2023年1月6日金曜日

東京大学インクルーシブ教育定例研究会:1月29日開催「文科省調査、発達障害8.8%をどう理解すればよいか」

  先日、「東京大学バリアフリー教育開発研究センターの12月のインクルーシブ教育定例研究会」の動画を見た感想をブログでまとめました。その時に、次回のお知らせ届いたら、ここでも紹介しますと書きました。今日、次回の開催の予定が届いたのでこちらでもご紹介します・次回は、1月29日9時から11時開催で「文科省調査、発達障害8.8%をどう理解すればよいか」というテーマで、講師は石川憲彦先生です。詳しくは、こちらのリンクより、申し込みサイトに飛べますので、ぜひ、ご覧下さい。無料で、いつもすごく内容が濃い、おすすめの会です。今回も申し込み殺到しているようで、増席されて2000席になっています。私はライブで見れないのですが、いつもちゃんとアーカイブを送ってくださるので、海外でも安心です。是非皆さんも一緒に勉強しましょう!



なかなか知る機会がない、スウェーデンの中絶の歴史

      この投稿は、旧ブログの投稿をリライトして、再投稿しています。

2022年7月16日に、初の単著「医療・福祉・教育・社会がつながるスウェーデンの多様な学校~子どもの発達を支える多職種協働システム」を刊行。是非ご一読を😊


 今日は、過去のブログの中から、スウェーデンと中絶の歴史について書こうと思います。過去ブログは閉鎖してなくしてしまおうと思ったのですが、長く書いていて、私にとって貴重な情報が多かったので、少しずつリライトしてアップしています。

1.スウェーデンで中絶が可能になった年

 スウェーデンで中絶が一般的にできるようになったのは、そんなに昔ではなく、1975年です。この1975年に中絶法ができ、中絶が自由にできるようになったそうです。統計が少し古いのですが、過去ブログによると、2008年の統計によれば、女性1000人当たり、24.4人の方が中絶しているそうです。その時多かった地域は、ゴットランド、ストックホルムとその近郊といったところです。この数字は、2008年当時、ヨーロッパでもトップに位置する多さだったそうで、しかも若者の中絶率が高かったそうです。これ、2023年の今の状況を知りたいなあと思います。あれから15年たっていて、予防啓発のプログラムも展開されたので、おそらく、下がっている、下がっていてほしいと思っています。

2。2009年以降に行われた対策とは

  ちょうど過去ブログの内容が、その予防啓発の内容でした。行われる予定だった内容は以下になります。

  • 性教育の見直しと徹底。中学、高校の指導要領に明確にその内容を明記し、教員は性教育の教科の研修をうけ、教育するための教育をうける。
  • 生徒の健康のチームの位置づけ避妊用具などの知識研修をうけた職員を配置。
  • ピルなどの避妊にかかる費用を25歳以下の若者は200krの年間自己負担であとは、補助がうけられる。
  • 学校で緊急用のピル(性行為の翌日に飲むことによって妊娠を阻止することが可能なもの:説明が不足していたらごめんなさい。)の配布。
  • 性教育をSFIという移民のためのスウェーデン語学校でも付属して行うようにする。

 上記のうちの、いくつかは、達成していますし、性教育の今はこちらをご覧ください。

世界で最初に性教育が取り入れられた、スウェーデンの性教育の最新情報2022年版!」

3.詳しいスウェーデンの中絶の歴史

1975年:第18週までの中絶の自由が法律で認められる。特別な理由が認められれば、第22週まで中絶が可能。これ以前は、特別な理由がない限り中絶はできませんでした。

1996年:中絶法の改定。妊娠第12週以降に中絶した場合には、会話によるセラピーが義務付けられる。

2001年:患者記録に関する法律の改定。これにより、中絶がした人のパーソナルナンバー、住所、国籍などの記録が無くなり、日本の厚生労働省にあたるSocialstyrelsenが統計を取ることができなくなりました。理由は、中絶を行った女性に対する批判の元とならないようにするためだったそうです。

2007年:外国の女性がスウェーデンで中絶をすることが可能となる。

2009年:中絶した人の記録の開始が提案されるが、国会で却下される。

2013年:日本の厚生労働省にあたるSocialstyrelsenが行っていた独自の中絶に関する統計が中断される。

2014年:Socialstyrelsenが2013年の中絶に関する統計を発表する。しかしながら、統計の取り方が以前と異なるために、比較をすることは不可能。

 (2015年のブログにあったもので、その後の歴史はまた今度書きたいと思います。)

4.中絶と障害児

 過去のブログを読むと、スウェーデンでは、2011年以降、中絶した人の記録をしなくなっているようで、これ、もう一度確認したいところです。その時にすでに、記録を残しておくべきだという意見があったようで。お隣の国デンマークとフィンランドでは、中絶をした人の記録が残っており、その後についても追跡調査ができる環境にあります。こうした記録は、スウェーデンでは、終末医療と特別な医療などにはあるようです。このため、スウェーデンの中絶に関する研究や知識の多くは、お隣フィンランドのものなどが多く用いられているとあります。スウェーデンでは、中絶が恥ずかしいもの、恥であるという感覚があるからこそ、こういった記録を取らない方向にあるのかなと想像します。しかしながら、中絶に関わる様々な問題をより詳しく研究し、多くの人々に広めていくためには、こういった記録を集めて分析することは重要であると思います。

 私が中絶に関心がある大きな理由が、女性の権利のみならず、障害児だとわかると中絶される傾向があること、出生前診断に関心があることも大きな理由です。生命の始まりから考えれば、女性の権利のみならず、胎児の権利、人の権利は何かというところにまで思いが行きます。スウェーデンの優性思想や出生前診断については、また別に書きたいと思いますが、中絶の大きな理由に、障害児があることは事実です。

スウェーデンユースクリニックの様子


 2009年7月19日と2015年2月10日の投稿をリライトしたものです。

2023年1月5日木曜日

スウェーデンのキャリア教員、ヘッドテーチャーの仕事とは

 以前こちらの投稿で少し書いたのですが、私は、ストックホルム市、そしてスウェーデン最大の特別支援学校でヘッドテーチャーをしています。以前も6年間していて、学校を変わって2年間していなかったのですが、(その間に本を書きました!私の本はこちら。)また、昨年の秋からキャリア教員、ヘッドテーチャーをしています。前の学校よりも何倍も大きく、基礎学校と一緒になっており、ヘッドテーチャーの仕事は、支援学校と基礎学校なので、仕事は多岐にわたります。専門分野は、「生徒の参加と影響、安心した学校生活を送る」という民主主義と価値教育の基盤を築く大変重要なところです。やりがいものすごくありますが、責任と仕事量も半端ないです。今日は、そんなスウェーデンのヘッドテーチャーの仕事について紹介します。おそらく、スウェーデンでヘッドテーチャーしている日本人は、私だけなので、貴重な生の声かなと(笑)思います。

1.ヘッドテーチャーとは

 仕事の内容は、少し古い投稿ですが、2016年のものがこのブログにありますので、そちらもぜひ。「スウェーデンの教員のキャリアアップ制度、第一教諭の現状
 こんな仕事と、簡単に言えたらどんなにいいだろうかというのが実際で、仕事の内容は、学校ごとに違えば、人それぞれで、その学校の今年度大切な内容に即して仕事の内容が決まります。私の勤務校は、5人のヘッドテーチャーがいて、生徒の安全、デジタル化教育、数学、特別支援教育、健康と運動の5つの分野を受け持っています。この5人の先生は、国の予算から毎月5000クローネお給料が上乗せされます。これ以外に、ストックホルム市は、独自の「発展教員」もいて、こちらは、学校の予算で月に2000クローネ付き、うちの学校は、上記の5分野に言語分野がついて、6つの発展領域グループのどれかを担当します。この学校内のグループは基礎学校と支援学校の全ての先生が所属して、縦断的に活動し、学校を発展させていきます。

2.キャリアが積みにくい教員

 教員は、一度先生になるとなかなかその後のキャリアが積みにくいといわれています。大学院にいくとか、副校長や校長になるという道はあるのですが、その間がなかなかないのです。教員から、次のステップが大きすぎるということから、スウェーデンでよくあったのが、先生をやめて違う職業に移る人で、教員不足を解消するために、2010年の学校改革の時に導入されたのが、このキャリア教員でした。ストックホルム市は、以前より「発展教員」みたいなキャリア教員が導入されていたのですが、その予算は、各学校に任されていたので、学校の経済状態によっては、いない学校も多かったのです。このヘッドテーチャーは、国から予算が付くので、どの学校も何名か雇用することができるようになりました。

3.自分で決める転職

 スウェーデンの教員は、日本のように定期的に学校を変わったりしないので、自分で、転職を決めます。キャリアを積むというわけではないかもしれないのですが、今の現状を変えたいなと思うと、違うタイプの学校に変わったりすることはよくあります。雇用は、その学校のこの教科や学年という風になるので、変わるときに、今度は、中学年を教えるとか、自分で決めることができます。私も、今の学校に変わる前は、ストックホルムの中くらいの基礎自治体の6年生までの学校併設の支援学校で勤務してみて、私は大きな学校の方があっていると思って、今の学校に移ったので、キャリアではないですが、自分で決めることができる良さがあります。

4.研修の準備

 スウェーデンの学校は、年間に何日か学校が休みになり、(学童はやっています)先生が研修をします。これらの研修日の担当をするのも、私たちの仕事になることが多いです。秋学期の秋休みは、大きな研修を各グループが全校に行いました。その準備も大変でした。来週の月曜日も研修日なので、その準備を今しています。今回の内容は、今年から3年間行う、全国の支援学校と大学との連携プロジェクトで、こちらは私のメインの仕事でもあるので、休み中もこつこつと準備をしていました。こうした研修の準備もだいぶ慣れましたが、こうした会議はあまり時間が取れないので、毎回毎回が大変貴重であり、いかに計画をしっかり立てておくかがカギとなるので、やっぱり毎回緊張します。


ブログでは、スウェーデンの学校でどのように発展プロジェクトなのがされているのか、また、報告していけたらと思います。

 


 


2023年1月2日月曜日

AAC:拡大代替コミュニケーションとは

 この投稿は、AACについての投稿をまとめて、リライトして、再投稿しています。


 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。2023年が皆様にとって素晴らしい年となりますように願っております。

 今日は、過去のAACについての記事をまとめて書こうと思います。私は、AACの普及活動をしているスウェーデンの非営利団体のボードメンバーとしても活動しており、新年に何を書きたいかなと思ったときに、やはり、AACについて書きたいと思いました。以下はホームページなのですが、オランダのAAC協会が作ったAACについてのインフォメーションビデオが見れます。言葉はオランダ語で、字幕はスウェーデン語なのですが、是非ご覧いただければと思います。

スウェーデンのAAC協会のホームページ


AACを各言語で書くと次のようになります。

英語:AAC:Augumentative Alternative Communication 

スウェーデン語:AKK: Alternativ och Kompletterande Kommunikation 

日本語:拡大代替コミュニケーション

じゃあ、この「拡大代替コミュニケーション」はいったいどんなものなのかと、簡単に言うと、「私たちが普段使っている話し言葉の代わりとなったり、補助したりすることで、誰もがコミュニケーションをとることができる」ものです。多くの人は普段「自分は言葉が話せて素晴らしいなあ」と思うことはあまりないかもしれませんが、「言葉が話せる」ということは、とてもとても素晴らしいことなのです。この「言葉を話すこと」が何らかの理由で難しい場合であっても、地球上の全ての人には、意見表明権があり、コミュニケーションをする権利があるのですが、言葉を話せないとこうした権利がないがしろにされる、そこにいないかのように扱われることは、残念ながら、珍しくありません。スウェーデンの特別支援学校で重度の重複障害児の教育を長らくおこなってきましたが、福祉の国スウェーデンでも、私の生徒たちは、悪気はないけれど、忘れ去られているという経験を何度もしてきました。だからなのか、自分たちから声を上げることを続けていかなければと思って、いろんな人と繋がりながら、団体に関わりながら活動を続けています。

コミュニケーションをする権利は、人間の基本的な権利の一つなのです。スウェーデンでよく言われる、私の大好きな言葉にこんな言葉があります。

「Alla kan inte tala, men alla kan kommunicera. 

(すべての人が話すことはできないけれど、

すべての人がコミュニケーションをすることはできます。)」

その人に合ったコミュニケーション方法が確立され、その方法を習得する機会が保障されていけば、どんな人もコミュニケーションをとることができます。このことにより、社会への参加の機会を持ち、広めていくことができ、より人間らしい、豊かな生活を誰もが営むことができるのです。


生徒の一人が使っていたコミュニケーション機器。

このブログでAACについての記事はいかになります。

AAC拡大代替コミュニケーションの種類

スウェーデン・ウプサラ広域行政体の「支援のための手話」を学べるサイト

かなり過去の投稿になりますが、

PODDを学んだヨーテボリ研修

コミュニケーション福祉センターでの会議


日本でこのAACについて広めていく活動をいつかしたいと思っています。日本ですでに活動している方や興味がある方、ぜひ、ご連絡をくださるとうれしく思います。このコミュニケーションが権利であるということ、もっともっと伝えていきたいと思っており、何か今年はできたらいいなあと思う新年です。