2024年1月13日土曜日

入れ替わりが激しいスウェーデンの学校の校長先生

  今週のスウェーデン教育界のニュースで大きかったのが、「入れ替わりが激しい校長」により、多くの学校が課題を抱えているというものです。スウェーデンでの教員経験がもうすぐ20年になろうとしていますので、これは事実であり、私も何度も体験してきています。


1.日本と雇用形態が異なる校長職

 まず、簡単にスウェーデンの学校の校長職の雇用に関して説明しておく必要があります。スウェーデンは、日本のように地方公共団体などに雇われる形での雇用ではなく、基本的に配置換えもありません。多くのほかの職業同様に求人案内が出るので、それに応募します。求人案内は、「この学校の校長先生」という風に出て、そこには、詳しくこの学校での今の校長に求められるスキルが書かれており、自分で決めて応募することになります。これは教員なども同様なので、私も求人案内は常にチェックして、希望のポストが空くと応募するということを繰り返しています。日本のようにあっちの学校にこの校長先生というような計画配置は行われません。もちろん、優秀な方にヘッドハンティングのような形で声がかかる、声をかけるということはありますが、その人も他の方と同様に応募することになります。また、基礎自治体の中で、例えばストックホルムだと、母体が大きいので、過剰雇用で余ってくる校長や副校長、教員などは、市内での移動もあります。


2.入れ替わりが激しい校長職

 今回の学校庁のレポートは、もうだいぶ前から言われており、校長になりたがる人が少ない、定着しない、キャリアの一環で違う仕事に移っていってしまう、教員経験のない校長が来て大混乱(今は法改正されているのでおこりません)など、校長にまつわる問題課題は議論され続けてきました。その流れで、調査をすることになり、その結果が以下のように出ました。

  • 10校に3校の基礎学校で、校長の入れ替わりが多く、3から5人の校長が5年間で入れ替わっている。
  • 民営(私立)の学校より、公立学校の校長の入れ替わりが多い。
  • 都会の学校よりも田舎の学校の方が、校長の入れ替わりが多い。
  • 社会経済的に課題を多く抱える地域(外国の背景を持つ生徒が多い地域)の学校の方が校長の入れ替わりが、多少少ない。
というのが、大きな結果でした。私は今の勤務校は3年目で、校長同じですが、副校長は3人目なので、毎年新しい人となっています。校長は同じだけど、かなり影響を受けます。これが校長となると、学校は大変ですし、何より、働いている職員が「またか」と思うんですよね、新しい人来ると。。。

3.校長が定着しないことによる最大の問題は?

 校長が定着しないことによる問題は数多くあります。上記のように各学校に合わせて雇用され、何年勤務するといったような見通しもないので、校長先生は、新しい仕事が見つかると辞めていきます。スウェーデンの場合、やめるということを伝えてから3か月後にやめるというのが一般的なので、辞めるという連絡があって、すぐに新しい校長先生の募集にかかります。校長、副校長職となると、新しい人の採用の過程が長く、時間がかかるので、新しい人を採用しても、その人が現職をやめることができる日を待っての採用になるため、結局は半年ほどごたごたするというのは、ざらにある話です。やっと、様々な過程を経て採用できた好調だけど、3か月から6か月でやめてしまうと、また振出しに戻り、その間、ほかの学校に関する様々な活動や会議などが、停滞するという事態に陥ります。多くの場合、副校長が代理の校長となって学校を仕切りますし、副校長の仕事が下に回されるということも珍しくなく、私に待ってくる仕事も増えたりします。この校長不在による学校の発達の停滞が最大の問題であろうと思います。

4.「学校の発達」で語られるスウェーデンの校長の仕事

 スウェーデンの学校で重要なキーワードは、「学校の発達」です。学校を発達、発展させていくことが重要であり、そこには、未来を担う若者を育てていくために学校が変わっていくべき、発達させていくべき課題を見据えていく必要があるという気合であり、各学校には、その学校に置かれる生徒の問題や課題、学校の組織発展などの課題があり、それを発展させていく必要があるとされています。この重要な仕事を仕切って、リードしていくのが校長です。校長がいかに普段から学校の実態を把握し、学校庁や基礎自治体、政治の方針に従って、その学校の発達を考え、組織していくかは大変重要な仕事であり、校長不在になるとこの部分が機能しなくなります。これにより、荒れる学校、教員がやめていく学校などは、良く見聞きします。上記のように、教員も自由に転職できますので、校長の入れ替わりが大きいと、教員も変わっていってしまうというのもよくある話です。


5.ストレスが多い校長職

 レポートには、校長の責任と事務仕事の増加によるストレスの影響が書かれています。校長職の仕事の多さや責任の大きさは、私もやる価値があるか悩むところで、特に近年の財政削減により、校長が行わなければならない人員整理などの仕事は、大変だろうなあと思います。一応中間管理職になるので、校長の仕事をじかに見てきて、苦悩される姿も多く見てきて、いろいろと思うことはあります。


6.学校庁からの助言

 学校庁からの助言提案としては以下の内容が上がっています。

  • 基礎自治体の責任者が、なぜ校長の入れ替わりが激しいのか分析して、対策を練る必要があること
  • 基礎自治体の責任者が校長の仕事内容などを見直し、適切なものとすること、例えば事務仕事などの仕事はほかの人に回すなどの工夫が必要
  • 校長と基礎自治体の責任者が協力して仕事内容を見直す必要があること、建物や法律関係のものなどは、その専門家に委ねるなどの見直しが必要
  • 校長は校長のプログラムをきちんと終えるように見届ける必要があること、校長プログラムを受けている間の仕事の責任の配分を変えるなどの工夫が必要
  • 国は校長の事務仕事の見直しに協力する
といった内容でした。校長、副校長に関しては、書き出したらまだまだかけるので、また別の機会に実態を書きたいと思います。皆さん、良い週末を!

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