2022年7月15日金曜日

AAC拡大代替コミュニケーションの種類

  先日「AAC拡大代替コミュニケーションとは」を書きました。今日は、AAC拡大代替コミュニケーションにどんな種類があるかを書いていきたいと思います。この分類方法は、いろいろあると思うので、以下は私がスウェーデンの現場からみてということで、ご理解いただければと思います。

  • 身体の自然な動きを用いたAAC

おそらく、子どもをよく観察している指導者であれば、既におこなっていることなのですが、ジェスチャーや繰り返される身体的な動きを、コミュニケーションシステムにするのがこの方法です。手で人を呼ぶしぐさで「来て」と伝えるような基本的なものから、私が学校で行ったものには、「首を横に振ることができる」「右手をあげることができる」といったその子がよく行う行動をもとに、コミュニ―ションを確立していくというものもあります。

  • 手話を利用したAAC

スウェーデンで、就学前学校や支援学校でよく使われているものの一つが、こちら、手話を用いた「支援のための手話」です。この支援のための手話は、日本で私も使用していた「マカトン法」のような感じのものです。「手話」とは違うのですが、「手話」を借りてきて、会話の中の重要な部分を手話にするもので、ベビーサインともよく似ています。おそらくもっとも異なるのは、「支援のための手話」は、その子の持っている機能に合わせて、もしくは、その子が使いやすい形に手話を変えて使用することができる点です。なので、同じ言葉であっても、子どもや生徒によって、手話の動作が異なっている場合があるため、「その子の手話」を教師や支援者側が学ぶ必要があります。文章の中の1つか二つを手話にすることが多く、例えば、「牛乳かお水どっちのむ?」と聞く場合であれば、「牛乳」と「お水」を手話で強化して話すという感じです。子どもたちは、こういった手話は本当にすぐに覚えてくれるので、日常会話はこれでも十分なのですが、成長とともに抽象的概念や学校の言葉などを教えていこうと思うと、限界がみられます。

  • 物をを利用したAAC

こちらも、小さいお子さんがいらっしゃるとおそらくやっているのですが、「哺乳瓶をみせて」ご飯の時間とつたえるとか、「水着」を見せて、明日はプールと伝えるといったように、実物を利用したコミュニケーション方法になります。このものを利用したAACは体系化してシステム化すると、その後に写真を導入して、徐々に抽象化していくこともでき、意識して会話にできるものを利用していくことは重要です。

  • 写真や絵を利用したAAC(グラフィックAAC)

日本でも使われているPECSは、この写真や絵を利用したAACの代表です。身近なものを自分で撮った写真でもよいですし、私が学校で使っているものは、購入できる絵のプログラムで、複数の種類があります。白黒やカラーのものなどもあります。この絵を用いたグラフィックのAACの良い点は、これを利用した様々なコミュニケーションの方法が既にあることです。前出のPECSもそうですが、一つのテーマに合わせて絵を並べた絵カード、PECSまで行かなくても導入できる「絵カードコミュニケ―ション」指差しカードやブリスと呼ばれる本格的なコミュニケーションシステム、トーキングマットなどなど、様々方法があります。
絵カードコミュニケーションの一例、絵と手話を混ぜて、スウェーデンの就学前学校で、言葉の発達を促すために使用されている。



話すことが苦手な子どもや若者、人々は、話せなくても(発語ができなくても)理解はよくしている(特に日常生活に関わるもの)ことが、ほとんどです。そういった人々に、こうした様々な方法の中から、その人に適したものを導入して、利用していくことで、より豊かなコミュニケーションを行うことができ、より豊かな日常生活を送ることができます。

「自分の言いたいことが言えない」という状況は、例えば、障害がない人であっても、外国でその国の言葉を修得するまでの間に経験する体験を思い浮かべてもらうとよいのですが、ものすごくストレスがかかります。そうした状況で、自分がやりたくないことを強要されれば、問題行動へと発展することは容易に理解ができます。行動障害がある、問題行動があるという場合には、私は様々なアプローチの中の最も重要な学びとして、コミュニケーション方法の確立を常に位置付けてきました。

どのAACを選ぶかやどんな環境設定が必要なのかなど、まだまだ、話したいことはたくさんあるのですが、今日はここまでで!

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