2011年12月17日土曜日

スウェーデンの教育の弱点とその未来

長かった秋学期も来週の3日間で終わります。スウェーデンの特別支援学校の教員として働き出して4年目になり、今学期はかなり余裕がありました。振り返っても、子どもたちの成長や発達が目に見え、満足感があります。

 さて、今日は、スウェーデンの教育の弱点という、なんとも大きな題で少し書きたいと思います。
 ここ数年、叫ばれているスウェーデンの教育の崩壊、新聞で教育関係の記事を目にしない日のほうがめずらしいほど、教育の今後について叫ばれています。新しく報道され、大きく取り上げられたのが、私立の学校が多額の利益を上げていること。これについては、また別で詳しく書こうと思います。ここまで、いろいろ言われるのですし、実際に働いていても目にしているのですから、スウェーデンの教育に問題が多くあることは事実です。その中でも特に今のスウェーデンの教育の大きな弱点だと思う点が、やはり、

くじびきのようなもんだ

という点です。???と思った方、いると思います。詳しく書くと、

まず、生まれた時点で子どもたちはくじ引きを引いている感じです。
どんな親のもとにうまれたのか、
その親はスウェーデン人なのか、外国人なのか。
そして、お父さんお母さんは、大学卒なのか、高卒なのか、もしくは、学校を出ていないのか。

といった感じで、これに続き、
スウェーデンのどこの地域に住んでいるのか、
どんな幼稚園にいったのか、
どんな小学校にいって、どんな先生が担任になったのか。
どんな高校にいったのか。。。。。

といったくじ引きとでもいえるようなこれらの条件により、その後の自分の教育が変わり、能力がかわり、人生が変わってしまいます。


日本人からすると、そんなの当たり前と思われる方、いるかもしれません。でも、こちら、スウェーデンでは、この点に関して、ものすごく理念というか考えが深くあり、教育の考え方に、

どの子どもも、親の能力や経済力などにかかわらず、平等に最大限の能力を伸ばす権利がある

という考えがあり、これに基づき、教育は無償になっており、学校教育も評価なども含めて全国的に平等であるべきであるという思想、発想に基づいて教育が成り立ってきていました。国の教育には、その大きな無限の力があると考えられているのです。しかし、1994年に出された前のカリキュラムが、

あまりにも不透明で、分かりにくく、
政府が、その分かりにくいカリキュラムにもかかわらず、根本の考え方を適切に示してこなかった

ために、(他にももちろん多くの要因はありますが。)上記のように、受け持った教員の能力によって大きく変わり、親の能力によって大きく変わるというような教育になってしまいました。これは、特別支援教育にかぎっても同様です。こういった話は、日本で教員をしていても大なり小なり耳にした話ですが、日本のように、かなりかっちりと枠があると、それでもそれなりのラインは保っていきます。教えるのは、免許を持った教員だけですし、教科書も検定があるなど、それがよいかは別として、枠があります。スウェーデンでは、ひどい話をすれば、教員が教育課程を受けていなかったり、学校に大きさによっては、教科に差がでたり、枠組み自体が問題になっていることもあり、その上、カリキュラムがあまりにも分かりにくく、何をどう教えるのか、到達度はどうするのかなどがものすごくあいまいになってしまっていました。
この94年のカリキュラムや変革に関する研究などは徐々に出てきている模様です。私が思うに、この流れで、学校の選択自由化が入り、親や子どもは、自分に合う、よりよい学校を選択し学校を変えていったっために、よりいっそう格差が広がったのではないかと。

じゃあ、スウェーデンの94年のカリキュラムは何を目指したのか。おそらく、私が受ける印象では、子どもたちの責任能力を伸ばし、選択の自由を取り入れ、自分で考えて問題を解決していく力を養う教育を目指したのではないかと。もちろん、その根本には、民主主義の考えをいれて。
残念ながら、この目指した能力は、ピサの国際的なあの統計では、出てこないものです。こちらの先生方がいわれることに、あのピサで分かる、図れる能力には偏りがあり、悲惨なのは、その図れる能力をスウェーデンはおろそかにしたという事実があるのだろうと思われます。要するに、知識、図れる知識を子どもに入れることを怠ったのではないかと。

今、スウェーデンの教育は大きな転換期にきており、これらの教育の弱点などが調査研究され、新しい形を模索し、作り上げていく過渡期にあります。私は、今後のスウェーデンの教育は決して悪いものではないだろうと予測しています。今までスウェーデンが培ってきた力は、けっして無駄ではなく、今の転換期に、フィンランドの教育をめざしたり、中国の教育を目指したりするのではなく、第3のスウェーデンの教育を作り上げていけば、おそらく、10年15年後には、新たなスウェーデンモデルが誕生するのではないかと思います。

この私の予想があたったかどうか分かるのは、私が定年退職するころだろうけど、少し気になる点がたくさんあるので、これから、ひっそりと研究していこうかと思っているところです。

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