2016年12月19日月曜日

老人ホームで働く障害者たち

 あっという間に週末は終わりました。ほぼ通信で学んでいるのですが、課題の中に必ずといっていいほど、ネット上での討論が含まれます。私は、すぐに不明な点が聞けて、スウェーデン語のスペルを気にしなくていい、スカイプなどでの討論の方がいいのですが、みんな働いているし、時間を合わせることはできないので、掲示板みたいなのに書き込みます。教育学部の院生ともなると、皆さん言語に強い。。。書き込まれる意見も長い。。。出遅れると、一つのテーマに10以上の書き込みがあり、それを一つずつ読み、意見を書き込みます。何か思いつく時は、まだいいのですが、意味がわからなかったり、ふーんと思う程度だったり。。。課題図書を読みつつ、書き込みに追われる週末でした。と、まず、定番の愚痴です。


 先日、興味深いドキュメンタリー番組が放送されていましたので、紹介を。スウェーデンの国営テレビが作成したもので、「Drömjobbet、夢の仕事」といいます。ストックホルム郊外にある老人ホームで軽度の知的障害を持った方達が働いている様子を映像にしたものです。スウェーデン語ですが、興味のある方は是非!


 スウェーデンでは、障害を持った方達向けの就職支援も行われてはいるのですが、実際には多く人が、作業所やデイケアセンターのようなところで日中を過ごしています。特に中度、重度の人が就職をすることは大変困難であります。このドキュメンタリーでも働いていたのは、軽度の自閉症傾向が比較的見られない、障害者の方達です。しかしながら、老人ホームと作業所を兼ね合わせるという発想がとてもユニークです。老人ホームでは、人手不足や働きたい若者の現象、労働環境の悪化など多くの問題を抱えています。そんな老人ホームに障害を持った方達を労働力として投入し、(もちろん、障害者の方達につく職員がいます。)様々な仕事を分担しています。食事の下ごしらえをしたり、ゴミの仕分けをしたり、老人の方のお茶の世話をしたり、話し相手をしたり、ちょっとしたことだけど、障害を持っていても、時間とちょっとした支援があればできることがたくさんあります。そして、何よりも、障害を持った方達が、普通の人と同じような「普通の仕事」に付いているという実感を持っていることが素晴らしいのではと思いました。

 
 障害を持った方達が、生き生きと働くことができる職場が増えていくといいなあと思い、生徒の実習先探しに付いてよく話しているので、このテレビ番組、とても興味深かったです。

 
 今学期も残り3日。あっという間です。もう一息がんばります!みなさんもよい1週間を!

2016年12月3日土曜日

カオスな学校

 あっという間に12月になりました。今学期も残り2週間半になり、普通のならホッとしていてもいい時期なのですが、今年は違います。職場である学校は大騒ぎで、カオスです。理由は、、、なんと、学校の一部の床下と壁に黒カビが繁殖しているということがわかり、小学校の6クラスと特別支援学校の1クラスが避難しなければならないという事態に。。。これまでも、うちの学校は、アレルギーを訴える先生が結構いて、私は、あんまりそういうのに敏感じゃないので感じないのですが、敏感な人は、建物の中で使えない部屋まで出てきていたのです。そのため、大規模な検査が行われ、今回の結果が出ました。

 私が日常使っている教室は、他のところより少し遅く建てられたこともあり、あまり問題ないのですが、特別支援学校の1クラスが、高等部のすでに満杯の狭い教室に入り込み、どうやって学校運営をするか、話し合いが。。。小学校は、親が大騒ぎで、説明会も行われ、来週の半ばに避難することが決まり、子供達は遠足に出かけ、その間に全てを動かすことになっています。

 どこまでブログで書いたか忘れたけど、今年の1月から雇われた新しい校長は、すでに辞めていて、代わりの校長が10月半ばにやってきたんですが、校長代理と教頭で、この非常事態に対応しており、てんてこ舞いです。


 これだけだって十分なのに、次々と長期の病気休暇のアシスタントが出て、その数現在、4名。。。これに子供の看護だの風邪だとかで職員休むので、職場はすごいことになっています。ここまでくると、開き直りで、私は割と余裕があるのですが、毎日、同僚の1名は、パニクって、ぎゃあぎゃあ騒ぐので、それに付き合うのも大変です。そんなこんなのうちに、なんだか、私たち高等部も引っ越すかもしれないということで、春学期、一体どこで授業を行っているのか。でも、車椅子の生徒が多いので、リフトがないと授業ができません。そのため、きっとそんなに早く引越しにはならず、おそらく来年度からでしょうね。街の中心部に移動できるといいなあ、と同僚とワクワクして話しております。



 私が一人で焦っているのは大学の課題で、1冊目の本の内容が難しく、解読するのに、通常の3倍ほどかかり、それでも、内容理解したかどうか怪しい。。。もう少し落ち着いて勉強できるといいのですが、なかなかそうもいかない毎日です。質問や問い合わせなどをいただくのですが、余裕をもってお答えする余裕がありません。返信に時間がかかる場合がある場合をご了承ください。

 年末の忙しい時期、皆さん、体に気をつけてお過ごしください。では、また!

2016年11月5日土曜日

批判だらけの政府の教員給与政策:Lärarlönelyftet

 秋休み中です。雪が少し降って、なんだか冬らしくてとてもいいと思うのは、勤務先が家から近く、車に乗らなくていいわたしだけで、多くのスウェーデン人たちは、大慌てで冬タイヤに変えています。同僚が、「このあたりは、スウェーデンでも冬タイヤにする必要がなかったんだよ」というので、「その車は、馬という動力を使っていたのか」と返すと、大笑いでしたが、本当にストックホルムあたりで冬タイヤを強制するようになったのは結構最近のことらしいです。

 年度始めは毎年バタバタしますが、今年は校長が病気になり変わったり、他にも理由があって、ドタバタ感が満載でした。それでも、秋休みになると、山を超えた感じがします。書きたいことがいくつかあるのですが、とりあえず、批判だらけの政府の教員の給与政策について書こうと思います。


Lärarlönelyftet」と呼ばれている政府の教員の給与政策、目的は、教員免許を持っているなど、ある一定の能力のある教員、幼稚園教諭、学童教員のお給料を上げるというもので、今年の7月に始まりました。一番の目的は、教員という職業のお給料をあげることで職業をより魅力のあるものとし、多くの人が教員になろうと思ってくれる、教員を続けようと思ってくれることと、学校の教育成果を伸ばすことにあります。この考えは悪くはなかったのですが、30億のお金を約6万人の先生にわける方法が、どうも問題だったようです。わたしにもこの情報は7月に開始されるということで、その頃にメールで「こんな人がもらえます」みたいな条件を書いた紙が送られてきました。結構な条件が書いてあり、例えば、教員免許を有することや週に何%以上生徒に授業をしていることなとが上がっていました。

この給与対策、ものすごく批判が集中していて、フェイスブックや教員情報メールでは、旬の話題といった感じ。もらえた人はいいけれど、もらえなかった人が不平等だと仕事を変えたり、職場を変えたり、教員やめたり。。。スウェーデンらしいのが、うちの職場では話題にならないこと。仲の良い先生とチラッと話すことはあっても、もらえなかった人がいることがわかっているので、あえて話題にしない。。。


何が問題かを整理していくと、


  • コミューンのトップが政府に申請してもらえるお金なので、スウェーデン中のコミューンで条件が違う。これにより、申請しなかったコミューンの先生は全く恩恵を受けられず。
  • 教員免許を有しない先生が結構いるスウェーデンでは、恩恵を受けられなかった先生が結構いる。これに対応したいくつかのコミューンがあり、全ての先生のお給料をあげたところもある。もらえる先生の分は国のお金でまかない、それに当てはまらない先生の分は、コミューン独自の予算でまかなった。こうなるとどこのコミューンで働いていたかにより、大きな差が。。。
  • 条件が当てはまっていてももらえなかった先生がいる。コミューンが条件を設定できるので、解釈の問題ということもあり、コミューンごとにかなり違う。うちのコミューンは、特別支援教育の専門教員も対象になったし、校長なども対象になりましたが、コミューンによっては、特別教育専門支援員などの生徒に関わる時間が多少少ない先生などはもらえなかったり、条件が満たされていても、何らかの理由でもらえなかったりした先生がいたようです。
  • 早いところは7月に、遅くてもこの10月には、いくらお給料が上がるかがわかったので、7月にわかった人などは、夏の間に転職して、お給料をあげたとか。遅い人たちは、今やめる申請をして1月から違う学校で働くようです。スウェーデンで、最も簡単に早くお給料をあげる方法は転職することなので、みんな実践です。。。
  • 政府からのこの政策は1年のみなのですが、コミューンによっては、独自にこのあげた分を維持していくようで、ここにも不平等感が。。。ちなみにうちのコミューンは今年度のみ。なので、ちょっとしたボーナスが出た感じです。
  • 今から今年の給与交渉に影響が出るのではという懸念が出ています。今回お給料が上がったからといって、毎年の給与交渉に影響を与えてはいけないのですが、そこは人情、今回お給料が上がらなかった人たちのお給料が優先してあげられるのではという話が出ています。
  • 話では、月2500ー3500クローネ上がるという話だったのですが、実際には、300クローネから5000クローネとかなり幅があるようで、これもコミューンや校長などによってかなり違うらしい。。。


色々と問題があるのですが、かといって、教員全員のお給料をあげても問題で、やはり教員免許を持っている人は、それなりに努力をして免許を取得したわけで、何かしら反映されてもいいと思ってしまうのは、日本人だからでしょうか。免許制になってすでに5年が経過しており、取ろうと思えば取れたわけで、努力して働きながら取得した人などは、今回の給与政策の恩恵を受けてもいいと思います。ただ、コミューンによって、これだけ違ってくると、やはり教育は国レベルが管轄したほうがいいという話になっていくのではないかと思ってみたり。平等意識の強い国で、平等とは何かを考えさせられる教員の給与政策だと思いました。




2016年10月15日土曜日

ロボットにしたいわけではないが。。。

 1週間があっという間に過ぎていきます。今の学校に勤めてはや9年目です。いろんな生徒を見てきて、いろんな職員を見てきて思うのが、「こちらのいうことを聞くロボットを作成したいのだろうか」と。ブログといえども、日本語といえども、こうして書くのは少し気がひけるけど、特定の生徒というよりは、うちの学校でよくあるパターンということで、書きます。

時間割表どうりに動かず、一定の授業を受けたがらない。

これよくあります。時間割表には、例えば、体育と書いてあっても、体育館に行くのを嫌がり、行かせるのに実に時間がかかる。そうなると、最終的に先生がその授業をなくしてしまったりします。情報伝達には、生徒にあったものを用いているので、物や写真、絵記号で、体育や音楽ということを伝えます。もちろん文字で読めるこもいます。自閉の子どもで、写真で体育と伝えて、嫌がって走り回ったりすると、アシスタントから、「あの子は写真が分かっていない」というコメントをもらったりします。でも、私からすると、分かっているから、逃げるんだろうなあと思うのですが。

なんで参加したがらないのだろうかと考え、その子が参加できる形を探すことが重要であると思うのですが、そうならないことが多いです。簡単ではないことはわかるのですが。


大好きなことを上手に終わることができない。

あとは、プールなど、子供が大好きな授業で、行くのもプールに入るのも問題がないけど、活動を終えることができないという場合があります。プールが楽しくて終われない。よくあるパターンなんだけど、これもまた、最終的にその子の大好きなプールには行かないという判断になったりします。

好きなことだからこそ、その子が納得して活動を終わることができる方法を見つけてあげることが教育であり、活動を外して行くことばかりしていたら、その子ができる活動にものすごく限りができてしまいます。


で、自立を促すとか言って、カリキュラムにもあるし、色々やるわりには、私たちは、こっちの思い通りに動くロボットにしたいのだろうかと思ってしまいます。。。実際のところ、この子たちは、重い障害がありますので、他人の手を借りて一生生きていくことになります。そうすると、介護者や教育者など関わる人々が関わりやすい人になってもらうことは重要なのですが、障害ゆえに簡単ではありません。その子にあった、生活スタイル、関わり方を見つけてあげ、それが守られるようにしてあげることが重要ですが、それもまた、言うは易し、行うは。。。と言う感じで、実際にそれだけの教育費がかけられているかと言うとそうではありません。それでも、成長していく中で、いやだと言うことを覚えていく姿を見ていると、素晴らしいと微笑ましく思うのが私で、その次の段階に行けるように導いていければ、と思ってしまいます。自分の受け持ちの子どもには、色々手立ても打てますが、他の先生の担当の先生には、あまり突っ込んで何も言えませんので、意見の合う同僚と話をするくらいです。こういった先生同士の問題は、日本もスウェーデンも同じだなあと思います。

余談ですが、日本で働いていても、スウェーデンで働いていても、何年か働いて、言葉にもそれなりに不自由がなくなると、結局同じ問題にぶつかると感じています。ま、性格の問題というか。。。沈黙は金、雄弁は銀というアドバイスを主人がくれました。(笑)

良い週末を!




2016年10月8日土曜日

個人アシスタントの削減傾向

 すっかり秋らしくなり、着々と冬に近づいている、こちらスウェーデン、ストックホルム。今日は、8章まで一気に読んでしまうつもりでしたが、眠気には勝てず、結局6章どまり。明日残り読みきらなくては。。。


 先日の新聞に、一晩にして600時間の援助がなくなったという、個人アシスタントの削減に対する批判記事が載っていました。まず、個人アシスタントについて説明をすると、スウェーデン語では「Personlig assistans(パーショーンリグ・アシスタント)」と呼ばれる、パーソナルアシスタントのことで、障害を持った人に個人的に付き、その人の手となり足となり、援助をします。これは、LSSと呼ばれる「Lag om stöd och service till vissa funktionshindrade」という障害を持った人の支援援助の法律に基づいています。

 ここ数年、この個人アシスタントを不正に利用している人が増えているという報道があったり、増え続ける難民や移民に対する援助の増加により、個人アシスタントが削減傾向にあるという話をよく聞きます。不正に利用している人がいるというのは事実で、時々ニュースになりますが、増え続ける難民の援助がこれにいかに関係しているかは、私にはわかりません。

 新聞には、自閉症と知的障害を併せ持った兄弟の個人アシスタントの時間が削減されて、困ったとあります。記事によれば、2009年から新しい基準が適応されるようになり、基本的必要性が厳しく判断されるようになったとあります。自分でトイレに行けるかどうかとか、食事の介助とかの部分が、より一層厳しくなったようです。この兄弟は、歩けるようですが、一人はてんかん発作があるとありますし、自傷行為もあるようですので、目を離すことはできないのに、一気にアシスタントの時間が減ってしまい、理解に苦しむとあります。

 私の働いている学校の生徒の中にも、個人アシスタントが付いている生徒が多くいます。働き始めた頃は、子供達が保健局に出向くというようなことはなかったのですが、ここ数年は、定期的に担当者との面談があり、生徒が保護者や後見人と一緒に面談に出向きます。自宅への訪問もあるようで、親さんによれば、結構長い時間の面談をずっと本人も一緒に行うということでした。実際に生徒にあって、その必要性をしっかりと理解してもらい、正しいアシスタントの時間を割り振ってもらえればいいのですが、記事のように一気に減らされてしまったりすると、生活も一変し、大変であろうと思います。アシスタントの時間がどれくらいになるかは、本当にまちまちで、保護者の方からもいろいろと話を伺い、心を傷めることがあります。

 スウェーデンのユニークな福祉制度である個人アシスタント、必要な人がちゃんと利用できるシステムであってほしいと願うばかりです。

読んだ新聞記事:600 timmar stöd borta över en natt, SVD 20161003

 

2016年9月28日水曜日

生徒へのアンケート調査

 あっという間に9月も終わりに近づいています。昨日は、秋晴れのいい天気でしたが、今日は雨。ああ、秋だなという感じです。忙しいといえば、忙しく、この投稿、途中まで何回も書いては、また時間が経ってしまったと書きなおし、やっと書き終えた感じです。

 今年は、受け持ちの生徒が5人で、そのうち4名が車椅子を利用している生徒です。去年よりも車椅子の生徒が増え、高等部の体の大きな生徒ということで、あちこち体が痛い感じが。。。本格的に筋トレしないと1年もたないかもしれないと思っている今日この頃です。

 
 さて、今日の話題は、生徒へのアンケートについて。日本の学校にもあると思うのですが、スウェーデンの学校では、生徒にアンケートをとることがよくあります。公立の学校は、コミューンが一括して行っている場合が多く、生徒向けのアンケート、保護者向けのアンケートと行われます。私が働いているコミューンでは、決まった学年の保護者に向けて行われます。その結果をもとにして、学校教育の質と満足度を図ります。

 こういったアンケートは、私が働いているような重度の障害を持った子どもたちの特別支援学校ではとても難しくて、生徒向けのアンケートは今まで行われてきませんでした。普通の小学校の生徒向けのアンケートに答えられる生徒は少なく、かといって、生徒数少なく、わざわざうちの生徒様にアンケートを作ってくれる様なことはなく、今に至って言います。

 そんな現状をどうにかしようと、今年は、学級会のような授業があるのですが、その授業の議題の中に「楽しく学校生活が行われているか」というところがあり、そこで、生徒が答えた内容を書き留めておき、統計を取るということを思いつきました。生徒たちの答え方も3グループに分けました。グループは以下の通り。

グループ1:質問に自分で答えられる生徒
グループ2:質問に対する答え方に支援がいる生徒、コミュニケーションの仕方に支援がいる生徒
グループ3:現状では自分で質問に答えられないので、職員が代わりに答える

多くの生徒がグループ3になるのですが、毎日接している生徒なので、学校生活に問題がるようであれば、職員が気にかけているはずなので、職員が代わりに答えることが可能であると思います。それにこうしてでも、生徒一人一人の声を集めることは重要であると思います。

 このアンケートを週1回、学級会の授業の時間に行い、その結果をまとめて、年度の最後のレポートで使いたいと思います。もしも、この方法がうまくいったら、来年はもっと質問項目を増やし、授業や学校の活動の内容の向上に繋げられたらいいなあと思います。




2016年9月11日日曜日

外国で仕事をしていると実感する瞬間

 喜怒哀楽の激しかった新年度も徐々に落ち着きを取り戻したかと思いきや、アシスタントの一人が、車椅子の生徒が多い私のクラスでは腰が痛くてやっていけないと言い出し、数週間のうちにメンバー交代の予定。さすがに9年目にもなるとこんなこともへっちゃらになり、「はい、そうですか。」と言える自分を褒めてあげたい。

 バタバタの毎日に嬉しいニュースが入ってきて、姉妹校の交流でうちの学校を訪問してくれた広島の学校の生徒さんが大学に受かったというメールが届きました。自分のことのように嬉しくなりました。スウェーデンに来てくれた時も、広島を訪れた時も、いろんな話をし、努力している姿に学ぶことが多くありました。このニュースとともに、姉妹校のプロジェクトが思い出されました。


 今日が9月11日。アメリカのワールドトレードセンターのテロがあった日ですが、この日の数日前にスウェーデンに到着した私は、このニュースを知り合ったばかりの友人たちから聞いて信じることができずにいたことを思い出します。あれから、早15年。スウェーデンで働くようになってから、もう10年以上が経ちますが、ここに来て、久しぶりに外国で働いているんだと実感することが多々。。。

 なんとなく、こちらでのアイデンティティを確立し、それとなく過ごせている時もあれば、そのアイデンディティに、自分の中ものものと外のものとのズレが生じ、「ここは、外国だなあ」と思わされる時があります。あんまり詳しく書けないけれど、ふと、思うんですよね。例えば、上司から頂いたアドバイスとか。面白いので書いてしまうと、働き始めた頃にもらったアドバイスが、

そんなに頻繁に「ごめんなさい」と言ってはいけない

でした。深刻な感じじゃなく、アドバイスよーと。「förlåt」は言うべきじゃないと。確かに口から出る回数多いし、実際にはそんなに思ってないからね。

今回頂いた面白いアドバイスが、

あなたにしか言わないけど、もっとエゴイスティックになるのよ!

でした。他の人には言えないけどと、念を押されましたが、どうなんだ、このアドバイス。。。ま、学ぶことの多い毎日です。


 生徒の一人が、思わぬ変化を見せており、その対応を悩んでいます。毎年同じような感じになりそうでならないのが教師という仕事の醍醐味だと思い、頑張ろうと思います。

 明日は大学への登校日で、仕事お休み〜。実はこういう日が結構息抜きで好きだったりする。学校の後は第一教諭のストックホルム地域の集まりに参加します。いろいろ学びの多い週の始め、楽しみです。




 

2016年8月27日土曜日

スウェーデンの90年代の教育の失敗

 新学期が火曜日に始まりました。年度開始から問題連発の今年度。どんな1年になるんだろうか。。。と不安が隠せませんが、今日は夏日。休みを楽しみたいと思います。

 木曜日の「DN Debatt」に興味深い投稿がありました。「Jag ber om ursäkt för 90-talets pedagogiska idéer」と題されており、日本語にすれば、「90年代の教育のアイデアに対して謝罪をする」というもの。書いたのは、ヨーテボリ大学の教授、Jonas Linderoth氏。

 スウェーデンの学校の多くは先週、今週と新学期が始まりました。しかし、新年度、新学期ですが、話題になるのは、足りない教員の話ばかり。教員免許を有した教員が足りず、新年度になっても、必要な数の教員が確保できていない学校が多くあり、中には、クラス自体をなくし、近くの学校とクラスを統合するなどという話もあります。有資格者でなければ成績がつけられなくなり、以前にも増して教員獲得戦が厳しくなっているのに、有資格者の教職離れも問題となっており、スウェーデンの教育現場は相変わらず、問題山積みです。


 こんな現状に対し、教育に関わる研究者としてJonas Linderoth氏が90年代の教育改革、教育の思想に対する非を詫びるという投稿は話題を呼びました。具体的に少し説明すると、スウェーデンでは90年代始めに、教員による一斉授業から、教員がコーチやメンターのような立場に変わり、生徒が主体的、自主的に学ぶ形に教育の流れが変わりました。94年には新しいカリキュラムが出され、教師の裁量を重視し、内容が簡素計略化されました。この改革が失敗だったということです。

 この90年代の変化に対する批判は前からされており、今回が初めてというわけでないので、Jonas Linderoth氏の今回の投稿は、これらの改革に大きく関わって影響を与えてきた研究者側の責任を認めるという点が大きいのです。早速、これには、しっかりとした裏付け研究がないという反論がされましたが。。。



 記事には、1993年のAlison King教授の名前も出されていました。元の考え方となっているのは、彼の「The stage on the stage to a guide on the side」で、「教師がステージに立って」行う教育ではなく、「ガイドとして寄り添う立場で」教育を行うことで、生徒は自主的に、批判的な考え方を身につけ、問題解決能力を身につけていくというものです。しかし、近年の研究により、上記のような教育は、教師が授業を責任を持って行う昔ながらの形に比べて、生徒の結果が思わしくないということが明らかになってきました。私も考え方としては悪くないと思うのですが、教育に長年かかわってきたものとして、90年代の教育のあり方は、差が出やすく、外れると大きいというのが問題であるように思います。どの教師に当たるか、どのクラスでどんなクラスメイトと一緒に勉強するか、家庭でどのくらい援助が受けれるかなどによっても大きな差が出てしまいます。また、特別な配慮を必要とする生徒にとっては、教師側によるしっかりとした配慮がない限り、つらい勉強方法で、学びの質が低下してしまうリスクが大きいのも問題点です。


 90年代のスウェーデンの教育は、「生徒が自分で探求し、発見し、教師がそれを援助し、学びを導く」と書くと聞こえはいいのですが、クラスの人数が増え、移民の生徒が増え、教員の仕事が増え続けている今の現状には、合わないものであると考えられます。


 今回の彼の発言が、今後研究者の間でどのように語られていくのか、組合や国がどのように発言を利用していくのか、大変興味深いです。


読んだ新聞記事:"Jag ber om ursäkt för 90-talets pedagogiska idéer" DN 2016-08-25, "Läroplanen, tumregel för skolan ett in, ett ut" DN 2016-08-26, "Han har ingen empiri som stöder det han påstår" DN 2016-08-26

2016年8月16日火曜日

2016/2017年度の始まり

 8月に入り、すっかり秋色めいてきたスウェーデン、ストックホルムです。休暇も終わり、昨日から仕事が始まりました。休暇明け1日目は、想像通り、疲れました。今週1週間を乗り切れば、きっと日常に慣れるはずと言い聞かせています。(笑)

 
 新年度にあたり、決意したことが一つ。時間外労働をしない!、なんか目標が低いのですが、昨年度は、校長が変わったり、学校検査局が来たりと、なんだかんだと引き受けた仕事がたくさんあり、今年は週45時間の労働時間を遵守しようと思います。これに備えて、仕事が回った時にどうやってスウェーデン語でやんわり回避するか練習しました。うまくいくといいのですが、言われるとすべてやらなくてはいけないような感覚に陥るので、これは日本人だからなのかと思ってみたり。。。



 今年度は、研修のテーマが「補助代替コミュニケーション」になっています。スウェーデン語では、「Alternativ och kompletterande kommunikation」の頭文字をとって、「AKK」と呼ばれており、英語では、「Augmentative & Alternative Communication」の頭文字で、「AAC」と呼ばれています。私が関わっている子どもたちは重複障がい児と呼ばれる子どもたちで、複数の障がいを併せ持っており、学校には発語のある子どももいますが、発語のない子もいます。発語のあるなしに関わらず、補助代替コミュニケーションは、生徒たちによって重要な部分となっています。発語による言葉のコミュニケーションだけがコミュニケーションなのではなく、何かを伝える、伝え合うということがコミュニケーションなので、この子たちは、コミュニケーションができないということではなく、その動きや身振り手振り、顔の表情や発声により、コミュニケーションをとることができます。ただ、これらの補助代替コミュニケーションを用いる場合、受ける側に強い関心、相手への興味、コミュニケーションに関する知識が求められます。研修で色々とみんなと議論することで意識が高まるといいなあと思います。私が計画しなくてはいけない部分が多いので、頑張ろうと思います。


 
 年度始めは、ばたばたし、色々意見も多いので、疲れることも多いのですが、良い1年になるように頑張ろうと思います。今年は、また大学での勉強も始めるので、忙しくなりそうです。ブログも時々更新できるようにしようと思いますので、お時間あれば、ぜひ、覗いてください。


2016年7月26日火曜日

痛ましい障がい者襲撃事件。。。

 テロや襲撃事件など、痛ましい出来事が頻繁に起こるようになり、自分の気持ちがまとまらないことが多々あり、そういった事件に関してブログで書くことを控えてきました。しかし、今回の日本での出来事には、特別支援教育に関わり、障がいを持った人々と多く関わってきたものとして、大きなショックを受けました。


 何よりもまず、亡くなられた19人の方のご冥福と、今も病院で治療を受けている方たちのご回復を心よりお祈り申し上げます。


 スウェーデンの夜中に入ってきたこのニュースをツイッターで読んだ時は、信じられず、最初は読み流してしまいました。あまりにもありえないことだと。朝方、この事件が本当に起こったことだと、日本とスウェーデンのサイトで知りました。朝のスウェーデンのニュースでもトップニュースで伝えられていました。アメリカで起こった同性愛者に対する襲撃事件、ヨーロッパで頻繁に起こるテロ事件、そして、日本の障がいを持った方たちを襲った今回の事件。世界は、どこに向かっているのだろうかと、朝から考えてしまいました。

 
 事件を起こした男性は、この施設で働いていた元職員と報道されています。実際に障がいを持った方たちと接した人が、このような事件を起こしたことに、私は驚きが隠せません。この施設には中度から重度の障がいを持った方が多く入所されており、年齢も高齢の方が多いようで、日常生活は大変なことも多かったと想像ができます。でも、ともに時間を過ごし、どんな難しさを抱えている人でも、同じ人間であるということを感じられなかったのだろうかと。。。

 
 
 この事件により、いつもとは違う施設に様子に戸惑う障がいを持った方たちがいたのではないか、施設の職員の方は、自分たちもショックを受けながら、どうやって対応に当たっているのだろうか、今後心のケアはされるのだろうかなど、いろいろと考えます。まとまりのない文章でごめんなさい。




 

2016年7月24日日曜日

やっぱり家族が面倒を見るスウェーデンの介護問題

 「スウェーデンの老人ホームの種類とは?」と「スウェーデンの老人ホームの変遷」の続きです。老人ホームのあり方が変わり、在宅介護という考え方になり、老人ホームに入るのが難しくなってきた近年、スウェーデンでも、かなり多くの娘や息子が親の介護をしているという現状が明らかになりました。


 ストックホルム大学のペトラさんが行った研究結果によると、


  • すべての男性と女性の四人に一人が、どちらか片方の親の面倒を見ている。
  • 中年の男性と女性のどちらも同じくらい親の面倒を見ているが、女性の方がネガティブな影響を受けることが多い。
  • 女性(娘)で48%、男性(息子)で27%が、精神的に辛いと感じ、女性(娘)で27%、男性(息子)で16%が、仕事に集中できないと回答。
  • 男女共に7%の人が、介護のために労働時間を短縮し、1%の人が仕事を辞めた。


 1990年代の大きな改革で在宅介護が推進されたことによる社会の変化が、彼女の研究で明らかになりました。それまでの研究結果では、女性が親の面倒を見るというのはありましたが、この研究では、男性(息子)が今までよりも多く介護の責任を持つようになったとあります。しかしながら、年老いた親は、息子や娘の力を借りることを望んでおらず、それよりは老人福祉を利用したいとあります。その昔は、スウェーデンの個人社会の所以で多くの人がそう思うのだろうと思ってきましたが、少ない私の日本の情報でも、日本でも同じような傾向があるということで、どんなに血の繋がった親子でも面倒をかけたくないという気持ちは同じなのだろうかと考えさせられます。

 ホームヘルパーさんの利用で在宅という形が増え、娘や息子たちに加え、友人たちや隣近所の力を借りている人も多いようです。親の介護の責任を持ち、いろいろと手伝いをしている人は、私の周りにも多いのですが、研究結果にもあるように、ネガティブな影響を与えている場合も多いようです。興味深い研究結果がもう一つ出ていて、ウメオー大学のオーサさんによれば、勤務時間を短縮したりして親の面倒を見ていて、もうダメだとなって、老人ホームにやっと入れたとしても、罪悪感を感じて、精神的にストレスを感じる人が多いということでした。この結果、ちょっと意外でした。親は望んでいるのだし、子供も大変だったのだから、やっと入れてよかったとならないところに人間の奥の深さが見える気がしました。


 彼女の研究では、現在のシステムでは、当然のことながら、入所した老人に対してはいろいろケアが行われますが、家族や親類には何もケアが行われていないことが問題であるとして、罪悪感の緩和を目的とした「健康援助のためのトークセラピー」を行ったとあります。研究にか変わった看護師からは、家族の置かれた状況を客観的に理解する良い機会となり、効果があったとあります。


 歳をとったら、国が面倒を見るというのが当たり前であったスウェーデン、社会が変わり、人々がそれに合わせていけれればいいのですが、そんなに簡単ではないのだろうと思います。こうした研究結果により、新たな老人ホームの形が生まれたり、介護者のケアに目を向けられたりするようになり、高齢者にとっても介護者にとっても良い形が生まれればと思います。


読んだ新聞の記事:"Vuxna barn tar över omsorgen", DN, 2016-02-10, "Samtal får anhörigas skuldkänslor att lätta", DN, 2016-06-22

2016年7月22日金曜日

スウェーデンの老人ホームの変遷

 前回の「スウェーデンの老人ホームの種類とは?」の続きで、今日は、スウェーデンの老人ホームの歴史を少し振り返ろうかと思います。

1970年代

  • それほど介護の必要でない高齢者向けにある程度のサービス付きの住居を提供する目的で、高齢者用住居施設が多く建設された。
  • ホビールーム、レストラン、図書室といった共有スペースが確保されていた。
  • 自分でできるうちは自分で行い、ヘルパーさんなどの介入度は自分で決め、さらに介護が必要となった時には、建物内に職員がすでにいた。


1980年代

  • 新しい社会福祉の法律が施行され、ストックホルムに「サービスホーム」という住居形態が試された。


1990年代

  • 老人ホームの改革が行われた。老人福祉に関わる責任がコミューンに移行し、「できる限り長く自宅で暮らすように」という方向になった。
  • サービスホームに入所する人は、介護が必要な何か特別な理由がいるようになった。
  • サービスホームに入所しても、高齢者が住んでいたコミューンや責任地域がその後にかかる経費を持つという形をとるようになった。

2000年代

  • 「在宅介護」の時代。個人の家で介護が行われるようになり、ホームヘルパーが多く投入された。サービスハウスは、安心ホームやシニアホームへと変わった。



 ざっと書かれていただけですが、大まかな流れはわかります。1970年代のように、わりと元気なうちから老人ホームに入っていると、家で暮らしたいという思いがあっただろうと思うし、現在のように老人ホームに入るのがものすごく難しくなってくると、老人ホームの良さが見直されるのだろうと思います。在宅からいつホームに移るかは、個人の置かれた状況によって大きく変わってくると思います。早い段階でも老人ホームを希望する人がいれば、入所できるようなシステムがあれば良いと思います。新聞記事の中に登場するご老人も2名ともストックホルムの中心部にある老人ホームに入所できて本当に満足しているとあります。一昔前のように老人ホームに入れられたという感じの印象は全くなく、入れた人は本当にラッキーだというのが、印象的です。


 今後新しい取り組みとして上がっているのが、高齢者だけに対応した地域診療所がストックホルムに幾つかできるようです。20カ所程度とありますが、75歳以上の高齢者のみが登録できるようで、それによって、週末医療なども含めて、より適切で素早い対応をしていくことを目的としているようです。


 この間ニュースを聞いていたら、ホームヘルパーさんに死への恐怖を話してもなかなか真剣に受け取ってもらえない、話を聞いてもらえないということを話されている老人の方がいました。難しい問題であると思います。研修なども重要であると思いますが、それ以上に、その人自身が死に対してどのように考えているか、どのくらい経験しているかなどが関わってくるので、なかなか短時間でそういった質問に適切に答えられるという人は少ないのではないかと思います。高齢者を対象とした診療所が、今後ヘルパーさん達がカバー仕切れない部分も関わっていければ良いようにも思います。


読んだ新聞の記事:"Äldre&hemma, Äldre i Stockholm Del3: Här kan de äldre hålla gnistan vid liv", DN, 2016-03-16 

2016年7月21日木曜日

スウェーデンの老人ホームの種類とは?

 時間があるので、ためてあった新聞記事を読んで片付けています。ブログに書くのもあれば、さらっと読んで捨てるものもあります。今度のテーマは、老人福祉です。記事を読んでいて、まず気になったのが、いわゆる老人ホームの種類です。2016年3月現在の形をまとめていこうと思います。


 スウェーデンには、老人のための住居というと、まず、大きく二つに分けることができます。一つ目は、社会福祉の法律によって認められた場合に入れるホームで、もう一つは、法律など関係なく、個人で順番待ちに並び入ることができる住居になります。それぞれに、また複数のタイプの住居があります。


グループ1:法律適用で入れる住居

  • 老人ホーム(Äldreboende):24時間職員がいる、いわゆる老人ホーム。一度入所すると理由がない限りは、そのまま最後の時まで住むことになります。自分の家具などを持ち込むことができ、部屋が与えられます。入所できる人は、かなり介護の必要なレベルの老人になります。入所するのは難しく、入ってから半年から1年で亡くなる人が多いとも聞いています。
  • サービスホーム(Servicehus):各自自分のアパートに住むのですが、ホーム内に職員がいるのが大きな特徴です。ホームヘルパーを利用して、必要な介護を得ることになります。サービスホームの数が減っている現状では、入れる方は、アルコールや薬など何らかの依存症であったり、心の病にかかっていたりするなど、老人で何らかの大きな問題を抱えていることが前提のようです。
  • 短期入所施設/ショートスティホーム(Korttidsboende):ある一定の決められた期間だけ入所できる施設で、病院に入院した後に短期で入所したり、介護者の休養の間入所したりします。職員は24時間体制。
  • プロフィールホーム(Profilboende):例えば、65歳以下の認知症の方のための老人ホームといったような、特別なプロフィールを持った老人ホーム。


グループ2:個人で自由に入れる住居

  • シニアホーム(Seniorboende):たいていのアパートグループや会社が持っている、55歳以上の人だけが入れるアパート。場所が街の中にあったり、共有スペースがあったり、アパートの作りや大きさが老人向けになっていたりするアパートになります。
  • 安心ホーム(Trygghetsboende) :2008年にできた住居形態で、まだ新しいので数は少ないのですが、老人ホームに入るには元気だけど、一人もしくは自分たちで暮らすのは不安という方向けのもので、老人ホームとの大きな違いは、食事や医療などの部分が含まれていない点にあります。この安心ホームは、結構値段がするのが問題で、毎月の家賃を年金では払えない人が多く、入れる人が限られているようです。共有のスペースや食事ができるところが建物内にあるところはシニアホームと似ていますが、シニアホームよりも入る人の年代が上になるとあります。
  • 中間ホーム(Mellanboende):これが新しく今作られている、今後増えていくだろうと思われる老人のための住居になります。サービスホームに近い形で、アパートの建物内に共有のスペースがあり、食事やお茶を取ることができ、老人介護ができる職員がいる施設で、ホームヘルパーを利用しながら、暮らすことができる住居形態です。まだ数はないので、今後どのくらい増えるかはわかりませんね。



 グループ1と2では、よく似ているところがありますが、グループ1は、国からの福祉のお金が多く出て、2は自助努力というか、自分たちがもっている経済的な余力と知識でなんとかという感じがしました。スウェーデンは、こうしたシステムがちょくちょく変わるので、現状を整理してみました。引き続き、老人福祉について見ていこうと思います。


読んだ新聞の記事:"Äldre&hemma, Äldre i Stockholm Del2: Gunborg, 83, är för frisk för att få bostad", DN, 2016-03-15

2016年7月20日水曜日

ストレス軽減を目的とした新しいスウェーデンの労働環境法

増加の一途をたどるストレスによる病休」と「病気でも仕事をするスウェーデン人増加中」の続きです。2016年3月に施行された新しい労働環境に関する法律があります。この法律ができるぞ、できたぞっという時は、私の職場でも話題になりました。今までよりも、雇用主の義務が厳しくなるので、管理職は不安そうだったし、職員は、ストレスフルな労働環境に対する文句が溜まっていたので、今だという感じでした。


 どんな新しい決まりができたかというと、

  • 仕事の責任や量に関して:雇用主は仕事内容とそれに対する条件を整えることと。例えば、仕事の量を減らす、優先順位を変える、仕事の内容に変化をつける、人員を増やす。
  • 労働時間:雇用主は、仕事の計画段階で健康に影響を与えないように配慮しなければならない。休養/回復の可能性を含んだものとする必要がある。
  • いじめ:雇用主は、職場での差別的、虐待的な行為を許さないことを明確にし、揉め事やいじめなどが起きないように対策をしなければならない。

というものです。スウェーデンには、こうした労働環境に関する文書が80ほどあり、その中の一つになります。ストレスによって病休を取る人が増え、特に長期で取る人が増え、その経済的なコストが政府の予算を圧迫してきているために、雇用主がもっと責任を持って対策を打たないと、長期病気休暇の際の雇用主の負担も増やすぞと半ば脅しをかけながらの今に至ります。


 この法律が学校関係で、どのように影響を与えるかというと、学校は毎年度生徒が変わるし、労働の条件が変わってくるので、上記の項目を一度見直したらおしまいというわけではなく、常に見直していく必要性があるとあります。雇用主に対する義務が明確になったわけですが、もちろん働いている人々にも不満や心配ごとを感じた時に上に伝える必要があるともあります。相互関係が重要ですし、学校などは上は現場の状況を逐一知ることはできないので、何かあれば、伝えることが重要であると思います。

 こういった法律によって、どのくらい職場が改善されるものか興味があります。確かに組合関係の人は上に強く言う場面はありますが、どのくらい効果を発揮するんだろうかと。今回の記事では、違反の場合については書かれていないので、今まで通り、労働環境の問題は労働環境局に訴え、その後罰金という形になるのだと思います。病気休暇は、個人にとって辛いものであるし、社会にとっても負担が多いので、その原因が職場のストレスであるのならば、こういった法律によって改善の方向が見られるといいなと思います。今後、おそらく、今まで以上に雇用主の責任が問われるようになるだろうから、予防や対策を立てることは重要であると思います。


読んだ記事:"Stress ska minskas med nya regler," Lärarnas tidning, Nr 3, 2016

2016年7月19日火曜日

病気でも仕事をするスウェーデン人増加中

 病気休暇というシステムが確立されているスウェーデンだからこそ、できる調査だなと思った記事があります。見出しは、「病気でも仕事に行く理由」。「体調が悪いので、病休を利用して仕事を休むべきだ」と思いながら出勤したことが、ここ12ヶ月で1回もしくはそれ以上ある人の割合が載っていました。

        男性      女性
2007年     67%     73%
2009年     66%     69%
2011年     68%     73%
2013年     67%     76%
2015年     66%     75%


 数字自体にそれほど推移が見られませんが、女性の方が高いです。スウェーデンは病休が日本よりも取りやすいですし、文化もシステムも違うので比べることなどできませんが、結構、みんな無理して仕事に行っているんだなあというのが私の印象。。。みんなもっと、パッと休んでいるのかと思っていました。もちろん、偏見です。。。こっちで働くようになり、朝出勤して、あの人病休、あの人看護休暇なんて、聞かされてきたので、みんなよく休むなあという思いが染み込んでいます。。。

 
 しかしながら、統計では、10人に7人は体調がイマイチでも出勤していますし、10人に4人は休みの日でも上からの連絡には対応できるように求められていると感じているとあります。また、多くの人が、できる人であり、生産性のある人であることを求められていると感じているようです。病休は30〜49歳の女性に多く、これらの人々の8人に10人は、病気でも仕事に行ったことがあると答えています。これらの女性は、幼稚園や学校、学童で働いていることが多く、そうすると、職場で病気をもらってくることが多いのが原因ともあります。医療関係や老人福祉関係で働いている人も多いですし、小さな子どもがいる年齢でもあると思うので、仕事と家庭の両立をしながらというのは容易ではないと想像できます。



 病気でも仕事に行く理由幾つかあるのですが、その一つ目が、自分がいないと代わりが必要になる仕事というのがあります。病院や学校の先生などもそうがそうです。ある一定の役職についている方は、病気で休むと仕事が滞ったり、代わりが見つけにくかったりするため、とりあえず、出勤するという人が多いそうです。うちもこれあるかも。生徒一人に職員1名なので、誰か休むと代わりの職員を準備しなければならず、その度に予定を変更したりと大変で、結構なストレスになっています。

 二つ目の理由としては、経済的に余裕がないためとあります。病休のシステムがあると言っても、全額お給料が保証されるわけではありません。スウェーデンの場合、休んだ初日はお給料が出ず、二日目から約80%のお給料が出ます。ノルウェーは、聞いたところによると、一日目からお給料が何%か保証される代わりに医師による診断書が必要だと聞いたことがあります。(スウェーデンは医師による診断書は2週目からになります。)そのため、たとえば1週間仕事を風邪で休んだ場合、給料にもよりますが、数万円の損失になります。この損失ができるような経済的な余裕がないために病気でも出勤するという人も多いようです。

 
 記事の中では、関わっている人が、なぜこういう状況なのかを考えることが重要だとあります。病気で出勤することは他の人への感染を意味しており、よくないことではあるので、休めない理由が職場のしきたりなのかそれとも上からの指示が不明瞭なのかなど、しっかりと考えて見直す必要があるのだろと思います。仕事でのストレスが原因で長期の病気休暇が増えている今、小さなことからしっかり見ていく必要があるのかもしれないなあと思いました。



読んだ新聞の記事:"Därför går många till jobbet när de är sjuka", DN, 2016-06-15

2016年7月18日月曜日

増加の一途をたどるストレスによる病休

 何回か第一教諭について書きましたが、テーマを変えて、スウェーデンにおける現代の心の病について書いていこうと思います。

 スウェーデンでも、ストレスが健康に与える影響が問題となっており、ストレスを原因とする病気休暇の増加が社会問題となっています。これについて、Visionという組合が行ったアンケート結果を行いました。


 まず、数字で見てみると、

  • ストレスによって病休となった社員によって、雇用主にかかる経済的負担は、最低でも150,000スウェーデンクローネ(日本円で約200万円ほど)。
  • 病休が長引き、燃え尽き症候群やそれに伴ううつ病となった場合、雇用主にかかる経済的負担は、最低でも500.000スウェーデンクローネ(日本円で約650万円ほど)。


 ストレスによって病休となる人が年々増加をし、その増加率は驚くほど高いです。男女比で見ると、男性より女性の方が高く、職種としては、心理学者やセラピスト、ソーシャルワーカーや学童の職員などが最も多いとあります。これらの職種は、福祉に関わっており、学歴も要求されるし、日常的に多くの人々接していかなければならず、これらの職種では、女性のみならず、男子も多いということでした。

 記事には直接書かれていませんが、私でも想像できる原因としては、福祉の分野はここ数年効率化が強く求められているし、移民や難民の増加に対応するのはこの分野であり、仕事量が増えているのだろと思います。私の知り合いでもソーシャルワーカーだった方が、あまりの仕事の多さと無理難題に転職しました。そういう状況で真面目にやっていれば、きっとストレスが原因で病気になってしまうのだろうということは、想像に難くありません。

 記事の中では、福祉に関わる職種で多いという結果に、この状況を改善しなければ、福祉の質が落ちていってしまうだろうとあります。この状況を見て、2016年3月末に導入された新しい法律があり、この法律によってなんとか状況が上向きならないかと多くの方が思っているようです。その法律などについて、次で見ていきたいと思います。


読んだ新聞の記事:"Jobbstressen börjar bli ett allvarligt hot mot vår hälsa", DN, 2016-03-31

2016年7月17日日曜日

第一教諭に与えられた時間は?

 「スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状」と「他の先生から批判が多いキャリアアップ制度」の続きです。読んだり書いたりしていると、今年悩んだことなどが整理できてきました。今回は、実際に第一教諭として働いている人の視点から少し書こうと思います。

 私もだけど、何がこの改革で足りなかったかというと、これに尽きます。「時間」です!今回のキャリアアップ制度は、お給料の上乗せの額も決まっていたし、その資格も大まかに決まっていたし、大体の数も決まっていたけれど、実際の仕事内容は大雑把で、しかもそれに対する労働時間に指針はあっても決まりはなかったのです。そのため、実際に働いている第一教諭たちは、したいこと、できること、必要なこと、とにかくたくさんあるけれど、時間がないのです。私もですが、それまでの仕事が減らされたわけではないので、その仕事はそのまま残り、その上、仕事が加算されました。そうなるとどうしても時間が足りない。

 一応、授業を行う時間をそれまでの80%にするといいとか、意見はありますが、実際の統計は次の通り。

第一教諭の仕事に当てられた労働時間の割合

全労働時間の0−4%     41%
      5−14%    23%
      15−24%   21%
      25−34%   2%
      35−44%   1%
      45−50%   1%
知らない、わからない    10%

(943人の第一教諭にアンケートして回答数は67%)


 アンケート結果を見れば一目瞭然といった感じです。ちなみに私は0%。時間の方は与えられませんでした。最初の頃は、同僚から「お金もらっているんだから」と言われ、結構傷つきましたが、第一教諭の集まりではそういうこと言われている人が結構いると知り、ちょっと納得。時間は与えられていないのに、他の人と同じように仕事をした上で、プラスの仕事をした結果を見せないといけないというプレッシャーを感じる第一教諭も多くて、「5000クローネ分働いたって見せないと」という声も聞かれます。


 私はというと、一応、言われた仕事をこなし、それに加えて、うちの生徒にとって必要と思われる内容を実現しようと奔走し、ほかの先生から、「いつ、ああいう資料作っているの」と聞かれ、ほぼ時間外労働だと話しました。だいぶ理解してくれる人も増えたし、どうしても家でやりたくない仕事は、学校で配慮して貰って行うこともできます。ただ、継続して行うという感じは持てず、常に自分から動かないといけないのが痛い。一応、副校長にはなんとか時間を確保して欲しいとお願いしたが、どうなることか。。。

 アンケートの結果を見ると、半数の人は満足していないにしろ、時間も与えられているので、やはりそのコミューンや学校の考え方が大きいのだろうと思います。やろうと思えばいくらでもできる仕事でもあるので、時間といっても区切りが難しいのも事実です。今後、この点が少しずつ改善されていけば、より一層、キャリアアップ制度によってスウェーデンの学校が変わっていけるのではないかと思います。


読んだ記事:"Dat är vi lärare som är expertisen" Lärarnas tidning nr 12/14

 

2016年7月16日土曜日

他の先生から批判が多いキャリアップ制度

 前回の「スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状」の続きです。キャリアアップ制度が導入されてから数年たち、六千人の先生に対して制度をどう思うかアンケートが行われました。その結果が教員組合の新聞にちょこっと載っていたので、紹介します。


  • 半分以上の先生が、キャリアアップ制度に対して、とても批判的、多少批判的である。
  • 半分以上の先生が、キャリアアップ制度は第一教諭や講師になった人のみに利益があると思っている。
  • 多くの先生は、キャリアアップ制度は、お給料に大きな差が出るので、教員のグループには良くないと思っている。


 やっぱり、他の先生はあんまりよく思ってないんでしょうね。その理由には、やっている内容が不透明で、他の先生にあまり伝わっていないというのも大きいように思います。コミューンの教育担当科や管理職がしっかりと目的を持って第一教諭などを有効に使っているかというとそうではないところが多いので、上からも不透明で、下には伝わっていないという現状があるように思います。このキャリアアップ制度は、役職に就いた人には手当が出るので、こう言った役割とお給料が直結したタイプの改革はあまり良くないとも言われています。

 個人的には、スウェーデン社会にある平等意識が深く関わっており、同じ仕事なのに、数名の人がキャリアを積み、お給料もグンと上がることに対して、よく思っていない人が多いのだろうと思ってしまいます。たまに同僚から言われる言葉に、深くは傷つきませんが、勘ぐってしまうのも事実だし。

 このキャリアアップ制度がうまく浸透しなかった理由は幾つかあると思うのですが、その中でも、特に実際に働いている第一教諭側から聞かれる大きな問題を次で取り上げたいと思います。


読んだ記事:"Kritik mot förstelärare", Lärnarnastidning, nr.2 2016

2016年7月15日金曜日

スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状

 何回かに分けて、私が2年前からなっている「Förstelärare(フォシタラーラレ)」について書こうと思います。名称は、前半部分の「Förste」が一番という意味で、後半は先生の意味の「lärare」になります。なので、Förstelärareになれなかった人のことを、「Andralärare(アンドララーラレ)」と言ったり、できる先生ではなく「Sistelärare(システラーラレ)」と呼び、あまり力のない先生にこそ、力をつけさせるべきであるという皮肉も聞かれます。そのため、この名称については、問題が多いという人も多く、名前を変えるべきだという声もあります。

 スウェーデンのキャリアアップ制度は、前にも書いたと思うのですが、2種類あります。私がなっているのが、第一教諭で教員免許を持っていることが条件で、その他の条件はコミューンによって多少変わりますが、私の場合は、4年以上教員としての良い実績があること、特に生徒の成績を伸ばした結果がることというのが条件でした。もう一つは、「Lektor(レクトル)」と呼ばれるもので、最低でもマスターの資格を持っている講師に当たる職業です。このLektorレベルになると、大学でも働けるので、実際に学校で働いている人に私はまだあったことがありません。特別支援学校に限っては、十人いないと聞いています。そのため、ここでは、第一教諭についてのみ書こうと思います。

 このキャリアアップ制度の実態を、実際に働いている人々にアンケートし、(私も参加しました!)それをまとめたものが出されました。その結果をもとに講演会が行われ、その時の資料より、少し現状をまとめてみました。


1、スウェーデンのキャリアアップ制度の目的は?

  • より多くの生徒が国の到達目標に到達することができるように、その可能性を増やしていく。
  • 上手な教師に、教師として授業を行いつつ、キャリアアップの可能性をもたらす。

 最初の目的は、私もよく聞かされることで、生徒の持っている力を最大限に伸ばすためにはどうしたら良いのかというのが私たちの大きな課題、仕事になります。2番目の目的は、スウェーデンでは教員を辞めていく人が多くいて、その原因が、ある程度年数を重ねると、キャリアアップする方法がなかったために、転職して学校去ってしまう人が出てきたためとされています。第一教諭になりたいという人は、向上心が旺盛な方が多いので、新しいことに挑戦したり、管理職になったりして、授業を行わなくなってしまうため、それを止めようとしたようです。

2、第一教諭の仕事とは?


  • 主の目的は、授業を行うことで、授業とそれに伴う課題を行う。
  • 最低でも全労働時間の50%をそれに当てる。

と、一応政府の方針はありますが、2番目の労働時間はかなりあやふやですね。私の場合は、以前からの仕事が減ったわけではなく、上乗せなので、かなり仕事量が増えました。


3、具体的にはどんな仕事を?


  • 新採用の教員と教員養成課程の担当
  • 他の先生の支援と援助
  • 教育的議論のリードとより良い授業をこなうためのプロジェクを行う。
  • 一つの科目の責任を持つ
などです。うちの学校は5つの分野を行うことと言われ、その5分野を一つずつ4人の第一教諭の先生と行ってきて、2年経った今、学校形態によって方針の違いが出てきています。小学校と特別支援学校では、やはり同じことをするのは難しかったりします。この辺り、私は、校長と副校長に内容を明確にして欲しいと交渉中で、不明瞭なため、同僚から仕事を押し付けられたり、心ないコメントを聞かされたりするし、私も自分の仕事の線引きが難しいので、なんとかもう少しすっきり明確にしたいところです。

4、現在の総数は?


  • 14200人


2016/2017年度には、1万7千人まで数を増やすことが目標だそうです。

5、平均年齢は?


  • 46歳

確かに私は周りより若い方になります。しかも外国人は、少ないかな。。。今の所、数少ないですが、出会った第一教諭で移民のバックグランドを持つ人にはあったことがないです。

6、平均給与は?

  • およそ37,900スウェーデンクローネ (日本円で約50万円ほど。レートは約13円)

第一教諭はお給料が5000クローネ、講師は1万クローネ上乗せされます。約50万といえば多いのですが、手取りは、税金を引かれるので、ぐーんと減ります。。。

7、男女比は?

  • 男性23% 
  • 女性77%

女性が多いですね。話には聞いたことがありますが、まだ男性の第一教諭にはあったことがありません。

8、学校区分での人数は?

  • 小中学校:8608人
  • 高校:2809人
  • 成人教育:206人
  • その他:265人

私は、その他の区分になるのだと思います。国の特別支援教育研究所みたいなところがあるのですが、そこでは、定期的に第一教諭を集めて、話し合いをしているのですが、参加者は十人前後です。



 ざっと、現状を書いてみました。この改革に対する批判も多く出ており、それらについても書いていこうと思います。


読んだ資料:第一教諭の会議の講演会の資料、2016年4月、数字は2015年度のもので、元々の資料は学校局のレポートになります。名前は次の通りで、学校局のホームページより読むことができます。

  • Vem är förstelärare?
  • Vad gör förstelärare?


2016年7月14日木曜日

デンマークの特別支援教育を学ぶ

 北欧やスカンジナビアとひとくくりにされがちですが、結構違いのある北欧諸国。スウェーデンの教育は、それなりに詳しいつもりですが、デンマークやノルウェーの教育についてはあまり知りません。フィンランドは、よくスウェーデンとの引き合いに出されるので、デンマークやノルウェーよりは知っているかも。

 そんなお隣の国、デンマークから、デンマークの特別支援学校で働いている日本人の方が、遊びに来てくれました。連絡を頂いた時は、「えー、いるんだー」と驚きと喜びでいっぱいになり、メールですでに質問してしまいました。主人が、「そんなによく話すことがあるねえ。ブラーブラーブラー」とか言ってましたが、久しぶりに、日本語をたくさん話し、自分の興味のあることを同じように興味を持って話し、聞いてくださる方との楽しい時間を過ごしました。

 デンマークの実情を聞き、驚いたことは、


  • 「特別支援学校」という学校区分がなく、インクルーシブが進んでいると聞いていたが、そうではなかったこと。
  • 特別支援学校が、日本と同じように障害種別であったこと。スウェーデンは、障害種別は、基本的に聾学校のみです。
  • 給食がなかったこと。その理由が、どうも移民の増加にあること。
  • 特別支援学校で働く職員の職種が、スウェーデンより多くあること。デンマーク語や数学を教えることができる先生、芸術系の科目などを教える先生、アシスタントに近い職員、毎日所属が変わるフリーに近い先生に加えて、2年で習得できる1科目のみを教える先生もいるようで、現在のスウェーデンよりも職種が多くありました。
  • クラスに複数先生がいること。これはいいなあと思いました。私は、先生一人にアシスタントがつくので、なかなか教育的方針を詳しく話せる人がいません。
  • うちの学校よりも、トレーニングをしっかり行っていたこと。学校がTeacchを採用しているということで、うちの学校よりも学校の方針に統一性がありました。うちは、重度の障害を持った子が通う学校で、その障害は様々で、方針も先生によってかなり変わります。教材の話にトレーニング、アセスメントの話などを色々きいて、アドバイスを的確にくださるので、すごく感動してしまいました。いろいろ行き詰まっていたので、「ああ〜間違ってなかったんだ」とか、「そうか、そうすればいいんだ」とか、本当に勉強になりました。


他にもたくさん教えてもらって、お隣の国なのに、こんなに違うんだとびっくり。もちろんよく似ているところもありました。あとは、彼女のと私に共通点が多くあり、年齢的にも今後の行き方について考えているという話を聞き、共感をしました。この歳になると結論というよりは、同じように考えている人もいると知ることで安心し、また、前を向いていけるような気がします。


 最初に連絡をもらった時もとても嬉しかったのですが、まさかこんなに早く実際に会えるとは思っていなかったので、喜びでいっぱいです。スウェーデンにも日本人が多い職種はあるし、先生をしている人は多くいると思うのですが、特別支援教育に関わっている、特別支援学校で働いているという方には出会ったことがなかったので、感激でした。1年後に会う約束をし、その時に、こんなこと頑張ってやったよと話せるように、また頑張ろうと思いました。たくさんの元気とエネルギーを運んでくださって、本当にありがとうございました。


2016年7月10日日曜日

スウェーデンの学校の現状を変える組合の案

 昨日の「スウェーデンの教員組合の組合長のインタビューより」の続きです。記事には、スウェーデンの学校の現状を変えるための4つの明確な案が提案されていました。

1、教育面で指導力を発揮できるように、校長にさらに時間を与える。

 スウェーデンの学校の校長は、教員の指導や授業の向上といった教育面で指導力を発揮するような時間は、はっきり言ってありません。管理職の仕事は、いかに経済的な予算をしっかりと守って学校運営をするかにあり、日々の仕事は、

学校の運営、特に経済面
学校の建物に関する問題
教員などの職員の確保
法律面の問題対応

などがあり、これらを他の人材が行うことによって、校長が本来の校長職である学校の運営、教育に関わることが重要であると。その通りであると思います。校長が授業をみにくるなんて、学期に1回あるかないかです。うちの学校は副校長がいるので、副校長は会議には出ることが時々あるけど、校長は姿を見せない。。。電話の対応や日々起こる問題の対応で手いっぱいの模様。ここは確かに改善の余地ありで、コミューンの教育委員会に当たる部署からもう少し、援助があってもいい気がします。


2、社会的教育員を増やし、教員の仕事をへらす。

 おそらく、今後、スウェーデンで注目される教育に関わる仕事の一つが、この「社会的教育員」と直訳したけど、「Socialpedagog」と呼ばれる職業です。もう一つの注目される仕事は、先生のアシスタント。生徒のアシスタントはいるけど、今後は先生のアシスタントが増えると思います。

 この社会的教育員は、生徒の社会性を育てる役割をする先生で、担任と生徒の健康に関わるチームの橋渡しとなって、様々な問題解決に尽力していくことになります。現在は、この部分を担任や、有能な特別支援教育専門員が行っており、授業以外の仕事として、生徒の面々によっては、かなり時間を取られます。グレーゾーンの子が一人でもいれば、先生は結構大変で、ソーシャルな面を見てくれる教育者が、例えば休み時間などに、適切に子供達のちょっとしたケンカなどに対応してくれて、その後の処理もしてくれたり、ケンカにならないように改善してくれたりしたら、いじめや不登校など、いろんな問題が少しずつ改善されていくように思います。


3、先生のアシスタントの導入。

 上記に書きましたが、先生のアシスタントが今後増えていくと思います。教員が日々行っている仕事の一部を補う役割で、仕事の内容としては、

用紙の記入や情報の共有
コピー
パソコンなどIT関係の準備や手配

などで、事務に近いのですが、学校の事務員さんと先生の間みたいな感じでしょうか。今後は、増えると思う職業です。


4、生徒の健康チームの改善。

 スウェーデンの学校には、「Elevhälsoteam」という「生徒の健康チーム」の設定が義務付けられています。このチームの役割を改善、活性化させることは、私もとても重要であると思います。チームには、各専門家が揃っており、今回の案では、コミューンに特別な学校のチームを設ける必要性があると。学校関係の部署と福祉に関する部署が合同でチームを結成し、学校の生徒の健康チームと協力して、特に予防面で対策していくことが重要であるとあります。

 この部分は、学校検査局も力を入れて見て回っているようで、今後徐々に改善と予想されます。



 どの案も、実現されると良いと思われるものばかりです。今後少しずつ変わっていくことによって、教員になり、さらに続けていってくれる人が増え、スウェーデンの学校がさらに良いものとなっていくと良いと思います。



読んだ新聞の記事:Återupprätta Sverige som kunskapsnation, DN, annons från lärarförbundet, 2016-07

2016年7月9日土曜日

スウェーデンの教員組合の組合長のインタビューより

 前回の記事「数字で見るスウェーデンの学校教育」の元とのなっている新聞記事には、教員組合の組合長のインタビューも載っていましたし、学校の現状を変えるための案も載っていました。余談ですが、休暇も3週間目に入り、やっと教育関係の本とか読んでも、興味深いと思えるようになりました(笑)。休暇に入った当初は、転職も考えたほど嫌気がさしていましたが、家族や友人の励ましや応援、のんびりしたことで、復調しました。いろんな人の支えに感謝するばかりです。


 スウェーデンの学校教育に興味がある人ならば、珍しいニュースでもなんでもないことですが、スウェーデンではここ3年間に約9万人の教員が新たに必要になると言われています。どういう数え方をするかによって、出てくる数字が毎回違いますが、今回の新聞ではそう書かれており、パッと思ったのが、移民のためのスウェーデン語クラスや幼稚園教諭、学童などの先生を総括した数字であろうと思いました。スウェーデンには、教員組合が2団体あり、この教員組合は幼稚園などを含む、組合になる方の制限がゆるい方なので、おそらくと。

 それにしても、9万人大変な数です。いろんな要因が考えられますが、まずは人口増加でしょうね。ベビーブームと言われなくなり、その人口増加が一般化した今、年々人口が着実に増加しています。そして、移民、難民の増加。ちらっと読んだ新聞記事で、イギリスのEU離脱が決まってから、スウェーデンに帰化したイギリス人が増加したとか。今後のEU情勢により、さらにスウェーデンで移民問題が起こってくる可能性があるでしょうね。そうなると、今でも移民の教育に関わる人材が問題になっているのですから、9万人でも足りなくなるかも。

 インタビュー形式で書かれていた中で次に気になったのが、免許を持った教員を採用することがたいへん難しいという話。こちらでは、学校ごとの採用になるので、校長などが採用に関わりますが、募集をかけてもその資格にあった人を採用するのは至難とか。私の学校も今年は教員2名アシスタント4名新規に採用しなくていけなくて、大変でした。教員免許を持っていても教員として働いていない人もある一定数いるし、学生の中でも教員になってもいいけど、ならないという人が多くいるらしい。そういう人たちの理由としては、お給料が低いことと仕事量が多いこと。

 この2点ですが、確かにそうなんですよね。教員のお給料がすごく低いとは思いませんが、教員になるために大学に通う年数とその後のお給料という面から見ると安いと思います。私と同じ資格を持った人の場合、実に大学に5年半から8年ほどは通っており、最初の免許を取ってから一度現場に出なくてはなりません。これだけの時間をかけるということは、それだけ学生のローンも払っているということで、そう思うと安いと思います。仕事量に関しては、先生特有の問題でもあると思います。どこまでやっても終わりがないというか。でも、確かにここ数年の改革でお仕事量増えていると思います。


 そんなところに焦点を置いた組合の案を、次に紹介したいと思います。



 読んだ新聞の記事:Återupprätta Sverige som kunskapsnation, DN, annons från lärarförbundet, 2016-07

 

2016年7月7日木曜日

数字で見るスウェーデンの学校教育

 今年も夏の恒例、ゴットランド島でアルメダーレン(Almedalen)と呼ばれる政治週間が始まりました。去年は母が来ていたこともあり、いつやっていたかも覚えていなかったのですが、今年は、テレビや新聞をチェックして楽しんでいます。この期間は、毎日党首演説が聞けるだけではなく、多くの団体や期間が様々な活動をするので、そちらも興味深いです。

 教員組合の特集記事に現在のスウェーデンの現状が載っていたので、紹介しようと思います。*元は学校局より

スウェーデンの学校教育形態別の総数
  • 幼稚園・就学前施設:9774園、うち2668園が民営
  • 義務教育学校・小中学校:4845校、うち827校が私立
  • 高校:1303校、うち443校が私立

スウェーデンの学校教育形態別の児童・生徒数
  • 幼稚園・就学前施設:493,609人
  • 就学前クラス・6歳児教育:116,312人
  • 義務教育学校・小中学校:985,620人
  • 一般の義務教育の特別支援学校:9774人
  • 特別な特別支援学校:553人
  • 高校:323,141人
  • 特別支援学校の高等部:6410人
  • 成人のための特別な教育:4245人
  • コミューンの成人教育:216,251人
  • 外国人のためのスウェーデン語教育:124,750人

教員一人に対する児童・生徒数(2015年秋学期)
  • 幼稚園・就学前施設:先生一人に対して、子ども5,2人
  • 義務教育学校・小中学校:先生一人に対して、子ども12,2人
  • 高校:先生一人に対して、生徒11,9人

児童・生徒一人あたりにかけた教育予算(2014年)
  • 幼稚園・就学前施設:133,500スウェーデンクローネ
  • 学童保育:34,900スウェーデンクローネ
  • 義務教育学校・小中学校:97,700スウェーデンクローネ
  • 一般の義務教育の特別支援学校:488,000スウェーデンクローネ
  • 高校:112,400スウェーデンクローネ
  • 特別支援学校の高等部:398,600スウェーデンクローネ
  • コミューンの成人教育:45,200スウェーデンクローネ
  • 外国人のためのスウェーデン語教育:39,000スウェーデンクローネ


自分で調べようと思えばできるけど、こうして書かれていると一目瞭然でわかりやすいです。民営化が進んだと言っても、民営の幼稚園は全体の約27%、小中学校に至っては、17%と、そうでもないなあという印象を受けます。高校は民営化がもう少し進んでいます。そうなると民営の学校に対する法整備が遅れ、学校批判が出てくるのも仕方がないかと。

 各教育に対する生徒数に関して言えば、幼稚園と学童をのぞき、無料でこれらの人々に対する教育が行われているということは、改めてすごいなあと思います。教育批判も多くされますが、国の教育に対する姿勢という面で見れば、やはりスウェーデンは一目おくべき国であるように思います。コミューンの成人教育は、移民の方も多く入っているだろうし外国人のためのスウェーデン語教育は移民の方のものなので、自国民ではない人もたくさんこの国の教育システムの恩恵を受けていることになります。

 あとは、やはり教育予算。私が働いているような特別支援学校は予算が多く降りているとは聞いていますが、小中学校に比べると約5倍の予算が出ており、やはりお金がかかっているんだなあと思います。実際に働いていると、結構文句も多いし、問題も多いのですが。


 この政治週間には各党いろんな案を出してくるので、興味深いです。一番の注目は移民問題であるように感じますが、教育に関しても例年通り、注目されている分野ではあるので、多少新しいアイデアが出ています。たとえ与党であっても過半数を持っていない今、どの案も実行されるかどうかはわからないのですが、そういう考え方をするのかと私など日本と比べながら、思うことがいろいろあります。この政治週間に関して、今年は、テロの心配もされましたが、今の所大丈夫のようです。何事もなく、良い天気で残り半分終わると良いと思います。


読んだ新聞の記事:Återupprätta Sverige som kunskapsnation, DN, annons från lärarförbundet, 2016-07




2016年7月2日土曜日

ダブレット子守はそんなに悪くない?!

 久しぶりの連続投稿です。あまり天気が良くない上に、出かける予定もないと読書が進みます。

 6月初旬に「Att låta surfplattan vara barnvakt är okej:タブレットに子守をさせても大丈夫」という新聞記事がありました。多くの親たちは、タブレットや携帯で子どもを遊ばせることに罪悪感を感じる場合が多いがそんな必要はないということでした。疲れ切った土曜日の朝、もう1時間寝るために、子どもにタブレットを渡すのは悪いことでもなんでもないと。

 この研究を行ったのは、Malin Bergström(マーリン・バリィストローム)さんで国のメディア研究機関と共に子どもを持つ親たちのIT使用を討論するために行ったそうです。結論を言えば、きちんとルールを決めて使用すれば、問題ないということだと思います。新聞に書かれていた使用に関する親へのガイドは以下のとおり。

保護者として子どものメディアの利用に対してできる援助(元は、Rikshandboken i barnhälsovårdより)

  • 何をやったのか、その経験を共有する
  • 何を思ったのか、その考えを共有し、何を見たのか、やったのか、経験したのか、その内容を言葉で示してあげる
  • 子どもが何を学んだか、それを他の人に伝えられるかといった知識を共有する
  • 心配事や疑問は、信頼の置ける人に聞くように教える
  • 指導や説明を受けるようにする
  • メディアや情報に対して批判的な姿勢を身につけさせる
  • メディアがどのようなものか教える
  • 広告の目的を教える
  • 利用する内容を制限する
  • メヂィアの利用時間を制限し、他の活動もするようにする

 子どもがタブレットで何をしたのか、そのやっていることややった内容に興味を示し、会話をすることが重要であるとも書かれています。親として、メディアの正しい利用の仕方を教えていくことは、現代の親にとっての大きな課題であると思います。これからの世代は、こうしたメディアとうまく付き合っていけなければ、仕事も難しいし、お金の使用も難しいし、余暇活動も難しいし、社会活動も難しいという時代になっていくと予想されます。小さい頃から、自然な形で触れ、うまく付き合っていく方法を教えていくことが重要なのであろうと思います。記事にも、全面的に禁止するよりも、タブレットフリーゾーンやフリータイムを用いることによって、バランスをとる事が重要であるとあります。また、睡眠は重要なので、夜寝る前の1時間はタブレットフリータイムに適しているともあります。


 スウェーデンには、アストリッド・リンドグレーンの物語に出てくる「Bullebyn-idealen ブッレビー理想」というのがあります。今の母親世代などは、ブッレビーという物語に出てくる昔ながらの街並み、生活様式に憧れる、憧れて家を買ったなどという人に会うことがあるくらい、昔ながらの理想の子育て、子育て環境というのが頭に沁み込んでいます。それはそれで素晴らしいと思いますが、現代と寄り添いながら、タブレットもうまく利用しながらというのが、これからの時代には合うのだろうと思いました。10代になってから、ゲームにはまって昼夜逆転といったような生活になるよりは、小さい頃からしっかりと躾の一部に組み込んだ方が効率がいいようにも思います。と、子供のいない私が言う。。。



読んだ新聞記事:DN、20160604、Att låta surfplattan vara barnvakt är okej

ストックホルムのおすすめカフェ:特別支援教育編

 休暇に入り、あの忙しかった生活は存在しなかったかのように、のんびりした毎日を送っています。ブログの更新頻度がグーンと減ったここ1年ほど、何度かもうやめようかと思いましたが、ブログを通じていろんな方から連絡をもらえるので、やっぱり続けようかと。そんな出会いが今回もあり、その方と一緒に障害を持った方が働いている、デイケアセンターのカフェに行ってきました。ということで、ストックホルムのおすすめカフェ、特別支援教育編として、紹介したいと思います。

 場所は、ストックホルム中央駅から歩いて20分ほど、地下鉄やバスを利用することも可能な、ストックホルムの人々の憩いの場、Vasaparken(ヴァーサ公園)内にあります。デイケアセンターと訳して良いのか、いまいちわかりませんが、こうした成人の障害を持った方たちのための施設をスウェーデン語では、Dagilga verksamheter(ダーギリガ・ヴァルクサムヘテール、日々の活動)と呼び、いろんなタイプがあります。ここは、カフェの運営と庭仕事、音楽などの芸術グループとあるようです。年度末に前年度の卒業生が通っている施設に面談に行ったのですが、そこは犬の幼稚園がありました。日中犬を預かって散歩をさせたりする施設で、人気があるタイプです。そこは、ガラス製品を作成するグループなどもありました。こうした施設では、特色を打ち出して、できる限り、「仕事」をするように構成されています。

 カフェの名前は、「Café Katarinahuset、カフェ・カタリーナヒューセト」。ヴァーサ公園は、サッカー場もある大きな公園で、その一角の古い建物にありました。


 中はこんな感じ。可愛らしい、スウェーデンによくあるタイプのカフェです。ランチは、2種類から選べます。メインにサラダ、パンとコーヒーがついて80クローネ。


 言われなければ、ここで障害を持った方が働いているとはわからないかもしれません。職員もいるので、障害を持っている方はおそらく5から6名ほどだと思います。知っている人なら、わかるかもしれないのが、こんな絵の表示がちょくちょくしてあることでしょうか。


 これは、働いている人たちに使うものがずらっと並んでいました。ナイフはナイフ、フォークはフォークなどの絵もありました。


 いろんな方から問合せを頂くので、普通のカフェでのランチもいいけれど、この道ならではの場所でのランチもいいかなと思います。ここはストックホルム内でも立地もいいのですし、環境もいいので、興味のある方は是非訪れてみてください。夏の間は休暇で閉まることもあるかもしれませんので、事前に問い合わせておくことをお勧めします。電話するとその日のランチのメニューも教えてくれます。

Café Katarinahuset、カフェ・カタリーナヒューセト
住所:Eastmansvägen 35 vid Vasaparken
電話:08 302210
アクセス方法:地下鉄緑ライン Odenplan駅もしくはSankt Eriksplan駅下車、徒歩10分ほど。

2016年6月23日木曜日

発達障害を持ったパートナーと暮らすコツ

 夏季休暇に入り、朝ゆっくり起きるようになり、「ああ、休みなんだ」と思ったりしています。溜まっていた書類を整理したり、読みたい本を出してきたりして、休みを満喫中。本当なら、外で満喫したいところですが、花粉症がひどく、特に雑草の花粉に弱いので、今はちょっとでも外にいると身体中痒くなる感じで、ちょっと残念です。

 昨日から始まった新しいDNのシリーズ「発達障害と対人関係」が興味深いです。第1回目は「パートナーと障害」と題されていて、パートナー共にADHDという方が登場。二人が一緒に暮らしていくためのルールが紹介されていました。


  • 日曜日(日曜日がダメな場合は、土曜日か金曜日):翌週の調整と計画を立てる。
  • 掃除:1週間に1回、一緒に掃除をする。
  • 皿洗い:自分で使った食器は自分で洗う。一緒に夕食を作った時は一緒に洗う。
  • 喧嘩:1週間に1回、お互いに納得できないことを話し合う。(水曜日の18時と決まっている。)
  • 一緒に過ごす:1週間に1回デートをする。映画を見に行ったり、ランチを食べに行ったり。。。


 ADHD(注意欠陥多動性障害)の障害を持っていると、日常生活で普通に行っているようなことを計画して実行することが困難である場合が多くあります。いつも思うのですが、日常生活と簡単に言うけれど、実はかなり複雑で、服を洗って干してタンスにしまうとか、冬の服は片付けて夏服にするとか、ボタンが取れたらつけるとか、新しい服を買うとか、夕食のメニューを考えるとか、材料を買うとか、予算に合わせてお金を使うとか、ゴミを出すとか、掃除をするとか、期限までにお金を払うとか、数えだしたらきりがないくらい色んなことをしなければいけません。一人でするのも大変だけど、パートナーがいれば、一緒に暮らしていくことも実はとても大変です。

 記事では、女性の方がADHDで、男性の方はどちらかというと ADDとあります。パートナーの片方が障害を持っていれば、持ってない方が、かなりの部分を背負ってやっている場合が多いと書かれています。障害の有無にかかわらず、夫婦というのは、お互いに補いながら生活をしていると思いますが、どちらかに過剰に負担がかかるのは、大変です。しかし、この方たちのように、両方が障害を持っていれば、お互いの状況が理解できる反面、実際に関係を維持していくのは、やはり大変であると思います。

 そんな二人が一緒に暮らしていくために作ったルール、いいなあと思いました。特に、喧嘩の部分とデートの部分。記事の中で印象的だったのが、喧嘩をするときは大抵疲れている時だと。障害があるゆえに、仕事でも苦労することが多くあると思います。家に帰ってくると、何もしたくないくらい疲れている時も多く、そんな時はちょっとしたことでイラッとくるものです。それを回避するための、週1の喧嘩ルール。水曜日に1時間と決まっているそうです。デートのルールも、障害ゆえに、計画を立てることが苦手で、普段の生活に追われて一人の時間を過ごしがちだからこそ、週1回二人で何かする時間を持つことを習慣づけるのは、良いと思いました。


 普通の人は普通に行っていることかもしれないけれど、明確にルールとして、お互いに認識して生活することによって、生きやすくし、二人での生活を維持していこうという二人の姿勢には学ぶ部分が多くあると感じました。


読んだ記事:DN, 2016-06-21, Insidan, "Neuropsykiatri oh relationer, Vi behöver strukturer för att kärleken ska hålla"

2016年6月22日水曜日

スウェーデンの文化を考えさせられた出来事

 学期末の忙しい時に起こった出来事について、すごく考えさせられたので、ここで書き記しておこうと思う。いろんな考え方があるので、私の考え方が間違っているとも相手の考えが間違っているとも思わないけれど、イラっときたのは確かであり、おそらく、これは文化の違いよるものであろうと思う。

 話の始まりは、とある金曜日。高等部の生徒が揃って近くの島に遠足に行くことになっていました。しかし、天候がイマイチなので、ピザ屋さんで外食をするということになりました。生徒に関わった全ての職員が同行できることが望ましいということで、職員の配置換えをし、8名の生徒全員と職員で無事に外食をして良い1日が終わりました。ここまではなんてことがない話なんですが、続きは、翌週の月曜日に。

 月曜日は、他のクラスが年度末ということで同じようにピザ屋さんに外食に行くことになっておりました。もちろん、生徒に関わった全ての職員が同行できるように配慮をし、そのために、私のクラスは、職員の人数が足りないということで、

  • 10時15分にランチを取りに行き、
  • ランチを生徒と職員に届け、
  • 11時に遅れてくる生徒の受け入れ準備をし、
  • 12時に職員が一人減るので、その対応を考え、、、
  • 翌日に控えた卒業の日の準備をし、、、

と、もう一人の先生と1日の準備に追われているところに、外食に行く予定だったクラスの担任がやってきて、
「生徒が二人休んだから、代わりにピザ屋に行ける生徒はいないか。貸してもらえないか」

と。私、残念ですが、切れました。生徒二人休んだということは職員が二人余分にいることになり、その方たちがピザ屋に行くためには生徒が必要であるということまでは理解できますし、スウェーデン語でいわゆる「trevlig」なのはわかりますが、代わりに行く生徒の学校での学習はどうなるのでしょうか。どこに生徒の立場からもの事を考えた視点があるのか。。。


結局、私は金曜日に行ったのだから、生徒は予定された授業を受けると断ったのですが、不服に思った職員がいましたし、いろいろ言われました。理由に自分たちは職員全員揃って行ったんだからと言われて、なお、がっくし。生徒が二人休んだのは私の責任ではないのだし、生徒が休んでいたら、私たちも揃ってはいかなかっただろうという発想は生まれない。。。


ちょっとした出来事だけど、私には、結構どんよりくる出来事で、何がどんよりするかというと、そういう視点で教育を見ているという現実を見たことにあります。教師として、生徒たちに少しでも多くの知識と経験を持って卒業していってほしいという願いを持って、授業を行っている私としては、この現実を目の当たりにすることはショックでした。

で、いろいろ愚痴って、相談して、落ち着いたのが、やっぱり文化の違いなのだろうと。それに加えて私という人間性もあるとは思うのですが。こうして、整理して書くと現実を客観的に受けとめられます。来年度は新しい先生が3名加わるので、おそらく新しい風が入り、きっと変化があると思います。文化の違い、言葉の違い、そういう狭間で生きると決めたのは自分なのだし、頑張っていこうと新たに思う夏の日でした。

2016年6月17日金曜日

今年度を振り返って

 今年度の勤務も残すところ月曜日のみとなりました。しかしながら、1日でやり終えることができるのだろうかというほど、仕事が残っております。今日は研修日だったので、1日会議でした。本当なら、ちょっと行ったところにある島で行う予定だったのですが、その島には15分ほど自分たちで漕いで船で行かなくてはいけないということで、天気が悪いのはちょっとということになり、同僚のうちで行いました。でも、私は頭痛に悩まされてあんまり楽しめませんでした。もともと、こういう集まり好きじゃないんですけどね。子どももいないし、親戚もあんまりいない私は、いわゆるちょっとした会話の話題が硬いので、あんまりねえ。

 で、やっと家に帰ってきたと思って、のんびり散歩でも楽しもうと思ったら、うちの校長にばったり会ってしまい、あの書類はどうなったかと聞かれてしまった。はあ。。。私の家は、職場からすごく近いので、会ってしまうんですよね。で、月曜日までに仕上げることになり、慌てて同僚に電話するはめに。あの書類を送ってほしいと。慰めは、彼女が、今日の会議で私が手伝うことになったことがあったのですが、あれは私の仕事じゃないと。そうなんですよね。。。第一教諭という名の管理職ではないのに、他の人とは違う役職で、訳のわからないような小間使。やらなくてもいいことまでやり、周りには煙たがられるようになり、転職しようかなと何度思ったか。

 
 と、かなり愚痴から始まりましたが、今年度を振り返ってみると、秋学期は、改装されて綺麗になった高等部を新たに作り上げることに熱中し、欠勤の多かったアシスタントを埋めるべく紛争。授業の内容や活動など、毎週1つずつ作り上げていき、もう一人の先生と本当によく頑張ったと感動。

 やっと始まった春学期ですが、小中学部の先生が一人やめたので、バタバタしました。その後、小中学部の先生が一人怪我をしたので、また大変。小中学部は難しい子供が多いので、なかなか大変でした。春学期から新しい校長が来たので、新しい指示も多く出て、また混乱😵。結局、落ち着くこともなく今に至ります。


 第一教諭として、来年度の研修の計画などを立てて、それをみんなに話すのですが、私は、校長などではないので、なんだかねえ。慣れない立場、難しい。この第一教諭の役割については、また別に書きたいと思うくらい、いろいろありました。

 なんか、いいことなかったのかと振り返るならば、受け持ちの生徒の著しい発達。✌️これほど、うれしことはありません。卒業を見送りたい生徒がいるのですが、彼がいなかったら、おそらく転職していただろうと思われる今学期。

 
 書きながら思うのですが、結局、外国人でただでさえ、他の人と違うのに、第一教諭なっていう仕事について、また違うことしてしまったからか、他の同僚と同感できる部分に差が出始めているんだろうと思います。ま、今に始まった事ではないので、諦めて前に進もうかという結論に至る金曜日。たまたま主人が2週間の休暇を取ってくれていたので、家のことをいろいろやってくれて、本当に助かりました。夏の休暇中はブログを頑張って更新しようと思います。皆さんも、良い週末を!

2016年5月10日火曜日

意思を育てる教育を目指して

 天気の良い日が続いている、スウェーデン、すでに夏休みに入ったかと錯覚させた4連休も終わり、今日も忙しくしています。連休は、天気がよく、主人の休みも重なったので、庭仕事を頑張りました。うちの犬は、どうも花粉症にやられたらしく、大きな丸い目がうるうるしていて、ちょっとかわいそう。


 ブログを書こうと思いつつ、1ヶ月が経ちました。その間、何をしていたかといえば、学期末の書類作成や個人懇談の準備などに加えて、教師が交代したクラスがあり、手伝って欲しいとのことで、他のクラスの分もせっせと仕上げていました。定年退職で教師が2名辞めるので、来年度のクラス編成などが結構大変で、会議続き。。。泣ける。。。ネガティブオーラ全開の同僚がいると、避けて通ってしまう今日この頃です。。。他の仕事が多すぎて、自分の生徒に関わる時間が減っているのが最近の悩みです。



 そんな毎日の中でも大きな成長を見せてくれる生徒たち。今年度から受け持った生徒に、あまり自分から意思を見せるタイプではない、自己主張の弱いタイプの子がいます。生徒の親と懇談をし、意思を育てて、それを伝えられる子になってほしいという思いで、担任として努力をしてきました。今までは、その日の担当になった職員に従う、おとなしくって扱いやす 生徒というイメージだった彼ですが、少しずつ、自分の意思を伝えられるようになってきたのです。「発語、言葉」という形で伝えられるのではなく、「移動」という形で私たちに伝えてきます。これをいかに言葉の形に変えていくかが、これからの課題。こうして子どもたちの成長見ることができることに喜びを感じ、どうやっていこうかと考えるのは、とても楽しいです。


 目に見える成長を見せないと、アシスタントたちのモチベーションも下がるし、なかなかやってもらえないので、最初にいろいろと目的を話すのですが、なかなか難しく、こうして成果が上がってくると、口うるさくいったかいがあったと思ってしまいます。あきらめることなく、可能性を見極めて、行っていくことが重要であると今一度感じました。



 今年度も残り1ヶ月ほど。いろいろと行事が多いこの時期、元気に乗り越えたいと思います。

2016年4月3日日曜日

スウェーデンのディスレクシアを学ぶ

 イースター休暇最終日の朝、学校の仕事が山積みだ、明日の会議の準備をしなければと思いながらも、達成感を感じてもいます。3月は大変忙しい月だったので、無事にすべての日程が終わりほっとしています。昨日は、友人宅で久しぶりにお食事会兼お茶会。久しぶりに会う人、ゆっくりあって話がしたいと思っていた人と会い、美味しい食事やお菓子と共におしゃべりに花が咲きました。こういう時間って、本当大切だと思いました。


 イースター休暇に合わせて日本から来てくれたのは、大学時代の恩師。大学時代もお世話になり、卒業してからもお世話になり、こっちにきてスウェーデンの教員免許を書き換える時にもお世話になりと、とにかくお世話になった恩師です。先生の研究室には入っていませんでしたが、なぜか縁のあった恩師が、20年という歳月を経て、スウェーデンにきてくれて会えたことをとても嬉しく思いました。

 先生の今回の訪問のテーマは、ディスレクシア。まだまだ日本では知られていないほうの障害に当たるのではないかと思います。スウェーデンは、現国王がこの障害を持っていることでも知られており、ビクトリア皇太女、カール・フィリップ王子も同じ障害を持っています。また、一部では、マデレーン王女も読むのは苦労したという報道がされています。カール・フィリップ王子は、スウェーデンのディスレクシア協会の活動にも関わっています。

 
 その昔、わたしが学生だった頃には、ディスレクシアは日本語使用者では、ほとんどいない、現れない障害だと言われていました。言語によって出現率が変わってくる障害で、英語やフランス語などは現れやすく、イタリア語は少ないと言われています。日本語も然り。しかし、近年、やはり読み書きに障害を持った人が多くいるということがわかってきました。2年ほど前に読み書き障害のコースを大学でとったので、多少知識はあったものの、日本の状況については全く知りませんでしたし、わたしが教えているこどもには読み書きをしている子がいないので、今回先生に同行して大変いろんなことを考えさせられ、学びました。

 何より、こころが痛むのが、ディスレクシアの障害を持ったこどもは、知的な障害がなく、授業中もおとなしく座っているため、発達障害の中でもADHDや自閉症と比べると発見が遅れる傾向にあること、ばかな子、できない子とみなされ、自分もそう思い、自信を失っていくことと話され、この状況は、スウェーデンも日本も同じのようです。そういったこどもが早期発見により、適切な支援と援助を受け、少しでも少なくなって欲しいと願う限りです。スウェーデン、日本共に、さらにこの分野の研究が進んでいくことを願うばかりです。


 
 明日から、来年高等部に入ってくる予定の生徒が1週間ずつ4週間体験入学にきます。火曜日には、ケニアから(だったと思う)作業療法士の研修生が見学にきます。形成的評価についての会議もあります。色々ありますが、日々を楽しみにながら頑張ろうと思います。

2016年3月19日土曜日

紙飛行機大会で幕を閉じた日本週間

 今年度の日本週間が無事に終了しました。今年は、日本人の参加者が多く、総勢10名!今までの日本週間で最多となりました。参加してくださる方が多いということで、当初の予定とは少し内容を変えて行いました。

 最初の日は、習字のコーナーと茶道と折り紙のコーナーを日本人の方でスウェーデン語が話せる方にお願いし、お手伝いに2名の日本人の方が各コーナー入ってくださいました。それに加えて、空手ができるという方が参加してくださったので、空手のコーナーを行い、私が広島の平和公園にある「アオギリの歌」についての授業を行いました。

 二日目は、空手のコーナーの代わりに毎年大人気の紙相撲のコーナーを行いました。あとは、1日目と同じです。この辺りまでは当初の予定であったため、この2日間の参加者がいちばん多かったです。

 三日目は、2名の方が参加してくださり、鏡餅を紙粘土で作るコーナーとどら焼きなどの日本の味を体験出来る家庭科のコーナーを行いました。鏡餅は、日本の姉妹校が送ってくれたのを見て、同じものを作ることにしました。家庭科のコーナーは、6月に行われるオープンハウスで作って出せるようなお菓子ということで3つ紹介しました。ちょっと準備不足で手伝ってくれた方には、お世話をかけました。この日は、午後、小学校の学童で折り紙を教えました。

 四日目は、最終日。午前中は、ヨーヨー釣りとカレーのコーナー、坊主めくりコーナー、かるたコーナーをしました。坊主めくりは、姉妹校が送ってくれたもので、人気があったようです。かるたは、私がスウェーデン語のアルファベット版を作り、遊びました。どちらも楽しかったようです。ヨーヨー釣りとカレーは日本から持ってきてくれた方がいたので、使うことに。ヨーヨー釣りみんな楽しそうにやっていました。上手にヨーヨーをつすると光るので、楽しそうでした。カレーは美味しいと人気でした。この日の最後は、紙飛行機大会。みんなで体育館に集まって、まず、歌を歌い、それから最初に2日間でおった紙飛行機を投げました。 

 多くの方のお手伝いをいただき、今年の日本週間も大成功に終わりました。子供達が普段見せない姿がたくさん見れたと先生方もすごく感謝されていました。いつもは、活動の移動に時間がかかり、参加できない子も進んで参加していたり、逆に活動が楽しすぎて、終わりが来ても移動できなかったり。35分で設定してある活動時間、うちの子達には、長めなのですが、みんなよく頑張って集中してやっていました。三日目、四日目になると登校してきた生徒が日本人の方はどこにいるかと聞いたり、探したり(笑)。ヨーヨー釣りでは、自分の好きなヨーヨーを最初に見つけて、それをこよりに引っ掛け、水に浮かべて釣るという「技」を意外な生徒が自分で考えてやって見せたり。いつもは絶対一緒に静かに座っていることができない生徒同士が日本人の方と一緒に座ってじっと活動に参加したりと、数え切れない生徒の一面と成長を見ることができました。これも、遠くからわざわざ参加してくださった皆さんのおかげであると思います。うちの学校の生徒たちには、こうした人々との出会いが大きな経験となるのであると感じました。


 今年は参加者が多かったのですが、どの方も教育、特別支援教育にたいへん興味のある方で、たくさん質問をしてくれて、よく勉強しているという印象を受けました。いつもは遠方から参加される方は私の家に泊まっていただくのですが、今年は、私の家がリフォーム中で部屋数が足らず、他の先生にもホームスティホームスティいただきました。そちらも好評でした。参加をしてくださった方々、日本から贈り物を送ってくださった方、本当に、本当にありがとうございました。

 

2016年3月3日木曜日

転職しにくいスウェーデンのお母さんたち

 なかなかブログの更新ができずにいますが、元気にしてます。いよいよ2週間後に迫った日本週間の準備もだいぶめどが立ってきました。もうひと頑張りです。今週は、スポーツ休暇なので、少しのんびりできています。月曜日は休みだったけど、やり残した仕事をしに学校にちらっと行ったら、アシスタントたちに休むように言われ、火曜日は、主人と一緒に映画館の入ったショッピングセンターに行ったら、ちょうど映画を見に行きていた生徒とアシスタントに会い、「なかなか休めないわねー」と言われ、大笑いです。

 さて、今日は転職について。母親は父親に比べると転職を諦める傾向にあるという記事が載っていました。私も今の学校に勤めて長いので、最近はちょくちょく求人を見たりしています。転職によるキャリアアップというよりは、公務員の私たちの場合、お給料を効率よく上げるためという感じです。一度働きだしてしまうと、毎年お給料が上がるといえども、微々たるものなので、転職が最も効率よくお給料を上げる方法なのです。

 ユニオンという組合が行ったアンケート調査の結果によると、約三分の1、37%の母親は、現在の職場にとどまるのが最も確実で、転職を控える傾向にあるとあります。男性の場合は、四分の1だったとあるので、女性の方が転職を控える傾向が強いのですね。これとともに興味深いのが、10人に1人は、現在の職場が子育てに適していないため、転職を強いられているという結果です。転職したくなくても、転職しなければいけない人もいれば、転職したいけれど、現職にとどまっている人もいるのでしょうね。

 スウェーデンほど、女性の社会進出が進み、男女平等が叫ばれている国であっても、3人に1人の女性は、育児休暇は自分のキャリアにネガティブな影響を与えると答えているのも印象的です。男性の場合は、16%の人がネガティブだと答えたそうです。あと、女性の方が男性よりも、育児休暇中の給与交渉に問題があったと答えています。一応法律では、育児休暇中でも他の人と同様に給与交渉があり、上がるはずなのですが、そうではないのが現実で、この点に関しては年に何回かメディアが取り上げています。女性の方が男性よりも育児休暇を長く取得する傾向があるので、こういう結果もうなずけます。


 また、子育て中に労働時間を減らした(フルタイムは週40時間なので、30時間労働など多少減らす)のは、母親が48%、父親が19%とあり、やはり子育てと家庭、仕事を両立させるために、多くの人々が必要だと感じているのでしょう。こう言った労働時間をフレキシブルに変えられるところはスウェーデンの良いところだと思います。

 
 調査によって明らかになったポジティブな点としては、10人のうち7人が自分の労働時間に対する影響力を持っていると回答した点で、例えば、会議は幼稚園の送り迎えに引っかからないように早朝や夕方を避けることができるとか、自宅から仕事をすることができるとか、子どもがいても働きやすいように自分で労働時間を計画できるのは大きいことだと思います。今後重要になってくるのは、上司、役職についているような人々が積極的に育児休暇を取ったり、子どもが病気の時に休暇をとったりして、良い見本となることが重要とあります。育児休暇を取っても、子育てをしていても、働きやすい職場環境は重要であると思いますが、そのためには、もっと知識を得ることも重要です。どんなに理解をしているつもりでも、なかなか難しいんですよね。実際は。


 こうした調査によって、現状を振り返り、少しずつ父親も母親も、子供を育てながら、働きやすい社会になっていくことが重要であるのだろうと思いました。


読んだ新聞の記事:Mammor vågar inte byta jobb lika ofta, DN, 2016-02-24


 

2016年1月31日日曜日

PODDを学んだヨーテボリ研修

 マイナス10度前後の寒い日が続いたかと思ったら、春のような陽気になり、体調を崩す人が増えるのではないかと心配しています。今週は、久しぶりに2泊3日でヨーテボリに研修に行ってきました。コミュニケーショングループというグループがあるのですが、そのメンバー4人で行ってきました。

 火曜日の午後、電車でヨーテボリに向けて出発し、夜19時半にはホテルにチェックインし、早速みんなで夕食。プライベートなことから、仕事のことまで、ありとあらゆる話で盛り上がりました。水曜日、木曜日と2日間の研修で学んできたのは、PODDと呼ばれるコミュニケーションシステムです。PODD(ポッド)は、オーストラリアの教育者、ゲイリー・ポーター(Gayle Porter)によって開発された絵を用いたコミュニケーションシステムで、英語では、Pragmatic Organisation Dynamic Displayと呼ばれ、この頭文字をとってPODDと呼ばれています。彼女が障害を持った子どもたちに使い始めたのは、約30年ほど前だと聞きましたが、それから試行錯誤が繰り返され、ここ数年、北欧に広がってきたもののようです。私が最初に知ったのは、昨年の秋頃で、ストックホルムのハビリテーリングで1回研修を2時間ほど受けました。今回は、2日間、基礎的な知識を得るというもので、想像以上に興味深いものでした。簡単に説明するならば、以下のように絵がその意味と一緒に並んでおり、これがカテゴリー別に組織的に並んでいることによって、いわゆる言語の習得が難しい子供でも会話をすることができる、言語発達が促せるというものです。

こんな感じで、絵とその意味が書かれているコミュニケーション本です。

 

こんな9つの絵が並んでいるものが、最初の段階で使われるものです。
(現在は、12の絵が並んでいるものを最初の段階に使うように進めているとのこと)


使い方を簡単に説明すると、最初のうちは、会話の援助をする人が指を指し、どの絵を指しているかを確認していき、例えば、何かが欲しい場合は、真ん中の列の一番上の絵を指差した時に、子供がYesの反応をし、次に、その絵の右上にある11番のカテゴリーのページに移り、そのページの絵の中にあるものを順番に見せながら、何が欲しいのかを会話していくというものです。興味のある方は、以下のビデオを。英語ですが、どんな感じで会話するのか、イメージが掴めると思います。(ものすごく簡単に説明しましたが、色々と段階ややり方などがあります。。。)


 このコミュニケーションシステムのいいところは、子供の語彙力と言語発達に注目し、今まで会話をすることは難しいとされてきた重度の子供たちにも会話をする可能性を見出したことと、考える力を育てる可能性を見出したことにあると思います。

 使い始めるのは、子供が小さければ小さいほどがよく、コミュニケーションシステムの習得とともに12の絵のものから20、40、70と1ページの絵が増えていき、語彙力が増えていきます。視覚に障害がある場合は、以下のような感じのものを用いることもできます。

 子供によっては、1ページに絵が一つというようなものを使う場合もありますし、絵の配置が違うものを使う場合もあります。


 スウェーデンは、障害を持った子どもたちにも、自分の意見を持つことを教えることに感銘を受けてきましたが、長く関わってきて思うのは、やりたいことを伝えることができるようになっても、自分の思考を全て伝えられるようになるわけではないのだということです。コミュニケーションというのは、「リンゴが欲しい」というものだけではなく、昨日何をしたのか、何を考えているのかと、様々なことが含まれています。そういった部分をカバーできるコミュニケーション支援の方法が、重度の子供には少ないのです。PODDは、そこを補える可能性を秘めていると思いました。これから、学校で一緒に行った先生と色々開発していこうと話していて、どんな成長が子供たちに見られるのか、今からたいへん楽しみです。


 雨が降り、風が強かった、ヨーテボリ、ホテルと研修の会場の往復のみでしたが、同僚とサウナに入ったり、美味しい食事をしたりと、楽しい研修でした。

2016年1月2日土曜日

新年にあたり、挨拶を。。。

 新年あけましておめでとうございます

新たな年を迎えて、二日目。年賀状もクリスマスカードもたいして出さない私は、「あけましておめでとうございます」の挨拶が出来るうちに、ブログやSNSに新年の挨拶を書かなくてはと焦っております。今年は、友人宅で新年を迎えました。スウェーデンでは、多くのヨーロッパ諸国同様、1月1日になったところで花火が上がりますが、友人の「今年は花火が多い、みんな経済的に潤っているんだろうね。」という言葉が印象的でした。

 2015年を振り返ろうと思い返す努力をしてみた、年末。大きな出来事としては、やっぱり、同僚たちを訪れた広島の姉妹校訪問。深い思い出になりました。あとは、母がスウェーデンを訪れたので、一緒に回ったヨーロッパ旅行も思い出深いです。あとは、家の1階が下水に浸かったことかなあ。未だに1階は使えず。。。昨年は、第1教諭になって、仕事が増え、年末もいろいろと考えました。そんな2015年を後にして、迎えた2016年。どんな年になるのかなと思っております。結婚をしたときに親友がくれたカードの詩をよく思い出します。

 昨年は、この詩を噛み締める時が何度かあり、平凡な何もない普通の日に感謝し、穏やかな日々を望むようになったのは、年を少し重ねたせいだろうと思います。テレビでは、今年の抱負をいかに達成するかというような話をしており、今年はどんなことを目標にしようかと考えています。未だに目標さだまらず。とりあえず、ブログを定期的に更新できるようにしようと思います。何せ、日本語を使わないので、ブログを更新しないと日本語で考えて、書く力がドーンと低下する。。。こんなブログですが、スウェーデンや日本の教育に興味のある方と交流できればと思います。今年もよろしくお願いします。