どの国の教員も働きすぎ?! スウェーデンの「教員がやらなくていいことリスト」

 みなさん、こんにちは!少しずつブログの更新をするようになり、コメントをいただけるようになり、大変うれしく思います。本当にありがとうございます。休暇中ですが、臨時職員登録をした成人の障害者のグループホームで働いたり、自営業の方で、お仕事をいくつかいただいたりと忙しくしております。声をかけていただけることに感謝するばかりです。今日は、スウェーデンの教員組合が出した「教師がすべきでない業務」を見ながら、教員がいかに「教える」という本質的業務に遂行できるかを考えてみたいと思います。

1. どの国の教員も業務過多傾向

日本の教員は「ブラックだ」と聞きますし、教員のなり手がいないという現状も見聞きします。スウェーデンでも、教員はあまり人気のある職業とはいいがたいです。スウェーデンは深刻な教員不足だった時期もあったのですが、お給料を改善したり、キャリアアップ制度を作ったりして、持ち直したのも束の間、また別の問題が起きています。日本の教員に比べれば、職務も整理されている感じがしますが、やはり「教えること」以外の業務が多いのは、変わらないと思います。また、この周辺業務と書いた部分の仕事の中に、実は、教える上でとても重要だと思われる部分があるのも確かですし、教員の仕事は、探せば探しただけあるというのが私の経験で、いかに自分でこれはしないと決めるかも重要になってきます。このあたりは、「教師」という職業の特性ともいえるかもしれません。しかしながら、こうした周辺業務をきちんと整理しないとによって、本来の教員としての仕事が十分にできないという現状は、更なる教員の離職を促進してしまう危険性もあり、こうした議論は重要であると思います。

2.スウェーデンの「教員がやらなくていいことリスト」が出た背景

このリストが出てきた背景には、「幼稚園教諭及び教員の業務時間に関する規制と事務負担の軽減に関する調査」というのを国が行ったことにあります。先日、スウェーデンの義務教区が10年生になるという記事を書きました。この改革に伴って行われた調査で、就学前クラスで働く幼稚園教諭と教員の授業時間数をどのように規定するかなどを分析して提案することを目的とし、前々から言われている教えること以外の事務作業を削減して、授業や授業に関連する業務に充てる時間を確保していく狙いがあります。特に、よりよい授業をするためには、その授業を計画する時間と授業後の振り返りの時間など、授業前後の時間をどのように規定して確保していくかを調査して、分析、提案することを目的としていました。

3.どんな業務をしなくてよいのか?

では、いったいどんな業務をしなくてよいとなったのでしょうか。これはあくまでも提案の段階なので、実際に教員がしなくてよくなった業務ではないことを、まず書いておきます。今後の更なる議論が必要である部分も多いように思います。また、やらなくていいというのは、あくまでも教員がやらなくていいだけで、学校としては、校長を含めたほかの職種の人々が行うべき、そちらに任せるべきであるということです。

  • 試験結果の登録
  • 全国学力テストの結果を学校庁に提出
  • 欠席の報告・対応・調査
  • 各種機関への情報提出
  • いじめや差別などの記録及び調査
  • 消耗品の注文
  • 代替教員の確保
  • 生徒名簿の管理
  • 各種証明の発行
  • 掃除
  • 清掃(手工芸などの芸術科目の授業に出る清掃を除く)
  • 修理作業
  • ごみ処理
  • ICT関係の問題処理
こんなところが載っていました。出典
私の今の職場は、生徒数が割と多いので、かなりの部分は事務職員などで行われており、私がこれはどうかなと思ったのは、欠席に関するものです。いじめや差別の部分は、学校ソーシャルワーカーなどが行うべきという声もあるのですが、今のところは、その現場に居合わせた職員が行うことが基本となっています。前に働いていた小さい学校だと、もう少し業務は増えるので、学校の規模などによってこれらの業務を行うことになっているところとそうでないところの差は大きいように思います。

4.現場の先生たちの声は?

 先生方の声としては、やはり、出席のところと、いじめと差別のところで意見が分かれるように思います。私もこのあたりが難しいところだと思っています。欠席率を確かめるところは、学校ソーシャルワーカーが行っていますが、それに対応するのは、やはり、普段かかわっている教員でないと難しい気がします。スウェーデンは、メンター制度を取っているので、教員一人あたりの担当生徒は、10人前後になることが多いとは思うのですが、それでも、教えている生徒となれば、数は増えますし、連携も取り合う必要があります。この部分をどうやって、ほかの職種に回すかは、今後議論が必要です。これと同じなのがいじめや差別に関する部分です。こうした議論を深めていくことで、一つの方法としては、教える授業時間数を減らすというのもあります。スウェーデンの教員は、組合の交渉によって、多くの場合、週1080分の授業をする場合が多いのです。この時間数をこうした事務に回すというのも今後議論の余地があると思います。


 この調査書類、700ページを超えるものになっていて、私は読んでいないのですが、こういった書類は実際に読むと結構興味深かったりします。書きながら、日本の多忙を極める教員の方たちを思い、どこかの新聞社に投稿文でも送ろうかなあと思いだした次第です。

スウェーデンの子どもや若者が集まれる施設の様子、公園に併設しています。




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