夏休みを満喫できない子どもたち

このブログは、ブログを一度移行しており、旧ブログの記事を読み直して、リライトをしています。今回は、2009年7月の記事をもとにして、書いています。

夏休みというのは、多くの子どもたちが大変楽しみにしている長く自由なお休みです。スウェーデンは、年度末に夏休みがあたることもあり、また宿題を出す習慣もないため、この長い2か月半に渡る夏休みは宿題も出ません。しかしながら、この長く自由な夏休みを満喫できない子どもがスウェーデンにも多くいます。今日は、そんな子どもたちの実態についてです。

1.家庭に問題のある子どもたちの多さ

旧ブログの記事を書いたのは2009年なので、自分の書いた文章に「日本と比べると」という部分があり、印象的です。2025年の今は、日本を離れて長く、比べることは難しくなってきています。何を比べるとというと、アルコール中毒や薬物中毒についての話がスウェーデンでは日本よりもオープンにされるということ。現在は日本でもよく話題になるようになったのではないかと思います。いかがでしょうか。

スウェーデンでは、親がアルコール中毒や薬物中毒、もしくはそのほかの何らかの理由で、精神的もしくは身体的に虐待を受けたことがある子どもが、かなりいます。以下のグラフは、「Blå」と呼ばれるスウェーデンの犯罪予防評議会が出している最新の統計になります。これは、届け出が出されたものであり、届け出が出ていないものを加味すれば、これ以上の児童虐待が行われていると思われます。0~6歳児の虐待の多くは、就学前学校で発見されるので、夏の間の届け出が減るそうです。スウェーデンの学校などは、何かしらのネグレクトや虐待の疑いがある場合には、届け出をする義務があるので、目の届かなくなる夏には届け出も減るというのは、夏休みを満喫できていない子どもたちがどこかにいることになり、心配になります。


緑:0~6歳、オレンジ:7~14歳、紫:15~17歳 (出典


2.夏休みになるとなくなるもの

夏休みになると何がなくなるのか。まず、スウェーデンでいわれるのが、給食です。やはり食べ物って大きいですよね。物価の上昇に伴い、困窮家庭が増えたことがわかるのが、学校給食での消費が増えることと聞いています。スウェーデンの学校給食は、バイキング、ブッフェ形式なので、好きなものを好きなだけとることができます。このため、上記のような物価上昇と学校給食の関連性が見えたりするのです。低学年の生徒で学童に通っていたりすると、朝食と午後のおやつも出るので、それもなくなります。試験的に夏休みの間もランチを提供している地域もあるようですが、そんな話も今年は聞いていません。

それ以外にも、勉強の機会、何かを学ぶという機会がなくなりますし、規則正しい生活、そして何よりも、安心して話せる信頼できる大人の存在がなくなります。2か月半もこれらのセーフティーネットがなくなることは、こうした家庭環境に置かれている子どもたちにとって、大変つらいことだと想像に難くありません。

3.精神的虐待とは

身体的な虐待、経済的な虐待というのは、わかりやすいように思います。それに比べて、精神的虐待には、わかりにくいかもしれません。旧ブログの中にあった子どもの声です。

「お父さんが朝からビールを読んでいて、だんだんと酔っぱらって、性格が変わっていくのを見るのがつらい。冷蔵庫が閉まり、1本、また1本とあけられていくのを見るのが嫌だ。学校があれば、昼間は逃げられるけど、休みになると、そういうわけにもいかない。友達はほとんど旅行にいっていないし。」

とあります。多くのスウェーデンの子どもたちは、たいていサマーハウスに出かけたり、旅行に出かけたりして、家にいないこともあります。コロと呼ばれる、夏のキャンプに参加する子どもたちもいます。そうなると、こういった子どもたちの精神的な苦痛は、想像を超えるものがあります。近年の若者の犯罪にも、こうした家庭の問題が大きくかかわっているのも想像に難くありません。

学校でも、夏休み明けは、「何をしたか聞かないように」と言われます。何をしたか言えない子どもがいるので、子どもが自分から話すのはよいのですが、大人からは聞かないようにという配慮です。こうした精神的な虐待は、身体的虐待などに比べると届け出も出しにくく、発見しにくいと思います。

4.子どもたちを支える仕組み

こうした子どもたちを少しでも救おうと活動しているNPO団体などもありますし、基礎自治体による様々な取り組みもされています。サマージョブと呼ばれる夏のアルバイトも積極的に基礎自治体が募集して取り組んでいますし、子供向けのサマーキャンプ、寝泊りを含まない夏の日中の活動、オンラインや電話などでの相談窓口などがあります。これらの多くは年齢がある程度高くなってきて、自分で意思表示ができることが基本となるものも多いので、年齢の低い子たちを支えていくのは、やはり周囲の人々の目と思いやりであるようにも思います。

長い夏休みを、一人でも多くの子どもたちが楽しんでくれることを願うばかりです。

(旧ブログの2009年7月23日の記事をリライトしました。)


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