立し、学校教育が始まる) 1897年:スウェーデン初の女医による「性の衛生」の講義が教員養成で行われる。 1908年:スウェーデン国会で「性教育者(性に関する教育者)」の名前が使われる。 1910年:避妊薬の情報を禁止する「避妊薬法」制定 1918年:性感染症に関する知識を広める必要性があるのではと、1921年に出された性教育の提案にも盛り込まれる。 (1921年:女性に選挙権が与えられる。) 1933年: RFSU(Riksförbundet för sexuell upplysning スウェーデン性協会) ができる。強制不妊法が制定...

「年齢には権利がある!」知的障害者が年を重ねていく人生について学べるサイト

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  昨日 「スウェーデンの高齢の障害者のプロジェクト:高齢者の良い生活 知的障害者の活動と住居」 について書きました。障害があるなしに関わらず、子どもや若いうちは、「 死 」というものがあり、「 いつかそれは自分にも、親にも誰にでもやってくる 」ということは、あまり実感したり、話したりすることはないかもしれません。それこそ、昔のように、祖父母などと暮らしていれば、順番に年を取っていく姿を見て、誰かの死を目の当たりにする経験を、自然に体験、経験したかもしれません。しかしながら、現在のように、核家族が一般化すると「葬式には出たけど、それが何なのか、死とは」というところまでは考えないかもしれません。障害があると、周囲は、「 わからないかもしれない、わからないだろう 」と、さらにオブラートに包んでしまうかもしれません。それでも、誰にでも、平等に、死は訪れますし、誰もが、少しずつ年老いていきます。そんな「死」や「年を重ねていく人生」について、障害がある方が学ぶことができるサイトが、スウェーデンにあります。 「Åldern har sin rätt: 年齢には権利がある!(スウェーデン語サイト)」  上記のサイトは、障害がある人向けのサイトで、このほかに、登録制で、障害者に関わる施設, グループホームやデイケアセンターの職員など向けの学習サイトもあります。 内容は、5つに分かれており、以下の内容を学ぶことができます。 参加すること 年を取ること 痛み 認知症 仕事 生活スタイルと健康 失うこと、悲しみと死 終末期のケア 良い例 上記の内容を、映像や写真、インタビュー映像などで学び、質問があるので、問いかけながら、グループで学ぶことができるように構成されています。最後にはテストもあるそうで、突破すると賞状がもらえます。 サイトも大変分かりやすいつくりになっており、 年齢について 仕事と余暇について 悲しみと失うことについて 認知症について 健康と生活スタイルについて の興味のあるところから始めることができ、途中でやめても、止めたところから始めることができます。こういうサイトを利用して、デイケアセンターやグループホームでみんなで学べるということはいいなあと思います。職員も学べるように、理解を深めることができるうように別でサイトが用意されているところもよいなあともいます。残念...

スウェーデンの高齢の障害者のプロジェクト「高齢者の良い生活 知的障害者の活動と住居」

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  スウェーデンでもあまり聞かないけれど、わたしがとても大事なと思っているのが、高齢になっていく障害者への支援制度の確立です。そこで、今日はこの問題に関して、スウェーデンで行われているプロジェクトをご紹介します。  スウェーデンでは、障害者は長生きをしてこなかったということで、こうした高齢化の問題が顕在化してきたのは、ここ10年ほどと聞きます。数年前から65歳になって、デイケアサービスセンターを退職した障害者の日常生活や、グループホームから老人ホームに移動させられたというような話がちらほら報道されるようになり、定年退職した65歳以上の高齢の障害者の日常生活の支援制度の確立が叫ばれてきました。  プロジェクトの名前は、 「Gott liv som äldre aktiviteter och boende för personer med IF  (高齢者の良い生活 知的障害者の活動と住居)」 (サイトはスウェーデン語になります。)  このプロジェクトは、2020年8月に始まり、3年のプロジェクトです。基金から援助を受けて、広域行政体や障害者団体、ダウン症協会や自閉症協会なども協力して、一緒に行っているプロジェクトです。プロジェクトの中心は、国内の4つのコミューンに、知的障害の高齢者のエキスパートグループを作り、そこで、様々な研修や活動を行うこととなっています。参加できる高齢者は、知的障害がある50歳以上の人です。  参加している高齢者の中で、 軽度の知的障害の方がインタビューを受けているビデオ を見て、その後いくつかの質問が擁してあり、それをもとに話し合うというのがあります。 そのビデオで話されている内容が、スウェーデンは短期間で今の福祉国家というのを創り上げたのだなあと思わされます。その方は、70歳なのですが、生まれてすぐに乳児院に入れられ、両親には会ったことがないと話されます。70年前は、スウェーデンは、そういう時代で、障害児者は、収容施設で育てられ生活をしていました。保護者が泣いて手放したという話もあれば、この方のように、親に抱かれることもなく、職員に育てられたという人もすくなくありません。20分ほどのインタビュー、大変興味深いのですが、65歳で職場であるデイケアセンターを引退してから、毎日テレビを見て過ごし、することがなかったと。その時のグループホーム...

本「スウェーデンに学ぶ ドキュメンテーションの活用 子どもから出発する保育実践」白石淑江編著

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   夏の休暇も 1 か月が過ぎました。今年は、本の出版、大学の勉強、仕事など、忙しくしていて、夏の休暇の予定を立てることなく休暇に突入。日本は飛行機のチケットも高いし、友達に聞く限り、いろいろ面倒で早いうちに断念。ということで、メインは「のんびりすること」、「したいと思うこと」をすること。そして、多くの時間を読書に😍。家にある読もうと思っていた本を読みながら、オーディオブックを片っ端から聞いています。もう何冊聞いたかわからないほど。読んだ本、全てについて書くことは難しいので、こちらの本について今日は書きたいと思います。 「 スウェーデンに学ぶ ドキュメンテーションの活用 子どもから出発する保育実践 」 新評論 白石淑江編著  そんなにたくさんスウェーデンについて書かれた本を読んだことはないのですが、この本は、丁寧にスウェーデンの現実を書いていると思いました。私は、スウェーデンの公教育にもう長くかかわっているので、どうしても、現実の問題点を考えてしまい、あまりにも素晴らしく、美しく、きれいな部分だけを書いているものを読むと、現実を知っているけど書かなかったのか、本当にしらないのかと思い、疑問が残ります。しかし、この本は、両方の面を実に丁寧に書いていて、感動しました。  白石淑江さんは、お名前は何度も聞いたことがあるのですが、お会いしたことはなく、この本も、彼女が行った長きにわたる研究実践を丁寧にまとめたものであると感じました。編著ですので、ご想像の通り、複数の方によって書かれています。スウェーデンで幼稚園教諭(就学前学校教師)をされているウェンドラー由紀子さんは、その昔お子様を補習校で担任したことを思い出します。森のムッレで知る人ぞ知る高見幸子さんに加えて、スウェーデン人の方が3名加わり書かれています。そして、日本からも。そうした方々の培われてきたものが、ぎゅっと詰まった本でした。  手に取って、是非読んでもらいたいのですが、スウェーデンの就学前学校で行われている教育ドキュメンテーションについての知識が得られるというのは、もちろんですし、日本での実践の様子も大変興味深いです。加えて、2点、私が深く共感し、同感したことを以下に簡単にまとめます。  ウェンドラーさんが書かれた「第4章保育者にとっての教育ドキュメンテーション」は、スウェーデンの就学前学校...

スウェーデン・ウプサラ広域行政体の「支援のための手話」を学べるサイト

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  スウェーデン最古の大学があるウプサラ、そのウプサラ広域行政体が、無料の 「支援のための手話」 を学べるウェブコースを運営しているので、紹介したいと思います。スウェーデンには、「ハビリテーリング」と呼ばれる医療機関になる障害児者、その家族を支援する機関があり、そのハビリテーリングのウプサラ機関が出しているものです。  スウェーデン語ですが、 サイトはこちらから 。  コロナ前は、対面でのコースを設けていたようで、今は対面とこのウェブコースの両方で学べるようになっています。この「支援のための手話」については、 「AAC拡大代替コミュニケーションの種類」 の投稿をご覧ください。また、「 AAC:拡大代替コミュニケーションとは」 もご覧いただける良いかと思います。  このコースは、何かしらの理由で言葉に遅れがみられる子どもの保護者やその子に関わる就学前学校の職員などから、学校教育から成人の障害者の日中活動の支援機関などの職員など、「支援のための手話」の基礎を学びたい人にはとてもよいコースだと思います。一人でおこなうこともできますし、グループで学ぶことができるように、学びのリーダー向けにどんなふうに行うとよいかなども詳しく書かれています。構成は以下のようになっています。 はじめに:「支援のための手話」についてとこのコースのイントロダクション テーマ1:食事の場面での会話で使える支援のための手話 テーマ2:人についての支援のための手話 テーマ3:選ぶ場面の練習 テーマ4:アクティビティの支援のための手話 テーマ5:出来事を話すための支援のための手話 全てのテーマに、家庭での練習用の資料、二人で練習するための資料なども入っており、これで、しっかり基礎が学べます。映像もあるので、手話の様子がよくわかりますし、説明も手話の練習ではなく、「支援のための手話」となっていて、支援のための手話ならこうですとか、きちんと説明されていてよいなあと思いました。  このサイトは、スウェーデン語なので、日本の方で使えるという方は少ないのですが、こういうサイトを公的機関が作っていて、無料で見て学べるということは、AACが広がっていくためには欠かせないと思います。日本版を作りたいという気持ちもあります。そういうときのために、一応Youtubeチャンネルも作ったのですが、なかなか手が回らない毎日...

AAC拡大代替コミュニケーションの種類

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  先日「 AAC拡大代替コミュニケーションとは 」を書きました。今日は、AAC拡大代替コミュニケーションにどんな種類があるかを書いていきたいと思います。この分類方法は、いろいろあると思うので、以下は私がスウェーデンの現場からみてということで、ご理解いただければと思います。 身体の自然な動きを用いたAAC おそらく、子どもをよく観察している指導者であれば、既におこなっていることなのですが、ジェスチャーや繰り返される身体的な動きを、コミュニケーションシステムにするのがこの方法です。手で人を呼ぶしぐさで「来て」と伝えるような基本的なものから、私が学校で行ったものには、「首を横に振ることができる」「右手をあげることができる」といったその子がよく行う行動をもとに、コミュニ―ションを確立していくというものもあります。 手話を利用したAAC スウェーデンで、就学前学校や支援学校でよく使われているものの一つが、こちら、手話を用いた「支援のための手話」です。この支援のための手話は、日本で私も使用していた「マカトン法」のような感じのものです。「手話」とは違うのですが、「手話」を借りてきて、会話の中の重要な部分を手話にするもので、ベビーサインともよく似ています。おそらくもっとも異なるのは、「支援のための手話」は、その子の持っている機能に合わせて、もしくは、その子が使いやすい形に手話を変えて使用することができる点です。なので、同じ言葉であっても、子どもや生徒によって、手話の動作が異なっている場合があるため、「その子の手話」を教師や支援者側が学ぶ必要があります。文章の中の1つか二つを手話にすることが多く、例えば、「牛乳かお水どっちのむ?」と聞く場合であれば、「牛乳」と「お水」を手話で強化して話すという感じです。子どもたちは、こういった手話は本当にすぐに覚えてくれるので、日常会話はこれでも十分なのですが、成長とともに抽象的概念や学校の言葉などを教えていこうと思うと、限界がみられます。 物をを利用したAAC こちらも、小さいお子さんがいらっしゃるとおそらくやっているのですが、「哺乳瓶をみせて」ご飯の時間とつたえるとか、「水着」を見せて、明日はプールと伝えるといったように、実物を利用したコミュニケーション方法になります。このものを利用したAACは体系化してシステム化すると、その後に写真を...

ページ「スウェーデンの特別支援学校で働きたい方へ」更新

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 ページの 「スウェーデンの特別支援学校で働きたい方へ」 を更新しました。以下は同じ内容ですが、新規投稿もしておきますね。 「スウェーデンの特別支援学校で働くには、どうしたらよいでしょうか」という質問を時々いただきますので、少しアドバイスを書きます。さらに聞きたいことがある方は、連絡フォームよりご連絡ください。その際には、明確な質問をしてくださると答えやすいです。また、返信には多少お時間を頂くことがあります。(2022年7月修正) 1.ビザ スウェーデンで生活し、働くためにはビザ、滞在許可証が必要です。結婚、もしくは同棲という形でビザが出ていれば問題ありませんが、そうでない場合は、ビザの問題が一番難しいかと思います。労働ビザは、学校の場合はなかなか難しいです。民営の英語で授業をする学校がありますので、そこは、英語が流暢であれば雇用の可能性はあると思います。スウェーデンでも、ワーキングホリデービザが出るようになりましたが、学校で働くことは難しいです。コロナの規制がなくなったので、今後ボランティアで学校で働くことは少しずつ可能になるのではないかと思います。 2.スウェーデン語 学校で教員をするのですから、やはり、スウェーデン語がそれなりに話せないと難しいです。私は、教員になる前、読み書きの必要が少ない他の仕事をいくつかし、スウェーデン語をある程度まで習得してから働き始めました。最初から、特別支援学校の教員を目指すのではなくほかの仕事をしながら、まずは、「日常会話のスウェーデン語」を話せるようになることが重要です。学校で教員をする場合は、読み書きできないと大変です。スウェーデン語には、「学校のスウェーデン語」と呼ばれる、学校で教えるスウェーデン語があり、それなりにできないと仕事をこなしていくことは難しいです。 言葉のできない先生に自分の子どもを預けたいという親はあまりいないように思います。言葉は重要です。生徒とはもちろんですが、同僚や保護者など、とにかく言葉ができないと仕事はこなせません。私は言語面はかなりパートナーに手伝ってもらいました。協力してくれる人がいるか、いないかは大きいかと思います。もしも、海外で学校の教員をというのであれば、英語圏の国、カナダなどは教員の受け入れに門戸を開いているようです。 3.教員免許 スウェーデンの特別支援学校で働くためには、特別...

7月16日発売「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」

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 1年ぶりのブログの更新です。いろいろSNSやYoutubeチャンネルも試しましたが、初心に返り、ブログを改めて書いていこうと思う夏の日です。ブログを書いていない間に行ったことはおいおい紹介していくことにし、今日は、まず、7月16日に発売になる本を紹介させてください。本の名前は、 「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校 ~子どもの発達を支える多職種協働システム」 かもがわ出版より、本体価格1800円+税です。 このアマゾンのリンク より、注文もできます。 スウェーデンに住むようになって21年、教育に関わるようになって17年、これまで見聞きしてきたスウェーデンの教育と福祉の様子を、8章に分けて、就学前学校から高校までを描きました。各章は独立型になっており、興味のある所から読んでいただけるようになっています。前半部分は物語風の架空の話で、後半部分では、物語に出てくる様々な支援機関や制度について説明をいれました。写真を多くし、できるかぎり、スウェーデンの教育の今を知っていただけるように書きました。 この本は、多くの方との出会いと教育をより良いものにしていき、全ての子どもと若者の健やかな成長を願う人々の思いから出来上がりました。専門職がプロフェッショナルにつながっていくことで、誰一人として取り残されることのない社会となるように願ってやみません。 多くの方に読んでいただき、こんな国もあるんだ、こんな教育もあるんだとおもっていただけたらと思います。何か質問や感想などあれば、ぜひ、こちらのブログからも。😊