2020年3月20日金曜日

スウェーデン学校閉鎖を可能に

 スウェーデンも新型コロナウィルスによる社会と経済混乱が顕著になっております。今週に入り、ヨーロッパ諸国が学校閉鎖や国境閉鎖、外出規制や禁止など、多くの対策をとています。スウェーデンとともに学校を閉鎖することがなかったイギリスが学校閉鎖を決定したことにより、スウェーデンの独自路線が浮き彫りになり、国内での不安の声にとどまらず、隣国をはじめ他国からの疑問の声も聞こえるようになっています。

 高校と大学は、通信、デジタル通信教育を推奨するという公衆衛生庁の方針により、水曜日からほとんどの学校がデジタル教育に代わっています。初日は少しネットの通信状態に問題があったという声も聞こえますが、概ね予想以上にスムーズにデジタル化に移行できているようです。学校関係者にはすでに1~2週間ほど前から、自宅学習ができる準備をするようにという方針は来ていたので、恐らく多くの学校が準備自体はしていたし、もともとデジタル化が進んでいる国なので、高校以上のレベルなら問題は少ないようにも思います。今回のことによって期待されるスウェーデンの教育における変革もあり、こちらはまた別の時に書きたいと思います。


 そして、昨日、スウェーデンでも、学校閉鎖を可能とする法律が昨日可決されました。デンマークが学校閉鎖を早く決めた理由に、数年前に学校を閉鎖した経験があるため、法律が違うという理由があります。法律が可決されるとすぐに、首相の記者会見で「今のところ義務教育である基礎学校と就学前学校を閉鎖しない」と発表しました。今回の法律では、学校の責任者(私立学校の運営責任者や地方公共団体の長)が、予期せぬ事態が起こった場合に就学前学校、学童保育やそのほかの教育関係の施設を閉鎖することができるというもので、その際には、医療従事者などの社会の重要な職業についている子どもや障害児など何かしらの支援援助を必要とする子どもや生徒の親には、就学前学校や学童などの保育を提供する義務を明確にしました。そして、この法律で、今まで法的に可能でなかった「国が一時的に学校機関を閉鎖すること」ができるようになり、その際にも上記と同様に地方公共団体に主要職業についている子どもや生徒の親には保育の場を提供する義務があります。この法律は明日3月21日より施行されるので、早ければ、月曜日にも学校を閉鎖することが可能となっています。現在、どの職業がこの「有事の際の社会の重要な職業」にあたるのかリストが作成されています。

 また、学校閉鎖に関わって、スウェーデンでは、これまで閉鎖された場合に親が自宅で子どもと待機する場合の経済的保障がなかったのですが、こちらも同時に法改正が進められており、子どもが病気の際の看護休暇が一時的に利用できるようになる見通しです。これによる政府の経済支出は、週単位で莫大な額になるということで、できるかぎり避けたいという国の考えももちろん聞こえてきます。

 スウェーデンでは、教育は地方自治に任せられているので、今回の学校閉鎖の流れには、このシステムとスウェーデンの民主主義、法律や社会の在り方、福祉の考え方などが色濃く出ています。実際の現場では、教員たちが、登校してくる子どもには学校での授業を提供しつつ、並行して登校してこない子どもへの対応もしており、ダブルで行う作業は負担が大きいという声が今週に入って聞こえてきます。私の学校は小学校の就学前クラス~3年生の学校に併設しているのですが、ランチルームなどは、がらんとして椅子も下げられていないテーブルが出るほど、子どもの数は減っており、公衆衛生庁からの体調不良が少しでもある場合は仕事にいかないという方針により職員数も減っていて、実際にいつまでこの状態がもつのかという不安もあります。学校閉鎖は、学校という建物が閉鎖されるだけで、教育は継続する方針で動いており、何らかの形で教育を継続する方向で先生たちは動いています。これには、スウェーデンの教員の労働形態と環境も大きく関係しており、こちらもまた別で書ければと思います。

 特別支援学校の高等部は閉鎖の推奨対象にはならず、様々な支援援助を必要とする子どもたちには支援援助は提供される見通しですが、職員が減ってこれば、何らかの対応を迫られるため、今からどんなことを自宅でさせるか思案中です。

 スウェーデン、ヨーロッパの中でも独自路線を行く国、戦争を経験しておらず、日本のように大きな地震があるわけでもないこの国、人々の考え方や国の対応など様々な点で興味深いことが多くあります。また、少しずつ紹介していければと思い、コロナウィルスの広がりが治まることを願うばかりです。




2020年3月14日土曜日

学校を閉鎖しないスウェーデン

 新型コロナウィルスにより、デンマークやノルウェー、ベルギーにフランスと、ヨーロッパの多くの国で学校が閉鎖されています。そんな中、スウェーデンは3月14日現在、学校を閉鎖しないという方針を取っています。今日は、そんなスウェーデンのコロナウィルスに対する学校関係の話をまとめてみました。

 日本でコロナウィルスが広まり始めた2月中旬、スウェーデンではまだまだ、対岸の火事といった感じで、スポーツ休暇前までは、のんびりしたものでした。その後、スポーツ休暇で北イタリアなどにスキー旅行に行った人々などがウィルスを持ち帰ったことにより、罹患者が少しずつ増え、それまでは、スウェーデンで広がることはないというような声もあったのですが、予想を裏切り、少しずつ広がっていきました。ストックホルム地域のスポーツ休暇が終わる直前に、子どもはコロナウィルスを広めないと国の健康局より発表され、イタリアや中国などに旅行に行った子どもでも、症状の出ていない元気な子どもは学校に行くことと発表されました。これがまだ2週間前の話です。その後、感染の危険度が上がり、現在は感染リスクは非常に高いとされ、先ほど外務省のほうから外国への旅行を控えるようにと発表されました。死者1名、感染者は500人を超えたあたりで、医療従事者とリスクゾーンの人を中心とした一定の人を除き、テストはしないということで、本日14日で死者2名、感染者は1000名に近くなっていますが、実際には、数に数えられていない感染者が多くいるとみられています。

 WHOが今回の状況をパンデミックと発表し、イタリア、フランス、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、ラトビアが学校閉鎖をしていく中、スウェーデンも12日の木曜日の夜、文部科学大臣にあたるAnna Ekströmが記者会見を行いましたが、スウェーデンは今のところ学校を閉鎖しないという発表をしました。主な理由は以下の通りです。

  • 学校を閉鎖すると、医療関係など重要な仕事についている親が仕事に行けない。
  • リスクゾーンである高齢者の祖父母が子どもの面倒を見ることになる危険性がある。
  • 家庭に居場所がない子どもにとって、学校はとても重要な場所であること。
  • 現状では、国の健康局の判断では、学校閉鎖による感染減少の効果は少なく、他のよくない影響のほうが大きい。
  • 国内の感染状況には差がある。

 学校を閉鎖しない代わりに、各地方自治体、学校経営者に、各地域の感染状況に合わせ、それぞれの判断で学校を閉鎖できるように法的な準備をしていると。内容は以下の通り。
  • 年度の長さを変えれる。
  • 土日に授業ができる。
  • 夏休みに授業ができる。
  • デジタル、通信授業を可能にする。
  • 教科を学ぶ時期を変えられる。
  • 休校にする。
 上記は、木曜日の夜の時点での発表で、今後、状況が変わっていけば、国中の学校を健康局の判断とともに閉鎖することもあるということでした。この記者会見を中継で見ていて、教育は地方自治の管轄なので、スウェーデンらしい判断と思ったのですが、こんな判断を290もの地方公共団体の教育関係者と私立の学校の校長がするのかと思うと、重い責任を負わせるなあと思いました。そう思ったのは私だけではなかったようで、教員組合がすぐに声を上げ、翌日には、学校閉鎖は感染症専門医とともにされた判断でと付け足されました。また、教員など職員が感染し、働く人がいないという状況になれば、必然的に学校は閉鎖される可能性はあるということで、隣同士の学校でもやっている学校とやっていない学校が出てくる状況が出てくると思われます。いろんな疑問が多く出ており、就学前学校や学童はどうするのかとか、60歳以上の職員は高リスクにはあたらないのかとか、閉鎖されたら職員はどうなるのかなど。。。

 この判断が正しいのか、正しくないのか。。なぜ、お隣の国デンマークやノルウェーと同じ判断をしないのか、などなど、人々の思うところはとどまりません。2つの教員組合がフェイスブックで行った簡単なアンケートによれば、今回の政府の学校を閉鎖しないという決定が正しいと思う人は1076人、思わない人は362人と(14日21時現在)正しい判断であるとする人が多く、政府や政府機関に対する信頼の高さも感じられます。しかしながら、感染の不安などで、学校に登校しない子ども、させない親も増えてきており、来週もどうなることかと思っております。

 気になるのが、国の健康局の専門家が、リモートワークが増えていることに関する意見を求められ、「平等ではない」と発言したこと。彼は、今回のコロナウィルスの対策本部のトップともいえる人で、その人が、「国民すべての人が自宅から勤務できるわけではない」という意味での「平等」を一つの理由としてあげたことに、私は驚き、スウェーデンの平等意識の難しさを感じ、これが学校閉鎖の考え方や感染症の対策の考え方に大きく関わっていると思うと、様々なスウェーデンの難しさの一面を見た気がしました。

 また、状況を報告できればと思います。みなさん、引き続き、よい休日を!


2020年3月7日土曜日

デンマークの人間関係とは

 スポーツ休暇が終わり、スウェーデンでもコロナウィルスが広がりを見せており、不安が隠せません。私の生徒の多くは、リスクゾーンに属するので神経質になります。今週は、先生の研修を火曜日に行い、水曜日は私を娘のようにかわいがってくれたスウェーデン人ママのお葬式に出て、大学の課題をこなし、ばたばたと週末に。昨日は、働いているコミューンの芸術クラブ?の絵画のくじ引き会で食事をし、くじ引きあたって絵がもらえました!初めて参加したけど、同僚と食事をして絵をが当たって、楽しかったです。


 さて、今日は、デンマークの人間関係について。このブログを通じて数年前から交流している、デンマークの特別支援学校で先生をしている友人のインタビューが掲載されました。ぜひ、読んでください。

「デンマークは人間関係が理由で会社を辞めない。いい職場づくり、現地のコミュニケーション専門家に学ぶ」


 登場するのは櫻井友子さん、4年前にデンマークから会いに来てくれ、いろんな話をしたことを思い出します。デンマークはお隣の国なのですが、スウェーデンとは似たところもあれば、違ったところもあり、大変興味深いです。特別支援教育の専門的な話や外国で働くということ、教員をするということなど、共通の話題がたくさんあり、いつも勉強になり、大変大切な友人の一人です。彼女も大学で勉強しており、研究の話を聞くのもいつも大変興味深いです。

 友子さんの仕事は、まだまだスウェーデンでは珍しい職業で、今後徐々に増えていくのかなと思います。今回のインタビューは、仕事の内容というよりは、デンマークの職場での人間関係が中心です。ぜひ、ご一読を!