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スウェーデンの特別支援学校の3年間プロジェクト、KASKについて

  昨日から冬休みになりました。やっと少し時間ができて、掃除に断捨離、水泳、読書、編み物、ピアノとやりたいこㇳを満喫しております。今日は、冬休みに入って第一弾ということで、3年間やってきたプロジェクトについて書きたいと思います。今の学校に移って、すぐにこのプロジェクトに参加することが決まり、それとほぼ同時にヘッドティーチャーにもなったので、このプロジェクトの責任者にもなり、今までやってきました。3年間のプロジェクトも今年が最後の3年目で、今、もう一人の先生と一緒に、プロジェクトをまとめた論文を書いています。  このプロジェクトは、スウェーデンの非営利団体である、iFousが行っているプロジェクトで、国内の7つの基礎自治体の支援学校の先生、2大学から3名の研究者がかかわって、総勢170名ほどで行っているプロジェクトになります。私は、ストックホルムの公立の基礎特別支援学校で働いているので、そこからの参加になります。プロジェクトの名前は、「KASK」と頭文字をとって言います。日本語に訳をするのならば、「特別支援学校の知識伝達、共有の使命」という感じでしょうか。簡単に言えば、いかに支援学校の授業をよりよくしていき、知識を教えていくことができるかということになります。  今回のプロジェクトは、アクションリサーチ型を取っており、各学校がそれぞれ、現場の実態に沿ってどんな内容を研究したいかというのを自分たちで出して、それについて取り組むというものです。これに3名の大学の研究者がかかわり、方法などを支援してくれました。研究者は、すべての学校から出てくるものをまとめて、国際的な論文にまとめており、私たちは、現場で行った内容を論文にまとめています。このプロジェクトは、学期に一度大きなセミナーがあり、参加者が一堂に会して、交流したり学びあうというのも大きな特徴で、その際には、基礎自治体のいわゆる教育委員会にあたるような人々も参加しており、その自治体全体で取り組むことも大きなメリットです。  私の学校は、生徒同士のコミュニケーションをいかに増やすかということを課題に取り組んできました。5月の終わりまでに論文を仕上げるべく、頑張ります。

ふたりぱぱのYoutubeにゲスト出演しました

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 皆様、お久しぶりです。いかがお過ごしでしょうか。私は、いろいろありまして、大変忙しくも充実した毎日を送っています。こんなに忙しくなるちょっと前に、連絡をいただきまして、ふたりぱぱのYoutubeの動画の撮影をしました。その第1弾が公開になりましたので、ご紹介します。 リンクはこちらから ! 話もお上手で編集もさすがプロだなという感じです。実は今年に入って、いろんな方から連絡をもらうようになりまして、コロナが終わったなあと感じつつ、こうした動画はまず、概論を見てもらうにはいいのではなと思っています。収録前に、視聴者の方から質問を募集されたそうで、質問数が多かったので、60にまとめてくださり、それに答えながらでした。パートナーも上手にまとまっているとほめてました。スウェーデンの教育に興味のある方はぜひ!

スウェーデンのキャリア教員、ヘッドテーチャーの仕事とは

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 以前 こちらの投稿 で少し書いたのですが、私は、ストックホルム市、そしてスウェーデン最大の特別支援学校でヘッドテーチャーをしています。以前も6年間していて、学校を変わって2年間していなかったのですが、(その間に本を書きました! 私の本はこちら 。)また、昨年の秋からキャリア教員、ヘッドテーチャーをしています。前の学校よりも何倍も大きく、基礎学校と一緒になっており、ヘッドテーチャーの仕事は、支援学校と基礎学校なので、仕事は多岐にわたります。専門分野は、「生徒の参加と影響、安心した学校生活を送る」という民主主義と価値教育の基盤を築く大変重要なところです。やりがいものすごくありますが、責任と仕事量も半端ないです。今日は、そんなスウェーデンのヘッドテーチャーの仕事について紹介します。おそらく、スウェーデンでヘッドテーチャーしている日本人は、私だけなので、貴重な生の声かなと(笑)思います。 1.ヘッドテーチャーとは  仕事の内容は、少し古い投稿ですが、2016年のものがこのブログにありますので、そちらもぜひ。「 スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状 」  こんな仕事と、簡単に言えたらどんなにいいだろうかというのが実際で、仕事の内容は、学校ごとに違えば、人それぞれで、その学校の今年度大切な内容に即して仕事の内容が決まります。私の勤務校は、5人のヘッドテーチャーがいて、生徒の安全、デジタル化教育、数学、特別支援教育、健康と運動の5つの分野を受け持っています。この5人の先生は、国の予算から毎月5000クローネお給料が上乗せされます。これ以外に、ストックホルム市は、独自の「発展教員」もいて、こちらは、学校の予算で月に2000クローネ付き、うちの学校は、上記の5分野に言語分野がついて、6つの発展領域グループのどれかを担当します。この学校内のグループは基礎学校と支援学校の全ての先生が所属して、縦断的に活動し、学校を発展させていきます。 2.キャリアが積みにくい教員  教員は、一度先生になるとなかなかその後のキャリアが積みにくいといわれています。大学院にいくとか、副校長や校長になるという道はあるのですが、その間がなかなかないのです。教員から、次のステップが大きすぎるということから、スウェーデンでよくあったのが、先生をやめて違う職業に移る人で、教員不足を解消するために、2...

スウェーデン・ストックホルムの公立学校のヘッドティーチャーになる

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 この投稿は、旧ブログと過去投稿をリライトして投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著「 医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム 」を刊行。是非ご一読を😊  あんなに、ブログを頑張って書こうと思っていたのに、あっという間に1か月😅。もう少し定期的に投稿しないとなあと思いながら、書いております。足を運んでくださった皆様、ありがとうございます。  何をそんなに忙しくしていたかというと、新学期が始まったというのも、もちろんなのですが、実は、スウェーデンストックホルム市の公立の最大の特別支援学校の、ヘッドティーチャーになりました。日本だと、主任教員とかいろいろあるのかなと思います。スウェーデンには、10年ほど前に導入されたキャリアアップ制度があり、種類は、2つ。 Förstelärare:ヘッドティーチャーと私は訳をしています。手当が月5000krつきます。 Lektor :講師という感じで、こちらは、最低でもマスターを持っていないといけなくて、月10,000krつきます。  この他に、ストックホルム市は、「発展教員」みたいな名前のもありますが、これは、市独自のもので、他の市にはありません。私が今回なったのは、上記のヘッドティーチャーです。2年前まで勤めていた学校で6年間、ヘッドティーチャーをしていたので、まさかの復帰。辞めた時は、もうなるつもりなかったので、まさか2年で復帰するとは、しかもストックホルムの公立学校で、夢にも思っていませんでした。  うちの学校には、ヘッドティーチャー何人もいますが、支援学校には今までいなかったので、今回は支援学校初となり、夏前に学校内公募がありました。かなりの数の先生が応募したので、まさか私がなるとは思っていなかったので、びっくりです。同僚たちに勧められて応募したのですが、まあならないだろうというのもあって、なってみて、ちょっとびっくりすることもありました。学校組織が大きいので、仕事も多岐に渡り、既に以下の内容を行っています。 小中学校と合同の学校内の発達グループの一つ「安全グループ」のリーダーをもう一人の先生とペアーで行っています。生徒が安全に安心して学校生活を送るために活動する大変重要なグループで、小中学校と連携して、インクルーシブで多様な学校を目指してきた...

第一教諭に与えられた時間は?

 「 スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状 」と「 他の先生から批判が多いキャリアアップ制度 」の続きです。読んだり書いたりしていると、今年悩んだことなどが整理できてきました。今回は、実際に第一教諭として働いている人の視点から少し書こうと思います。  私もだけど、何がこの改革で足りなかったかというと、これに尽きます。 「時間」 です!今回のキャリアアップ制度は、お給料の上乗せの額も決まっていたし、その資格も大まかに決まっていたし、大体の数も決まっていたけれど、実際の仕事内容は大雑把で、しかもそれに対する労働時間に指針はあっても決まりはなかったのです。そのため、実際に働いている第一教諭たちは、したいこと、できること、必要なこと、とにかくたくさんあるけれど、時間がないのです。私もですが、それまでの仕事が減らされたわけではないので、その仕事はそのまま残り、その上、仕事が加算されました。そうなるとどうしても時間が足りない。  一応、授業を行う時間をそれまでの80%にするといいとか、意見はありますが、実際の統計は次の通り。 第一教諭の仕事に当てられた労働時間の割合 全労働時間の 0−4%     41%       5−14%    23%       15−24%   21%       25−34%   2%       35−44%   1%       45−50%   1% 知らない、わからない    10% (943人の第一教諭にアンケートして回答数は67%)  アンケート結果を見れば一目瞭然といった感じです。ちなみに私は0%。時間の方は与えられませんでした。最初の頃は、同僚から「お金もらっているんだから」と言われ、結構傷つきましたが、第一教諭の集まりではそういうこと言われている人が結構いると知り、ちょっと納得。時間は与えられていないのに、他の人と同じように仕事をした上で、プラスの仕事をした結果を見せないといけないというプレッシャーを感じる第一教諭も多くて、「5000クローネ分働いたって見せないと」という声も聞かれます。  私はというと、一応、言われた仕事をこなし、それに加えて、うちの生徒にとって必要と思われる内容を実現しようと奔走し、ほかの先生から、「いつ、ああいう資料作っているの」と聞かれ、ほぼ時間...

他の先生から批判が多いキャリアップ制度

 前回の「 スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状 」の続きです。キャリアアップ制度が導入されてから数年たち、六千人の先生に対して制度をどう思うかアンケートが行われました。その結果が教員組合の新聞にちょこっと載っていたので、紹介します。 半分以上の先生が、キャリアアップ制度に対して、とても批判的、多少批判的である。 半分以上の先生が、キャリアアップ制度は第一教諭や講師になった人のみに利益があると思っている。 多くの先生は、キャリアアップ制度は、お給料に大きな差が出るので、教員のグループには良くないと思っている。  やっぱり、他の先生はあんまりよく思ってないんでしょうね。その理由には、やっている内容が不透明で、他の先生にあまり伝わっていないというのも大きいように思います。コミューンの教育担当科や管理職がしっかりと目的を持って第一教諭などを有効に使っているかというとそうではないところが多いので、上からも不透明で、下には伝わっていないという現状があるように思います。このキャリアアップ制度は、役職に就いた人には手当が出るので、こう言った役割とお給料が直結したタイプの改革はあまり良くないとも言われています。  個人的には、スウェーデン社会にある平等意識が深く関わっており、同じ仕事なのに、数名の人がキャリアを積み、お給料もグンと上がることに対して、よく思っていない人が多いのだろうと思ってしまいます。たまに同僚から言われる言葉に、深くは傷つきませんが、勘ぐってしまうのも事実だし。  このキャリアアップ制度がうまく浸透しなかった理由は幾つかあると思うのですが、その中でも、特に実際に働いている第一教諭側から聞かれる大きな問題を次で取り上げたいと思います。 読んだ記事:"Kritik mot förstelärare", Lärnarnastidning, nr.2 2016

スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状

 何回かに分けて、私が2年前からなっている「Förstelärare(フォシタラーラレ)」について書こうと思います。名称は、前半部分の「Förste」が一番という意味で、後半は先生の意味の「lärare」になります。なので、Förstelärareになれなかった人のことを、「Andralärare(アンドララーラレ)」と言ったり、できる先生ではなく「Sistelärare(システラーラレ)」と呼び、あまり力のない先生にこそ、力をつけさせるべきであるという皮肉も聞かれます。そのため、この名称については、問題が多いという人も多く、名前を変えるべきだという声もあります。  スウェーデンのキャリアアップ制度は、前にも書いたと思うのですが、2種類あります。私がなっているのが、第一教諭で教員免許を持っていることが条件で、その他の条件はコミューンによって多少変わりますが、私の場合は、4年以上教員としての良い実績があること、特に生徒の成績を伸ばした結果がることというのが条件でした。もう一つは、「Lektor(レクトル)」と呼ばれるもので、最低でもマスターの資格を持っている講師に当たる職業です。このLektorレベルになると、大学でも働けるので、実際に学校で働いている人に私はまだあったことがありません。特別支援学校に限っては、十人いないと聞いています。そのため、ここでは、第一教諭についてのみ書こうと思います。  このキャリアアップ制度の実態を、実際に働いている人々にアンケートし、(私も参加しました!)それをまとめたものが出されました。その結果をもとに講演会が行われ、その時の資料より、少し現状をまとめてみました。 1、スウェーデンのキャリアアップ制度の目的は? より多くの生徒が国の到達目標に到達することができるように、その可能性を増やしていく。 上手な教師に、教師として授業を行いつつ、キャリアアップの可能性をもたらす。  最初の目的は、私もよく聞かされることで、生徒の持っている力を最大限に伸ばすためにはどうしたら良いのかというのが私たちの大きな課題、仕事になります。2番目の目的は、スウェーデンでは教員を辞めていく人が多くいて、その原因が、ある程度年数を重ねると、キャリアアップする方法がなかったために、転職して学校去ってしまう人が出てきたためとされています。第...