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1月, 2024の投稿を表示しています

多国籍なスウェーデンの学校の職場とスウェーデン語の習得

 旧ブログの中でも、何回かスウェーデン語の習得に関して書いていました。私はスウェーデンに住み始めて20年以上になるし、仕事をしていることもあって、スウェーデン語はそれなりにできますが、完ぺきなスウェーデン語ではないですし、間違いも多いです。今日は、そんなスウェーデン語習得と多国籍なスウェーデンの学校の職場についてです。 1.多国籍なスウェーデンの学校  スウェーデンは、もう50年以上前から、労働移民や難民を多く受け入れてきた歴史を持っており、学校は本当に多国籍です。生徒たちには、移住してきたばかりの子もいれば、2世、3世という子どももいます。職員もしかりで、いろんな国籍の人、いろんな外国の背景を持つ人々と一緒に働いています。 2.スウェーデン語を話す  多国籍になると多言語になり、聞こえてくる言葉は、いろいろあります。生徒たちが話す言葉はともかく、職員間では、「学校ではスウェーデン語を話す」というルールがあります。個人的には、このルールが明確に書面で書かれて出てきたときは驚きましたが、実際に教師をしていると、スウェーデン語を話してほしいと思う現場に直面することもあり、必要なルールなのだと思います。 3.言語も文化も違う  言語も文化も違う同僚たちと働くことは、いろいろ学びがあります。スウェーデン語の習得もしかり。私は、性格的なものや、おそらく文化的なものもあり、10年前とかは、どちらかというと、あまり発言しないし、無駄なことは言わないようにしてました。しかしながら、徐々にスウェーデン語ができるようになり、だんたんともともとの性格に戻っていったような印象があります。これが、人によっては、スウェーデン語の習得かかわらず、おおらかな人もいて、見ていて清々しい。特にアシスタントなどは、話すことが中心なので、読み書きに苦労してきた私とは少し違うなと感じることもあって、いろんな人のスウェーデン語の習得の過程を見ながら、人それぞれでいいなあと思います。 4.スウェーデン語習得を振り返って  自分のスウェーデン語の習得を振り返り、いろんな同僚を見てきて思うのは、スウェーデン語を使って何をしたいかによって変 わるし、言語はスウェーデン語に関わらず、使って磨いていかないと錆びるということです。昔の先生の同僚に、2世の人がいたのですが、彼が自分のスウェーデン語について完ぺきではないという...

スウェーデンの学校がもらえる国の補助金制度

  スウェーデンの学校教育の中で問題があり、改善する必要があると思われるのが、学校がもらえる国の補助金制度です。私はこの制度自体は、利にかなっていると思っているのですが、教育システム全体から見ると、「 入れ替わりが激しいスウェーデンの学校の校長先生 」にも書きましたが、組織が脆弱であると、利用しにくいシステムであると感じています。基礎自治体の教育課のトップがそれなりにしっかりしていれば、多少校長が変わっても申請を見逃さなかったり、自治体の方針として何かしらの補助金申請を行い研修をしたりしていますが、国内の学校教育の均一性が取りにくい原因の一つであることは確実であると思っています。 1.どんな補助金があるのか  毎年、各学校が基礎自治体を通じて申請してもらえる補助金がかなりあります。例えば私が特別支援教育士になるために、学校を週1で休んでいた時に出たお給料なんかもこの補助金の申請をしてもらいます。私個人がするのではなく、学校がするので、私は何もしていないのですが、組織として計画的に動く必要があります。いろいろある中で昨年より私が申請したいなあと個人的に思っているのが、「特別支援教育を学びに」というもので、学校庁にある研修サイトを利用して、学校中で特別支援教育をいかに普段の教育に取り入れるかというところを理論から実践まで1年かけて行うもので、その研修を受け持つ先生の労働時間に対する補助金が出るものです。他にもたくさんあるので、各学校が何を発展成長させたいかによって、申請するものを決めます。 2.使い道や金額が決まっている  これら補助金は使い道が決まっており、国家予算の中で、方針が決まり、それが使われます。なので、当然ですが、せっかく予算計上したのに、半分も使われなかったということでニュースになることもあります。もらえる金額や、使い道もきちんと明記されており、それに沿って、来年度の研修年間計画などを立てて利用します。ちゃんと目的に沿って使われるように、例えば、年間で時間数でこれだけ行う場合は、この金額といったような感じで決まっており、それらは人件費に回すことなども決まっている場合も多いです。 3.実際に使われているのか  使っているところは使っていると思いますし、学校で話題になることも多いです。ストックホルム市は教員向けのサイトがあるし、支援学校は支援学校の関連...

教員不足の各国の状況 スカンジナビア編

  スウェーデンも教員不足が問題となって、もう長いです。私が先生をするようになったことから聞こえていたことなので、かれこれ、15年とかになります。様々な対策が打たれており、多少改善したといわれていますが、それでも、やっぱり、足りません。しかしながら、教員のお給料が上がったことにより、わざと有資格者を雇わない学校も出たりと、問題は多いのが現実です。今日は組合のメールにあった、各国の状況を見ながら、考えてみたいと思います。 1 フィンランド  ここ数年減っていた、教員養成課程の希望者が増えてきた。有資格の先生を田舎の学校や低年齢の教育で見つけることが難しい。 2.デンマーク  有資格の先生の不足が、就学前教育と基礎学校で予想される。高校は、教科によっては有資格の先生に問題がないが、足りない教科もある。 3.アイスランド  高齢化していく教員と教員養成課程入学者の減少の影響により、ここ10年で、約半数の教員不足が見込まれる。 4.ノルウェー  教員養成課程入学希望者の減少と、新しい教育法の導入により、有資格の教員の必要性が高まる見込み。 5.スウェーデン  国は、現在教員免許なしで教えている先生が数年後には、有資格になると見込んでいる。 とまとめています。どの国も教員不足の傾向はあるようですね。需要と供給がきっちりと会うことはないので仕方がないと思うのですが、教育の中で最も重要なものの一つが、教員の教える力、教員の能力によるので、教員不足の抱える問題は、多岐にわたると思います。 スウェーデンは特に北部などのある一定の地域での有資格者不足が長らく言われています。私が働くストックホルムなどは、公立学校だと100%有資格者というのは、珍しくないのですが、やはり郊外や地方では難しいというのも理解ができます。これに関して、組合としては、国が責任を持つべきであるという声を上げています。一時期のように、学校教育の管轄を国にという声は、今は下火に見えますが、国による教員への研修制度の見直しや、国の中での教員配置の何かしらのシステムなどが案としては聞こえてきます。

スウェーデンのインクルーシブ教育のオンラインセミナーのお知らせ

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  今日は、スウェーデンのインクルーシブ教育についてのオンラインセミナーのお知らせです。このブログでも、インクルーシブ教育関係の投稿は人気があります。今回は、自治体国際化協会のロンドン支部の主催でオンラインセミナーを行いますので、このブログを読んでくださる方で、興味のある方は、是非ご参加ください。セミナーは無料で、見逃し配信もありますので、多くの方とオンラインでお会いできることを楽しみにしております。多くの自治体関係者が参加してくださると聞いているので、自治体ができることなどを中心に話ができればとも思っています。がんばります!詳細はいかになります。 第34回オンラインセミナー 「スウェーデンにおけるインクルーシブ教育 ~全ての子どもが学び発達する権利を保障し、インクルーシブな社会を担う子どもを育む教育とは~ 以下サイトより 。 福祉の国として有名なスウェーデンには、この国が長年にわたって培ってきたインクルーシブな社会の構築を目指した、インクルーシブ教育の形があります。このスウェーデン型のインクルーシブ教育である、障害や国籍に関わらず、すべての子どもが学び発達する権利を保障し、よりよいインクルーシブな社会を築くための教育について紹介します。 具体的には、スウェーデンの教育システムの概要、スウェーデンのインクルーシブ教育、個別のニーズに合わせた支援、外国の背景を持つ子どもへの支援、障害がある生徒への支援や福祉制度などについて考察していきます。 なお、セミナー終了後も見逃し配信動画を閲覧可能ですので、当日ご都合のつかない方も、ぜひお申込み・ご視聴ください。 この機会をお見逃しなく!皆様のご参加をお待ちしております。 日 時: 2024年2月29日(木)18:00~19:00(日本時間)(9:00~10:00(英国時間) 配 信:ZOOM 講 師:ストックホルム市公立基礎特別支援学校ヘッドティーチャー サリネンれい子氏 ▶プロフィール スウェーデンの首都ストックホルム市にある公立基礎特別支援学校でヘッドティーチャー(主任教員)を勤める。スウェーデンの教員免許及び特別支援教育士資格を有し、現地での教員歴は18年。2022年に「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」を執筆。スウェーデンの福祉や教育制度およびその...

入れ替わりが激しいスウェーデンの学校の校長先生

  今週のスウェーデン教育界のニュースで大きかったのが、「入れ替わりが激しい校長」により、多くの学校が課題を抱えているというものです。スウェーデンでの教員経験がもうすぐ20年になろうとしていますので、これは事実であり、私も何度も体験してきています。 1.日本と雇用形態が異なる校長職  まず、簡単にスウェーデンの学校の校長職の雇用に関して説明しておく必要があります。スウェーデンは、日本のように地方公共団体などに雇われる形での雇用ではなく、基本的に配置換えもありません。多くのほかの職業同様に求人案内が出るので、それに応募します。求人案内は、「この学校の校長先生」という風に出て、そこには、詳しくこの学校での今の校長に求められるスキルが書かれており、自分で決めて応募することになります。これは教員なども同様なので、私も求人案内は常にチェックして、希望のポストが空くと応募するということを繰り返しています。日本のようにあっちの学校にこの校長先生というような計画配置は行われません。もちろん、優秀な方にヘッドハンティングのような形で声がかかる、声をかけるということはありますが、その人も他の方と同様に応募することになります。また、基礎自治体の中で、例えばストックホルムだと、母体が大きいので、過剰雇用で余ってくる校長や副校長、教員などは、市内での移動もあります。 2.入れ替わりが激しい校長職  今回の学校庁のレポートは、もうだいぶ前から言われており、校長になりたがる人が少ない、定着しない、キャリアの一環で違う仕事に移っていってしまう、教員経験のない校長が来て大混乱(今は法改正されているのでおこりません)など、校長にまつわる問題課題は議論され続けてきました。その流れで、調査をすることになり、その結果が以下のように出ました。 10校に3校の基礎学校で、校長の入れ替わりが多く、3から5人の校長が5年間で入れ替わっている。 民営(私立)の学校より、公立学校の校長の入れ替わりが多い。 都会の学校よりも田舎の学校の方が、校長の入れ替わりが多い。 社会経済的に課題を多く抱える地域(外国の背景を持つ生徒が多い地域)の学校の方が校長の入れ替わりが、多少少ない。 というのが、大きな結果でした。私は今の勤務校は3年目で、校長同じですが、副校長は3人目なので、毎年新しい人となっています。校長は同じだけど...

生徒アシスタントと働くスウェーデンの学校 

 旧ブログの内容をリライトしながら、春学期最初の1週間を振り返りたいと思います。 1.穏やかな春学期のスタート  金曜日の今日はどうなるかわかりませんが、とりあえず、穏やかな春学期のスタートを切れてうれしく思います。秋学期は新しい生徒も入ってくるし、新年度だし、バタバタするのは当然なのですが、それに比べると春学期は、少し手直しながら再スタートを切る感じです。この穏やかな学期に重要なのが、やっぱり一緒に働く同僚です。ということで、今日は生徒のアシスタントと働くスウェーデンの学校についてです。 2.様々な職種が働くスウェーデンの学校  20年ほど前に 日本で養護学校の講師をしていたころは、学校の中には、教員免許を持った人が中心に働いていました。養護教諭や宿舎の人、事務員のような方もいました。最近では、補助員や看護師、介護士などがいたりと日本でも変わってきているようです。 こちらスウェーデンでは、基本的に学級には、 クラス担任が一人(二人制のところもある)、 そのほかに生徒アシスタントが何人かつきます。基礎学校であると、1人とか、半日、数時間というのもありますが、支援学校であると、3名とか5名とか生徒の人数とぞのニーズに合わせて、その数が決まります。 2022年7月16日に、初の単著 「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」 を刊行。是非ご一読を😊 3.チームワークが重要、スウェーデン語が重要、ソーシャルスキルが重要  様々な人と連携、協力しながら、学校教育を行うのは日本でも同じですが、教室の中から、それをしていく必要があり、とてもチームワークが重要になります。私は、3名のアシスタント、木金は4名、来週からは仕事復帰のトレーニングに来る人が入るので、5名の同僚たちと学校教育に当たります。そこには、教員としてのリーダーシップに加えて、チームのリーダーとしてまとめていく力が必要になりますし、スウェーデン語はとても重要です。そして、ソーシャルスキル。働きだした18年前は大変でしたが、今は、まあ、こんなものかなと思えるまでにはなりました。アシスタントになる人は、移民の背景を持つ人が多いので、スウェーデン語はいろんな意味で重要です。日本も今後なっていくと予想されますが、スウェーデンでは、すでに外国からの移民がいないと医療...

スウェーデンのデジタル化教育

  スウェーデンでも、デジタル化教育は重要な課題となっています。ストックホルム市では、今年度の教員の研修に「AI」を取り入れており、秋学期から継続的に、デジタル化教育、AI、プログラミングなどが行われています。勤務校では、基礎学校の先生とともに、学校発展グループが6つあり、教員は全員どれかに所属しています。私は、生徒が安心して学校で生活できるようにと働きかけるグループで、その内容も興味深いので、またまとめて紹介できればと思います。このグループの中に、デジタルグループがあり、そこが中心となってデジタル化教育の発展を担っています。今日はそのデジタル化教育について紹介します。 1.なぜ、デジタル化教育か  これは、もうスウェーデンでは質問されることがなくなっています。デジタル化教育自体は、90年代終わり、2000年代に入ったころから盛んに言われており、タブレットの導入やパソコン生徒1台などは、20年ほど前から推進されており、デジタル化教育は、当然のものとなっています。この歴史により、デジタル化教育についての研究もかなりされています。私は、良い点も悪い点も見てきたし、その議論にもかかわってきていますので、話し出せばきりがないデジタル化教育です 2.学校庁が示す、育てたいデジタル能力とは  スウェーデンの学校庁が示している、児童生徒に育てていくべきデジタル能力は以下となっています。 デジタル化が社会に与える影響を理解する力 デジタル機器とメディアを理解して使える力 批判的なものの見方と責任を持つ力 解決能力とアイデアを実現する力  スウェーデンのデジタル化は、1教科が担うものではなく、「すべての教科」で行うものとされており、学校の研修も全職員で行い、デジタル化教育、AI、プログラミングをキーワードに職員の能力向上を行い、上記の能力を育てていく授業を構築していきます。 3.デジタルな教室づくりの推進  デジタル化教育の推進を受けて言われてきたのが、「デジタルな教室」。パソコン1台やタブレットを使うことにとどまらず、いかにデジタルな教室を作り上げていき、デジタルを学びの中に取り入れていくかを目的としています。これには、電子黒板や、アクティブボードなどのデジタル化された黒板をいかに使いながら、授業をし、授業のどこでデジタルを取り入れるかなどが入ってきます。こちらも、まだ月曜...

スウェーデン、少人数クラスを望む声

旧ブログの投稿、2014年2月22日の投稿に、「 少人数クラスを望む声 」について書いたものがあり、リライトしています。多くの方がご想像のように、スウェーデンの学校は、日本の学校に比べると、一クラス当たりの生徒数は少ないです。学校、学年などによって差がありますが、1クラス30人を超える学校は珍しいく、多くても28人前後という感じです。そんなスウェーデンですが、2014年、9年ほど前に、少人数クラスを望むという声が上がっていたというもの。あれから、どうなったかというと、少人数どころか、スウェーデンの学校は大きめの学校が増え、1クラスの生徒数も増えている傾向にあります。ということで、現在も、少人数とは言わないければ、クラスの生徒数を減らしてほしいという声はよく聞きます。 1.2014年のアンケートの結果  2014年は、スウェーデン、選挙の年でした。あの当時は、学校に関する議論が今以上に強かったように思います。その当時に 組合が一般の人々にたいして行ったアンケートの結果がいかになります。 アンケートは、1000人に行われ、スウェーデンの学校の状況を良い方に改善するための重要な項目を3つ選んでもらうというものでした。これは、教員組合がPISAの結果が芳しくなかったのをうけて、調査会社に依頼して行ったものでした。 少人数グループ、学級                     46% 教員の授業計画と準備の時間の増加              32%  特別支援教育専門教員の増加                 30% 教員の給料を上げる                     28% 学級の規律をただす (例:教員が教室に鍵をかけられるなど) 27% 特別な支援を必要とする生徒全員に支援を行う         26% 学校を国の管轄に戻す                    19% 教員や援助を最も必要とする学校に優先して改革する      14% 管理職が教育的な部分に介入する時間を増やす         14% 授業時間を増やす                       8% 成績を低学年から出す                     8% 学校間の壁を取り払う                     8% 学校の自由選択制を見直す                ...

スウェーデンの特別支援学校の学童保育とは

 学童保育についてのまとめ記事を書いていて、特別支援学校の学童保育に関する情報が少ないと気づきました。スウェーデンの学童保育は、障害があるなしに関わらず、同様に必要な児童生徒に保障されています。今日は、そんな特別支援学校の学童保育についてです。 1.どこで学童保育を受けるか  学童保育は、たいていの場合、通っている学校でとなっています。基礎自治体や学校によって、近隣の別の場所で行う場合もありますが、現在最も一般的なのは、自校方式です。 2.何歳まで通えるか  学童保育は、障害のあるなしに関わらず、生徒が13歳の誕生日を迎えた年の春学期まで、希望者は通えます。基礎学校の生徒の場合は、3年生までの子も多いように思います。勤務校は、3年生までは、学童保育は学年単位で組織しながら全体を組織していますが、4年生以上は、合同となっており、名前も学童保育ではなく、「クラブ」と変えて、年齢に応じた内容を提供しています。 3.13歳以降はどうなるのか  障害がない場合は、13歳になれば、一人で家に帰れますし、家で過ごすこともできますが、障害がある場合は難しいです。そのため、13歳を過ぎると、LSS法(Lagen om stöd och service till vissa funktionshindrade 社会サービス法、機能障害者を対象とする援助及びサービスに関する法律)に基づいて、放課後デイサービスが提供されます。多くの学校が自公で提供していますが、社会庁の管轄になるので、その法律に基づいて提供されます。この部分は、別のところで行っている基礎自治体もあり、その場合は、タクシーで生徒を移動させることになります。 4.対象とならない生徒はいるのか  はい、います。誰でも障害のあるなしにと書きましたが、社会福祉の支援サービスで、子どもや若者のための施設に入所している生徒は、学童保育の対象になりません。施設自体が福祉サービスとなるので、学童と2重で受けることはできないとなっています。  また、基礎自治体によってさまざまな決まりを設けている場合もあり、住んでいる基礎自治体の学校に通っている場合は保障するが、ほかの基礎自治体にある学校に通った場合は、学童の保障はしないというところもあります。その場合は、理由によっては許可される場合が多いということらしいです。 5.何時から何時まで通えるのか...

スウェーデンの学童保育について【まとめ記事】

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  私はスウェーデンの教育と福祉に興味関心があり、教員をしているので、このブログは、幅広く教育や福祉について取り上げています。その中で、最近検索が多いのが、スウェーデンの学童保育についてです。学童保育についても、いくつか投稿をしているので、ここにそれらの記事をまとめておきたいと思います。 1.スウェーデンの学童保育の概論がわかる記事ならこちらを 「スウェーデンの学童保育って、どう?」 2022年7月の投稿です。スウェーデンの基礎学校の学童保育についてまとめられているので、ざっと知るにはよいのではと思います。 2.スウェーデンの学校教育システムならこちらを 「 スウェーデンの学校教育システム」 についてざっと知りたい方はこちらの記事を。スウェーデンは義務教育に併設して学童保育があるので、各学校に学童保育があります。 3.スウェーデンの学童保育の職員密度ならこちらを  少し古い記事になるので、新しいものをまた準備したいと思いますが、「 スウェーデンの学童保育の職員密度は?」 で、2018年のものが見れます。 4.障害児のための学童保育についてならこちらを 「 日本の放課後等デイサービス見学 」の記事では、日本で見学した際に思ったことをまとめながら、スウェーデンの障害児のための学童保育についてまとめています。 「 スウェーデンの特別支援学校の学童保育とは 」にも、支援学校での実態をまとめましたので、ぜひ。 5.そのほかの記事  以下も学童保育についてですが、内容が古いですので、新しく書き直したいと思いますが、それまでは、公開にしておきます。2014年で質の低下を書いているのですが、2024年の今はさらに厳しい状態になっているようにも思います。しかしながら、進化も遂げており、そのあたりもまとめたいと思います。 「 スウェーデンの学童保育の現状 」2018年12月投稿 「 質の低下が危惧されるスウェーデンの学童保育 」2014年7月投稿  スウェーデンの学童保育についてのコメントや質問などあれば、お気軽にお尋ねください。

4年生から成績がつけられるスウェーデン

 「 スウェーデンの教育の特徴~不可がある教育 」で、少し書いたのですが、スウェーデンでは、6年生から成績が付きますが、4年生からも成績をつけることができます。(特別学校は5年より)その法案が出たときのブログの投稿を振り返りながら、今日は4年生からつけられる成績について書きます。旧ブログの日付は2014年、今から10年前です。光陰矢の如しとはよく言ったものです。 1.8年生から6年生に  スウェーデンでは、2012年の秋学期に6年生から成績が付くようになりました。2010年の学校改革の中の一つだったもので、それ以前は、8年生からだったので、日本の中学2年生になるまで、評価は出ても成績は尽きませんでした。2012年のものが現在も使われていますので、評価は、5段階、ABCDEの5段階にFという不可があります。ちなみにFX とかもありますし、成績を出すことができない場合には、「ー」というのもあります。  当時のブログには、今振り返っても思うのですが、PISAの結果のショックからか、次々と出てくる教育関係の改革案に、「教員のお給料をバーンと上げるという案がでるといい」とか書いています(笑)。この2014年当時に案として出されたのが、4年生からの成績を希望する学校には許可するというものでした。法制度が実現したのは、2021年4月1日ですので、案が出てから、実現するまでに調査や議論が重ねられ、実験校で実施し、その結果をまとめ、実現の運びとなりました。これにより、2021年秋学期より、4年生より成績を出しいる学校があることになります。 2.どのくらいの学校で実施されているのか?  4年生で成績を出すためには、各学校は毎年その申請を学校庁にする必要があります。春学期に毎年します。どの学校が、4年生から成績をだしているかは、学校庁のホームページから確認することができ、2023年度は53校です。うち6校が公立の学校ですので、ほとんどが民営、私立の学校です。リストには、未来の女王様であるエステル王女の通う学校も入っています。民営化の影響は、また別に書きたいと思いますが、やはり、成績を早くからつけてという学校は民営が多いですし、それを売りにする学校もあるように思います。逆に考えると、公立には、アンチ派の声も聞こえますし、これまでの議論もどちらかというと批判できな声が多く、初年度に実...

スウェーデンの教育の特徴~不可がある教育

 ブログを旧ブログから移行したのは、コロナ前でもうだいぶ前で、旧ブログの内容を自動的に移動できなかったこともあり、また、忙しさもあり、放置し続けた旧ブログを削除したのが、数年前。その旧ブログの内容を振り返りながらリライトをしています。今日はその中でも重要だと思うスウェーデンの教育の特徴をまとめます。 1.日本とスウェーデンの教育の最大の違い   私はスウェーデンの公立の学校教育に関わって18年、その中で思う日本とスウェーデンの教育の最大の違いは、スウェーデンの学校教育は、成績を6年生からつけ(4年生から成績を出すことも可能)、 不可をがある教育である ということです。これは、私がスウェーデンの学校教育に関わってきてからの永遠の疑問ともいえるもので、近年、この不可をなくす方がよいのではという議論が起こっているスウェーデン、私は複雑な思いで見ています。その昔の旧ブログにもこんなことを書いています。 「スウェーデンの教育にはなぜ不可があるのだろう と思っていました。日本みたいに5段階とかの評価にしてしまえば、話題に上る多くの問題は解決するのにと思っていました。」 2.一人一人の持っている能力を最大限に伸ばす教育  では、なぜ、スウェーデンの学校教育は、成績を6年生から出し、不可をつけるのか。理由は複数ありますが、私が感じる最も大きな理由は、一人一人の持っている能力を最大限に伸ばす教育を目指しているからであると思います。スウェーデンの教育は、Lev Vygotskijの影響を深く受けていることもあると思います。この考えは、スウェーデンのインクルーシブ教育を理解するうえでも感じます。子どもを大勢の中の一人としてみて教育をするか、それとも、その子を「個」としてみて教育するかということにもなります。私は日本で3年弱代替教員をしていたことがあり、その時にちょうど相対評価から絶対評価に変わったと記憶しています。スウェーデンも同じように相対評価から絶対評価に変わっており、その時期は日本よりも早いのですが、このあたりの評価の仕方がかかわっていることも容易に想像できます。 3.納税者を育てる教育  スウェーデンの教育について聞かれると、スウェーデンの方が、学校教育において先生方の「納税者になる」ように育てるという気合が違うように感じてきました。学校教育には、国を維持していくために、税金を納...

過去記事から見るスウェーデンの教育費の削減

 スウェーデンは教育費を含む子どもにかける国家予算の多い国として有名です。その国で教員をして、もうすぐ20年になろうとしています。年末の投稿では2回にわたり、「 ストックホルム市の教育予算削減その1 」と「 ストックホルム市の教育予算削減その2 」を書きましたが、旧ブログを振り返ると、予算削減を愚痴っている内容は多いことがわかります。2009年の投稿をリライトしながら、今一度予算削減の影響を考えます。 1.人件費が大きいのは変わらない  2009年の投稿を読んでも、人件費の削減が最も大きく、1500人もの先生が解雇されるという情報を書いています。3市に2市は、削減するともあります。やり方もあまり差がなく、正規雇用ではない短期や代替教員の継続雇用をしない、定年の教員の補充をしないなどが上がっていました。こうした人員削減は一般的なもので、予算削減に関わらず、生徒数の動向に沿ってもよく行われていると思います。 2.大きな違いは?  では、今までの予算削減と大きく違うのはどんな点かというと、スウェーデンでは風邪などの病気の場合は医師の診断書なしで休める病気休暇が1週間あるのですが、そういった病気休暇や子どもの病気看護休暇で休む職員が出た場合に、補充が入らない。ということはどういうことかというと、いつもと同じ仕事を少ない人数でこなすことになります。そして、1クラス当たりの人数を増やす。これも就学前学校から基礎学校まで、本当に増えたと思います。 3.政治直結型教育  スウェーデンの学校教育に関わっていて思うのが、地方政治から国政まで、とにかく政治と直結していると感じることが多いことです。今回の教育予算削減も、他国に比べれば、穏やかなデモが行われたことにより、ストックホルム市は予算の見直しをおこない、学校予算は少し回復しました。その影響はあまり大きくは出ないにしても、透明感が命のスウェーデンの学校教育では、ここにお金が使われたといったような報告が入りました。また、組合との交渉で、健康促進のための補助金が削減されるなど、多方面で互いに協力し合って何とか乗り切ろうとしていることがわかります。 4.教員免許保有者の行く末  教員が足りないのはスウェーデンも日本と同じなのですが、教員免許を取得しても仕事がないという人もいます。これには様々な要因がありますが、要因免許有資格者はお給料が高い...

高福祉社会スウェーデンの自殺の実態

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  私に時間の余裕が生まれたら、取り組みたいと思っているのが、自殺問題です。スウェーデンでも自殺で命を絶つという人が多くいます。年齢にかかわらず、自ら命を絶たなければならない状況になってしまうまでに、何とかならなかったのだろうか、思いとどまることができなかっただろうかと思います。私は、アラフォーですが、親せきや家族、同僚や、知り合いの知り合いと数多くの自殺者を見てきました。私自身が何とかできなかっただろうかと思う出来事もあり、いつかこの分野で何か私なりに貢献できればと思っている次第です。スウェーデンで自殺が増える時期は春ですが、これに加えて多いのがお正月なのです。クリスマスや正月といった家族や友達が集まるときに一人であると、自殺がふと頭をよぎるというのは、私にも想像ができます。これに加えて、アルコールの摂取量が増えることも要因ではないかといわれています。今日は過去の投稿を含めながら、高福祉社会スウェーデンの自殺の実態を見ていきます。 1.突然の同僚の自殺  もう5年以上がたちましたが、それでも思い出す同僚の自殺があります。過去の投稿よりリライトしながら、今一度振り返りたいと思います。2月の終わりにあるスポーツ休暇でフィンランドを訪れていると副校長から電話があり、突然の同僚の自殺を知りました 。普通に1日仕事を一緒に終えて、また、来週も普通に仕事を一緒にすると思っていたのに、その「普通」が戻ってくることはなく、彼女は自らの命を経ちました。このことに私を含めた同僚たちは大変大きなショックを受けました。 彼女の死を悼む会で、同僚が話した言葉で印象に残ったのは「自殺は、死にたいからするのではなく、生き続けることができなくなったからするのだ」と。私もこの言葉を今なら強く言えます。何人かの自殺を選んだ知り合いを思うと、本当は行きたかったのだろうと思わずにはいられません。彼女との職場での日常からは、このような別れが待っているとはとても想像できず、しかしながら、振り返ると、彼女なりに出していたSOSはあったのかもしれないとも思います。  自殺が人に与える影響はとても大きく、残された人々は後悔をすることも多いと感じます。だからこそ、自殺の話をもっとしていく必要があるのではないかと思います。近年スウェーデンでは若者の精神の不健康が大きな問題となっており、若者の自殺も少なくありません。早...

スウェーデンのインクルーシブ教育を基礎特別支援学校から考える

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 このブログの投稿記事の中で、多くの人々に読まれているのが、「 本で知ることができない、スウェーデンのインクルーシブ教育とは 2017年版 」です。2017年版なので、旧ブログの記事をリライトして2022年に再投稿したものです。私が考えるインクルーシブ教育は、完成というものはなく、常に発展、変化し続けるものであると思います。この2017年版を今読み返してみると、すでにここは変化したなと思うところがあり、スウェーデンの教育の素晴らしいところを思います。ということで、今日は、スウェーデンのインクルーシブ教育を基礎特別支援学校が存在するという仕組みから考えてみたいと思います。 1.基礎特別支援学校の存在の意味  スウェーデンには、基礎特別支援学校が存在し、大変厳しい検査で選ばれた、親が支援学校に通わせたいと希望した子どもたちが通っています。支援学校には、2つのコースがあり、基礎学校に準じた教科学習と領域に分けた領域学習をするコースがあります。スウェーデンの多くの基礎特別支援学校は基礎学校に併設しており、例えば、ストックホルム市の場合は、全生徒数の1割未満が支援学校の規模という暗黙のルールがあります。これにより、場の統合は行われている場合がほとんどです。ただし、数は少ないのですが、近年新設される支援学校には、単独の大型学校も現れるようになり、その存在が議論されることもあります。スウェーデンの特別支援学校は、知的な障害により、基礎学校の学習目標に到達できない生徒のための学校であると明確に記されています。インクルーシブ教育は、すべての子どもの学びの権利をも保障したものであるべきと考えられているスウェーデンでは、こうした基礎特別支援学校が一つの選択肢として存在することは大変重要であり、意義があると考えられています。 2.選び抜かれた基礎特別支援学校の生徒たち  現在のスウェーデンの基礎特別支援学校、もしくは、支援学校の高校に入学するには、それぞれの専門家による以下の検査結果により、知的障害があると判定された生徒のみが入学の許可を与えられます。これは、許可が与えられるだけなので、絶対に入らなければならないということではなく、基礎学校で基礎特別支援学校のカリキュラムに沿って学んでいる生徒は、支援学校対象児童生徒のうち、約2割前後毎年います。必要な検査は以下の通りです。 教育的な検査 ...

新年に思うアストリッド・リンドグレーンの言葉

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   新年が明けて、目に飛び込んできたのは、日本の地震のニュースでした。スウェーデン時間では、朝8時過ぎでしたので、2024年の元旦を、この地震と津波の不安で迎える日本の皆様の心境を思うと、何とも言えない気持ちになります。今回の能登半島地震で被災された方々には、心からお見舞い申し上げます。1日も早く穏やかな日常が戻ることを願うばかりです。  新年に当たり、思うアストリッド・リンドグレーンの言葉を。 “Hur ska jag kunna veta det, när jag aldrig har försökt?” やったこともないのに、どうやって知ることができるの?    今でもとても人気のあるアストリッド・リンドグレーン。「長靴下のピッピ」を書いた人です。スウェーデンに興味のある方なら、ご存知かと思います。彼女の本は、94の言語で訳され、約14億5千万もの本が売れたそうです。彼女が1941年から2002年まで住んでいたアパートは見学をすることもできます。アラフォーになり、人生も先が少しずつ見えるようになった今だからこそ、今一度覚えておきたい言葉です。やってみなきゃわからない。人から失敗に見えても、自分が失敗じゃないと思っていれば、やったことに価値があると思います。そんな思いをもって新年を過ごしていきたいと思うのです。    このアストリッド リンドグレーンに関しては、国内でものすごい人気があるにもかかわらず、ノーベル文学賞をもらえなかったということで時々話題にあがります。生徒たちに聞くと、もらっているはずだなんて言います。なんで、もらえなかったかは、よくわかりませんが、うわさでは、内容が子どものしつけにはよくなかったとかうんぬん。。。個人的にはあげてもよかったのではと思いますが、彼女自身はそんなことにこだわるような人には思えないのは私だけでしょうか。  彼女は、多くの言葉を残し、その言葉から多くのことを学ぶことができます。次の言葉も昔から大好きです。大人になっても、遊び心を忘れずに楽しみながら日々を暮らしていきたいものです。     Vi lekte och lekte så det är underligt att vi inte lekte ihjäl oss. 遊んで遊んで遊びまくったのに、遊び飽きるということがなかったのは不思議ね。...

2024年 新年のご挨拶

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  新年あけましておめでとうございます 新たな年は、新しい始まりと希望をもたらしてくれ、希望とエネルギーを感じます。皆様、今年もよろしくお願いします。この「スウェーデンの教育って」のブログも、旧ブログから数えると、思い出せないほど長い間書いてきており、どんな方が足を運んでくださっているのだろうと想像しながら、また、このブログを通じてあった数多くの素晴らしい出会いに思いを馳せます。2023年、そしてブログを書いてきた長い年月に感謝しながら、2024年最初のブログに今年の目標と抱負を書き記しておこうと思います。ブログを読み返すと、年によって新年のあいさつと抱負を書いた年もあれば、ない年もあり、読み返すと、その当時とあまり変わっていない自分に驚きつつも、よい記録であるとも感じます。2024年の目標と抱負がどのくらい実行できるか、大変楽しみです。では、行ってみましょう! ご機嫌に暮らす 年齢もアラフォーになりましたし、怒りやイライラに左右されることなく、自分の機嫌は自分でとって、ご機嫌に健康に暮らし、パートナーを支える1年にします。アンガーマネジメントやご機嫌に暮らす方法を書いた本などを読んで勉強していきます。 マスター論文を書き上げ、学業に一区切りをつける 遅々と進まぬマスター論文ですが、あきらめずに頑張ります。そして、移住以来、20年以上続けている学業に一区切りをつけ、新たなステージに入ります。 国の支援学校のプロジェクトをやりきる 年末に書き綴ったように、いろいろある職場ですが、国の支援学校の3年プロジェクトを責任をもってやり切ります。この支援学校のプロジェクトは、スウェーデンでもとてもユニークなもので、関われたことに感謝してやり切りたいと思います。 ISAACの会議を成功させる AACの更なる普及に向けて、活動しているISAACで今年は会議を行うので、その会議の成功をさせるように、頑張ります。何分、小さな会で、ボードメンバーも数が少なく、仕事は山のようにありますが、がんばります。 日本に夏にいく 日本に夏に行くことになっており、スウェーデン人の大親友の家族と一緒に旅行をする予定でもあり、それを兼ねて5年ぶりの日本での夏を楽しみます。その計画を今から練り、特にやりたいことリストは思いついたときに作成しないと、忘れてしまうので、楽しみです。コロナ禍で知り合い、あ...