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文理閣出版「人権としての特別支援教育」の読書会に参加

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 この春に、文理閣から出版された、 「人権としての特別支援教育」 の読書会が昨日ハイブリット方式で開催されたので、私はオンラインで参加しました。この本の最後の「展望」に「スウェーデンのインクルーシブ教育」について寄稿をさせていただきました。読書会で考えたこと、この本の素晴らしいことをまとめたいと思います。   アマゾンのこの本 の解説には、以下のように書かれています。 「 子どもの発達と学習を保証する権利としての障害児教育、決して「特別」ではない特別支援教育のために編まれた、学生・教員・ボランティアに向けた新しいテキスト 」 この本は、 「人権」 を軸にして「特別支援教育」が関わる全ての部分を網羅した、入門書と言えるのではと思います。本の編著者である、近藤真理子さんが読書会の始めに、この本に対する思いをお話しくださいました。心に残ったことがたくさんあるのですが、 人は誰もが、唯一無二の存在であり、その人らしく、仲間の中で育っていく権利があり、 その能力に応じて等しく教育を受ける権利がある と。こうして読むと、おそらく多くの方は、そんな当たり前のこと、と思われるかもしれません。それでも、その当たり前のことが実際にはとても難しいことが多くあります。スウェーデンの学校法の中にも、これと同じことを保障した部分があります。 唯一無二の存在 かけがえのない存在 全ての人に同じ価値がある ということは、簡単なようで、なかなか子どもに伝えることができないし、実感して生活できる人も少ないように思います。今日読んでいた本に、 友達と仲間の違い が書かれていました。スウェーデンの社会の教科書の中にあった、社会で生きる理由の一つが、この人とのつながりでした。私たちは、人と共に、仲間や友達、同級生やいろんな人々の中で学び、育っていきます。この本は、人権を軸にして、教育と共にある特別支援教育を書いた本であり、インクルーシブ教育の礎を語る本でもあると思います。実践が必ず書かれているのですが、そこには、子どもと向き合い、人権という視点から、振り返る教員や大人の姿、そこで苦しみ悩む子供と大人の姿があり、涙が出る場面も多くあります。 目次より はじめに ~この本の特徴 特別ではない特別支援教育~ (I) 特別支援教育の理念と課題 1-1 特別支援教育がめざすもの、そして特別支援教育に求められているもの...

スウェーデンの障害者のデイケアセンター・就労支援施設・作業所①

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   この投稿は、旧ブログの2014年11月1日のものを更新して、再投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著「 医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」 を刊行。是非ご一読を😊  もうずっと放置状態にある旧ブログをリライトしつつ、こちらに移行するという気長な作業をしています。その中から、スウェーデンのデイケアセンター(日本の就労支援施設B型、もしくは生活介護型に当たると思います)をご紹介します。今日の内容は、2点です。 どこのどんなデイケアセンター? 写真でみるスウェーデンのデイケアセンター どこのどんなスウェーデンのデイケアセンター?  私は、スウェーデンの特別支援学校の小学部から高等部まですべてで働いた経験があります。高等部は、6年働いていたので、その間にかなりの数の生徒の卒後の施設を見学にいったり、会議で訪れたりしました。その中の一つを写真になります。この施設は、見学に行ったデイケア施設の様子を紹介します。ここは、今は移転していて、現状のままでは残っていません。私は、その当時高等部では、重度重複障害の生徒を教えていたので、このデイケアセンターも、重度の障害がある成人のための施設になります。  このセンターは、その昔の作業所というよりは、デイケアセンターという感じで、スウェーデン語では、 「Daglig Varksamhet(ダーグリィギ・ヴァルクサムヘート)」 といいます。この場合の多くは、自閉症や発達障害系の障害を持った方たちがLSSと呼ばれる「Lagen om stöd och service till vissa funktionshindrade(特定障がい者のための支援とサービス法)」に基づいて、運営されている施設になります。コミューンが運営している場合もあれば、民間が運営しているものもあります。  写真で見るスウェーデンのデイケアセンター  まずは、廊下。ここにもありました。アッカ・プラッタという乗り物。詳しく知りたい方は、 「アッカ・プラッタという乗り物」 参照、こんな感じで楽しく作ってありました。     止まって、ボールで遊んだりできます。ボタンを押すと、牛さんがダンスします。こんな感じのがいくつかありました。 廊下のあるコーナー。ちょ...

アッカ・プラッタ Akka-Plattaというスウェーデンの車椅子で乗れる乗り物

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 この投稿は、旧ブログの2011年9月16日のものを更新して、再投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著「 医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム 」を刊行。是非ご一読を😊  今日は、この乗り物「アッカ・プラッタ」をご紹介します。旧ブログで、複数の方からご連絡をいただき、おそらく日本でも使用している発達支援センターなどがあると思います。残念ながら、そうしていただいた方とその後連絡が取れていないので気になるのですが、もしも、この投稿を読まれた方で、「見たよ、知っているよ」という方、ご一報くださると嬉しいです。  「 Akka-Platta アッカ・プラッタ というのはなんだ?」と思われた方は、簡単に説明すると、車椅子に乗っている子どもたちが自分の意思で自由に動くことができる機械という感じの乗り物です。どこにでも自由にいけるのではなく、床に張ってある黒いテープを読み取り、そこを自由に動けます。今は「アッカ・スマート(AKKA Smart)というものに進化しています。スウェーデンでは、知る人ぞ知る有名な乗り物です。 こちらが、最新型の 「AKKA Smart アッカ・スマート」です。会社のホームページは、こちらから。 写真のとおり、ただの平たい板に車輪が付いており、タッチボタンもしくは、ジョイスティックで動かすことができ、床に張り巡らされた黒いテープに沿って動くのです。この平たい板の上に車椅子などをしっかりと固定することにより、子どもたちは、自分でタッチボタン・ジョイステックを押して動くことができます。 この様子を見たい方は、 販売会社のホームページから、いろんなビデオ が見れます。この乗り物、すごいのです。たとえば、視覚、聴覚、触覚などに関するものをいろんな形でこの乗り物が通る部分に準備して、しかけておくと、子どもが好きな場所に自分で立ち止まって遊んだり、触ってみたりすることができます。そうした中で、子どもの自主性を養え、その子の興味関心が分かり、コミュニケーションの基礎を教えていくことができます。そんなこと、という、そこの方、これがなかなか難しいんです。重度の障害児で、車椅子に乗っており(車椅子に乗っていない子ども場合は、直接アッカ・プラッタに座ってもよい)自主的に何かするというのが難し...

スウェーデンの学童保育って、どう?!

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  この投稿は、2018年7月7日のものを更新して、再投稿しています。    2022年7月16日に、 初の単著「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」 を刊行。是非ご一読を😊  スウェーデンの学童保育の紹介をします。主な内容は、 スウェーデンの学童保育の名称 スウェーデンの学童には、何歳から入れる? スウェーデンの学童保育、有料、無料? 特別支援学校にも学童はあるの? 学童の時間はどうなっている? 学童で働く人って、だれ? 学童保育のカリキュラム? 学童保育の教員免許 スウェーデンの学童保育の名称  スウェーデンの学童保育は 「Fritids、Fritidshem」 と呼ばれ、発音は「フリーティース、フリーティスヘム」となります。スウェーデン語の意味は「自由な時間」みたいな意味なので、「余暇、学校がない自由時間の時の家」みたいな感じになります。 スウェーデンの学童には、何歳から入れる?  スウェーデンの学童保育は、義務教育になるとは入れます。義務教育は6歳からはじまるので、それまでは、就学前学校(日本の幼稚園・保育園などにあたる)に通い、基礎学校と呼ばれる小学校に入学すると、希望すれば学童に入れます。夏休みが終わる直前、新学期が始まる前の場合が多いように思いますが、6歳で初めて学校にやってくる子ども向けの学童の受入日があり、多くの新入生がその日にやってきて、学童に通い始めます。対象年齢は、12歳までになります。 スウェーデンの学童は有料?無料?   スウェーデンの学童保育は、有料です。各基礎自治体が定めた「最高額で払う金額」が決まっており、収入に応じて、利用料を払います。各自治体によって多少差がありますが、支払うとしても最高で日本円2万円くらいが一般的なようです。収入がない、低い場合は、支払いは生じません。 特別支援学校にも学童はあるの?  特別支援学校にも学童保育があります。基礎学校同様に学校内にあり、学校の規模によりますが、基礎学校とは別のチームで運営している場合が多いです。同じ学校内にあるので、子どもの人数が減る時間や特別な日の学童では、合同という場合もよくあります。特別支援学校の学童は、学童保育の対象年齢に当たらない児童生徒もいて、その場合は、異なる社会福祉法によって、学童を利用します。...

スウェーデンの性教育の歴史とは

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 今日は、 スウェーデンの性教育の歴史 を振り返ります。 背景 性教育の名称変更 性教育の歴史 についてみていきます。 1.背景  スウェーデンの義務教育のカリキュラムが、今年の7月1日より改訂されました。今回の改定には、いろいろポイントがありますが、中でも注目されるのが性教育。私も春学期は新カリキュラムの内容についての研修、他の学校の先生との話し合いがありました。夏の休暇中に、今一度、学校庁のサイトなどから勉強し直しています。ブログでは、アウトプットの意味もかねて、少しずつ紹介をしていきます。その第1弾が性教育です。 2.性教育の名称変更 性教育 と書きましたが、今回の改訂で、これまで 「Sex och samlevnad(セックスと共に生きる)」 と言われていたのが、 「 Sexualitet, samtycke och relationer(セクシャリティー、同意と関係) 」 に変わりました。この名称の変更を読んでいただくとわかるように、時代の変化に合わせて、セックスを教える性教育から、多様な性、同意の意味、そして、互いの関係などを教えるというものに変わりました。 3.性教育の歴史 だいぶ前に教員組合(Läraren nr 9-2021) の雑誌に、性教育特集が載っていたので、その中の歴史の部分を紹介していきます。この特集もとても勉強になったので、少しずつ紹介できればと思います。時は遡り、1778年より始まっています。 1778年:未婚の女性が匿名で出産できるようになる。それまでスウェーデンでは、父親の名前を言わなければならなかったが、これにより、助産師が父親の名前を聞くことが禁止される。 (1842年:国民学校が設立し、学校教育が始まる) 1897年:スウェーデン初の女医による「性の衛生」の講義が教員養成で行われる。 1908年:スウェーデン国会で「性教育者(性に関する教育者)」の名前が使われる。 1910年:避妊薬の情報を禁止する「避妊薬法」制定 1918年:性感染症に関する知識を広める必要性があるのではと、1921年に出された性教育の提案にも盛り込まれる。 (1921年:女性に選挙権が与えられる。) 1933年: RFSU(Riksförbundet för sexuell upplysning スウェーデン性協会) ができる。強制不妊法が制定...

「年齢には権利がある!」知的障害者が年を重ねていく人生について学べるサイト

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  昨日 「スウェーデンの高齢の障害者のプロジェクト:高齢者の良い生活 知的障害者の活動と住居」 について書きました。障害があるなしに関わらず、子どもや若いうちは、「 死 」というものがあり、「 いつかそれは自分にも、親にも誰にでもやってくる 」ということは、あまり実感したり、話したりすることはないかもしれません。それこそ、昔のように、祖父母などと暮らしていれば、順番に年を取っていく姿を見て、誰かの死を目の当たりにする経験を、自然に体験、経験したかもしれません。しかしながら、現在のように、核家族が一般化すると「葬式には出たけど、それが何なのか、死とは」というところまでは考えないかもしれません。障害があると、周囲は、「 わからないかもしれない、わからないだろう 」と、さらにオブラートに包んでしまうかもしれません。それでも、誰にでも、平等に、死は訪れますし、誰もが、少しずつ年老いていきます。そんな「死」や「年を重ねていく人生」について、障害がある方が学ぶことができるサイトが、スウェーデンにあります。 「Åldern har sin rätt: 年齢には権利がある!(スウェーデン語サイト)」  上記のサイトは、障害がある人向けのサイトで、このほかに、登録制で、障害者に関わる施設, グループホームやデイケアセンターの職員など向けの学習サイトもあります。 内容は、5つに分かれており、以下の内容を学ぶことができます。 参加すること 年を取ること 痛み 認知症 仕事 生活スタイルと健康 失うこと、悲しみと死 終末期のケア 良い例 上記の内容を、映像や写真、インタビュー映像などで学び、質問があるので、問いかけながら、グループで学ぶことができるように構成されています。最後にはテストもあるそうで、突破すると賞状がもらえます。 サイトも大変分かりやすいつくりになっており、 年齢について 仕事と余暇について 悲しみと失うことについて 認知症について 健康と生活スタイルについて の興味のあるところから始めることができ、途中でやめても、止めたところから始めることができます。こういうサイトを利用して、デイケアセンターやグループホームでみんなで学べるということはいいなあと思います。職員も学べるように、理解を深めることができるうように別でサイトが用意されているところもよいなあともいます。残念...

スウェーデンの高齢の障害者のプロジェクト「高齢者の良い生活 知的障害者の活動と住居」

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  スウェーデンでもあまり聞かないけれど、わたしがとても大事なと思っているのが、高齢になっていく障害者への支援制度の確立です。そこで、今日はこの問題に関して、スウェーデンで行われているプロジェクトをご紹介します。  スウェーデンでは、障害者は長生きをしてこなかったということで、こうした高齢化の問題が顕在化してきたのは、ここ10年ほどと聞きます。数年前から65歳になって、デイケアサービスセンターを退職した障害者の日常生活や、グループホームから老人ホームに移動させられたというような話がちらほら報道されるようになり、定年退職した65歳以上の高齢の障害者の日常生活の支援制度の確立が叫ばれてきました。  プロジェクトの名前は、 「Gott liv som äldre aktiviteter och boende för personer med IF  (高齢者の良い生活 知的障害者の活動と住居)」 (サイトはスウェーデン語になります。)  このプロジェクトは、2020年8月に始まり、3年のプロジェクトです。基金から援助を受けて、広域行政体や障害者団体、ダウン症協会や自閉症協会なども協力して、一緒に行っているプロジェクトです。プロジェクトの中心は、国内の4つのコミューンに、知的障害の高齢者のエキスパートグループを作り、そこで、様々な研修や活動を行うこととなっています。参加できる高齢者は、知的障害がある50歳以上の人です。  参加している高齢者の中で、 軽度の知的障害の方がインタビューを受けているビデオ を見て、その後いくつかの質問が擁してあり、それをもとに話し合うというのがあります。 そのビデオで話されている内容が、スウェーデンは短期間で今の福祉国家というのを創り上げたのだなあと思わされます。その方は、70歳なのですが、生まれてすぐに乳児院に入れられ、両親には会ったことがないと話されます。70年前は、スウェーデンは、そういう時代で、障害児者は、収容施設で育てられ生活をしていました。保護者が泣いて手放したという話もあれば、この方のように、親に抱かれることもなく、職員に育てられたという人もすくなくありません。20分ほどのインタビュー、大変興味深いのですが、65歳で職場であるデイケアセンターを引退してから、毎日テレビを見て過ごし、することがなかったと。その時のグループホーム...