2019年6月27日木曜日

国からの給付金返還請求が出される

  興味深い内容がニュースとなっていたので、勉強がてらご紹介を。Skolverketという、スウェーデンの文部科学省が2400万クローネの返還を要求したと。どこに返還要求出したのか興味があり、まとめてみました。

 2018年に学校均等化にかかわる国からの給付金を申請は651件でした。2019年春にその給付金の使用結果を提出する必要があり、これにより問題があると指摘されたのは8件でした。どんな問題化というと2015~2017年に生徒一人当たりにかけた経費より、2018年の経費が削減されたというものです。今回は、まず、6コミューンと私立1校に対しての返還請求で約2400万クローネが返還されるとのことでした。

 少し詳しく書くと、こういった国からの給付金は、その目的のために使用されないといけないという決まりがもちろんあり、この給付金をもとに(明確ではないにしろ)生徒一人当たりの経費が減らされてはいけないのです。線引きがしっかりしているスウェーデンなのですが、例外が許されないわけではなく、何かしらの理由があればもちろん了承される場合もあります。今回の返還要求も、この例外が考慮されないか試され、きちんと書類でその例外を証明できたコミューンは返還義務は課されませんでしたが、それができなかったところは、返還請求となったようです。

 ここ1年ほど、財政状況が悪化しているコミューンが多いのか、学校運営にかかるお金が増加しているのか、教育費削減傾向が目につき、教員組合がスウェーデン各地でデモを行ったこの春学期、こういったお金の使用に関しては、教育局も組合も、教員もとても関心があります。今回の返還請求の決定に関しても、コミューン側の言い分としては、コミューンからの経費削減命令に沿って、経費を削減したことによる、トータルの削減であり、国からもらった給付金はその目的で使用されたとありますが、認められませんでした。今回の返還要求は私立を除き、各学校にされるのではなく、コミューンの最高責任者に出されるものなので、この理由が通らないのもよくわかります。

 これで終わりではなく、秋に引き続き、調査をしていくそうで、こうした学校局の対応は重要であると思います。国がいくら予算計上して、政策を立てても、地方分権化が進み、教育が地方に降りているスウェーデンでは、そこでしっかりと教育が行われるかがカギとなります。また、民営化が進み、私立の学校が利益を上げることができるスウェーデンの学校システムでは、こうした給付金を得て、利益を上げているようなことがあれば、やはり問題かとも思います。


2019年6月25日火曜日

スウェーデンの学校、携帯電話禁止となるか

 スウェーデンの教育関係の最近の話題で外せないのが、携帯電話の使用に関してです。学校での携帯電話の使用を禁止するという動きがあり、どの学校区分で、どの程度禁止とするのかなど、その禁止の度合いについて話題となっています。


 この携帯電話禁止もしくは使用の制限に関しては、前々から時折出ていたので珍しい話ではないのですが、本格的に議論される大きな理由は、現政府の組閣にかかわって、社会民主党と環境党が、中央党と自由党の支援を受けるために受け入れたいくつかの条件の中の一つに、この内容があったというのが大きいかなと思います。もともとは、もちろん、学力低下と教室での学習環境の悪化があり、そこを法をもって何とかしようという政党の考えが、この携帯電話禁止の方向に動いています。


 私が見聞きする範囲では、特別支援教育関係者は、やはり携帯電話がもたらす恩恵の方に目を向け、支援機器として考えると、法で禁止する方向は反対の姿勢を示している反応を見受けます。法できっちり禁止すること自体があまりスウェーデン的でない印象を私も受けるので、やはり同じようにそこまでしなくても、現場が決めていけばいいというような意見も多々。最初にこの話題が出たころに比べれば、議論が進み、徐々に緩和されたというか、寄り添った案となりつつあり、好意的な意見を述べる人も増えてきた気がします。

 
 個人的には、デジタル化教育の推進を掲げ、カリキュラムも改定したのに、携帯電話の禁止を学習環境を整えるためという理由であっても導入するのは、時代の流れに反する気がします。今後デジタル化社会は進んでいくのであり、そこに生きていく子どもや若者を育てていくのですから、それにあった知識を与え、教育を行うべきであると思います。禁止をしなくても、やり方はいろいろあるように思うのです。こういった議論が行われることは大変良いことで、これにより、いくつかユニークな試みが行われました。そんな動きもご紹介できればと思います。




2019年6月24日月曜日

スウェーデン夏期講習導入

 国際学力テストでスウェーデンが順位を落とし始め、どのようにしてより多くの生徒に基礎学力をつけていくかという議論が何度となく行われ、もう永遠のテーマという感じですが、その一環として、数年前から始まったのが、夏休みの講習。スウェーデン語では、「Sommarlovsskola(ソンマルローブススクーラ)」と言います。直訳すれば、「夏休みの学校」。

 この夏休みの学校には、最低到達目標である成績Eに届かない可能性のある生徒が通うことになります。夏の間の集中講座で補い、成績の不可を少なくすることが主な目的なので、日本のようにより良い成績をとるために通う夏期講習ではありません。この夏の学校の運営費用は、国に事前に申請します。しかしながら、あまりうまくいっていないようです。まあ、始めからそんな気配は感じたのですが。。。うまくいっていない大きな理由が

有資格の先生が少ないために、夏の学校で働く先生が見つからない。有資格でないと成績がつけられないので、必然的に無資格者ではなく、有資格者が必要。加えれば、有資格者で教員やってて、夏の学校でも働こうという人はなかなか見つけにくい。

生徒が嫌がる。これは予想の範囲。もともと成績がいまいちの子が、夏休みにどのようにモチベーション上げて学校通うんだろうと思っていました。

 上記の2点から、予算に計上したけど、3分の1くらいしか使われないそうです。塾に通うというような習慣のないスウェーデン、アイデアはいいんだけど、実現するのは難しいかなと。ヨーロッパの中でも格段に長い夏休みらしいスウェーデン、夏休みを減らして、授業時間数を増やそうという動きも少しずつ出ていて、今後どうなるのか興味深いところです。

2019年6月23日日曜日

宗教色の強い学校は禁止に?!

 日本の私立の学校には、キリスト教系など、宗教的な考えをもとに運営をする学校が多くある印象があります。カソリック系だったとか、仏教だったとか、あまり珍しくなく、普通に話しているのを聞きます。こちらスウェーデンでは、そのような宗教的な考えをもととした学校を禁止したいという動きがあります。

 現在、スウェーデンの基礎学校(いわゆる小中学校)で、宗教的な方向性を明確に打ち出している学校は66校あるそうです。数だけ聞くと、そんなに多くないし、あまり騒ぎ立てることでもない気もしますが、この統計には気になる点があります。学校側が明確に示している学校数が66校ということで、明確には打ち出していないが、宗教色を出している学校は数には上がってこないので、実際にはもっとあると推測できるのです。この66校のうちの大半はキリスト教系で、イスラム教系は10校。このある宗教を打ち出す私立の学校を禁止しようとする動きは少し前からあり、何度か話し合いや調査が行われています。今のところ、話題にはなるがなかなか禁止という方向にならない大きな理由は、宗教を理由に何かを禁止するということが、ほかの法律などとの兼ね合いで難しいためと聞いています。現教育大臣であるAnna Ekströmによれば、それでも教育という観点からみれば、可能であるという判断であるようです。今回の話も、現在すでにある学校はともかく、新設することはできないようにしたいようです。

 スウェーデンの場合、学校検査局が検査に入るので、この検査局の検査がしっかりと機能すれば、宗教的なプロフィールの学校であっても問題ないようにも思いますが、このご時世、できれば禁止したいというのもわかります。ほかの国に比べて、学校のシステムが「すっきり」しているスウェーデンなので、禁止の方向もあるかななどと思ってみたり、興味深い限りです。


2019年6月22日土曜日

実り多い夏の休暇に

 昨日は、スウェーデンの三大祭りのひとつ、夏至祭がありました。例年になく、好天に恵まれ、楽しい夏至祭となったことでしょう。私はというと、雑草の花粉が体に合わず、アレルギーで苦しんでおりました。あと1週間ほどの辛抱です。

 6月12日に無事に卒業生を三名送り出し、いろいろあった今年度も終わり、水曜日から夏の休暇に入っています。夏の休暇前は、もう仕事をこなすのが大変で、これは私の性格のせいなのか、、、何なのか。。。こんな忙しい時期に、転職活動をこなしていて、かなりの数のインタビューを受けたのに、結局、条件に合わず、転職しないことに。おそらく、ふざけるなというような条件だったんだろうけど、私にとっては重要な条件がいくつかあり、今回は転職しないことに。

 忙しいときはいろいろと重なるもので、この夏は、とんとんといくつか仕事のお話を頂きまして、うれしい限りです。仕事と書くと語弊があるかなと思うのですが、お金儲けの意味合いでの仕事ではないのですが、いろんなことを経験できることはよいことだと思い、母と叔母が来る二週間、スイスの学会に行く1週間の3週間を除いてすべて仕事をすることにしました。日本の方からすると3週間休めば十分って感じもしますが。。。そして、今年こそは、会社を立ち上げる予定で、いろいろと準備を進めています。ここ2年ほど構想にはあったのですが、いろいろと家庭の事情も重なり伸ばし伸ばしに。しかし、今年ことは、と思っており、ホームページもできればいいなあと思っているので、夏の終わりにはここで紹介できることを目標としてここに書いておきたいと思います。あと、書いている原稿があり、それらが出るときにも紹介できればと思います。

 こうして、書いておくと、逃げられないぞーと自分に言い聞かせております。何せ、もとがダラダラとゴロゴロをこよなく愛する人間なので、有言実行で頑張らないと。。。年のせいにもさせていただけるならば、そうさせていただきたい。。。私だけかもしれないが。。。

 ということで、コーディネートや通訳、教育や福祉などに関するリサーチなどのご依頼がありましたら、いつでもご連絡ください。メールアドレス:swedenpedagog@yahoo.co.jp


 


2019年6月2日日曜日

スウェーデンで増えている発達障害の大学生

 スウェーデンでは、発達障害でありながら大学で学ぶ学生が増えているという記事がありました。大変喜ばしいことです。発達障害の場合、知的障害がない場合は、適切な支援と援助を受ければ、持っている能力を生かして活躍していくことができます。その障害ゆえに、失敗経験を重ね、二次障害を抱えてしまうと、本来の力を出すことなく、精神的に不健康な状態になってしまう場合も多く、適切な支援援助を早期に行うことは大変重要です。

 スウェーデンの大学では、日本と同様に各大学に「支援援助センター」みたいなところがあり、そこに特別支援教育専門教員などが配置されています。特に入学から1年ほどをめどに集中的に支援援助を希望する学生におこなっています。障害に関する証明があれば、テストの際の配慮(時間や場所)、読み上げ機能や音声文書の利用、文章の書き方の指導、勉強の仕方、デジタル機器による支援などいろいろな支援をおこなってくれます。昨年このような支援援助を希望した学生は、1万7千人とあり、数年前に比べるとかなり増えているとあります。

 増加の要因としては、なんといっても障害に対する偏見が、一昔前に比べると各段に減ったというのが大きいでしょう。特に発達障害に限れば、ここ数年、子どもに限らず、大人でも障害判定がおり、隠さずに話す人も多くなり、障害に対する認知、知識が広がったというのが大きいかとも思います。これは大学教員間にもいえることですし、ほかの学生にしても、多様な人が存在することがそんなに珍しいことではなくなったということでしょう。また、デジタル機器の普及により、支援援助の多様化と簡素化が図られたことも大きいと思います。

 義務教育のみでなく、高校、成人教育、大学などで、より一層、こうした支援援助が広がっていき、多くの人々が持っている力を最大限に生かせる社会を目指していければと、特別支援教育にかかわる人間として願わずにはいられません。