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スウェーデンの学校教育システム

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  もう何年も放置しておいた旧ブログの記事を読み直し、保存するものは保存し、消去するものは消去し、情報が古いものも多いので、これからリライトして、少しずつ再投稿していこうと思います。旧ブログをやっと消去できました。読み返し、基本的なこと、スウェーデンの学校教育システムについて書かれていないと気付いたので、今日はスウェーデンの学校教育システムの概要を書きます。 すっきりとしたスウェーデンの学校教育システム  スウェーデンの学校教育システムは、わかりやすく、すっきりとしています。大きく以下の5つにわけることができます。以下の図が、学校局が出している教育システムの図を私が訳したものになります。 就学前教育・幼児教育 義務教育と学童保育 高等教育 後期高等教育 成人教育 1.就学前教育・幼児教育  日本の幼稚園・保育園・こども園などに当たる就学前の教育機関として、「Förskola「フォースクーラ)」と呼ばれる「就学前学校」があります。スウェーデンは、幼保一元化を行っており、就学前の教育、幼児教育として、「教育と保育」、「Educare (エデュケアー)」を行っています。1歳から通うことができ、90%以上の子どもが通っています。民営、公立、共同体運営などに加えて、少人数の子どもを家庭で預かるというのもあります。 2.義務教育と学童保育  義務教育は、図の中央に5つの建物が並んでいるところになります。横に併設して学童保育があり、各学校に学童保育があります。義務教育の学校形態は4つあります。(就学前クラスは基礎学校に形態としては含まれます。)ホームスクールは認められていません。 就学前クラス:0学年と呼ばれる6歳児が通う6歳児教育を受けるクラス 基礎学校:日本の小中学校1年から9年 特別学校:聾・聾重複児が通う、手話とスウェーデン語で学ぶ学校 サーメ学校:先住民族サーメ族のサーメ語を学ぶことができる学校 基礎特別支援学校:日本の特別支援学校に当たる、知的障害がある生徒が通うことができる学校  義務教育は、就学前クラスの1年とその後の9年間で、合わせて10年です。これらのどの学校にも、12歳までの子どもを対象にした学童保育があります。スウェーデンでは、手話は一つの言語として1981年に認められています。特別支援学校への入学には、以下の4判定による知的障害の判定がないとは入...

スウェーデンと日本の特別支援学校の姉妹校プロジェクトを振り返って

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2022年7月16日に、初の単著 「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」 を刊行。是非ご一読を😊 この投稿は、旧ブログと現ブログの姉妹校プロジェクトの投稿をまとめて、再投稿しています。  私が最初に働いていたストックホルム郊外の公立特別支援学校は、日本の広島県東広島市の 西条特別支援学校 と姉妹校でした。プロジェクトは、2012年から2015年までの3年間、その後もやりとりが続いています。今回はそのプロジェクトについてです。 1.どうやって、スウェーデンと日本の特別支援学校が姉妹校になったの?  きっかけは、なんと、このブログだったんです。時は遡り10年前の2012年に、 このブログを読んで下さっていた方(二人も!)が、「日本の国立特別支援教育研究所」が現地調査員を探しているというメールをわざわざ下さりました。私は、その調査員には条件が合わず、ならなかったのですが、スウェーデンの特別支援教育に関しての情報提供をさせていただきました。その時に、特別支援教育研究所のほうに日本の特別支援学校から、 「海外での姉妹校を探してるので紹介してほしい」 と連絡があったのです。その時に「日本人が働いている支援学校ありますよ。」と、私の働いている学校と他何校かを紹介したのです。広島県は、県内の全ての公立高等学校が海外の学校と姉妹校を持つというプロジェクトを3年で立ち上げたところでした。日本人がいるならと、西条特別支援学校と私の学校の姉妹校の話がトントン拍子で進みました。これが、2012年4月のことでした。懐かしい! 2.どうやって準備をすすめたの?  準備は、主に私が日本語でやりとりをして、進めました。調印式や本格的な交流は、夏休み明けの新年度からだったので、まずは、お互いの学校を知ることができるようにと、日本からDVDで学校の様子などが届き、同僚や生徒たちがそれを見て姉妹校プロジェクトが始まるんだという実感を持ってもらいました。この当時の職場には、音楽療法の先生、ICTの先生、理学療法士の先生が、各クラスの担任以外にいたので、主に彼女たちがこのプロジェクトの中心となって私といろいろと準備をしてくれました。 3.プロジェクトのスタートは?  2012年8月から始まった姉妹校プロジェクト。日本の西条特別支援学校から校長先生...

スウェーデンの障害者のデイケアセンター・就労施設施設・作業所②

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  この投稿は、旧ブログ2013年7月14日のものを更新して、再投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著 「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」 を刊行。是非ご一読を😊  先日「 スウェーデンの障害者のデイケアセンター・就労支援施設とは 」を投稿しました。同じような施設の投稿が、旧ブログにあったので、こちらにリライトして紹介します。  2013年に同僚たちと見学に行った、このデイケアセンターは、軽度、中度の成人の障害を持った方がたくさん働いていました。この施設は、移転して今も残っていますが、木工の部分は移転と共になくなってしまい、残念です。移転してからも、一度見学に行きました。場所は、市の中心部で駅のそばなので、前の片田舎より立地はよくなっていました。  通っている人々は、毎日出勤してくる人、週に数回来る人、決まった日に出勤する人と様々です。 外観はこんな感じ。田舎の広い敷地に平屋の建物が建っていました。 反対側は、庭。置いてあるベンチなどは、ここで作られたものがほとんどでした。 玄関から中に入ると、壁には、1日の大まかな流れが書かれており、その横に様々な新聞記事がはられていました。この作業所は、仕事のほかにクラブ活動ではないのですが、オペラや劇を毎年練習して発表しており、その様子が張られていました。   そして、広い休憩室がありました。 次の部屋は、更衣室でした。こちらもゆったりとした作りになっていました。写真は、男性用の更衣室の様子です。女性用の更衣室はもっといろいろ飾りがあって女の子という感じのする更衣室でした。ここで、作業着に着替えてから仕事に移ります。男性用更衣室の向かい側にあったのが、この部屋です。 こちらは、ゆっくりとするために作られている部屋で、マッサージも受けられます。前のデイケアセンターには、タクティールを受ける部屋があったのですが、マッサージ器があるところも多くあり、人気があるようです。 いよいよ仕事の様子を見ていきます。 広い作業所に入り、まずめについたのがこちら。一人一人の仕事の日程表です。それぞれの1日の仕事の流れが写真などを利用してとてもわかりやすく表示してあります。下に数多くの写真が丁寧に整理してあります。こういった写真での表示は自立...

文理閣出版「人権としての特別支援教育」の読書会に参加

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 この春に、文理閣から出版された、 「人権としての特別支援教育」 の読書会が昨日ハイブリット方式で開催されたので、私はオンラインで参加しました。この本の最後の「展望」に「スウェーデンのインクルーシブ教育」について寄稿をさせていただきました。読書会で考えたこと、この本の素晴らしいことをまとめたいと思います。   アマゾンのこの本 の解説には、以下のように書かれています。 「 子どもの発達と学習を保証する権利としての障害児教育、決して「特別」ではない特別支援教育のために編まれた、学生・教員・ボランティアに向けた新しいテキスト 」 この本は、 「人権」 を軸にして「特別支援教育」が関わる全ての部分を網羅した、入門書と言えるのではと思います。本の編著者である、近藤真理子さんが読書会の始めに、この本に対する思いをお話しくださいました。心に残ったことがたくさんあるのですが、 人は誰もが、唯一無二の存在であり、その人らしく、仲間の中で育っていく権利があり、 その能力に応じて等しく教育を受ける権利がある と。こうして読むと、おそらく多くの方は、そんな当たり前のこと、と思われるかもしれません。それでも、その当たり前のことが実際にはとても難しいことが多くあります。スウェーデンの学校法の中にも、これと同じことを保障した部分があります。 唯一無二の存在 かけがえのない存在 全ての人に同じ価値がある ということは、簡単なようで、なかなか子どもに伝えることができないし、実感して生活できる人も少ないように思います。今日読んでいた本に、 友達と仲間の違い が書かれていました。スウェーデンの社会の教科書の中にあった、社会で生きる理由の一つが、この人とのつながりでした。私たちは、人と共に、仲間や友達、同級生やいろんな人々の中で学び、育っていきます。この本は、人権を軸にして、教育と共にある特別支援教育を書いた本であり、インクルーシブ教育の礎を語る本でもあると思います。実践が必ず書かれているのですが、そこには、子どもと向き合い、人権という視点から、振り返る教員や大人の姿、そこで苦しみ悩む子供と大人の姿があり、涙が出る場面も多くあります。 目次より はじめに ~この本の特徴 特別ではない特別支援教育~ (I) 特別支援教育の理念と課題 1-1 特別支援教育がめざすもの、そして特別支援教育に求められているもの...

スウェーデンの障害者のデイケアセンター・就労支援施設・作業所①

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   この投稿は、旧ブログの2014年11月1日のものを更新して、再投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著「 医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」 を刊行。是非ご一読を😊  もうずっと放置状態にある旧ブログをリライトしつつ、こちらに移行するという気長な作業をしています。その中から、スウェーデンのデイケアセンター(日本の就労支援施設B型、もしくは生活介護型に当たると思います)をご紹介します。今日の内容は、2点です。 どこのどんなデイケアセンター? 写真でみるスウェーデンのデイケアセンター どこのどんなスウェーデンのデイケアセンター?  私は、スウェーデンの特別支援学校の小学部から高等部まですべてで働いた経験があります。高等部は、6年働いていたので、その間にかなりの数の生徒の卒後の施設を見学にいったり、会議で訪れたりしました。その中の一つを写真になります。この施設は、見学に行ったデイケア施設の様子を紹介します。ここは、今は移転していて、現状のままでは残っていません。私は、その当時高等部では、重度重複障害の生徒を教えていたので、このデイケアセンターも、重度の障害がある成人のための施設になります。  このセンターは、その昔の作業所というよりは、デイケアセンターという感じで、スウェーデン語では、 「Daglig Varksamhet(ダーグリィギ・ヴァルクサムヘート)」 といいます。この場合の多くは、自閉症や発達障害系の障害を持った方たちがLSSと呼ばれる「Lagen om stöd och service till vissa funktionshindrade(特定障がい者のための支援とサービス法)」に基づいて、運営されている施設になります。コミューンが運営している場合もあれば、民間が運営しているものもあります。  写真で見るスウェーデンのデイケアセンター  まずは、廊下。ここにもありました。アッカ・プラッタという乗り物。詳しく知りたい方は、 「アッカ・プラッタという乗り物」 参照、こんな感じで楽しく作ってありました。     止まって、ボールで遊んだりできます。ボタンを押すと、牛さんがダンスします。こんな感じのがいくつかありました。 廊下のあるコーナー。ちょ...

アッカ・プラッタ Akka-Plattaというスウェーデンの車椅子で乗れる乗り物

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 この投稿は、旧ブログの2011年9月16日のものを更新して、再投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著「 医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム 」を刊行。是非ご一読を😊  今日は、この乗り物「アッカ・プラッタ」をご紹介します。旧ブログで、複数の方からご連絡をいただき、おそらく日本でも使用している発達支援センターなどがあると思います。残念ながら、そうしていただいた方とその後連絡が取れていないので気になるのですが、もしも、この投稿を読まれた方で、「見たよ、知っているよ」という方、ご一報くださると嬉しいです。  「 Akka-Platta アッカ・プラッタ というのはなんだ?」と思われた方は、簡単に説明すると、車椅子に乗っている子どもたちが自分の意思で自由に動くことができる機械という感じの乗り物です。どこにでも自由にいけるのではなく、床に張ってある黒いテープを読み取り、そこを自由に動けます。今は「アッカ・スマート(AKKA Smart)というものに進化しています。スウェーデンでは、知る人ぞ知る有名な乗り物です。 こちらが、最新型の 「AKKA Smart アッカ・スマート」です。会社のホームページは、こちらから。 写真のとおり、ただの平たい板に車輪が付いており、タッチボタンもしくは、ジョイスティックで動かすことができ、床に張り巡らされた黒いテープに沿って動くのです。この平たい板の上に車椅子などをしっかりと固定することにより、子どもたちは、自分でタッチボタン・ジョイステックを押して動くことができます。 この様子を見たい方は、 販売会社のホームページから、いろんなビデオ が見れます。この乗り物、すごいのです。たとえば、視覚、聴覚、触覚などに関するものをいろんな形でこの乗り物が通る部分に準備して、しかけておくと、子どもが好きな場所に自分で立ち止まって遊んだり、触ってみたりすることができます。そうした中で、子どもの自主性を養え、その子の興味関心が分かり、コミュニケーションの基礎を教えていくことができます。そんなこと、という、そこの方、これがなかなか難しいんです。重度の障害児で、車椅子に乗っており(車椅子に乗っていない子ども場合は、直接アッカ・プラッタに座ってもよい)自主的に何かするというのが難し...

スウェーデンの学童保育って、どう?!

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  この投稿は、2018年7月7日のものを更新して、再投稿しています。    2022年7月16日に、 初の単著「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」 を刊行。是非ご一読を😊  スウェーデンの学童保育の紹介をします。主な内容は、 スウェーデンの学童保育の名称 スウェーデンの学童には、何歳から入れる? スウェーデンの学童保育、有料、無料? 特別支援学校にも学童はあるの? 学童の時間はどうなっている? 学童で働く人って、だれ? 学童保育のカリキュラム? 学童保育の教員免許 スウェーデンの学童保育の名称  スウェーデンの学童保育は 「Fritids、Fritidshem」 と呼ばれ、発音は「フリーティース、フリーティスヘム」となります。スウェーデン語の意味は「自由な時間」みたいな意味なので、「余暇、学校がない自由時間の時の家」みたいな感じになります。 スウェーデンの学童には、何歳から入れる?  スウェーデンの学童保育は、義務教育になるとは入れます。義務教育は6歳からはじまるので、それまでは、就学前学校(日本の幼稚園・保育園などにあたる)に通い、基礎学校と呼ばれる小学校に入学すると、希望すれば学童に入れます。夏休みが終わる直前、新学期が始まる前の場合が多いように思いますが、6歳で初めて学校にやってくる子ども向けの学童の受入日があり、多くの新入生がその日にやってきて、学童に通い始めます。対象年齢は、12歳までになります。 スウェーデンの学童は有料?無料?   スウェーデンの学童保育は、有料です。各基礎自治体が定めた「最高額で払う金額」が決まっており、収入に応じて、利用料を払います。各自治体によって多少差がありますが、支払うとしても最高で日本円2万円くらいが一般的なようです。収入がない、低い場合は、支払いは生じません。 特別支援学校にも学童はあるの?  特別支援学校にも学童保育があります。基礎学校同様に学校内にあり、学校の規模によりますが、基礎学校とは別のチームで運営している場合が多いです。同じ学校内にあるので、子どもの人数が減る時間や特別な日の学童では、合同という場合もよくあります。特別支援学校の学童は、学童保育の対象年齢に当たらない児童生徒もいて、その場合は、異なる社会福祉法によって、学童を利用します。...