2015年10月24日土曜日

スウェーデンで起きた学校襲撃事件

 もう直ぐ秋休みだと生徒も教員も楽しみに過ごしていた今週の木曜日に、スウェーデンに、スウェーデンの学校社会に大きな衝撃を与える事件が起きました。なんてことはない普通の日が、一瞬にしてスウェーデンの歴史に残る闇の日となりました。

 事件が起きたのは、スウェーデン第2の街、ヨーテボリから北に少し行ったところにある「トロールヘッテン(Trollhätten)」という街の学校でした。トロールヘッテンといえば、スウェーデンの車会社サーブがあった街として有名です。6歳児教育のクラスから9年生まである「クローナ学校」に、覆面をし、仮装した21歳の若者が刀のような刃物を持って現れ、教員と生徒を襲いました。スターウオーズのキャラクターによく似た格好で現れたため、ハロウィンが近いこともあり、冗談だと思った生徒が犯人と一緒に撮った写真は、世界中に配信されることとなり、この写真を撮った後に、刃物で生徒アシスタント1名と生徒1名を殺害し、2名に重傷を負わせました。


 事件から数日たち、背景や動機などが少しずつ明らかにされています。2名の尊い命を奪った21歳の若者は、警察によって発砲された2発のうちの1発が胸に当たり、搬送された病院で数時間後に亡くなりました。犯行の動機は、移民排斥と人種差別であることが明らかになり、ここ数日続いている難民のための施設放火事件と重なり、難民や移民の問題が深刻であることを明確に表しています。この学校は生徒の半分ほどが、移民の背景を持つということで、殺害された2名も肌の色が白くない教員と生徒であったということでした。目撃情報によれば、犯人は、肌の白い生徒には危害を加えることなく通り過ぎたということに加えて、動機などを書き記した文書を残しており、そこにも人種差別、移民に対する感情が書かれていたとあります。

 
 スウェーデン語で「PK」と言葉があります。意味は「Politisk Korrekthet」、「ポリティカル ・コレクトネス、政治的に正しい」で、スウェーデン人たちが、よく使っています。この間、研修があったのですが、その時にも話し合いの際に、担当者が「PKである必要は無い」と付け足していましたが、この言葉が会話に出てくるたびに、私はスウェーデン社会にある表と裏が象徴されているように感じます。毎日やってくる大勢の難民を受け入れる、人道的に助けるのが人として正しい、PKであるのだという裏には、難民受け入れに実は消極的な考えがあるのだろうと想像してしまう時があります。


 今回のような学校での事件は、すでにアメリカやフィンランドで起きていますが、スウェーデンでは近年起きておらず、国中が大きな衝撃を受けています。学校で起きた事件としては、1961年にダンスの授業中に起きた事件があるそうで、その時は生徒1名が亡くなったそうです。無差別ではなく、特定の生徒を狙って起きた事件は幾つかあります。こういった事件を起こす人物にありがちな問題や家庭の問題などを、今回も探しているようですが、ごく普通の家庭で、両親は離婚しておらず3人兄弟で2人姉妹がいて、目立つタイプではなかったという21歳の若者。スウェーデンで起きた事件では珍しく、顔写真も名前も事件発生とともにネットに出回り、テレビでも公開されました。



 この事件と連日続いている放火事件と合わさってか、昨日は、難民に対するビザの制限が発表されました。今まではシリアからの難民など特定の人々には永住ビザがすぐ出るなど、他の国と比べると緩やかであったスウェーデンですが、今回の合意により、例外を多く含みますが、永住ビザではなく、期限付きのビザが出されることになりました。これにより、スウェーデンを選ぶ難民が多少なりとも減ることを狙っているのですが、効果は薄いであろうとすでに報道されています。しかしながら、今まで全面的に難民を受け入れる姿勢であったスウェーデンが、受け入れに対して一線を引いたことは大きなことであると思います。

 
 スウェーデンの学校は、伝統的に地域の中でオープンであり、学校に校門や柵などはない場合が多いのですが、今回の事件では、学校の安全性についても大きく取り上げられています。被害にあった学校は、カフェと図書館が併設しているそうで、常に外部の人が出入りをしていたそうです。この事件は、事件発生直後から大きく報道され、スウェーデン中の子供達が何らかの形で情報を得たとも言われ、全ての子供達が安心して学校に通うことができるように各学校で話し合いがもたれていることと思います。子供達が安心して学べる学校があり、そこでは、お互いを尊重できる心を育てていかなればならないと心から思います。




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