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ストックホルムで始まる登校困難な子どもたちへの遠隔授業

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 2025年秋学期から、私が働いているストックホルム市でも、長期にわたる欠席をしており、登校困難な児童生徒を対象に、特別な支援の一環として、遠隔授業の提供が始まります。この遠隔授業は、既にヨーテボリとウプサラで開始されており、ストックホルムでもやっと学校検査庁に承認されたので、晴れて秋学期から開始の運びとなりました。これにより、教室に戻ることが難しい子どもたちも、教育を受ける権利、義務教育を公的なお金によって無償で受ける権利を保障されることになりました。今日は、この遠隔授業に関して、詳しく説明したいと思います。 1.遠隔授業導入の背景とは スウェーデンでも、学校に通うことが困難な、いわゆる不登校とされる児童生徒が存在します。これに関して以前に書いたものがありますので、興味のある方はぜひ、 こちらのJ=Stage から、「スウェーデンひきこもりの若者の実態とそのとりくみー早期発見と早期支援を中心とした継続的な社会支援」 をご一読ください。2022年のものになりますので、あれから、スウェーデンでは、更に様々な取り組みが地道にされています。その中の一つとして、法改正にもどつく、この遠隔授業の導入があげられます。 私の働くストックホルム市でも、細かい学校登校出席に関する対策のプランがあり、こういったプランにより、現在のストックホルム市では、10年前に比べるとはるかに詳しい登校困難児の統計があります。こういった統計によれば、ストックホルム市の公立の学校で、2024年春の時点で、基礎学校4年から9年生の生徒に、1000人以上の出席率50%未満の生徒がいたとあります。この深刻な状況を何とかしようと、今回の遠隔授業の導入に至りました。 2.ストックホルム市の遠隔授業の概要は? 2025年の秋学期には、まず、50人の生徒を対象として立ち上げプロジェクトを実施するとのことです。対象となる科目は、スウェーデン語(第2言語としてのスウェーデン語を含む)、英語、外国語、数学、理科、社会、母国語、自然科学、社会科学、テクニックなどになります。この遠隔授業の最も大きな目的は、長期にわたる学校欠席の悪循環を断ち切り、生徒が再び学校に通えるようになるように支援することにあります。 今後の計画としては、来年2026年秋学期からは、100人の生徒の受け入れを目指し、民営の学校からの生徒も受け入れ...

新たな挑戦と夏の休暇2025

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  こんにちは。そして、お久しぶりです。また、しばらくの間休眠していたこのブログ「スウェーデンの教育って」ですが、夏の休暇に入りましたので、再び更新をしていこうと思います。何かのご縁で、こちらに足を運んでくださった皆様、ふと思うことがあれば、ぜひ、コメントを残していただくか、メールでご連絡くださるとうれしく思います。  私の勤務校は、先週の水曜日が終了式でした。年度末の忙しさに加えて、終了式後の1週間ほどは、会議が続くので、その準備で大変忙しくしておりました。それも昨日で終わり、今日より、夏の休暇に入りました。今年の夏の休暇は、今日から8月10日までになります。この夏は、「読む、書く、考える」という原点に立ち返り、毎日1投稿を続けていくという壮大な目標を立ち上げました。スウェーデンの教育と福祉、社会との多職種連携について書いていきますので、ご興味ある方、ぜひ、お立ち寄りください。  また、新たな挑戦としまして、今年に入り、会社を立ち上げました。会社登録が済んだところで放置状態になっているので、これからホームページの作成などを行っていきます。これからは、このブログも会社の活動と緩やかに連動させていきたいと考えています。  「教育」や「学び」は、制度や国という枠を超えて、私たち一人一人の中にあり、年齢にかかわることなく、ずっと続いていくものであると思います。あっという間に、スウェーデンでの教員歴も19年になり、ここ数年は忙しく過ごすことが多く、なかかゆっくりと日本語で考えるということができていなかったように思います。だからこそ、この夏は、思うことを丁寧に言葉にしていくことに大きな意味があると思っています。そして、このブログが、また誰かの施行のきっかけになり、社会の何かの変化につながればとと思うとうれしさが増します。  写真は、先週の年度末に貰ったプレゼントです。こうして、プレゼントをもらうのもこれが最後です。来年度からは、新たな挑戦として、現在の勤務校で、統括特別支援教育士として、学校全体の生徒の健康チームに入ります。そして、何度目かの挑戦になるマスター論文を書き上げます。 #スウェーデン #新たな挑戦

NPO法人 HATI JAPAN 多文化多言語の子ども発達支援

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  新年あけましておめでとうございます。今年は、できる限り定期的な更新を心掛けていきますので、是非引き続き、足を運んでいただければと思います。今年もよろしくお願いします。  2025年初の投稿は、私が理事をしているNPO団体について紹介したいと思います。私は、日本とスウェーデンで、いくつかの団体に所属しており、日本のこの団体で理事、スウェーデンのコミュニケーション団体で会計をしています。この他にも会費を払う形で参加している団体もあり、どの団体の活動も私がかかわりたい、応援したいと思っている団体ばかりです。理事は、もう2年ほどはしていると思うのですが、団体の活動には、団体設立の直後くらいからかかわっており、真摯な活動を行っている団体であると思います。団体の名前は、「 NPO法人 HATI JAPAN 多文化多言語の子ども発達支援 」といいます。団体の事務所は東京にあり、昨年夏に帰国した際に、初めて訪問することができました。事業内容は、主に以下になります。 外国につながる子どもと保護者への支援:個別に発達の支援をしたり、地域でグループでの支援を行ったりしています。  発達支援に関わる施設・専門家に対する助言や情報提供:  一般市民を対象とする外国につながる子どもの発達支援に関する研修・情報提供 、調査研究など 居場所づくりなど  私とこの団体の出会いは、本当に不思議な縁でして、コロナのころに「クラブハウス」というアプリが流行った記憶がある方がいると思うのですが、そこで、この団体の代表である東谷先生の関わっているインドネシア、バリ島の学校の校長先生である方が、私がスウェーデンに住んでいるということで、興味をもって話しかけてくださったのです。この方のお兄さんがスウェーデンにいらっしゃるということで話が弾み、話していくうちに、今度は私の方がインドネシアで学校の校長先生をしていることに大変興味を持ちました。そして、彼女がどうしても引き合わせたい人がいると紹介してくださったのが、代表の東谷先生でした。縁とは本当に不思議なもので、繋がる縁は必ずつながり、切れる縁は切れていくと感じられずにはいられません。あれから、もう4年、5年とたちます。その間に何度か私もスウェーデンの事情について話をさせていただく機会があり、日本とスウェーデンにおいて、外交につながる子...

スウェーデンの特別支援学校の3年間プロジェクト、KASKについて

  昨日から冬休みになりました。やっと少し時間ができて、掃除に断捨離、水泳、読書、編み物、ピアノとやりたいこㇳを満喫しております。今日は、冬休みに入って第一弾ということで、3年間やってきたプロジェクトについて書きたいと思います。今の学校に移って、すぐにこのプロジェクトに参加することが決まり、それとほぼ同時にヘッドティーチャーにもなったので、このプロジェクトの責任者にもなり、今までやってきました。3年間のプロジェクトも今年が最後の3年目で、今、もう一人の先生と一緒に、プロジェクトをまとめた論文を書いています。  このプロジェクトは、スウェーデンの非営利団体である、iFousが行っているプロジェクトで、国内の7つの基礎自治体の支援学校の先生、2大学から3名の研究者がかかわって、総勢170名ほどで行っているプロジェクトになります。私は、ストックホルムの公立の基礎特別支援学校で働いているので、そこからの参加になります。プロジェクトの名前は、「KASK」と頭文字をとって言います。日本語に訳をするのならば、「特別支援学校の知識伝達、共有の使命」という感じでしょうか。簡単に言えば、いかに支援学校の授業をよりよくしていき、知識を教えていくことができるかということになります。  今回のプロジェクトは、アクションリサーチ型を取っており、各学校がそれぞれ、現場の実態に沿ってどんな内容を研究したいかというのを自分たちで出して、それについて取り組むというものです。これに3名の大学の研究者がかかわり、方法などを支援してくれました。研究者は、すべての学校から出てくるものをまとめて、国際的な論文にまとめており、私たちは、現場で行った内容を論文にまとめています。このプロジェクトは、学期に一度大きなセミナーがあり、参加者が一堂に会して、交流したり学びあうというのも大きな特徴で、その際には、基礎自治体のいわゆる教育委員会にあたるような人々も参加しており、その自治体全体で取り組むことも大きなメリットです。  私の学校は、生徒同士のコミュニケーションをいかに増やすかということを課題に取り組んできました。5月の終わりまでに論文を仕上げるべく、頑張ります。

スウェーデンの知的障害児の研究 インクルーシブ教育とは何か?

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  お久しぶりです。秋学期の折り返し地点に到着し、来週は秋休みです。教員は一般的には、秋休みは月曜日から水曜日まで働きます。私は、ここまで、とても労働力が多かったので、副校長が月曜日に特別にお休みをとるようにと、火曜日と水曜日の勤務になります。スウェーデンの教員は、この秋休みに到達することが大きな目標というか、ここまでこれば、今年度もなんとか行けるという感じがするという感じです。秋休み後は、個人面談をやり終えると、あとはクリスマス休暇に向けて、成績付けなどのラストスパートに入ります。おっと、話がずれました。  今日は、スウェーデンの知的障害児の研究を振り返りながら、知的障害児にとってインクルーシブ教育とはと、少し考えてみたいと思います。今週の火曜日に、こちらの知的障害者団体が行ったオンラインの会を聞いての感想と振り返りになります。あと、うちの学校は、今年度より、学童の大きな改革をして、支援学校と基礎学校の学童を一緒にしたので、その中で思う、インクルーシブ教育の在り方を今一度考えてみたいと思いました。 1.スウェーデンの知的障害児教育の歴史を振り返る  スウェーデンの知的障害児たちは、歴史的に長く「分離教育」をされてきました。優性思想も強かったスウェーデン、知的障害児・者に対する差別や迫害の黒歴史は、多くあります。年月でいえば、約150年ほど分離教育をしており、今の学校システムも、分離教育であるというのが、スウェーデンの認識です。知的障害児の中でも、特に中重度で、「学ぶことができない」とされてきた子供たちは、「医療」の一環として、長く広域行政体によって管理運営がされてきました(訳100年)。  そんな歴史を変えたのが、1968年。この年に、やっとスウェーデンのすべての子どもたちの就学の権利が確立されました。日本では1979年がよく言われますので、スウェーデンは、それよりも11年早いのですが、決してすごく早かったとか、ずっと教育を受ける権利が保障されていたということではないのです。やっと、すべての子どもが教育を受けられるようになったのですが、その教育は、医療が管轄していたこともあり、福祉と医療が色濃くでた教育でした。そして、1990年代になって、教育が基礎自治体に移ります。これもとても大きな背景であり、その影響は、今でも強く受けています。私は、「広域行政体(医療...

生徒の意見から学校名称が変わったスウェーデンの特別支援学校

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  今日は2023年7月2日。スウェーデンの特別支援教育の歴史において、記念すべき日です。今日からスウェーデンの特別支援学校の学校名称が変更になります。 今までの名称:Grundsärskolan 今日からの名称:Anpassade grundskolan になります。 1.これまでの名称は?  スウェーデン語を開設すると、Grundsärskolanの「Grund」は「基礎」で、「skolan」は学校になります。いわゆる小中学校は、この二つの文字をとって、「Grundskolan(基礎学校)」と呼ばれます。特別支援学校はこの間にGrundsärskolanという言葉が入りました。この「sär」が、差別的で、否定的なイメージが強い言葉とされてきており、スウェーデン語での響きと意味がとても悪かったのです。その昔は、障害のある子どもや人々のことを「馬鹿者」と呼んでいた国でもあるので、こうした差別的な意味の言葉が使われている歴史を恥じ、改めて来た歴史があります。この 「sär」 も「別にされた、変わった」というような意味合いで、特別支援学校に通う生徒のこと 「särbarn」 と呼んで虐める、さげすむというのも一般的だったのです。こうしたことから、自分が特別支援学校に通っていることを話したがらない、言わない生徒も多くいます。 2.新しい名称は?  新しい名称は、 Anpassade grundskolan といいます。「 grundskolan」は、基礎学校という意味で、これまでと同じです。これに「 Anpassade 」という「対応した」という言葉が新たに付けられました。今回の名称変更に伴い、全ての特別支援教育系の学校の名前が変更になりました。 Grundsärskolan → Anpassade grundskolan (前出) Gymnasiesärskolan → Anpassade gymnasieskolan (対応した高校) Komvux som särskild utbildning på grundläggande nivå och komvux som särskild utbildning på gymnasial nivå→ Komvux som anpassad utbildning på grundläggande nivå respe...

デンマークの特別支援教育とは

 あっという間に7月も終わりになり、おっかしいなあと思っている今日この頃。スウェーデン人の大親友が子どもを連れて遊びにきてくれ、その後、ボロースとヨーテボリに旅行に行って帰ってきました。楽しかったです。  今日は、デンマークの特別支援教育についてのご紹介。 この間の投稿 でもご紹介した、デンマークの特別支援学校で働く私の友人が、ブログにデンマーク事情を書きましたので、そちらをご紹介します。 ブログ名は、 FISCHSUPPE 魚スープ ドイツで暮らす、デンマークの友人のブログで、たまに彼女も書いているブログです。ドイツ事情もデンマーク事情も分かるブログです。そこの以下の投稿でデンマークの事情が読めます。 「ときどきデンマーク!夏休みのZoomにて。」 私のことも紹介してくださっています。恐縮です。 デンマーク事情も気になりますし、北欧各国の事情も気になります。勉強、勉強の毎日です。頑張ります。

デンマークのアートプロジェクトの写真

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 昨日は、「デンマーク×アメリカ×スウェーデン 特別支援教育を語る会」をしました。最終的に16名の方が、お忙しい中ご参加くださり、本当にありがとうございました。2時間で3か国、そして、カナダから参加してくださった方にも、カナダ事情を伺いながらとなり、表面的な話になってしまったかなと思いつつも、各国の事情を聞くということで、大変興味深かったです。  最後の部分でお話をしていただきました、デンマークでご活躍の方が行われた、3歳から8歳までの重度の自閉症の子どもを対象とした、アートプロジェクトの写真をご紹介します。このプロジェクトもとには、あの時のお話にあったように、すごく綿密な子どもたちへのアセスメント、状況把握を行い、その結果と共に、教室の構造にも配慮したうえで、文字の獲得を促すいうものでした。絵が描ける子どもであれば、文字をかけるようになるという仮定のもとに、障害の重さにとらわれず、可能性を信じた彼女の取り組みに、私はとても心を動かされました。  そして、この穏やかな色合いの絵に、子どもたちがアートを好きになるという気持ちがよくわかります。そして、文字を学んでいるということに、この子たちへの教育の可能性を感じます。   こうした、手順の視覚化、室内の構造化などの準備がされています。 *写真は彼女よりご提供いただいたものです。  世界のどこかで、私と同じように、文化と言葉の違いを感じながらも、障害がある子どもたちと向き合っている友人がいるというのは、本当に心強く感じます。ご参加くださった皆さん、本当にありがとうございました。また、いつかお話しできる日を楽しみにしております。

スウェーデンで増えている発達障害の大学生

 スウェーデンでは、発達障害でありながら大学で学ぶ学生が増えているという記事がありました。大変喜ばしいことです。発達障害の場合、知的障害がない場合は、適切な支援と援助を受ければ、持っている能力を生かして活躍していくことができます。その障害ゆえに、失敗経験を重ね、二次障害を抱えてしまうと、本来の力を出すことなく、精神的に不健康な状態になってしまう場合も多く、適切な支援援助を早期に行うことは大変重要です。  スウェーデンの大学では、日本と同様に各大学に「支援援助センター」みたいなところがあり、そこに特別支援教育専門教員などが配置されています。特に入学から1年ほどをめどに集中的に支援援助を希望する学生におこなっています。障害に関する証明があれば、テストの際の配慮(時間や場所)、読み上げ機能や音声文書の利用、文章の書き方の指導、勉強の仕方、デジタル機器による支援などいろいろな支援をおこなってくれます。昨年このような支援援助を希望した学生は、1万7千人とあり、数年前に比べるとかなり増えているとあります。  増加の要因としては、なんといっても障害に対する偏見が、一昔前に比べると各段に減ったというのが大きいでしょう。特に発達障害に限れば、ここ数年、子どもに限らず、大人でも障害判定がおり、隠さずに話す人も多くなり、障害に対する認知、知識が広がったというのが大きいかとも思います。これは大学教員間にもいえることですし、ほかの学生にしても、多様な人が存在することがそんなに珍しいことではなくなったということでしょう。また、デジタル機器の普及により、支援援助の多様化と簡素化が図られたことも大きいと思います。  義務教育のみでなく、高校、成人教育、大学などで、より一層、こうした支援援助が広がっていき、多くの人々が持っている力を最大限に生かせる社会を目指していければと、特別支援教育にかかわる人間として願わずにはいられません。

スウェーデンの登校できない自閉症・アスペルガーの子どもたち

 スウェーデンの自閉症・アスペルガー症候群協会の最新のアンケートによれば、実に52%の保護者が学校の環境に問題があることにより、登校を拒否していると回答しています。2016年に比べると6%増えたとあり、発達障害系の障がいがある生徒は、より厳しい学校生活を送っているといえます。少しずつ改善されてるとすれば、多少状況が良くなってもいいものですが、悪化しているというのは心が痛みます。 「問題のある欠席の多い生徒」というカテゴリー  スウェーデンで学校に登校できない子どものことが話題になるようになったのは、学校改革があった2011年の数年後ではないかと思い出しています。(その前にももちろん学校に登校しない子どもはいましたが、今ほど問題視されてはいなかったのです。)最初のうちは、いろんな呼び名があったのですが、最近の適切とされるいい方は、「問題のある欠席の多い生徒」というもの。風邪や家族旅行といったような単純な欠席理由ではなく、何らかの問題を抱えて欠席率が20%を超えると問題のある欠席の多い生徒となります。そして、多くの発達障害の生徒が含まれています。 どの子にも適した学習環境を構築するモデル  スウェーデンには、特別支援教育を統括している機関があり、そこがどの子にも適した学習環境を構築するためのモデルを出しています。大きく分けると 社会的環境 身体的環境 教育的環境 の3つに分かれています。これは教室環境だけを意味しているのではなく、学校生活全体において、社会的、身体的、教育的環境を見直すことにより、適した学びの環境を構築することを目指しています。それぞれの環境には、詳しくどんなことを改善していくというかという提案があります。これ、いいと思うのですが、使うか使わないかは学校次第だし、教師一人では実行できない部分もあるので、学校ぐるみ、校長もとなると、やっぱり、どの学校もやっているとは思えない。 問題化されていて、よく話題としても聞くし、変えていくためのモデルもあるけれど、どの子にも適した学習環境がどの学校にもあるようになるには、まだまだ時間がかかりそうです。

ロボットにしたいわけではないが。。。

 1週間があっという間に過ぎていきます。今の学校に勤めてはや9年目です。いろんな生徒を見てきて、いろんな職員を見てきて思うのが、「こちらのいうことを聞くロボットを作成したいのだろうか」と。ブログといえども、日本語といえども、こうして書くのは少し気がひけるけど、特定の生徒というよりは、うちの学校でよくあるパターンということで、書きます。 時間割表どうりに動かず、一定の授業を受けたがらない。 これよくあります。時間割表には、例えば、体育と書いてあっても、体育館に行くのを嫌がり、行かせるのに実に時間がかかる。そうなると、最終的に先生がその授業をなくしてしまったりします。情報伝達には、生徒にあったものを用いているので、物や写真、絵記号で、体育や音楽ということを伝えます。もちろん文字で読めるこもいます。自閉の子どもで、写真で体育と伝えて、嫌がって走り回ったりすると、アシスタントから、「あの子は写真が分かっていない」というコメントをもらったりします。でも、私からすると、分かっているから、逃げるんだろうなあと思うのですが。 なんで参加したがらないのだろうかと考え、その子が参加できる形を探すことが重要であると思うのですが、そうならないことが多いです。簡単ではないことはわかるのですが。 大好きなことを上手に終わることができない。 あとは、プールなど、子供が大好きな授業で、行くのもプールに入るのも問題がないけど、活動を終えることができないという場合があります。プールが楽しくて終われない。よくあるパターンなんだけど、これもまた、最終的にその子の大好きなプールには行かないという判断になったりします。 好きなことだからこそ、その子が納得して活動を終わることができる方法を見つけてあげることが教育であり、活動を外して行くことばかりしていたら、その子ができる活動にものすごく限りができてしまいます。 で、自立を促すとか言って、カリキュラムにもあるし、色々やるわりには、私たちは、こっちの思い通りに動くロボットにしたいのだろうかと思ってしまいます。。。実際のところ、この子たちは、重い障害がありますので、他人の手を借りて一生生きていくことになります。そうすると、介護者や教育者など関わる人々が関わりやすい人になってもらうことは重要なのですが、障害ゆえに簡単ではありません。その...

生徒へのアンケート調査

 あっという間に9月も終わりに近づいています。昨日は、秋晴れのいい天気でしたが、今日は雨。ああ、秋だなという感じです。忙しいといえば、忙しく、この投稿、途中まで何回も書いては、また時間が経ってしまったと書きなおし、やっと書き終えた感じです。  今年は、受け持ちの生徒が5人で、そのうち4名が車椅子を利用している生徒です。去年よりも車椅子の生徒が増え、高等部の体の大きな生徒ということで、あちこち体が痛い感じが。。。本格的に筋トレしないと1年もたないかもしれないと思っている今日この頃です。    さて、今日の話題は、生徒へのアンケートについて。日本の学校にもあると思うのですが、スウェーデンの学校では、生徒にアンケートをとることがよくあります。公立の学校は、コミューンが一括して行っている場合が多く、生徒向けのアンケート、保護者向けのアンケートと行われます。私が働いているコミューンでは、決まった学年の保護者に向けて行われます。その結果をもとにして、学校教育の質と満足度を図ります。  こういったアンケートは、私が働いているような重度の障害を持った子どもたちの特別支援学校ではとても難しくて、生徒向けのアンケートは今まで行われてきませんでした。普通の小学校の生徒向けのアンケートに答えられる生徒は少なく、かといって、生徒数少なく、わざわざうちの生徒様にアンケートを作ってくれる様なことはなく、今に至って言います。  そんな現状をどうにかしようと、今年は、学級会のような授業があるのですが、その授業の議題の中に「楽しく学校生活が行われているか」というところがあり、そこで、生徒が答えた内容を書き留めておき、統計を取るということを思いつきました。生徒たちの答え方も3グループに分けました。グループは以下の通り。 グループ1:質問に自分で答えられる生徒 グループ2:質問に対する答え方に支援がいる生徒、コミュニケーションの仕方に支援がいる生徒 グループ3:現状では自分で質問に答えられないので、職員が代わりに答える 多くの生徒がグループ3になるのですが、毎日接している生徒なので、学校生活に問題がるようであれば、職員が気にかけているはずなので、職員が代わりに答えることが可能であると思います。それにこうしてでも、生徒一人一人の声を集めることは重要であると思います。  この...

歩けるという可能性ー続編

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今日は、ある方からコメントをいただいたので、それに関して答えていこうと思います。まずは、コメントをくださった方、ブログを読んでくださり、コメントまでくださり本当にありがとうございます。また、9月中にコメントをくださった方、返事を書いていたのに公開するのを忘れていました。コメントの返事が遅れたこと、お詫び申し上げます。今後気をつけますので、これに懲りずに、コメントくださるとうれしいです。  前に書いたのは、こちら。「 歩けるという可能性 」  コメントでは、この「歩けるという可能性」に関して、具体的な子どもの姿やそこから引出されてくる人間的な行為のちがいを知りたいということでした。そこで、少しですが、書いてみようと思います。  少しその前に私の持っていたクラスの話をもう一度しておくと、5年間車いすを使用している生徒たちの担任をしていたのですが、現在は、歩行可能な生徒の担任をしています。 歩けるということは、自分の欲しいもののところへ行けるということ まずは、何と言ってもこれが大きいと思います。私が受け持っていた車いすを利用した生徒たちは、1名を除いて自分で車いすを動かすことができません。他の人が車いすを動かさない限り、その子たちはその場所にいることになります。その上、この子たちは、言葉を話すことができません。発語はあったので、数名の子はときどき大きな声で教えてくれることはありますが、それでも、誰かの手を借りないとその場にいることになります。 この点、今のクラスの子どもたちは、好きなところに行きます。音楽が聞きたいときは、CDプレーヤーのある場所にいきますし、ブランコに乗りたいときもブランコのそばに行きます。絵や写真を使ってコミュニケーションをとる段階に至っていない子どもでも、歩けることによって自分のしたいこと、欲求を伝えることができます。 前のクラスの生徒に4年かかって、車いすを動かす方法を教えました。彼女は、右手なら動かせたので、その手で少しずつ動かす方法を教えます。今では、多少なりとも自分の意志で車いすを動かせるようになりました。 現在のクラスの子どもたちは、勝手にどこかに行ってしまう可能性もあるので、目が離せないのは前の生徒たちと変わらないのですが、勝手に動いてくれるからこそ、言葉を話さない生徒たちが何を考えているのかよくわかり...