2023年12月10日日曜日

2022年のスウェーデンのPISA学習到達度調査の結果考察

  今学期も残り僅かになり、私も疲れを感じるノーベル章授賞式の日曜日です。今週は、2022年のPISA学習到達度調査の結果が公開され、スウェーデンの教育界では大きなニュースとなっています。せっかくスウェーデン語もわかりますし、学校庁のメディア向け報告や様々なニュースをまとめて考察してみようと思います。


1. 学校庁がまとめたPISAの結果

 スウェーデンの学校庁がメディアを集めてPISAの学習到達度調査の結果を発表したのが火曜日でした。そこで発表されたのが以下の結果です。
  • スウェーデンの15歳児の数学的リテラシーと読解リテラシーが低下した。科学的リテラシーは前回と同位。この結果は、多くの他国と同様の傾向にある。
  • 数学的リテラシーと読解リテラシーは、2012年の「PISAショック」の時と同じレベルまで低下した。
  • スウェーデンの15歳児の数学的リテラシー、読解リテラシーと科学リテラシーの結果は、OECD平均を上回った。
  • スウェーデンの学校教育の均等性は悪化した。OECDレベルではあるが、スカンジナビア諸国に比べると劣化している。
順位を以下の表から見ると、数学的リテラシーは、日本が1位でスウェーデンは、18位です。読解リテラシーは、日本は2位で、スウェーデンは14位。科学的リテラシーは、日本は1位で、スウェーデンは17位です。スカンジナビア諸国を比べると、フィンランドとデンマークはスウェーデンより良く、ノルウェーとアイスランドはスウェーデンより悪いという結果になっています。

2.2012年のPISAショックの記憶

 スウェーデンの2012年のPISAショックの記憶は私も思い出すことができるほど、大きなニュースでした。あの2012年並みまで、今回は結果が下がったということで、またまた、スウェーデンの教育界は揺れそうです。少し、2012年と比べて結果を見ていきます。

 数学的リテラシーは上記の図にあるように、2012年にドーンと落ちた後回復傾向にあったのですが、今回またドーンと落ちました。

 読解リテラシーも、同様の結果です。せっかく回復したのに、それがまた落ちたということですが、学校庁側はこれを新しいトレンドとかショックという風には言いたくないようで、そんな感じがいたるところで読み取れます。2012年のあの大騒ぎとその後の様々な対策を考えると、教育現場にいるものとしては、落ち着いて情勢を見てもらった方がいいように思いますが、危機感も持ってほしいところです。

3.今回の結果の要因

 今回のPISAの結果の悪さの要因は、コロナ禍の影響があるというのが、スウェーデンでも、多くの諸外国でも言われています。スウェーデンの結果も多くの諸外国と同様の傾向にあるということも、学校庁が繰り返し話します。ただ、国内外の研究者や現場からは、これに関して冷ややかな意見も聞かれます。スウェーデンは、コロナでも学校を閉鎖しませんでしたし、それを第一要因とするのはどうかという感じです。また、ほかの国も低下したのだからというのは、国の説明としてはいまいちのようにも感じます。このあたりのコロナの影響は、想像するしかないのですが、学校を閉鎖していたら、もっと結果が悪かっただろうという見方もあれば様々です。

 スウェーデンは、学校教育は基礎自治体が運営自体は行っているので、なんとなく、そちらへの責任転嫁のような感じも読み取れ、私もどうなんだろうかと思ってしまいます。今回の結果が今後どのように学校教育に影響を与えていくのか、気になるところです。早々と出てきた案が、学校での携帯電話の使用の禁止。あとはやっぱり、就学前からのスウェーデン語の強化などです。

4.排除率は?

 2018年のpisaの時に大きな問題となったのが、スウェーデン語や障害などを理由に排除された生徒の割合でした。2012年のショックから、2015年でなんとか持ち返したので、それを下げないためにも、また、あの時よく言われたのが、ほかの国はスウェーデンよりも生徒を排除しているのだからというような感じの話でした。今回もこの点については注目されています。学校庁によれば、各学校において、スウェーデン語の問題や障害によって、pisa対象生徒であっても、適切に各学校で判断が行われ、できる限りの対象15歳児が今回のpisaを受けたとのことです。以下がその排除率に関する図になります。2018年よりも、少し減った程度で、結果に配慮するほどではないとのことでした。



 このpisaのテストは、各個人の障害などにテストを合わせることができないので、障害がある場合などは、免除という形で結果から排除されます。どこの国も行っているのですが、図を見ると、デンマークの排除率が今回は高めです。


 もっと詳しく見ていくといろいろあるのですが、今回の結果のまとめとして学校庁が出したものは、
  • コロナの影響が大きいこと
  • 近年の移民や難民の増加の影響は、今回の結果の低下の説明にはならないこと
  • これまでの前向きなトレンドはなくなったこと
  • 学校教育の均等性がさらに悪化したということ
と上げています。書きたいことは多いのですが、長くなりましたので、このあたりで。今回は、少しだけ、ピサの結果をまとめてみました。いろんな記事が次々と出ていて気になります。また、少しずつご紹介できればと思います。

全ての情報は、学校庁のものです。




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