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どの国の教員も働きすぎ?! スウェーデンの「教員がやらなくていいことリスト」

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 みなさん、こんにちは!少しずつブログの更新をするようになり、コメントをいただけるようになり、大変うれしく思います。本当にありがとうございます。休暇中ですが、臨時職員登録をした成人の障害者のグループホームで働いたり、自営業の方で、お仕事をいくつかいただいたりと忙しくしております。声をかけていただけることに感謝するばかりです。今日は、スウェーデンの教員組合が出した「教師がすべきでない業務」を見ながら、教員がいかに「教える」という本質的業務に遂行できるかを考えてみたいと思います。 1. どの国の教員も業務過多傾向 日本の教員は「ブラックだ」と聞きますし、教員のなり手がいないという現状も見聞きします。スウェーデンでも、教員はあまり人気のある職業とはいいがたいです。スウェーデンは深刻な教員不足だった時期もあったのですが、お給料を改善したり、キャリアアップ制度を作ったりして、持ち直したのも束の間、また別の問題が起きています。日本の教員に比べれば、職務も整理されている感じがしますが、やはり「教えること」以外の業務が多いのは、変わらないと思います。また、この周辺業務と書いた部分の仕事の中に、実は、教える上でとても重要だと思われる部分があるのも確かですし、教員の仕事は、探せば探しただけあるというのが私の経験で、いかに自分でこれはしないと決めるかも重要になってきます。このあたりは、「教師」という職業の特性ともいえるかもしれません。しかしながら、こうした周辺業務をきちんと整理しないとによって、本来の教員としての仕事が十分にできないという現状は、更なる教員の離職を促進してしまう危険性もあり、こうした議論は重要であると思います。 2.スウェーデンの「教員がやらなくていいことリスト」が出た背景 このリストが出てきた背景には、「幼稚園教諭及び教員の業務時間に関する規制と事務負担の軽減に関する調査」というのを国が行ったことにあります。先日、 スウェーデンの義務教区が10年生になるという記事 を書きました。この改革に伴って行われた調査で、就学前クラスで働く幼稚園教諭と教員の授業時間数をどのように規定するかなどを分析して提案することを目的とし、前々から言われている教えること以外の事務作業を削減して、授業や授業に関連する業務に充てる時間を確保していく狙いがあります。特に、よりよい授業をするため...

ストックホルムで始まる登校困難な子どもたちへの遠隔授業

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 2025年秋学期から、私が働いているストックホルム市でも、長期にわたる欠席をしており、登校困難な児童生徒を対象に、特別な支援の一環として、遠隔授業の提供が始まります。この遠隔授業は、既にヨーテボリとウプサラで開始されており、ストックホルムでもやっと学校検査庁に承認されたので、晴れて秋学期から開始の運びとなりました。これにより、教室に戻ることが難しい子どもたちも、教育を受ける権利、義務教育を公的なお金によって無償で受ける権利を保障されることになりました。今日は、この遠隔授業に関して、詳しく説明したいと思います。 1.遠隔授業導入の背景とは スウェーデンでも、学校に通うことが困難な、いわゆる不登校とされる児童生徒が存在します。これに関して以前に書いたものがありますので、興味のある方はぜひ、 こちらのJ=Stage から、「スウェーデンひきこもりの若者の実態とそのとりくみー早期発見と早期支援を中心とした継続的な社会支援」 をご一読ください。2022年のものになりますので、あれから、スウェーデンでは、更に様々な取り組みが地道にされています。その中の一つとして、法改正にもどつく、この遠隔授業の導入があげられます。 私の働くストックホルム市でも、細かい学校登校出席に関する対策のプランがあり、こういったプランにより、現在のストックホルム市では、10年前に比べるとはるかに詳しい登校困難児の統計があります。こういった統計によれば、ストックホルム市の公立の学校で、2024年春の時点で、基礎学校4年から9年生の生徒に、1000人以上の出席率50%未満の生徒がいたとあります。この深刻な状況を何とかしようと、今回の遠隔授業の導入に至りました。 2.ストックホルム市の遠隔授業の概要は? 2025年の秋学期には、まず、50人の生徒を対象として立ち上げプロジェクトを実施するとのことです。対象となる科目は、スウェーデン語(第2言語としてのスウェーデン語を含む)、英語、外国語、数学、理科、社会、母国語、自然科学、社会科学、テクニックなどになります。この遠隔授業の最も大きな目的は、長期にわたる学校欠席の悪循環を断ち切り、生徒が再び学校に通えるようになるように支援することにあります。 今後の計画としては、来年2026年秋学期からは、100人の生徒の受け入れを目指し、民営の学校からの生徒も受け入れ...

スウェーデン、就学前クラスの廃止と10年間の基礎学校教育開始

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  昨日のスウェーデン教育界の最大のニュースは、就学前クラスの廃止決定と10年間の基礎学校教育が2028年秋学期より開始すると正式に決定したことでした。この記事では、この変更の背景や目的、そして実際のスウェーデンの教育現場の生の声をわかりやすく紹介したいと思います。 1.スウェーデンの義務教育は10年なったのは2018年 スウェーデンの義務教育は、2018年より既に10年間になっており、「10年間の義務教育」になったことが今回の大きなポイントではありません。今回は、「就学前クラス」の廃止が正式に決まって、基礎学校が1年から10年になったことになります。この議論はずいぶん前からあり、2,018年に就学前クラスが義務化されたころから、既に2028年に向けての移行期間に、例えば、就学前クラスで働く幼稚園教諭が基礎学校低学年で教えられるようにと準備が進められてきました。この10年の基礎学校教育もすでに2021年5月には、関連の調査が終わっており、昨日の決定に向けて着々と動いてきました。このブログの記事を振り返ると、何度か義務化の動きを取り上げており、2014年のものもあるので、ここまで長かったとも思いますが、こういった変化は時間を要するものであるとも思います。 2.スウェーデンの就学前学校とは 日本は、小中学校という6年と3年という区分がしっかりされて9年間の義務教育が行われています。これに対して、スウェーデンでは、「就学前クラス」という6歳児が通い、就学前教育(幼児教育)を行うクラスに1年在籍したのちに、1年生に入り9年生までの教育を受けるというシステムになっています。また、余談ですが、日本のように6年と3年という決まった区分もないため、学校によって、3年生までだったり、6年生までだったりします。現在は、カリキュラムが3,6,9で分かれているので、これに合わせた学校が多いように思いますが、その昔はバリエーションがありました。 この就学前クラスは、基礎学校にあることが一般的なので、実質は、就学前学校(幼稚園や保育園にあたる)ところを卒園して、この就学前クラスに入るのが、日本的な意味での「小学校入学」にあたります。6歳児が通うことが多いことから「6歳児クラス」とも呼ばれますが、スウェーデンでは、就学を1年早めることや遅くすることができるので、6歳児でない生徒もいます。...

スウェーデンの教育関係法改正、2025年

  今年も新たな法改正がいくつか行われるので、それに関して、教育組合のサイトをもとに、まとめながらアップデートしていきたいと思います。 1.成人教育機関の職業教育の新しい法律  昨年12月に成人教育機関の視察の仕事をさせていただき、スウェーデンの成人教育機関の素晴らしさと問題や課題を聞いてきて、この話もちらっと聞いてきました。成人教育機関の高校レベルの教育コースと特別支援学校の教育コースを、実習や現場研修を含めた職業プログラムと共に行うことができるようになります。そして、大きな変化だと視察でも聞いたのが、「最低3つの基礎自治体と連携をとって」成人のための様々な教育を提供することというものでした。ある程度大きな基礎自治体なら良いのですが、多くの基礎自治体が小さめであるスウェーデンでは、その中の成人教育をより一層充実したものとするためには、この連携の決まりを設けることは大きな意味があるように思います。これにより、この連携をとっている基礎自治体の間は、自由にコースやプログラムを選ぶことができるようになります。たいていの場合は、住民が通いやすいように、近隣の基礎自治体と連携を取ります。この成人教育機関については、2月の終わりにオンラインで講演をする予定ですので、興味関心のある方は、是非ご参加ください。詳しい日時などは、このブログ、インスタグラム、フェイスブックなどでお知らせします。(2025年1月施行) 2.学校図書館の常任スタッフ設置義務 学校図書館に関する法律は、徐々に厳しくなって、いよいよ常任スタッフがいることが義務付けられます。例外が認められるのは、同じ学校経営系列の運営する他の学校の学校図書館を生徒は利用できる(基礎自治体なら基礎自治体の公立図書館)、他の学校教育機関もしくは公立図書館に業務委託をする場合です。法文書まで確認を一応したのですが、明確な数字での義務化はされていないので、どのくらいの時間常任スタッフがいるかは、各学校に任されています。私の勤務校もこの学校図書館の整備に伴い、ここ数年いろんな形を試してきました。この法改正に合わせて、また新たな方針が出そうな感じもしますし、今現在の「図書館グループ」の4人の先生たちとその他の先生によって行われる可能性もあるかもしれません。この学校図書館に関しては、また別で書こうと思います。あと、例外の部分を加味して...

スウェーデン、少人数クラスを望む声

旧ブログの投稿、2014年2月22日の投稿に、「 少人数クラスを望む声 」について書いたものがあり、リライトしています。多くの方がご想像のように、スウェーデンの学校は、日本の学校に比べると、一クラス当たりの生徒数は少ないです。学校、学年などによって差がありますが、1クラス30人を超える学校は珍しいく、多くても28人前後という感じです。そんなスウェーデンですが、2014年、9年ほど前に、少人数クラスを望むという声が上がっていたというもの。あれから、どうなったかというと、少人数どころか、スウェーデンの学校は大きめの学校が増え、1クラスの生徒数も増えている傾向にあります。ということで、現在も、少人数とは言わないければ、クラスの生徒数を減らしてほしいという声はよく聞きます。 1.2014年のアンケートの結果  2014年は、スウェーデン、選挙の年でした。あの当時は、学校に関する議論が今以上に強かったように思います。その当時に 組合が一般の人々にたいして行ったアンケートの結果がいかになります。 アンケートは、1000人に行われ、スウェーデンの学校の状況を良い方に改善するための重要な項目を3つ選んでもらうというものでした。これは、教員組合がPISAの結果が芳しくなかったのをうけて、調査会社に依頼して行ったものでした。 少人数グループ、学級                     46% 教員の授業計画と準備の時間の増加              32%  特別支援教育専門教員の増加                 30% 教員の給料を上げる                     28% 学級の規律をただす (例:教員が教室に鍵をかけられるなど) 27% 特別な支援を必要とする生徒全員に支援を行う         26% 学校を国の管轄に戻す                    19% 教員や援助を最も必要とする学校に優先して改革する      14% 管理職が教育的な部分に介入する時間を増やす         14% 授業時間を増やす                       8% 成績を低学年から出す                     8% 学校間の壁を取り払う                     8% 学校の自由選択制を見直す                ...

4年生から成績がつけられるスウェーデン

 「 スウェーデンの教育の特徴~不可がある教育 」で、少し書いたのですが、スウェーデンでは、6年生から成績が付きますが、4年生からも成績をつけることができます。(特別学校は5年より)その法案が出たときのブログの投稿を振り返りながら、今日は4年生からつけられる成績について書きます。旧ブログの日付は2014年、今から10年前です。光陰矢の如しとはよく言ったものです。 1.8年生から6年生に  スウェーデンでは、2012年の秋学期に6年生から成績が付くようになりました。2010年の学校改革の中の一つだったもので、それ以前は、8年生からだったので、日本の中学2年生になるまで、評価は出ても成績は尽きませんでした。2012年のものが現在も使われていますので、評価は、5段階、ABCDEの5段階にFという不可があります。ちなみにFX とかもありますし、成績を出すことができない場合には、「ー」というのもあります。  当時のブログには、今振り返っても思うのですが、PISAの結果のショックからか、次々と出てくる教育関係の改革案に、「教員のお給料をバーンと上げるという案がでるといい」とか書いています(笑)。この2014年当時に案として出されたのが、4年生からの成績を希望する学校には許可するというものでした。法制度が実現したのは、2021年4月1日ですので、案が出てから、実現するまでに調査や議論が重ねられ、実験校で実施し、その結果をまとめ、実現の運びとなりました。これにより、2021年秋学期より、4年生より成績を出しいる学校があることになります。 2.どのくらいの学校で実施されているのか?  4年生で成績を出すためには、各学校は毎年その申請を学校庁にする必要があります。春学期に毎年します。どの学校が、4年生から成績をだしているかは、学校庁のホームページから確認することができ、2023年度は53校です。うち6校が公立の学校ですので、ほとんどが民営、私立の学校です。リストには、未来の女王様であるエステル王女の通う学校も入っています。民営化の影響は、また別に書きたいと思いますが、やはり、成績を早くからつけてという学校は民営が多いですし、それを売りにする学校もあるように思います。逆に考えると、公立には、アンチ派の声も聞こえますし、これまでの議論もどちらかというと批判できな声が多く、初年度に実...

過去記事から見るスウェーデンの教育費の削減

 スウェーデンは教育費を含む子どもにかける国家予算の多い国として有名です。その国で教員をして、もうすぐ20年になろうとしています。年末の投稿では2回にわたり、「 ストックホルム市の教育予算削減その1 」と「 ストックホルム市の教育予算削減その2 」を書きましたが、旧ブログを振り返ると、予算削減を愚痴っている内容は多いことがわかります。2009年の投稿をリライトしながら、今一度予算削減の影響を考えます。 1.人件費が大きいのは変わらない  2009年の投稿を読んでも、人件費の削減が最も大きく、1500人もの先生が解雇されるという情報を書いています。3市に2市は、削減するともあります。やり方もあまり差がなく、正規雇用ではない短期や代替教員の継続雇用をしない、定年の教員の補充をしないなどが上がっていました。こうした人員削減は一般的なもので、予算削減に関わらず、生徒数の動向に沿ってもよく行われていると思います。 2.大きな違いは?  では、今までの予算削減と大きく違うのはどんな点かというと、スウェーデンでは風邪などの病気の場合は医師の診断書なしで休める病気休暇が1週間あるのですが、そういった病気休暇や子どもの病気看護休暇で休む職員が出た場合に、補充が入らない。ということはどういうことかというと、いつもと同じ仕事を少ない人数でこなすことになります。そして、1クラス当たりの人数を増やす。これも就学前学校から基礎学校まで、本当に増えたと思います。 3.政治直結型教育  スウェーデンの学校教育に関わっていて思うのが、地方政治から国政まで、とにかく政治と直結していると感じることが多いことです。今回の教育予算削減も、他国に比べれば、穏やかなデモが行われたことにより、ストックホルム市は予算の見直しをおこない、学校予算は少し回復しました。その影響はあまり大きくは出ないにしても、透明感が命のスウェーデンの学校教育では、ここにお金が使われたといったような報告が入りました。また、組合との交渉で、健康促進のための補助金が削減されるなど、多方面で互いに協力し合って何とか乗り切ろうとしていることがわかります。 4.教員免許保有者の行く末  教員が足りないのはスウェーデンも日本と同じなのですが、教員免許を取得しても仕事がないという人もいます。これには様々な要因がありますが、要因免許有資格者はお給料が高い...

スウェーデンのインクルーシブ教育を基礎特別支援学校から考える

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 このブログの投稿記事の中で、多くの人々に読まれているのが、「 本で知ることができない、スウェーデンのインクルーシブ教育とは 2017年版 」です。2017年版なので、旧ブログの記事をリライトして2022年に再投稿したものです。私が考えるインクルーシブ教育は、完成というものはなく、常に発展、変化し続けるものであると思います。この2017年版を今読み返してみると、すでにここは変化したなと思うところがあり、スウェーデンの教育の素晴らしいところを思います。ということで、今日は、スウェーデンのインクルーシブ教育を基礎特別支援学校が存在するという仕組みから考えてみたいと思います。 1.基礎特別支援学校の存在の意味  スウェーデンには、基礎特別支援学校が存在し、大変厳しい検査で選ばれた、親が支援学校に通わせたいと希望した子どもたちが通っています。支援学校には、2つのコースがあり、基礎学校に準じた教科学習と領域に分けた領域学習をするコースがあります。スウェーデンの多くの基礎特別支援学校は基礎学校に併設しており、例えば、ストックホルム市の場合は、全生徒数の1割未満が支援学校の規模という暗黙のルールがあります。これにより、場の統合は行われている場合がほとんどです。ただし、数は少ないのですが、近年新設される支援学校には、単独の大型学校も現れるようになり、その存在が議論されることもあります。スウェーデンの特別支援学校は、知的な障害により、基礎学校の学習目標に到達できない生徒のための学校であると明確に記されています。インクルーシブ教育は、すべての子どもの学びの権利をも保障したものであるべきと考えられているスウェーデンでは、こうした基礎特別支援学校が一つの選択肢として存在することは大変重要であり、意義があると考えられています。 2.選び抜かれた基礎特別支援学校の生徒たち  現在のスウェーデンの基礎特別支援学校、もしくは、支援学校の高校に入学するには、それぞれの専門家による以下の検査結果により、知的障害があると判定された生徒のみが入学の許可を与えられます。これは、許可が与えられるだけなので、絶対に入らなければならないということではなく、基礎学校で基礎特別支援学校のカリキュラムに沿って学んでいる生徒は、支援学校対象児童生徒のうち、約2割前後毎年います。必要な検査は以下の通りです。 教育的な検査 ...

ストックホルム市の教育予算削減 その2

  前回に続き、2023年回顧録ということで、ストックホルム市の教育予算削減についての投稿になります。 その1はこちらを 。 3. 組合を含む会議による人員削減プロセス  その1の2で書いたのですが、教育予算削減の関してのリスク分析が行われ、それと並行して、かなりのスピードで行われたのが、人員削減を法律や決まりにのっとり、できる限り透明に行うために、普段は月1の関連会議が頻繁に行われました。といっても、私はこの会議には出席しないので、はっきりと内容などを書くことはできないのですが、この会議は、職員側の代表として、組合の係りの職員が出席します。うちの学校の場合、教員は教員組合で、この当時は2組あり、それに加えてアシスタントなどは所属する組合があり、その代表が出席します。そこに、ほかの組合の代表がいれば入り、校長や副校長、経営担当者などが、会議を行っていました。多いときは週1くらいで行っていたような記憶があります。もしくは、長い会議を行っていたような気がします。この会議で、雇用する側されている側双方の理解を図り、できる限り迅速に行うことで、削減される人は、ストックホルム市内での配置換えを申請し、秋学期からほかの学校や職に移ってもらうということになります。  この過程で私たち全職員が行ったのは、ストックホルム市の職員としてどこで何年働いたかという確認書類にサインをすることです。この雇用年数の短い人から削減対象になるので、間違いがないようにという配慮です。生徒数650人ほど、職員は、100人ほどいるので、作業としてはそれなりに時間がかかるものでもあります。そして、削減対象の人が決まり、この最終決定の会議が行われたのが、4月頭だったと思います。 4.リスク分析会議  私たち全職員が行ったのが、リスク分析会議です。スウェーデンの学校では、1年に1回職員アンケート調査が行われ、その結果に基づいて、職場の改善プランを立てます。これに基づいて作られた改善プランに加えて、今回の職員削減、教育予算削減がどのようなリスクをもたらすか、影響を与えるかを書いていきます。それ用の用紙があり、項目に従い、リスクのあるなし、その程度などを話し合い書きます。これを各グループでしました。私は、支援学校の先生たち、9人と行いました。今振り返ると、あの会議は、生徒のアシスタントとも行うべき...

ストックホルム市の教育予算削減 その1

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 私はストックホルム市の教員、公務員をしています。スウェーデンの公教育に関わって、もうすぐ20年になろうとしていることに驚きを隠せません。日本の方と話が合わないことがあるのも当然だと思いながら、昨日の今年の振り返りで、さらに振り返っておかなくてはと思ったのが、教育予算削減です。せっかく、現場で働いているのだし、このブログ、もう読んでいる人はほとんどいないのだし、現場から見た事実を書こうと思う。表面的な情報は、ネットでいくらでも見つけられる時代だし。ということで、時系列に、記憶をたどって、スウェーデン、首都ストックホルム市の教育予算削減の影響を振り返ります。 1.2023年1月、教育予算削減の第一報が入る  ちょうど1年前になりますね。年が明けるとスウェーデンでは春学期が始まります。学期初めの初日は職員の研修日です。その日は私は振り返ると、ヘッドティーチャーとして、今やっている全国の支援学校との共同プロジェクトのスタートを切る会議を前の副校長と計画し、2時間の研修会議を受け持っていました。というのは、良い方の記憶で、このころから、風向きが怪しくなってきていました。スウェーデンの学校での予算削減の影響を受けるのは、今回が初めてではなく、前に勤務していたストックホルム郊外の小さな市や少しだけ勤務した市でも働いていた10か月の間、ずっといかに予算削減に対応するかという会議でした。このあたりが、日本でもそうなのかなと、この夏の帰国で日本の先生と議論したいところですが、お金が削減されるという予算計上が出されると、市から校長会などを通じて校長に連絡が入り、そん後の学校の会議は、この内容でほぼ一色になります。 2.2023年2月から始まった、教育予算削減に関するリスク分析  記憶が正しければ、うちの学校の定例水曜日大会議(学校中の先生が集まって30分の会議がある)にて、詳しい説明を受けました。どのくらいの削減で、どう影響をうけるのかなど。記憶しているユニークな説明は以下の通り。 ストックホルム市の予算が厳しいのは世界情勢や物価高もあるが、スルッセンの工事にお金が予想以上にかかってしまったこと。もちろん、この理由は公では言われませんので、冗談半分でいわれる事実であると私は認識していますが、時折出てきます、この話。。。スルッセンとは、ストックホルムの旧市街とその隣の島を結ぶ地域で、数年...

生徒の意見から学校名称が変わったスウェーデンの特別支援学校

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  今日は2023年7月2日。スウェーデンの特別支援教育の歴史において、記念すべき日です。今日からスウェーデンの特別支援学校の学校名称が変更になります。 今までの名称:Grundsärskolan 今日からの名称:Anpassade grundskolan になります。 1.これまでの名称は?  スウェーデン語を開設すると、Grundsärskolanの「Grund」は「基礎」で、「skolan」は学校になります。いわゆる小中学校は、この二つの文字をとって、「Grundskolan(基礎学校)」と呼ばれます。特別支援学校はこの間にGrundsärskolanという言葉が入りました。この「sär」が、差別的で、否定的なイメージが強い言葉とされてきており、スウェーデン語での響きと意味がとても悪かったのです。その昔は、障害のある子どもや人々のことを「馬鹿者」と呼んでいた国でもあるので、こうした差別的な意味の言葉が使われている歴史を恥じ、改めて来た歴史があります。この 「sär」 も「別にされた、変わった」というような意味合いで、特別支援学校に通う生徒のこと 「särbarn」 と呼んで虐める、さげすむというのも一般的だったのです。こうしたことから、自分が特別支援学校に通っていることを話したがらない、言わない生徒も多くいます。 2.新しい名称は?  新しい名称は、 Anpassade grundskolan といいます。「 grundskolan」は、基礎学校という意味で、これまでと同じです。これに「 Anpassade 」という「対応した」という言葉が新たに付けられました。今回の名称変更に伴い、全ての特別支援教育系の学校の名前が変更になりました。 Grundsärskolan → Anpassade grundskolan (前出) Gymnasiesärskolan → Anpassade gymnasieskolan (対応した高校) Komvux som särskild utbildning på grundläggande nivå och komvux som särskild utbildning på gymnasial nivå→ Komvux som anpassad utbildning på grundläggande nivå respe...

通常学級の中から特別支援教育を

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  時間に余裕がないとじっくりとお話を伺うということがなかなかできず、ご連絡をいただいても、対応できないことが多かったのですが、夏の休暇に入り、個別にいろいろと話を伺う機会をいただき、いろいろと思うことがあります。その中から、今日は、通常学級でも行われるべき、特別支援教育というものについて、少し考えたいと思います。 1.日本の特別支援教育の始まり  私が日本の大学で学んだ頃は、まだ特別支援教育ではなく、学んだ学科も、教育学部にあった障害児教育学科でした。学校も特別支援学校ではなく、養護学校と呼ばれた時代で、岐阜県内の養護学校で働いてから、スウェーデンに来ました。今の特別支援教育は、私がスウェーデンに来てから始まりました。少し調べてみると、「特殊教育」と呼ばれていたものが、「特別支援教育」という名前になり、2007年より正式に実施されるようになったようです。私がスウェーデンにやってきたのは、2001年ですので、その6年後ということになります。 2.子どもの権利条約  通常学級を含むすべての教育において特別支援教育をという流れは、スウェーデンとあまり変わらないというのが、私の印象です。1989年に「児童の権利に関する条約」通称、「子どもの権利条約」が出ます。この条約は、日本でも、かなり定着し、内容はともかく、名前を知らない人は少なくなってきているのではと思います。この条約の中に、 障害のあることもについて可能な限り社会への統合が行われること、および、教育・訓練の機会をりようできるようにすること (第23条) というのがあります。スウェーデンでは、住んでいる地域、生まれたところで、生活し、学び、成長していけることの重要さがうたわれ、訓練のために違う施設に通うのではなく、普段通っている就学前学校の中で支援を受けること、地域の学校に通うことなどは、この条約により、かなり変わったと感じます。 3.障害を持つ人々の機会均等化に関する基準原則  次に、1993年になると国連の第48回総会にて、「障害を持つ人々の機会均等化に関する基準原則」が採択されます。この決議では、障害のある子ども、青年、成人について、初等教育、中等教育、中等教育狩猟後の教育委における統合された場での教育の機会均等の原則が取り上げられ、その認識を深めました。これを受けて、今のインクルーシブ教育の大元ともい...

スウェーデンの義務教育が5歳からになるかも

 スウェーデンでは、就学前学校(日本の幼稚園や保育園にあたる)の義務化に関する調査がされていたのですが、その報告が今日のニュースでありました。調査開始当時は、3歳からの義務化が検討されていましたが、5歳からの義務化が本格的に議論されていく模様です。  現在のスウェーデンの義務教育開始年齢は6歳で義務教育期間は10年。6歳になったのは2018年なので、まだつい最近です。なので、今回の変更が実現すれば、短期間に義務教育が11年になることになります。  この背景には、スウェーデンの子どもたちの学力の低下、特に言語能力の低下があります。今日のこのニュースと共に大きく報道されたのが、移民の多い地域の子どもたちの6歳児教育開始時の言語能力が十分ではないというものでした。  スウェーデンでは、共働き家庭が多く、みんな就学前学校に通っていると思われがちですが、約6%(22000人ほど)の子どもが就学前学校には通っておらず、通っていない子どもの半分は、外国にルーツを持つ子どもたちなのです。同年齢で比べると、外国にルーツを持つ子どもは83%、スウェーデンの子どもは95%が就学前学校に通っています。この差は、スウェーデン語の習得に大きな影響を与えていると思われます。  家庭でスウェーデン語を聞くことも話すこともなく、就学前学校にも通わず、6歳児教育に通いだせば、他の子どもとの差はとても大きいというのは、想像に難くありません。就学前学校に通うとよいと思われる子どもたちが、実際には通っていないという現実があり、義務ではない現在は、強制することはできません。就学前の段階で、自然な形でスウェーデン語に触れることは、この国で教育を受けるとなれば、とても重要なことであると思います。  この調査では、5歳からの義務化、コミューンが積極的に就学前学校に通っていない子どもを見つけてコンタクトを取ること、3歳になった子どもは全員就学前学校に登録するということなどが提案として挙がっています。  夜のニュースでは、移民の多い地域の子どもが、移民の子ばかりの就学前学校に通い、子ども同士はスウェーデン語を話さず、職員も有資格者でなかったり、スウェーデン語がしっかり話せなかったりしても、義務化することに意味あるのかというようなインタビューがされていました。それでも、集団で日常を過ごし、教育を受ける、保育を受けるという...

スウェーデンのPISAの学力テストの結果

 PISAの学力テストの結果が先週でました。これに際して、数週間前から、日本の文部科学省にあたる学校局からメールが届いており、どんな結果なのか大変興味深く待っていました。2013年のPISAショックが大きく、その後のスウェーデンの学校教育に大変大きな影響を与えたこともあり、今回の発表も大きな関心を集めました。結果は、前回の結果よりもよいという、前向きな結果になりました。これには、ほっとした関係者が多かったのではないかと察します。しかしながら、この結果にはいくつか問題点もあり、覚書がてら、ブログにまとめておこうと思いました。  まず、結果を見ていくと、スウェーデンの15歳の生徒たちは、OECD加盟国の平均をどの分野でも上回っており、この結果が2006年の結果と同じ水準に戻ったということです。ご存じの通り、PISAの学力テストは、読解力、数学、自然科学の3分野で行われます。 読解力:2018年は506ポイント、2015年500ポイント、2012年483ポイントで、わずかですが、2015年の結果よりも上昇しました。OECD加盟国の平均値は487ポイント。ちなみに日本は504ポイント、お隣フィンランドは、520ポイントでした。 数学:2018年は502ポイント、2015年494ポイント、2012年478ポイント。OECD加盟国の平均は489ポイントでした。数学は日本がトップで527ポイント、フィンランドが507ポイントでした。デンマークは509ポイント。 自然科学:2018年は499ポイント、2015年493ポイント、2012年485ポイント。OECD加盟国の平均が489ポイントでした。こちらも日本は高く529ポイント、フィンランドが522ポイントでした。  男女間の学力差が見られたのですが、こちらも多少回復したようです。しかしながら、北欧の国々の中では、最も教育システムに平等さが欠けているという結果となり、こちらに関しては大きくその後も話題となっています。  また、最も大きな問題とされているのが、学力テストから除外された生徒のパーセンテージ。PISAの学力テストは、以下の条件に当てはまると、テストを除外され、統計から外されます。その条件とは、 中度、...

スウェーデンの学校、携帯電話禁止となるか

 スウェーデンの教育関係の最近の話題で外せないのが、携帯電話の使用に関してです。学校での携帯電話の使用を禁止するという動きがあり、どの学校区分で、どの程度禁止とするのかなど、その禁止の度合いについて話題となっています。  この携帯電話禁止もしくは使用の制限に関しては、前々から時折出ていたので珍しい話ではないのですが、本格的に議論される大きな理由は、現政府の組閣にかかわって、社会民主党と環境党が、中央党と自由党の支援を受けるために受け入れたいくつかの条件の中の一つに、この内容があったというのが大きいかなと思います。もともとは、もちろん、学力低下と教室での学習環境の悪化があり、そこを法をもって何とかしようという政党の考えが、この携帯電話禁止の方向に動いています。  私が見聞きする範囲では、特別支援教育関係者は、やはり携帯電話がもたらす恩恵の方に目を向け、支援機器として考えると、法で禁止する方向は反対の姿勢を示している反応を見受けます。法できっちり禁止すること自体があまりスウェーデン的でない印象を私も受けるので、やはり同じようにそこまでしなくても、現場が決めていけばいいというような意見も多々。最初にこの話題が出たころに比べれば、議論が進み、徐々に緩和されたというか、寄り添った案となりつつあり、好意的な意見を述べる人も増えてきた気がします。    個人的には、デジタル化教育の推進を掲げ、カリキュラムも改定したのに、携帯電話の禁止を学習環境を整えるためという理由であっても導入するのは、時代の流れに反する気がします。今後デジタル化社会は進んでいくのであり、そこに生きていく子どもや若者を育てていくのですから、それにあった知識を与え、教育を行うべきであると思います。禁止をしなくても、やり方はいろいろあるように思うのです。こういった議論が行われることは大変良いことで、これにより、いくつかユニークな試みが行われました。そんな動きもご紹介できればと思います。

スウェーデン夏期講習導入

 国際学力テストでスウェーデンが順位を落とし始め、どのようにしてより多くの生徒に基礎学力をつけていくかという議論が何度となく行われ、もう永遠のテーマという感じですが、その一環として、数年前から始まったのが、夏休みの講習。スウェーデン語では、「Sommarlovsskola(ソンマルローブススクーラ)」と言います。直訳すれば、「夏休みの学校」。  この夏休みの学校には、最低到達目標である成績Eに届かない可能性のある生徒が通うことになります。夏の間の集中講座で補い、成績の不可を少なくすることが主な目的なので、日本のようにより良い成績をとるために通う夏期講習ではありません。この夏の学校の運営費用は、国に事前に申請します。しかしながら、あまりうまくいっていないようです。まあ、始めからそんな気配は感じたのですが。。。うまくいっていない大きな理由が 有資格の先生が少ないために、夏の学校で働く先生が見つからない。有資格でないと成績がつけられないので、必然的に無資格者ではなく、有資格者が必要。加えれば、有資格者で教員やってて、夏の学校でも働こうという人はなかなか見つけにくい。 生徒が嫌がる。これは予想の範囲。もともと成績がいまいちの子が、夏休みにどのようにモチベーション上げて学校通うんだろうと思っていました。  上記の2点から、予算に計上したけど、3分の1くらいしか使われないそうです。塾に通うというような習慣のないスウェーデン、アイデアはいいんだけど、実現するのは難しいかなと。ヨーロッパの中でも格段に長い夏休みらしいスウェーデン、夏休みを減らして、授業時間数を増やそうという動きも少しずつ出ていて、今後どうなるのか興味深いところです。

宗教色の強い学校は禁止に?!

 日本の私立の学校には、キリスト教系など、宗教的な考えをもとに運営をする学校が多くある印象があります。カソリック系だったとか、仏教だったとか、あまり珍しくなく、普通に話しているのを聞きます。こちらスウェーデンでは、そのような宗教的な考えをもととした学校を禁止したいという動きがあります。  現在、スウェーデンの基礎学校(いわゆる小中学校)で、宗教的な方向性を明確に打ち出している学校は66校あるそうです。数だけ聞くと、そんなに多くないし、あまり騒ぎ立てることでもない気もしますが、この統計には気になる点があります。学校側が明確に示している学校数が66校ということで、明確には打ち出していないが、宗教色を出している学校は数には上がってこないので、実際にはもっとあると推測できるのです。この66校のうちの大半はキリスト教系で、イスラム教系は10校。このある宗教を打ち出す私立の学校を禁止しようとする動きは少し前からあり、何度か話し合いや調査が行われています。今のところ、話題にはなるがなかなか禁止という方向にならない大きな理由は、宗教を理由に何かを禁止するということが、ほかの法律などとの兼ね合いで難しいためと聞いています。現教育大臣であるAnna Ekströmによれば、それでも教育という観点からみれば、可能であるという判断であるようです。今回の話も、現在すでにある学校はともかく、新設することはできないようにしたいようです。  スウェーデンの場合、学校検査局が検査に入るので、この検査局の検査がしっかりと機能すれば、宗教的なプロフィールの学校であっても問題ないようにも思いますが、このご時世、できれば禁止したいというのもわかります。ほかの国に比べて、学校のシステムが「すっきり」しているスウェーデンなので、禁止の方向もあるかななどと思ってみたり、興味深い限りです。

ここが変わる、スウェーデンの教育その2

 冬休みも今日で終わり、明日より仕事です。今学期の仕事始めはのんびりで、明日は1日自分で好きなことをできるという余裕のスタート。たいていの場合は、研修や会議が入るのですが、今年の研修は私は参加しなくてよくって、4人いる先生のうち2名が参加し、もう一人の先生は月曜休みなので明後日しか来ないので、私は一人、好きなことをしていいというゆっくりスタート。火曜日は、さすがにそんなにゆっくりはできず、1日研修と会議です。生徒は水曜日より登校します。今日は、前回の「 2019年ここが変わる、スウェーデンの教育その1」 の続きです。 私立の学校運営、より厳格な審査導入 スウェーデンの学校はすべて税金で賄われていますが、私立の学校もあります。数年まえにこういった私立の学校が突然倒産したことがあってから、少しずつ私立に対する風当たりが強くなり、特に税金で運営されている学校なのに利益を上げることに対しては根強い反発があります。これらの流れを受けて、今年の1月1日より、私立の学校運営開始に伴う審査が今までよりも厳しくなります。具体的には、経済的にどのくらい運営可能な持続性があるか、犯罪歴や倒産歴などの検査、学校運営に関わる人の多くの教育にかかわる経験と知識などが今までよりも詳しく調べられるとのことです。これらは、学校が運営され始めても継続して審査するとのことです。  私立の学校は、一応監督責任のような形で管理義務がその所在地のコミューンにもあることになっているのですが、おそらくあまり明確ではなく、私立は私立というイメージがあるのか、今回の法改正で厳しく審査されることは時代の流れだと思います。数年前に同じような感じで、審査が厳しくなったときは私立の学校の新設数が増えなかったと記憶するので、こうした政府介入は、教育の平等性や均等性、継続性のためには必要であると思います。  明日からの新学期、研修に1月は2日、2月は1日行くことがすでに決まっていて、どれもとても興味がある研修なので、すごく楽しみです。2月の終わりには特別支援教育の機関で発表を今年もすることになっており、準備は大変だけど勉強になると思うし、がんばります。

2019年ここが変わる、スウェーデンの教育1

 安定な政治情勢で、いまだに組閣ができていないスウェーデン。2019年1月16日が一区切りで、その結果次第では、4月に再選挙がされることになります。この移行期の予算は暫定政府予算案が否決され、穏健党とキリスト教民主党の合同予算案が通りました。これにより、どうなるかわからない点もありますが、2019年のスウェーデンの教育の変更点を少しずつまとめておこうと思います。今回は、 「学校長」の配置を義務化 スウェーデンでは、コミューンという地方自治体が公立学校運営の最高責任を負っています。コミューンにおける学校運営の組織はまちまちで、そのコミューンの人口や生徒数、学校数などによって、その地域にあった運営がされています。組織としては、たいていの場合は「子どもと教育課」とか「教育課」というような名前がついていて、この課の長がいます。その下に複数の部署があり、「就学前学校」、「基礎学校」、「高校と成人教育」、「音楽、文化学校と余暇活動」、「生徒の健康」などがあります。このあたりの区分は、その時々によって組織替えされたり、コミューンの大きさによって違い、これといった国での統一はありません。地方にあった形で行われているという点ではよいと思うのですが、やはり、きちんと行われていないところもあるようで、少しずつ、国の手が入るような形になってきているという印象を受けます。  法律の改定は、昨年7月1日に行われ、施行は今年の1月1日からで「Skolschef」という名前で「学校の長」を最低1名は置くことが義務化されました。この学校長の役割は、コミューンの責任者の補佐として、国の法と規定に従って学校運営をしていく手助けをします。学校法にとどまらず、差別の禁止法や労働法など、あらゆる法律に関してとあり、何かしらの違反や不備が見つかった場合には早急に改善し、コミューンの責任者に連絡する義務があります。おそらく、どこのコミューンにもこれに似た役職はあったと思われるので、それほど大きな変化ではない気もしますが、今回の改定では、「どの教育機関にも」というところがポイントだと思います。義務教育の学校はたいてい長がいたけれど、学童や成人教育、文化学校などのすべての分野には配置されていない、もしくは明確な責任者が設定されていない場合もあったので、どの教育分野にも明確な長が配置されるのは大きいかと思...

2学期制か3学期制か

 明日はクリスマスイブ、こちらスウェーデンは、全国でホワイトクリスマスになりそうで、クリスマス一色となっています。私は、金曜日のお昼に仕事納めをし、のんびりとした毎日です。2週間ちょっとの休みはのんびり、読みたい本をたくさん読んで過ごす予定です。  さて、2学期制か3学期制か。。。日本の甥っ子姪っ子の通う学校は、岐阜の地方の小学校ですが、2学期制になったとかで、秋に1週間ほど、名前は忘れたのですが、休みがありました。長らく3学期制だった日本の義務教育も2学期制が増えているのでしょうか。アメリカ、日本、フランス、イギリスなどが3学期制の代表国ですが、スウェーデンは、2学期制を貫いてきました。そんなスウェーデンですが、ここ数年、3学期制にして、夏休みを短くしようという声があります。3か月弱に及ぶ夏休みを短くし、3学期制にして休みを分散することにより、学力を伸ばそうというものです。日本で2学期制となる声を聞きながら、こちらで3学期制の動きを聞くというのは、大変興味深いところです。  そんなことを考えている冬休み、年末です。やってみる価値はあるだろうが、今後、これが先生の労働時間や環境、仕事量にどのように影響を与えるのか、学力向上にいかに有効なのかなど、かなり議論が必要でしょうね。私立の学校とかで導入されそうな感じはしますが。  みなさんも、良いクリスマスを!