スウェーデンのインクルーシブ教育と特別支援教育の意味とは

  今年は、夏のコースで、ずっと取りたかったインクルーシブ教育についてのコースを取っています。今までは、コースのスタートが、ちょうど学校の最後の研修日と重なっていて、受けられなかったのですが、今年のコースは日程がずれており、よしっと思った次第です。このコースの昨日のコースの内容が大変興味深かったので、ここでアウトプットしながら、ご紹介したいと思います。

1.インクルーシブ教育と特別支援教育の立ち位置の変化

とても壮大なテーマであると思うのですが、スウェーデンで、近年聞かれるのが、「特別支援教育が必要なくなり、教育の中に含まれること」が、インクルーシブ教育に向けて、そして、インクルーシブ教育において重要ではないだろうかというものです。同じような内容は、もう10年、15年聞かれていますが、ここ数年は、より一層その傾向が強くなり、その最も大きな動きとして、学校庁が「合理的配慮の廃止」を持ち出したことにもあると思います。これに関しては、反対意見も多く聞かれるのですが、いかに、今まで特別といわれてきた教育を、普通の教育として普通の教育の中に融合できるかは、今後の大きな課題でしょう。

2.インクルーシブ教育と特別支援教育の意味とは

インクルーシブ教育と特別支援教育の意味と大きな役割は、現在のインクルーシブ教育がどういうものであるのかを把握し、それが参加や学び、発達という面からみて、排除の状態であるならば、それらの要因を探り、特定していき、改善していくことが重要であるだろうと。今の状態がよいインクルーシブ教育の状態であるのならば、その良い要因を探り、特定し、維持していくこと、本人の成長や変化に対応させていくことも重要であり、つまるところ、インクルーシブ教育において、完全な形、終了型というのはないというのも、全くの同感です。この考え方であれば、常にインクルーシブ教育というのは、生徒一人、その生徒がいるグループ、学校などであれば組織、そして、社会とつながっており、変化し続けるものであるのだと思いますし、今現在、インクルーシブ教育の形で成功したという国がないのもうなずけます。

3.インクルーシブ教育「あちら派」と「こちら派」

2024年12月の投稿に「インクルーシブ教育のこちら派とあちら派ーインクルーシブ教育に思うこと」という記事を書きました。あの時にも感じていた、あっちとこっちに分かれる現象について、今回の講義では、最初にとてもうまく説明していたと思いました。日本語にすると、スウェーデン語で私が受けた「よく説明されている」という印象がなくなってしまうのが残念なのですが、「受け入れられる」ことと「仲間外れにされる」になるかと思います。自分が「私たち」という「受け入れられる」感情を持つには、必ず、その私という集団に属さない人々がいることが条件になり、その属さない人が複数であれば問題ないのですが、一人になってしまうと、問題が生じます。学校などであれば、仲間外れにされた一人の子どもがいるとなります。ただ、このあちらとこちらは、生まれるものであるという、ある意味、穏やかな事実の説明に深く納得したのです。

4.なぜ、インクルーシブ教育は難しいのか

講義の中心は、実は就学前の子どもたちの遊び仲間の形成に関するもので、インクルーシブ教育を直接的に扱ったものではなく、そこがまた興味深かったです。この就学前学校での研究も大変興味深いので、また別に記事にできたらと思います。なぜ、インクルーシブ教育が難しいのか。答えはきっとものすごく単純で、これという完成型やマニュアルがなく、一人の人の気持ちに寄り添うこととその周りを繋いでいく必要があるからではないかと思います。今回は、就学前教育段階と高校でのインクルーシブ教育に焦点を置いた講義を聞いたので、もちろん、その年齢や学校形態、国などによって、ある程度の形は作られます。しかしながら、インクルーシブ教育は、一人の子ども、属している集団、そこにはまた何人もいる子どもたち、組織、社会と複雑に絡み合うので、そこに柔軟に対応していけるスポンジのような役割の人たちがいて、それらの人とうまく絡み合いながら、常に変化していくというのが、難しさの一つの要因のように思います。印象的だったのは、たとえ一つの授業でインクルーシブ教育がうまくいっていると感じても、休み時間やほかの教科でうまくいっているというわけではない場合もあり、そうした部分的に見ていくのも重要であるとのこと、これを聞いて、スウェーデンのインクルーシブ教育は、このスウェーデンの形で試行錯誤しながら変化を続けているのだと確信しました。


インクルーシブ教育は、大きな私の中のテーマでもあり、このブログでも何度も出てくる内容です。今日は、昨日の講義を振り返りまとめてみました。


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