投稿

2023の投稿を表示しています

ストックホルム市の教育予算削減 その2

  前回に続き、2023年回顧録ということで、ストックホルム市の教育予算削減についての投稿になります。 その1はこちらを 。 3. 組合を含む会議による人員削減プロセス  その1の2で書いたのですが、教育予算削減の関してのリスク分析が行われ、それと並行して、かなりのスピードで行われたのが、人員削減を法律や決まりにのっとり、できる限り透明に行うために、普段は月1の関連会議が頻繁に行われました。といっても、私はこの会議には出席しないので、はっきりと内容などを書くことはできないのですが、この会議は、職員側の代表として、組合の係りの職員が出席します。うちの学校の場合、教員は教員組合で、この当時は2組あり、それに加えてアシスタントなどは所属する組合があり、その代表が出席します。そこに、ほかの組合の代表がいれば入り、校長や副校長、経営担当者などが、会議を行っていました。多いときは週1くらいで行っていたような記憶があります。もしくは、長い会議を行っていたような気がします。この会議で、雇用する側されている側双方の理解を図り、できる限り迅速に行うことで、削減される人は、ストックホルム市内での配置換えを申請し、秋学期からほかの学校や職に移ってもらうということになります。  この過程で私たち全職員が行ったのは、ストックホルム市の職員としてどこで何年働いたかという確認書類にサインをすることです。この雇用年数の短い人から削減対象になるので、間違いがないようにという配慮です。生徒数650人ほど、職員は、100人ほどいるので、作業としてはそれなりに時間がかかるものでもあります。そして、削減対象の人が決まり、この最終決定の会議が行われたのが、4月頭だったと思います。 4.リスク分析会議  私たち全職員が行ったのが、リスク分析会議です。スウェーデンの学校では、1年に1回職員アンケート調査が行われ、その結果に基づいて、職場の改善プランを立てます。これに基づいて作られた改善プランに加えて、今回の職員削減、教育予算削減がどのようなリスクをもたらすか、影響を与えるかを書いていきます。それ用の用紙があり、項目に従い、リスクのあるなし、その程度などを話し合い書きます。これを各グループでしました。私は、支援学校の先生たち、9人と行いました。今振り返ると、あの会議は、生徒のアシスタントとも行うべき...

ストックホルム市の教育予算削減 その1

イメージ
 私はストックホルム市の教員、公務員をしています。スウェーデンの公教育に関わって、もうすぐ20年になろうとしていることに驚きを隠せません。日本の方と話が合わないことがあるのも当然だと思いながら、昨日の今年の振り返りで、さらに振り返っておかなくてはと思ったのが、教育予算削減です。せっかく、現場で働いているのだし、このブログ、もう読んでいる人はほとんどいないのだし、現場から見た事実を書こうと思う。表面的な情報は、ネットでいくらでも見つけられる時代だし。ということで、時系列に、記憶をたどって、スウェーデン、首都ストックホルム市の教育予算削減の影響を振り返ります。 1.2023年1月、教育予算削減の第一報が入る  ちょうど1年前になりますね。年が明けるとスウェーデンでは春学期が始まります。学期初めの初日は職員の研修日です。その日は私は振り返ると、ヘッドティーチャーとして、今やっている全国の支援学校との共同プロジェクトのスタートを切る会議を前の副校長と計画し、2時間の研修会議を受け持っていました。というのは、良い方の記憶で、このころから、風向きが怪しくなってきていました。スウェーデンの学校での予算削減の影響を受けるのは、今回が初めてではなく、前に勤務していたストックホルム郊外の小さな市や少しだけ勤務した市でも働いていた10か月の間、ずっといかに予算削減に対応するかという会議でした。このあたりが、日本でもそうなのかなと、この夏の帰国で日本の先生と議論したいところですが、お金が削減されるという予算計上が出されると、市から校長会などを通じて校長に連絡が入り、そん後の学校の会議は、この内容でほぼ一色になります。 2.2023年2月から始まった、教育予算削減に関するリスク分析  記憶が正しければ、うちの学校の定例水曜日大会議(学校中の先生が集まって30分の会議がある)にて、詳しい説明を受けました。どのくらいの削減で、どう影響をうけるのかなど。記憶しているユニークな説明は以下の通り。 ストックホルム市の予算が厳しいのは世界情勢や物価高もあるが、スルッセンの工事にお金が予想以上にかかってしまったこと。もちろん、この理由は公では言われませんので、冗談半分でいわれる事実であると私は認識していますが、時折出てきます、この話。。。スルッセンとは、ストックホルムの旧市街とその隣の島を結ぶ地域で、数年...

2023年を振り返り

イメージ
  2023年も残り数日となりました。AIに年の瀬に書くとよいブログのテーマを提案してくださいと頼んだら、ちゃんと素晴らしい候補をいくつか挙げてくれ、その中から、今年の出来事や成果を振り返り、新しい年に向けての抱負や目標を語る記事を書きたいと思います。今年は、年初めから波乱万丈で、私のSNSをフォローしてくださっていた方は、ご存じの通り、ツイッターは閉鎖し、Youtubuチャンネルは休止、このブログは不定期更新、かろうじてインスタグラムが更新され、連動してフェイスブック更新という感じで、アウトプットが少なめの年でした。そんな2023年の締めくくりにまとめる今年の出来事は以下のようになるかなと思います。 1.特別支援教育士(Specialpedagog)資格習得  2023年の大きな出来事は、やはりこちらになるかと思います。長らくとるか取らないかと、うだうだしていた資格をついに取り終えました。一区切りついた感はありますし、最後の論文書くのが大変でした。二人で書く予定が、途中から一人で書くことになり、書き始めたと思ったら、義理の父が心臓発作で倒れ、その後亡くなりまして、もうあきらめようかなと思ったのですが、何とか書き終えて卒業したという、こうして振り返ると、なんてことない感じですが、実際には大変でした。  資格習得をして何か変わったかというと、何も変わっていません。この資格で働ける仕事に転職しようというプランや起業しようという考えはありますが、今受け持っている生徒たちを卒業させたいのと、学校でかかわっているプロジェクトは終わらせたいという思いもあり、現状維持しています。特別支援学校で働いているので、学んだ知識は日々に生かしつつ、今後を考えていこうと思っています。 2.世界情勢と財政削減の影響を深く受けた1年  2023年は、世界情勢の不安定さ、それにより財政削減の影響を深く受けた年であったと振り返ります。職場は、ストックホルム市の予算により、年明け早々に人員削減の影響を深く受け、それに伴う会議や対策に追われました。夏前には、かなりの数の職員が削減され、その余波を秋学期は深く受け、仕事量も心労も多かったと振り返ります。こうした世界情勢などの影響は、ニュースなどを通じて自分が思う以上に、心身に影響を与えているのだと実感した1年でした。 3.今後の人生を深く考えた1年...

2022年のスウェーデンのPISA学習到達度調査の結果考察

イメージ
  今学期も残り僅かになり、私も疲れを感じるノーベル章授賞式の日曜日です。今週は、2022年のPISA学習到達度調査の結果が公開され、スウェーデンの教育界では大きなニュースとなっています。せっかくスウェーデン語もわかりますし、学校庁のメディア向け報告や様々なニュースをまとめて考察してみようと思います。 1. 学校庁がまとめたPISAの結果  スウェーデンの学校庁がメディアを集めてPISAの学習到達度調査の結果を発表したのが火曜日でした。そこで発表されたのが以下の結果です。 スウェーデンの15歳児の数学的リテラシーと読解リテラシーが低下した。科学的リテラシーは前回と同位。この結果は、多くの他国と同様の傾向にある。 数学的リテラシーと読解リテラシーは、2012年の「PISAショック」の時と同じレベルまで低下した。 スウェーデンの15歳児の数学的リテラシー、読解リテラシーと科学リテラシーの結果は、OECD平均を上回った。 スウェーデンの学校教育の均等性は悪化した。OECDレベルではあるが、スカンジナビア諸国に比べると劣化している。 順位を以下の表から見ると、数学的リテラシーは、日本が1位でスウェーデンは、18位です。読解リテラシーは、日本は2位で、スウェーデンは14位。科学的リテラシーは、日本は1位で、スウェーデンは17位です。スカンジナビア諸国を比べると、フィンランドとデンマークはスウェーデンより良く、ノルウェーとアイスランドはスウェーデンより悪いという結果になっています。 2.2012年のPISAショックの記憶  スウェーデンの2012年のPISAショックの記憶は私も思い出すことができるほど、大きなニュースでした。あの2012年並みまで、今回は結果が下がったということで、またまた、スウェーデンの教育界は揺れそうです。少し、2012年と比べて結果を見ていきます。  数学的リテラシーは上記の図にあるように、2012年にドーンと落ちた後回復傾向にあったのですが、今回またドーンと落ちました。  読解リテラシーも、同様の結果です。せっかく回復したのに、それがまた落ちたということですが、学校庁側はこれを新しいトレンドとかショックという風には言いたくないようで、そんな感じがいたるところで読み取れます。2012年のあの大騒ぎとその後の様々な対策を考えると、教育現場にいるものと...

スウェーデンの特別支援学校の教育も様々

 私は、現在スウェーデンストックホルム市の公立の基礎特別支援学校で勤務しています。これまでに、2つの基礎自治体の基礎特別支援学校で働いた経験があります。学校見学は、いくつも見てきているので、それなりに国内事情は知っているのではと思います。スウェーデンでも、学校によって教育の仕方や特色には違いがあり、それは、在籍している生徒のニーズに合わせてというのが、大きいように思います。今の学校で行われていない、前の学校で行われていた内容で思い出すのが、例えば、 「車いすダンス」 の授業。車椅子利用の生徒が多かったので、車いすダンスは、人気がありました。金曜日の最後の授業が車いすダンスだったときもあり、みんなでダンスを踊って終える1週間は、楽しかったなあと思いだします。生徒たちも笑顔がいっぱいで。  一番長く勤めていた学校は、まだ経済的に余裕があった時代で、ICTの先生が特別支援学校専任でいて、その人が行って カラオケ の授業もありました。衣装まで変えてノリノリでやっていたことを思い出します。ああいう授業もやっぱり特別な先生がいるからこそできるものという感じがします。  あとは、「アフリカ太鼓」の授業。どんなふうにたたいても楽しめるアフリカ太鼓を、職員でみんなで音楽博物館に学びに行って、授業に取り入れてと、思い出します。同僚たちと楽しんでいたなあと思います。  今の学校は、基礎学校と併設していて、その良さはありますが、経済的に一緒に運営されているので、たまに疑問に思うこともあるのが事実です。また、いつかそんなこともかければと思います。

世界障害者デーと車椅子と雪

イメージ
 今年のスウェーデンは、早々と雪が降り、ストックホルムのあたりも雪で真っ白です。11月は日照時間も少なく、薄暗い日が続くので、この雪の白さは心を和ませてくれます。しかしながら、困るのが、車椅子での移動です。   雪道って、本当に大変です。特に、こっちでは、滑り止めに土と砂利を混ぜたようなものをまくので、それが余計に車椅子の移動を困難にします。先週も、特別支援学校の高校のオープンハウスへ出かける予定でしたが、キャンセルし、再来週も特別支援学校の高校に行く予定なのですが、どうなることかと思っています。  今日は、国際障害者デーです。あまり注目されることがない日のように感じるのは私だけでしょうか。その歴史は、実は割と長く、1982年12月3日に国際連合総会において、「障碍者に関する世界行動計画」が採択されたことを記念して、1992年から毎年国際デートして12月3日に国際障害者デーを設けています。スウェーデンでは、年によっては、デモが行われたりとするのですが、今年は、そんな話も聞いていません。雪のために車いすでのデモが難しいためかなとか勝手に思っていますが、こうした国際デーに注目して、少しでも障碍者問題の理解や促進を行っていくことは大変重要であると思います。   美しい雪景色と太陽です。

スウェーデンの知的障害児の研究 インクルーシブ教育とは何か?

イメージ
  お久しぶりです。秋学期の折り返し地点に到着し、来週は秋休みです。教員は一般的には、秋休みは月曜日から水曜日まで働きます。私は、ここまで、とても労働力が多かったので、副校長が月曜日に特別にお休みをとるようにと、火曜日と水曜日の勤務になります。スウェーデンの教員は、この秋休みに到達することが大きな目標というか、ここまでこれば、今年度もなんとか行けるという感じがするという感じです。秋休み後は、個人面談をやり終えると、あとはクリスマス休暇に向けて、成績付けなどのラストスパートに入ります。おっと、話がずれました。  今日は、スウェーデンの知的障害児の研究を振り返りながら、知的障害児にとってインクルーシブ教育とはと、少し考えてみたいと思います。今週の火曜日に、こちらの知的障害者団体が行ったオンラインの会を聞いての感想と振り返りになります。あと、うちの学校は、今年度より、学童の大きな改革をして、支援学校と基礎学校の学童を一緒にしたので、その中で思う、インクルーシブ教育の在り方を今一度考えてみたいと思いました。 1.スウェーデンの知的障害児教育の歴史を振り返る  スウェーデンの知的障害児たちは、歴史的に長く「分離教育」をされてきました。優性思想も強かったスウェーデン、知的障害児・者に対する差別や迫害の黒歴史は、多くあります。年月でいえば、約150年ほど分離教育をしており、今の学校システムも、分離教育であるというのが、スウェーデンの認識です。知的障害児の中でも、特に中重度で、「学ぶことができない」とされてきた子供たちは、「医療」の一環として、長く広域行政体によって管理運営がされてきました(訳100年)。  そんな歴史を変えたのが、1968年。この年に、やっとスウェーデンのすべての子どもたちの就学の権利が確立されました。日本では1979年がよく言われますので、スウェーデンは、それよりも11年早いのですが、決してすごく早かったとか、ずっと教育を受ける権利が保障されていたということではないのです。やっと、すべての子どもが教育を受けられるようになったのですが、その教育は、医療が管轄していたこともあり、福祉と医療が色濃くでた教育でした。そして、1990年代になって、教育が基礎自治体に移ります。これもとても大きな背景であり、その影響は、今でも強く受けています。私は、「広域行政体(医療...

スウェーデンの特別支援教育とインクルーシブ教育を繋ぐ「生徒の健康チーム」制度 オンラインの会

イメージ
 今日は、第16回日本語教育と特別支援教育を繋ぐ会のお知らせです。7月に第1回として「スウェーデンにおける外国ルーツの子どもの支援1 新規入国の子どもへの支援」について話をさせていただきました。2回目は、新規入国ではない、外国ルーツの子どもの支援がどうなっているのかを、特別支援教育のシステムを含めてお話しさせていただきます。興味がある方は、是非ご参加ください。申し込みなどは、以下のPeatexのサイトからになります。詳しい内容もそちらをご覧ください。 スウェーデンにおける外国ルーツの子どもの支援②「特別支援教育とインクルーシブ教育をつなぐ「生徒の健康チーム」制度」

AAC:補助代替コミュニケーションについて学ぶ会のお知らせ 限定5名無料オンライン開催

イメージ
  今日は、オンラインの会のお知らせです。  8月11日金曜日、日本時間の18時30分より20時までの予定でオンラインで開催します。このブログを読んでくださる方の中で、参加してみたいなという方はご連絡ください。  私を入れて、最高7名の少人数の会で、参加される方は、自己紹介と顔出しができる方に限らせていただきます。特に後半部分の対話の部分を大切にしたいと思っています。質問などありましたら、お気軽にお問い合わせください。

個人アシスタントが付くスウェーデンの障害者

イメージ
 スウェーデンには、 「個人のアシスタント(Personlg Assistant)」 という制度があります。今日はこの個人アシスタントについての旧ブログの記事をリライトします。個人アシスタントは、身の回りの介助が必要な障害がある方が利用できる制度で、子どもでも大人でもその必要に応じてつきます。どんな障害でも着くというわけではないですし、どのくらい(何時間くらい)つくかなども、個人によって大きく変わります。日本からの問い合わせが時々あるスウェーデンの制度です。 1.LSSという法律  スウェーデンには、 Lagen om stöd och service till vissa funktionshindrade (LSS) という法律があります。その頭文字をとって通称LSSと呼ばれ、現在の福祉国家スウェーデンの福祉制度を代表する法律です。個人アシスタントの制度も、この法律に基づいています。この制度は、1993年にできたもので、障害を持った人々が様々な援助や支援、サービスを受ける権利を書き記したものです。この法律に基づき、各市にある社会福祉局が中心とする、LSS担当者(社会福祉士やそれに類似した資格を持った人がなっていることが多い)がその内容を見定めていき、障害者に対する様々なサービスが決定していきます。 2.LSSで受けられる福祉支援  個人アシスタントの福祉支援以外にLSSで受けられる福祉支援には、 施設への入居、ショートスティ利用、障害者用のタクシー利用(移動支援)、付添人の利用などがあります。 障害がある人とその家族がLSS担当者との面談を経て、本人の希望やそのニーズに応じたものが提供されます。 3.個人アシスタントの削減傾向  個人アシスタントは、90年代に行われたスウェーデンの福祉改革の中でも先進的なもので、大変画期的なものでした。多くの肢体不自由の障害がある人々にとって、この制度を利用することによって、同年代の人々と同じような暮らしを可能としました。しかしながら、当初の想像よりも多くの人々がこの制度を利用するようになり、また、制度を悪用する人も出るようになり、だんだんと財政的に制度を維持していくことが難しくなり始めました。そのため、数年前より、個人アシスタントの申請の際の審査が厳しくなったり、時間数が削減されるようになりました。 このブログの中でも、201...

生徒の意見から学校名称が変わったスウェーデンの特別支援学校

イメージ
  今日は2023年7月2日。スウェーデンの特別支援教育の歴史において、記念すべき日です。今日からスウェーデンの特別支援学校の学校名称が変更になります。 今までの名称:Grundsärskolan 今日からの名称:Anpassade grundskolan になります。 1.これまでの名称は?  スウェーデン語を開設すると、Grundsärskolanの「Grund」は「基礎」で、「skolan」は学校になります。いわゆる小中学校は、この二つの文字をとって、「Grundskolan(基礎学校)」と呼ばれます。特別支援学校はこの間にGrundsärskolanという言葉が入りました。この「sär」が、差別的で、否定的なイメージが強い言葉とされてきており、スウェーデン語での響きと意味がとても悪かったのです。その昔は、障害のある子どもや人々のことを「馬鹿者」と呼んでいた国でもあるので、こうした差別的な意味の言葉が使われている歴史を恥じ、改めて来た歴史があります。この 「sär」 も「別にされた、変わった」というような意味合いで、特別支援学校に通う生徒のこと 「särbarn」 と呼んで虐める、さげすむというのも一般的だったのです。こうしたことから、自分が特別支援学校に通っていることを話したがらない、言わない生徒も多くいます。 2.新しい名称は?  新しい名称は、 Anpassade grundskolan といいます。「 grundskolan」は、基礎学校という意味で、これまでと同じです。これに「 Anpassade 」という「対応した」という言葉が新たに付けられました。今回の名称変更に伴い、全ての特別支援教育系の学校の名前が変更になりました。 Grundsärskolan → Anpassade grundskolan (前出) Gymnasiesärskolan → Anpassade gymnasieskolan (対応した高校) Komvux som särskild utbildning på grundläggande nivå och komvux som särskild utbildning på gymnasial nivå→ Komvux som anpassad utbildning på grundläggande nivå respe...

通常学級の中から特別支援教育を

イメージ
  時間に余裕がないとじっくりとお話を伺うということがなかなかできず、ご連絡をいただいても、対応できないことが多かったのですが、夏の休暇に入り、個別にいろいろと話を伺う機会をいただき、いろいろと思うことがあります。その中から、今日は、通常学級でも行われるべき、特別支援教育というものについて、少し考えたいと思います。 1.日本の特別支援教育の始まり  私が日本の大学で学んだ頃は、まだ特別支援教育ではなく、学んだ学科も、教育学部にあった障害児教育学科でした。学校も特別支援学校ではなく、養護学校と呼ばれた時代で、岐阜県内の養護学校で働いてから、スウェーデンに来ました。今の特別支援教育は、私がスウェーデンに来てから始まりました。少し調べてみると、「特殊教育」と呼ばれていたものが、「特別支援教育」という名前になり、2007年より正式に実施されるようになったようです。私がスウェーデンにやってきたのは、2001年ですので、その6年後ということになります。 2.子どもの権利条約  通常学級を含むすべての教育において特別支援教育をという流れは、スウェーデンとあまり変わらないというのが、私の印象です。1989年に「児童の権利に関する条約」通称、「子どもの権利条約」が出ます。この条約は、日本でも、かなり定着し、内容はともかく、名前を知らない人は少なくなってきているのではと思います。この条約の中に、 障害のあることもについて可能な限り社会への統合が行われること、および、教育・訓練の機会をりようできるようにすること (第23条) というのがあります。スウェーデンでは、住んでいる地域、生まれたところで、生活し、学び、成長していけることの重要さがうたわれ、訓練のために違う施設に通うのではなく、普段通っている就学前学校の中で支援を受けること、地域の学校に通うことなどは、この条約により、かなり変わったと感じます。 3.障害を持つ人々の機会均等化に関する基準原則  次に、1993年になると国連の第48回総会にて、「障害を持つ人々の機会均等化に関する基準原則」が採択されます。この決議では、障害のある子ども、青年、成人について、初等教育、中等教育、中等教育狩猟後の教育委における統合された場での教育の機会均等の原則が取り上げられ、その認識を深めました。これを受けて、今のインクルーシブ教育の大元ともい...

世界の幼児教育の今

イメージ
  夏の休暇に入る少し前、久しぶりに日本語のオーディオブックを聞き始めました。私は、Audibleが気に入っています。今年度は、本当に忙しくて、秋学期も春学期も仕事と勉強に追われていたためか、聞きたいオーディオブックは、穏やかな文学・フィクションを好む傾向にあるようです。もう何冊も聞いたのですが、それらの本から思うのは、描かれている子どもや若者が、勉強というものに追われ、苦しんでいる姿が多いなあというものでした。スウェーデンでも、子どもや若者の勉強疲れは珍しくありません。それでも、夏の休暇でのんびりしていると、スウェーデンの子どもたちよりも、日本の子どもたちが置かれている状況は、自己肯定感を高める、自己を確立する過程を複雑なものとしていると感じます。  前回の投稿で、 スウェーデンのインクルーシブ教育最新情報 ということで、自治体国際化フォーラムの 「世界の幼児教育の今」の寄稿記事 を紹介しました。この特集は、様々な国の幼児教育の今が書かれていて、大変興味深いです。そこから、少し思うことを書いていこうと思います。 1.中国の宿題と学習塾の禁止  中国の宿題と学習塾の禁止は、スウェーデンの宿題論議に通じるところがあり、興味深いです。スウェーデンは議論には何度もなっていますし、宿題を実際に無くした学校もありますが、国を挙げての政策は出しておらず、中国の宿題の制限時間や小学1・2年生の宿題禁止は、驚くとともに、実際にはどうなっているのだろうかと思いました。学習塾は、スウェーデンにはなく、家庭教師に近いものはありますが、一般的ではありません。宿題の支援や援助は学校で行っており、私の勤務校でも、そういう時間が設けられています。中国の脱学力重視は、少し意外な感じもしましたが、学力や学歴という意識が強い国では、こうした国を挙げた考え方の転換をしていく必要があるだろうとも思います。 2.韓国のヌリ課程  韓国の幼児教育の今も興味深い。ヌリ課程と呼ばれる、「新しい世の中(ヌリ)を切り開く子どもたちを育てていく願いの込められた課程」が目指す人間像が描かれている。(2019年の改定にて) 健康な人 自主的な人 創意的な人 感性豊かな人 共に生きる人 の5つが明示されたそうである。これらの目指す人間像は、当然のことながら、小中学校で目指す姿とリンクしたものであり、スウェーデン、日本...

スウェーデンのインクルーシブ就学前教育最新情報

イメージ
  3月に、 自治体国際化フォーラムの「世界の幼児教育の今 」という特集の中で、スウェーデンのインクルーシブ就学前教育の最新事情を書かせていただきました。本文は以下のリンクより、読むことができますので、ぜひ、ご一読ください。   北欧共生社会スウェーデンのインクルーシブ就学前教育の今   2019年に書かせていただいた、以下の記事も今でも大変よく読まれているようで、うれしく思います。 スウェーデンに学ぶ、幼児教育の最前線「インクルーシブ教育」    

スウェーデンの外国ルーツの子どもの支援 オンライン講演会のお知らせ

イメージ
  夏の休暇の時間に余裕がある間に、スウェーデンにおける外国ルールの子どもの支援に関して、2回に分けて、お話をさせていただきます。数年前から活動に少しずつかかわってきた、 日本のNPO団体「HATI JAPAN」 が行う、日本語教育と特別支援教育をつなぐ会の代5回と16回になります。詳しい内容と申し込みは、 こちらのリンクより。   何年か前にも一度お話をさせていただいたのですが、その時に話しきれなかった内容を今回は2回に分けて詳しくお話しする予定です。第1回目の7月8日は、新規にスウェーデンに入国してきた子どもに対する支援をお話しします。2回目の9月9日には、新規入国ではない子供たちの支援の様子をお話しする予定です。  スウェーデンの場合、特別支援教育の中に、日本語教育を含めた移民難民の児童生徒が抱える困難さも含まれています。これは、特別支援教育が、「障害」という枠の中ではなく、「その子が持っている力を最大限に伸ばすことができない状態」において行われるものであるという考えによります。  今回のオンライン講演会では、スウェーデンの教育システムをあまり知らない方にもわかりやすいようにお話ししながら、どのようにスウェーデンでは、移民や難民の子どもたちに対応しているかをご紹介しますので、興味のある方はぜひ‼

祝!スウェーデンの特別支援教育の資格、習得

イメージ
  お久しぶりです。夏の休暇に入りましたので、また、ブログを少しずつ更新し、スウェーデンの福祉と教育情報を発信していきたいと思います。  夏の休暇には、先週の火曜日から入りました。スウェーデンは今が一番いい夏の季節なのですが、私はこの時期花粉症がひどく、室内にいる方が体調も気分もいいという、何とももったいない感じです。  この半年というか1年、ブログもあまり更新しず、友人などのお誘いも断り、なんとか、スウェーデンの特別支援教育の専門資格を習得しました!🎉ストックホルム大学の特別支援教育の専門学部で、Specialpedagogという資格を習得しました。二人で書く予定の卒論を一人で書くことになったのが2月。2月の結婚記念日には、お祝いの歌を電話で歌ってくれた義理の父が心臓発作で倒れ、3月の終わりに急死し、あきらめようかと思ったけれど、何とか書き上げ、卒業できました。  学校の仕事も、本当に忙しく、いろいろご連絡をいただく皆様には、十分な対応ができないことも多くあり、大変申し訳なくも思います。  夏の休暇の間は、少しずつ、スウェーデンの教育や福祉情報を発信していきますので、ぜひ、質問や感想などお寄せください。写真は先日上った市庁舎の塔からのスウェーデンストックホルムの眺めです。  

ふたりぱぱのYoutubeにゲスト出演しました

イメージ
 皆様、お久しぶりです。いかがお過ごしでしょうか。私は、いろいろありまして、大変忙しくも充実した毎日を送っています。こんなに忙しくなるちょっと前に、連絡をいただきまして、ふたりぱぱのYoutubeの動画の撮影をしました。その第1弾が公開になりましたので、ご紹介します。 リンクはこちらから ! 話もお上手で編集もさすがプロだなという感じです。実は今年に入って、いろんな方から連絡をもらうようになりまして、コロナが終わったなあと感じつつ、こうした動画はまず、概論を見てもらうにはいいのではなと思っています。収録前に、視聴者の方から質問を募集されたそうで、質問数が多かったので、60にまとめてくださり、それに答えながらでした。パートナーも上手にまとまっているとほめてました。スウェーデンの教育に興味のある方はぜひ!

東京大学インクルーシブ教育定例研究会:1月29日開催「文科省調査、発達障害8.8%をどう理解すればよいか」

イメージ
  先日、「 東京大学バリアフリー教育開発研究センターの12月のインクルーシブ教育定例研究会 」の動画を見た感想をブログでまとめました。その時に、次回のお知らせ届いたら、ここでも紹介しますと書きました。今日、次回の開催の予定が届いたのでこちらでもご紹介します・次回は、1月29日9時から11時開催で「文科省調査、発達障害8.8%をどう理解すればよいか」というテーマで、講師は石川憲彦先生です。詳しくは、 こちらのリンク より、申し込みサイトに飛べますので、ぜひ、ご覧下さい。無料で、いつもすごく内容が濃い、おすすめの会です。今回も申し込み殺到しているようで、増席されて2000席になっています。私はライブで見れないのですが、いつもちゃんとアーカイブを送ってくださるので、海外でも安心です。是非皆さんも一緒に勉強しましょう!

なかなか知る機会がない、スウェーデンの中絶の歴史

イメージ
       この投稿は、旧ブログの投稿を リライトして、再投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著 「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」 を刊行。是非ご一読を😊  今日は、過去のブログの中から、スウェーデンと中絶の歴史について書こうと思います。過去ブログは閉鎖してなくしてしまおうと思ったのですが、長く書いていて、私にとって貴重な情報が多かったので、少しずつリライトしてアップしています。 1.スウェーデンで中絶が可能になった年  スウェーデンで中絶が一般的にできるようになったのは、そんなに昔ではなく、1975年です。この 1975年に中絶法 ができ、中絶が自由にできるようになったそうです。統計が少し古いのですが、過去ブログによると、2008年の統計によれば、女性1000人当たり、24.4人の方が中絶しているそうです。その時多かった地域は、ゴットランド、ストックホルムとその近郊といったところです。この数字は、2008年当時、ヨーロッパでもトップに位置する多さだったそうで、しかも若者の中絶率が高かったそうです。これ、2023年の今の状況を知りたいなあと思います。あれから15年たっていて、予防啓発のプログラムも展開されたので、おそらく、下がっている、下がっていてほしいと思っています。 2。2009年以降に行われた対策とは   ちょうど過去ブログの内容が、その予防啓発の内容でした。行われる予定だった内容は以下になります。 性教育の見直しと徹底。中学、高校の指導要領に明確にその内容を明記し、教員は性教育の教科の研修をうけ、教育するための教育をうける。 生徒の健康のチームの位置づけ避妊用具などの知識研修をうけた職員を配置。 ピルなどの避妊にかかる費用を25歳以下の若者は200krの年間自己負担であとは、補助がうけられる。 学校で緊急用のピル(性行為の翌日に飲むことによって妊娠を阻止することが可能なもの:説明が不足していたらごめんなさい。)の配布。 性教育をSFIという移民のためのスウェーデン語学校でも付属して行うようにする。  上記のうちの、いくつかは、達成していますし、性教育の今はこちらをご覧ください。 「 世界で最初に性教育が取り入れられた、スウェーデンの性教育の最新...

スウェーデンのキャリア教員、ヘッドテーチャーの仕事とは

イメージ
 以前 こちらの投稿 で少し書いたのですが、私は、ストックホルム市、そしてスウェーデン最大の特別支援学校でヘッドテーチャーをしています。以前も6年間していて、学校を変わって2年間していなかったのですが、(その間に本を書きました! 私の本はこちら 。)また、昨年の秋からキャリア教員、ヘッドテーチャーをしています。前の学校よりも何倍も大きく、基礎学校と一緒になっており、ヘッドテーチャーの仕事は、支援学校と基礎学校なので、仕事は多岐にわたります。専門分野は、「生徒の参加と影響、安心した学校生活を送る」という民主主義と価値教育の基盤を築く大変重要なところです。やりがいものすごくありますが、責任と仕事量も半端ないです。今日は、そんなスウェーデンのヘッドテーチャーの仕事について紹介します。おそらく、スウェーデンでヘッドテーチャーしている日本人は、私だけなので、貴重な生の声かなと(笑)思います。 1.ヘッドテーチャーとは  仕事の内容は、少し古い投稿ですが、2016年のものがこのブログにありますので、そちらもぜひ。「 スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状 」  こんな仕事と、簡単に言えたらどんなにいいだろうかというのが実際で、仕事の内容は、学校ごとに違えば、人それぞれで、その学校の今年度大切な内容に即して仕事の内容が決まります。私の勤務校は、5人のヘッドテーチャーがいて、生徒の安全、デジタル化教育、数学、特別支援教育、健康と運動の5つの分野を受け持っています。この5人の先生は、国の予算から毎月5000クローネお給料が上乗せされます。これ以外に、ストックホルム市は、独自の「発展教員」もいて、こちらは、学校の予算で月に2000クローネ付き、うちの学校は、上記の5分野に言語分野がついて、6つの発展領域グループのどれかを担当します。この学校内のグループは基礎学校と支援学校の全ての先生が所属して、縦断的に活動し、学校を発展させていきます。 2.キャリアが積みにくい教員  教員は、一度先生になるとなかなかその後のキャリアが積みにくいといわれています。大学院にいくとか、副校長や校長になるという道はあるのですが、その間がなかなかないのです。教員から、次のステップが大きすぎるということから、スウェーデンでよくあったのが、先生をやめて違う職業に移る人で、教員不足を解消するために、2...

AAC:拡大代替コミュニケーションとは

イメージ
  この投稿は、AACについての投稿をまとめて、 リライトして、再投稿しています。 2022年7月16日に、初の単著 「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」 を刊行。是非ご一読を😊  新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。2023年が皆様にとって素晴らしい年となりますように願っております。  今日は、過去のAACについての記事をまとめて書こうと思います。私は、AACの普及活動をしている スウェーデンの非営利団体 のボードメンバーとしても活動しており、新年に何を書きたいかなと思ったときに、やはり、AACについて書きたいと思いました。以下はホームページなのですが、オランダのAAC協会が作ったAACについてのインフォメーションビデオが見れます。言葉はオランダ語で、字幕はスウェーデン語なのですが、是非ご覧いただければと思います。 スウェーデンのAAC協会のホームページ AACを各言語で書くと次のようになります。 英語:AAC:Augumentative Alternative Communication  スウェーデン語:AKK: Alternativ och Kompletterande Kommunikation  日本語:拡大代替コミュニケーション じゃあ、この「拡大代替コミュニケーション」はいったいどんなものなのかと、簡単に言うと、「 私たちが普段使っている話し言葉の代わりとなったり、補助したりすることで、誰もがコミュニケーションをとることができる 」ものです。多くの人は普段「自分は言葉が話せて素晴らしいなあ」と思うことはあまりないかもしれませんが、「言葉が話せる」ということは、とてもとても素晴らしいことなのです。この「言葉を話すこと」が何らかの理由で難しい場合であっても、 地球上の全ての人には、意見表明権があり、コミュニケーションをする権利がある のですが、言葉を話せないとこうした権利がないがしろにされる、そこにいないかのように扱われることは、残念ながら、珍しくありません。スウェーデンの特別支援学校で重度の重複障害児の教育を長らくおこなってきましたが、福祉の国スウェーデンでも、私の生徒たちは、悪気はないけれど、忘れ去られているという経験を何度もして...