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スウェーデンの教育関係法改正、2025年

  今年も新たな法改正がいくつか行われるので、それに関して、教育組合のサイトをもとに、まとめながらアップデートしていきたいと思います。 1.成人教育機関の職業教育の新しい法律  昨年12月に成人教育機関の視察の仕事をさせていただき、スウェーデンの成人教育機関の素晴らしさと問題や課題を聞いてきて、この話もちらっと聞いてきました。成人教育機関の高校レベルの教育コースと特別支援学校の教育コースを、実習や現場研修を含めた職業プログラムと共に行うことができるようになります。そして、大きな変化だと視察でも聞いたのが、「最低3つの基礎自治体と連携をとって」成人のための様々な教育を提供することというものでした。ある程度大きな基礎自治体なら良いのですが、多くの基礎自治体が小さめであるスウェーデンでは、その中の成人教育をより一層充実したものとするためには、この連携の決まりを設けることは大きな意味があるように思います。これにより、この連携をとっている基礎自治体の間は、自由にコースやプログラムを選ぶことができるようになります。たいていの場合は、住民が通いやすいように、近隣の基礎自治体と連携を取ります。この成人教育機関については、2月の終わりにオンラインで講演をする予定ですので、興味関心のある方は、是非ご参加ください。詳しい日時などは、このブログ、インスタグラム、フェイスブックなどでお知らせします。(2025年1月施行) 2.学校図書館の常任スタッフ設置義務 学校図書館に関する法律は、徐々に厳しくなって、いよいよ常任スタッフがいることが義務付けられます。例外が認められるのは、同じ学校経営系列の運営する他の学校の学校図書館を生徒は利用できる(基礎自治体なら基礎自治体の公立図書館)、他の学校教育機関もしくは公立図書館に業務委託をする場合です。法文書まで確認を一応したのですが、明確な数字での義務化はされていないので、どのくらいの時間常任スタッフがいるかは、各学校に任されています。私の勤務校もこの学校図書館の整備に伴い、ここ数年いろんな形を試してきました。この法改正に合わせて、また新たな方針が出そうな感じもしますし、今現在の「図書館グループ」の4人の先生たちとその他の先生によって行われる可能性もあるかもしれません。この学校図書館に関しては、また別で書こうと思います。あと、例外の部分を加味して...

4年生から成績がつけられるスウェーデン

 「 スウェーデンの教育の特徴~不可がある教育 」で、少し書いたのですが、スウェーデンでは、6年生から成績が付きますが、4年生からも成績をつけることができます。(特別学校は5年より)その法案が出たときのブログの投稿を振り返りながら、今日は4年生からつけられる成績について書きます。旧ブログの日付は2014年、今から10年前です。光陰矢の如しとはよく言ったものです。 1.8年生から6年生に  スウェーデンでは、2012年の秋学期に6年生から成績が付くようになりました。2010年の学校改革の中の一つだったもので、それ以前は、8年生からだったので、日本の中学2年生になるまで、評価は出ても成績は尽きませんでした。2012年のものが現在も使われていますので、評価は、5段階、ABCDEの5段階にFという不可があります。ちなみにFX とかもありますし、成績を出すことができない場合には、「ー」というのもあります。  当時のブログには、今振り返っても思うのですが、PISAの結果のショックからか、次々と出てくる教育関係の改革案に、「教員のお給料をバーンと上げるという案がでるといい」とか書いています(笑)。この2014年当時に案として出されたのが、4年生からの成績を希望する学校には許可するというものでした。法制度が実現したのは、2021年4月1日ですので、案が出てから、実現するまでに調査や議論が重ねられ、実験校で実施し、その結果をまとめ、実現の運びとなりました。これにより、2021年秋学期より、4年生より成績を出しいる学校があることになります。 2.どのくらいの学校で実施されているのか?  4年生で成績を出すためには、各学校は毎年その申請を学校庁にする必要があります。春学期に毎年します。どの学校が、4年生から成績をだしているかは、学校庁のホームページから確認することができ、2023年度は53校です。うち6校が公立の学校ですので、ほとんどが民営、私立の学校です。リストには、未来の女王様であるエステル王女の通う学校も入っています。民営化の影響は、また別に書きたいと思いますが、やはり、成績を早くからつけてという学校は民営が多いですし、それを売りにする学校もあるように思います。逆に考えると、公立には、アンチ派の声も聞こえますし、これまでの議論もどちらかというと批判できな声が多く、初年度に実...

スウェーデンの教育の特徴~不可がある教育

 ブログを旧ブログから移行したのは、コロナ前でもうだいぶ前で、旧ブログの内容を自動的に移動できなかったこともあり、また、忙しさもあり、放置し続けた旧ブログを削除したのが、数年前。その旧ブログの内容を振り返りながらリライトをしています。今日はその中でも重要だと思うスウェーデンの教育の特徴をまとめます。 1.日本とスウェーデンの教育の最大の違い   私はスウェーデンの公立の学校教育に関わって18年、その中で思う日本とスウェーデンの教育の最大の違いは、スウェーデンの学校教育は、成績を6年生からつけ(4年生から成績を出すことも可能)、 不可をがある教育である ということです。これは、私がスウェーデンの学校教育に関わってきてからの永遠の疑問ともいえるもので、近年、この不可をなくす方がよいのではという議論が起こっているスウェーデン、私は複雑な思いで見ています。その昔の旧ブログにもこんなことを書いています。 「スウェーデンの教育にはなぜ不可があるのだろう と思っていました。日本みたいに5段階とかの評価にしてしまえば、話題に上る多くの問題は解決するのにと思っていました。」 2.一人一人の持っている能力を最大限に伸ばす教育  では、なぜ、スウェーデンの学校教育は、成績を6年生から出し、不可をつけるのか。理由は複数ありますが、私が感じる最も大きな理由は、一人一人の持っている能力を最大限に伸ばす教育を目指しているからであると思います。スウェーデンの教育は、Lev Vygotskijの影響を深く受けていることもあると思います。この考えは、スウェーデンのインクルーシブ教育を理解するうえでも感じます。子どもを大勢の中の一人としてみて教育をするか、それとも、その子を「個」としてみて教育するかということにもなります。私は日本で3年弱代替教員をしていたことがあり、その時にちょうど相対評価から絶対評価に変わったと記憶しています。スウェーデンも同じように相対評価から絶対評価に変わっており、その時期は日本よりも早いのですが、このあたりの評価の仕方がかかわっていることも容易に想像できます。 3.納税者を育てる教育  スウェーデンの教育について聞かれると、スウェーデンの方が、学校教育において先生方の「納税者になる」ように育てるという気合が違うように感じてきました。学校教育には、国を維持していくために、税金を納...

スウェーデンの義務教育が5歳からになるかも

 スウェーデンでは、就学前学校(日本の幼稚園や保育園にあたる)の義務化に関する調査がされていたのですが、その報告が今日のニュースでありました。調査開始当時は、3歳からの義務化が検討されていましたが、5歳からの義務化が本格的に議論されていく模様です。  現在のスウェーデンの義務教育開始年齢は6歳で義務教育期間は10年。6歳になったのは2018年なので、まだつい最近です。なので、今回の変更が実現すれば、短期間に義務教育が11年になることになります。  この背景には、スウェーデンの子どもたちの学力の低下、特に言語能力の低下があります。今日のこのニュースと共に大きく報道されたのが、移民の多い地域の子どもたちの6歳児教育開始時の言語能力が十分ではないというものでした。  スウェーデンでは、共働き家庭が多く、みんな就学前学校に通っていると思われがちですが、約6%(22000人ほど)の子どもが就学前学校には通っておらず、通っていない子どもの半分は、外国にルーツを持つ子どもたちなのです。同年齢で比べると、外国にルーツを持つ子どもは83%、スウェーデンの子どもは95%が就学前学校に通っています。この差は、スウェーデン語の習得に大きな影響を与えていると思われます。  家庭でスウェーデン語を聞くことも話すこともなく、就学前学校にも通わず、6歳児教育に通いだせば、他の子どもとの差はとても大きいというのは、想像に難くありません。就学前学校に通うとよいと思われる子どもたちが、実際には通っていないという現実があり、義務ではない現在は、強制することはできません。就学前の段階で、自然な形でスウェーデン語に触れることは、この国で教育を受けるとなれば、とても重要なことであると思います。  この調査では、5歳からの義務化、コミューンが積極的に就学前学校に通っていない子どもを見つけてコンタクトを取ること、3歳になった子どもは全員就学前学校に登録するということなどが提案として挙がっています。  夜のニュースでは、移民の多い地域の子どもが、移民の子ばかりの就学前学校に通い、子ども同士はスウェーデン語を話さず、職員も有資格者でなかったり、スウェーデン語がしっかり話せなかったりしても、義務化することに意味あるのかというようなインタビューがされていました。それでも、集団で日常を過ごし、教育を受ける、保育を受けるという...

カリキュラム変更!デジタル化とプログラミング

 今年のスウェーデンは、本当にいい天気が続いており、毎日快晴。雨が降ったのは数えるほどです。こんな年は、雨も恵みの雨で、降っても文句は出ないほどです。今日は夜夕立が来たので、花に水をやる必要がなくなりました。こんなに毎日外で過ごす夏も珍しいです。  とりあえず、今日はスウェーデンの学校業界っていうものがあるとしたら、そこで、今年最も話題になった話から。それは、 カリキュラムの変更 デジタル化に対応できる子どもを育てるために でしょうね。今の子どもたちは、デジタル化の進んだ社会に生まれ、デジタル化の波に乗って育ち、デジタル化が当たり前の社会で生きていくことになります。そのためには、そういった社会に対応できる子どもをそだてていく必要があります。その旨が、小学校から成人教育までのすべてのカリキュラムに盛り込まれました。移行期間が現在で、変更されたカリキュラムはこの秋から正式に適応されます。  これに合わせて、今年度スウェーデンの学校でデジタル化とプログラミングを研修に取り入れた学校は大変多かったし、このテーマも多く開催されました。教育局のホームページには、様々なオンラインコースが用意されており、うちの学校も子多分に漏れず、このオンラインコースを行いました。  今は2歳にもなれば、携帯で遊ぶし、デジタル化に対応した教育は大切であると思います。残念なのは、スウェーデンの学校あるあるで、教員に対する研修が不十分で、実際に現場でプログラミングまで教えられる先生は数少なく、見切り発車的な感じも受けます。私はプログラミング学ぶレベルの生徒を受け持っていないけれど、教えろといわれたら、慌てて勉強しないといけないので、大変です。デジタル化教育の一環でうちの学校でやったプロジェクトは、また明日にでも紹介します。  では、また!

スウェーデンの就学前学校カリキュラムの改訂

 春学期はお休みがたくさんあって嬉しいなあと思う、メーデーの祝日の今日。天気も良くて、のんびりできました。最近、スウェーデンの教育情報をあまり載せていない、このブログ。ということで、少し、最新情報を。  スウェーデンの就学前学校のカリキュラムが改訂されることになりました。スウェーデンの就学前学校のカリキュラムが最初に出されたのは、1998年のこと。それまでは、厚生労働省に当たるような政府機関が管轄していたのですが、カリキュラムが出された1998年に文部科学省に当たる政府機関に管轄が移されました。あれから、もうすぐ20年ということで、そろそろ見直しが必要だろうということだそうです。2011年に義務教育の他の学校のカリキュラムが大幅に見直されましたが、就学前学校は2016年に少し改訂があったのみだったので、時期的には、そろそろ見直されてもよい頃かもしれません。これから、現場の意見も取り入れながら、改訂を進め、2018年3月23日までに行うとのことです。  改訂の主な点は次の通り。 教育と授業の違いを明確にする 保育的ケアが就学前学校の中心的な部分となりますが、改訂されるカリキュラムでは、その定義をより明確にするそうで、教育的な内容、授業のようなものの定義、誰が行うかなどもより一層明確にしていくそうです。と言っても、「遊び」が最も重要な部分であることには変わりはないとのこと。子どもにとって、遊びは学びの基礎であ理、この部分には変更はないが、それでも、学びの部分の定義を明確にし、今まで以上に教育的な色合いが出てくるのではないかと想像されます。 ITを活用した教育 以前より課題となっているITを活用した教育をどのように就学前学校で行なっていくかが取り入れられるようです。 上記の2点が今のところ、発表されている主な変更点のようです。今後、どのようにカリキュラムが見直されていくのか興味深いところです。

難民問題とスウェーデンのカリキュラム

 白樺の木が黄色くなり始め、木の葉が舞い落ちるようになりました。私は、夏も好きですが、「楽しまなくてはいけない」というプレッシャーにかられる夏よりも、夏が無事に終わり、冬がやってくる感じがとても好きです。  ここ数週間、ヨーロッパの難民受け入れ問題が大きく報道されています。スウェーデンでも連日報道されており、見聞きしない日はありません。かなりの数の難民がここ数週間でスウェーデンにも登録されました。そんな中、ストックホルムに到着しても難民登録申請をしない難民が多くいるということに驚きました。スウェーデンを通過してそのままフィンランドやノルウェーに行く人も多いときき、それならいいのだけどとちょっと思いました。難民として登録してどこかの国から援助を受けてくれるといいのですが、そうでないと少し心配です。  複雑な難民問題はいまだに解決の方向が見えていませんが、スウェーデンでは、積極的に難民を受け入れるという姿勢が政府、国民から見られます。私が関わる人々は数が限られていますが、批判的な言葉は聞きません。うちのコミューンでは、このくらい受け入れるとか、準備が進んでいるということもききます。こういうスウェーデンの人々の姿勢には感心させられます。デンマークが難民受け入れに消極的なイメージがあり、それに対してデンマーク国民が行った「積極的に難民を受け入れよう」というデモに、デンマーク人に対するイメージが少し変わりました。お隣フィンランドでは、このタイミングで財政危機を乗り越えるために大きな改革が行われることになり、国民がストライキを行っているとかいう報道があり、そういう国ではどうやって難民受け入れるのかなとか思ってみたり。。。    先日、職員の休憩室で小学校の先生が嘆いていました。生徒が「難民なんかおいかえせばいい」といったらしい。7歳に子供がいうことなので、当然家で大人が言っているのを聞いたのだろうという話になりました。うちの学校では、子供権利週間がもうすぐあるので、今年のテーマは難民です。  そんなときにふと思い出したのが、スウェーデンのカリキュラムの一部分。小学校のカリキュラムの第1章「学校の理念と使命」の中に「理解と思いやり」という部分があります。その中に、 Det svenska samhällets internationalisering ...