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老人ホームで働く障害者たち

 あっという間に週末は終わりました。ほぼ通信で学んでいるのですが、課題の中に必ずといっていいほど、ネット上での討論が含まれます。私は、すぐに不明な点が聞けて、スウェーデン語のスペルを気にしなくていい、スカイプなどでの討論の方がいいのですが、みんな働いているし、時間を合わせることはできないので、掲示板みたいなのに書き込みます。教育学部の院生ともなると、皆さん言語に強い。。。書き込まれる意見も長い。。。出遅れると、一つのテーマに10以上の書き込みがあり、それを一つずつ読み、意見を書き込みます。何か思いつく時は、まだいいのですが、意味がわからなかったり、ふーんと思う程度だったり。。。課題図書を読みつつ、書き込みに追われる週末でした。と、まず、定番の愚痴です。  先日、興味深いドキュメンタリー番組が放送されていましたので、紹介を。スウェーデンの国営テレビが作成したもので、 「Drömjobbet、夢の仕事 」といいます。ストックホルム郊外にある老人ホームで軽度の知的障害を持った方達が働いている様子を映像にしたものです。スウェーデン語ですが、興味のある方は是非!  スウェーデンでは、障害を持った方達向けの就職支援も行われてはいるのですが、実際には多く人が、作業所やデイケアセンターのようなところで日中を過ごしています。特に中度、重度の人が就職をすることは大変困難であります。このドキュメンタリーでも働いていたのは、軽度の自閉症傾向が比較的見られない、障害者の方達です。しかしながら、老人ホームと作業所を兼ね合わせるという発想がとてもユニークです。老人ホームでは、人手不足や働きたい若者の現象、労働環境の悪化など多くの問題を抱えています。そんな老人ホームに障害を持った方達を労働力として投入し、(もちろん、障害者の方達につく職員がいます。)様々な仕事を分担しています。食事の下ごしらえをしたり、ゴミの仕分けをしたり、老人の方のお茶の世話をしたり、話し相手をしたり、ちょっとしたことだけど、障害を持っていても、時間とちょっとした支援があればできることがたくさんあります。そして、何よりも、障害を持った方達が、普通の人と同じような「普通の仕事」に付いているという実感を持っていることが素晴らしいのではと思いました。    障害を持った方達が、生き生きと働くことができる職場が増えてい...

カオスな学校

 あっという間に12月になりました。今学期も残り2週間半になり、普通のならホッとしていてもいい時期なのですが、今年は違います。職場である学校は大騒ぎで、カオスです。理由は、、、なんと、学校の一部の床下と壁に黒カビが繁殖しているということがわかり、小学校の6クラスと特別支援学校の1クラスが避難しなければならないという事態に。。。これまでも、うちの学校は、アレルギーを訴える先生が結構いて、私は、あんまりそういうのに敏感じゃないので感じないのですが、敏感な人は、建物の中で使えない部屋まで出てきていたのです。そのため、大規模な検査が行われ、今回の結果が出ました。  私が日常使っている教室は、他のところより少し遅く建てられたこともあり、あまり問題ないのですが、特別支援学校の1クラスが、高等部のすでに満杯の狭い教室に入り込み、どうやって学校運営をするか、話し合いが。。。小学校は、親が大騒ぎで、説明会も行われ、来週の半ばに避難することが決まり、子供達は遠足に出かけ、その間に全てを動かすことになっています。  どこまでブログで書いたか忘れたけど、今年の1月から雇われた新しい校長は、すでに辞めていて、代わりの校長が10月半ばにやってきたんですが、校長代理と教頭で、この非常事態に対応しており、てんてこ舞いです。  これだけだって十分なのに、次々と長期の病気休暇のアシスタントが出て、その数現在、4名。。。これに子供の看護だの風邪だとかで職員休むので、職場はすごいことになっています。ここまでくると、開き直りで、私は割と余裕があるのですが、毎日、同僚の1名は、パニクって、ぎゃあぎゃあ騒ぐので、それに付き合うのも大変です。そんなこんなのうちに、なんだか、私たち高等部も引っ越すかもしれないということで、春学期、一体どこで授業を行っているのか。でも、車椅子の生徒が多いので、リフトがないと授業ができません。そのため、きっとそんなに早く引越しにはならず、おそらく来年度からでしょうね。街の中心部に移動できるといいなあ、と同僚とワクワクして話しております。  私が一人で焦っているのは大学の課題で、1冊目の本の内容が難しく、解読するのに、通常の3倍ほどかかり、それでも、内容理解したかどうか怪しい。。。もう少し落ち着いて勉強できるといいのですが、なかなかそうもいかない毎日です。質問や問い...

批判だらけの政府の教員給与政策:Lärarlönelyftet

 秋休み中です。雪が少し降って、なんだか冬らしくてとてもいいと思うのは、勤務先が家から近く、車に乗らなくていいわたしだけで、多くのスウェーデン人たちは、大慌てで冬タイヤに変えています。同僚が、「このあたりは、スウェーデンでも冬タイヤにする必要がなかったんだよ」というので、「その車は、馬という動力を使っていたのか」と返すと、大笑いでしたが、本当にストックホルムあたりで冬タイヤを強制するようになったのは結構最近のことらしいです。  年度始めは毎年バタバタしますが、今年は校長が病気になり変わったり、他にも理由があって、ドタバタ感が満載でした。それでも、秋休みになると、山を超えた感じがします。書きたいことがいくつかあるのですが、とりあえず、批判だらけの政府の教員の給与政策について書こうと思います。 「 Lärarlönelyftet 」と呼ばれている政府の教員の給与政策、目的は、教員免許を持っているなど、ある一定の能力のある教員、幼稚園教諭、学童教員のお給料を上げるというもので、今年の7月に始まりました。一番の目的は、教員という職業のお給料をあげることで職業をより魅力のあるものとし、多くの人が教員になろうと思ってくれる、教員を続けようと思ってくれることと、学校の教育成果を伸ばすことにあります。この考えは悪くはなかったのですが、30億のお金を約6万人の先生にわける方法が、どうも問題だったようです。わたしにもこの情報は7月に開始されるということで、その頃にメールで「こんな人がもらえます」みたいな条件を書いた紙が送られてきました。結構な条件が書いてあり、例えば、教員免許を有することや週に何%以上生徒に授業をしていることなとが上がっていました。 この給与対策、ものすごく批判が集中していて、フェイスブックや教員情報メールでは、旬の話題といった感じ。もらえた人はいいけれど、もらえなかった人が不平等だと仕事を変えたり、職場を変えたり、教員やめたり。。。スウェーデンらしいのが、うちの職場では話題にならないこと。仲の良い先生とチラッと話すことはあっても、もらえなかった人がいることがわかっているので、あえて話題にしない。。。 何が問題かを整理していくと、 コミューンのトップが政府に申請してもらえるお金なので、スウェーデン中のコミューンで条件が違う。これにより、申請し...

ロボットにしたいわけではないが。。。

 1週間があっという間に過ぎていきます。今の学校に勤めてはや9年目です。いろんな生徒を見てきて、いろんな職員を見てきて思うのが、「こちらのいうことを聞くロボットを作成したいのだろうか」と。ブログといえども、日本語といえども、こうして書くのは少し気がひけるけど、特定の生徒というよりは、うちの学校でよくあるパターンということで、書きます。 時間割表どうりに動かず、一定の授業を受けたがらない。 これよくあります。時間割表には、例えば、体育と書いてあっても、体育館に行くのを嫌がり、行かせるのに実に時間がかかる。そうなると、最終的に先生がその授業をなくしてしまったりします。情報伝達には、生徒にあったものを用いているので、物や写真、絵記号で、体育や音楽ということを伝えます。もちろん文字で読めるこもいます。自閉の子どもで、写真で体育と伝えて、嫌がって走り回ったりすると、アシスタントから、「あの子は写真が分かっていない」というコメントをもらったりします。でも、私からすると、分かっているから、逃げるんだろうなあと思うのですが。 なんで参加したがらないのだろうかと考え、その子が参加できる形を探すことが重要であると思うのですが、そうならないことが多いです。簡単ではないことはわかるのですが。 大好きなことを上手に終わることができない。 あとは、プールなど、子供が大好きな授業で、行くのもプールに入るのも問題がないけど、活動を終えることができないという場合があります。プールが楽しくて終われない。よくあるパターンなんだけど、これもまた、最終的にその子の大好きなプールには行かないという判断になったりします。 好きなことだからこそ、その子が納得して活動を終わることができる方法を見つけてあげることが教育であり、活動を外して行くことばかりしていたら、その子ができる活動にものすごく限りができてしまいます。 で、自立を促すとか言って、カリキュラムにもあるし、色々やるわりには、私たちは、こっちの思い通りに動くロボットにしたいのだろうかと思ってしまいます。。。実際のところ、この子たちは、重い障害がありますので、他人の手を借りて一生生きていくことになります。そうすると、介護者や教育者など関わる人々が関わりやすい人になってもらうことは重要なのですが、障害ゆえに簡単ではありません。その...

個人アシスタントの削減傾向

 すっかり秋らしくなり、着々と冬に近づいている、こちらスウェーデン、ストックホルム。今日は、8章まで一気に読んでしまうつもりでしたが、眠気には勝てず、結局6章どまり。明日残り読みきらなくては。。。  先日の新聞に、一晩にして600時間の援助がなくなったという、個人アシスタントの削減に対する批判記事が載っていました。まず、個人アシスタントについて説明をすると、スウェーデン語では「Personlig assistans(パーショーンリグ・アシスタント)」と呼ばれる、パーソナルアシスタントのことで、障害を持った人に個人的に付き、その人の手となり足となり、援助をします。これは、LSSと呼ばれる「Lag om stöd och service till vissa funktionshindrade」という障害を持った人の支援援助の法律に基づいています。  ここ数年、この個人アシスタントを不正に利用している人が増えているという報道があったり、増え続ける難民や移民に対する援助の増加により、個人アシスタントが削減傾向にあるという話をよく聞きます。不正に利用している人がいるというのは事実で、時々ニュースになりますが、増え続ける難民の援助がこれにいかに関係しているかは、私にはわかりません。  新聞には、自閉症と知的障害を併せ持った兄弟の個人アシスタントの時間が削減されて、困ったとあります。記事によれば、2009年から新しい基準が適応されるようになり、基本的必要性が厳しく判断されるようになったとあります。自分でトイレに行けるかどうかとか、食事の介助とかの部分が、より一層厳しくなったようです。この兄弟は、歩けるようですが、一人はてんかん発作があるとありますし、自傷行為もあるようですので、目を離すことはできないのに、一気にアシスタントの時間が減ってしまい、理解に苦しむとあります。  私の働いている学校の生徒の中にも、個人アシスタントが付いている生徒が多くいます。働き始めた頃は、子供達が保健局に出向くというようなことはなかったのですが、ここ数年は、定期的に担当者との面談があり、生徒が保護者や後見人と一緒に面談に出向きます。自宅への訪問もあるようで、親さんによれば、結構長い時間の面談をずっと本人も一緒に行うということでした。実際に生徒にあって、その必要性をしっかりと理解しても...

生徒へのアンケート調査

 あっという間に9月も終わりに近づいています。昨日は、秋晴れのいい天気でしたが、今日は雨。ああ、秋だなという感じです。忙しいといえば、忙しく、この投稿、途中まで何回も書いては、また時間が経ってしまったと書きなおし、やっと書き終えた感じです。  今年は、受け持ちの生徒が5人で、そのうち4名が車椅子を利用している生徒です。去年よりも車椅子の生徒が増え、高等部の体の大きな生徒ということで、あちこち体が痛い感じが。。。本格的に筋トレしないと1年もたないかもしれないと思っている今日この頃です。    さて、今日の話題は、生徒へのアンケートについて。日本の学校にもあると思うのですが、スウェーデンの学校では、生徒にアンケートをとることがよくあります。公立の学校は、コミューンが一括して行っている場合が多く、生徒向けのアンケート、保護者向けのアンケートと行われます。私が働いているコミューンでは、決まった学年の保護者に向けて行われます。その結果をもとにして、学校教育の質と満足度を図ります。  こういったアンケートは、私が働いているような重度の障害を持った子どもたちの特別支援学校ではとても難しくて、生徒向けのアンケートは今まで行われてきませんでした。普通の小学校の生徒向けのアンケートに答えられる生徒は少なく、かといって、生徒数少なく、わざわざうちの生徒様にアンケートを作ってくれる様なことはなく、今に至って言います。  そんな現状をどうにかしようと、今年は、学級会のような授業があるのですが、その授業の議題の中に「楽しく学校生活が行われているか」というところがあり、そこで、生徒が答えた内容を書き留めておき、統計を取るということを思いつきました。生徒たちの答え方も3グループに分けました。グループは以下の通り。 グループ1:質問に自分で答えられる生徒 グループ2:質問に対する答え方に支援がいる生徒、コミュニケーションの仕方に支援がいる生徒 グループ3:現状では自分で質問に答えられないので、職員が代わりに答える 多くの生徒がグループ3になるのですが、毎日接している生徒なので、学校生活に問題がるようであれば、職員が気にかけているはずなので、職員が代わりに答えることが可能であると思います。それにこうしてでも、生徒一人一人の声を集めることは重要であると思います。  この...

外国で仕事をしていると実感する瞬間

 喜怒哀楽の激しかった新年度も徐々に落ち着きを取り戻したかと思いきや、アシスタントの一人が、車椅子の生徒が多い私のクラスでは腰が痛くてやっていけないと言い出し、数週間のうちにメンバー交代の予定。さすがに9年目にもなるとこんなこともへっちゃらになり、「はい、そうですか。」と言える自分を褒めてあげたい。  バタバタの毎日に嬉しいニュースが入ってきて、姉妹校の交流でうちの学校を訪問してくれた広島の学校の生徒さんが大学に受かったというメールが届きました。自分のことのように嬉しくなりました。スウェーデンに来てくれた時も、広島を訪れた時も、いろんな話をし、努力している姿に学ぶことが多くありました。このニュースとともに、姉妹校のプロジェクトが思い出されました。  今日が9月11日。アメリカのワールドトレードセンターのテロがあった日ですが、この日の数日前にスウェーデンに到着した私は、このニュースを知り合ったばかりの友人たちから聞いて信じることができずにいたことを思い出します。あれから、早15年。スウェーデンで働くようになってから、もう10年以上が経ちますが、ここに来て、久しぶりに外国で働いているんだと実感することが多々。。。  なんとなく、こちらでのアイデンティティを確立し、それとなく過ごせている時もあれば、そのアイデンディティに、自分の中ものものと外のものとのズレが生じ、「ここは、外国だなあ」と思わされる時があります。あんまり詳しく書けないけれど、ふと、思うんですよね。例えば、上司から頂いたアドバイスとか。面白いので書いてしまうと、働き始めた頃にもらったアドバイスが、 そんなに頻繁に「ごめんなさい」と言ってはいけない でした。深刻な感じじゃなく、アドバイスよーと。「förlåt」は言うべきじゃないと。確かに口から出る回数多いし、実際にはそんなに思ってないからね。 今回頂いた面白いアドバイスが、 あなたにしか言わないけど、もっとエゴイスティックになるのよ! でした。他の人には言えないけどと、念を押されましたが、どうなんだ、このアドバイス。。。ま、学ぶことの多い毎日です。  生徒の一人が、思わぬ変化を見せており、その対応を悩んでいます。毎年同じような感じになりそうでならないのが教師という仕事の醍醐味だと思い、頑張ろうと思います。  ...