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12月, 2023の投稿を表示しています

ストックホルム市の教育予算削減 その2

  前回に続き、2023年回顧録ということで、ストックホルム市の教育予算削減についての投稿になります。 その1はこちらを 。 3. 組合を含む会議による人員削減プロセス  その1の2で書いたのですが、教育予算削減の関してのリスク分析が行われ、それと並行して、かなりのスピードで行われたのが、人員削減を法律や決まりにのっとり、できる限り透明に行うために、普段は月1の関連会議が頻繁に行われました。といっても、私はこの会議には出席しないので、はっきりと内容などを書くことはできないのですが、この会議は、職員側の代表として、組合の係りの職員が出席します。うちの学校の場合、教員は教員組合で、この当時は2組あり、それに加えてアシスタントなどは所属する組合があり、その代表が出席します。そこに、ほかの組合の代表がいれば入り、校長や副校長、経営担当者などが、会議を行っていました。多いときは週1くらいで行っていたような記憶があります。もしくは、長い会議を行っていたような気がします。この会議で、雇用する側されている側双方の理解を図り、できる限り迅速に行うことで、削減される人は、ストックホルム市内での配置換えを申請し、秋学期からほかの学校や職に移ってもらうということになります。  この過程で私たち全職員が行ったのは、ストックホルム市の職員としてどこで何年働いたかという確認書類にサインをすることです。この雇用年数の短い人から削減対象になるので、間違いがないようにという配慮です。生徒数650人ほど、職員は、100人ほどいるので、作業としてはそれなりに時間がかかるものでもあります。そして、削減対象の人が決まり、この最終決定の会議が行われたのが、4月頭だったと思います。 4.リスク分析会議  私たち全職員が行ったのが、リスク分析会議です。スウェーデンの学校では、1年に1回職員アンケート調査が行われ、その結果に基づいて、職場の改善プランを立てます。これに基づいて作られた改善プランに加えて、今回の職員削減、教育予算削減がどのようなリスクをもたらすか、影響を与えるかを書いていきます。それ用の用紙があり、項目に従い、リスクのあるなし、その程度などを話し合い書きます。これを各グループでしました。私は、支援学校の先生たち、9人と行いました。今振り返ると、あの会議は、生徒のアシスタントとも行うべき...

ストックホルム市の教育予算削減 その1

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 私はストックホルム市の教員、公務員をしています。スウェーデンの公教育に関わって、もうすぐ20年になろうとしていることに驚きを隠せません。日本の方と話が合わないことがあるのも当然だと思いながら、昨日の今年の振り返りで、さらに振り返っておかなくてはと思ったのが、教育予算削減です。せっかく、現場で働いているのだし、このブログ、もう読んでいる人はほとんどいないのだし、現場から見た事実を書こうと思う。表面的な情報は、ネットでいくらでも見つけられる時代だし。ということで、時系列に、記憶をたどって、スウェーデン、首都ストックホルム市の教育予算削減の影響を振り返ります。 1.2023年1月、教育予算削減の第一報が入る  ちょうど1年前になりますね。年が明けるとスウェーデンでは春学期が始まります。学期初めの初日は職員の研修日です。その日は私は振り返ると、ヘッドティーチャーとして、今やっている全国の支援学校との共同プロジェクトのスタートを切る会議を前の副校長と計画し、2時間の研修会議を受け持っていました。というのは、良い方の記憶で、このころから、風向きが怪しくなってきていました。スウェーデンの学校での予算削減の影響を受けるのは、今回が初めてではなく、前に勤務していたストックホルム郊外の小さな市や少しだけ勤務した市でも働いていた10か月の間、ずっといかに予算削減に対応するかという会議でした。このあたりが、日本でもそうなのかなと、この夏の帰国で日本の先生と議論したいところですが、お金が削減されるという予算計上が出されると、市から校長会などを通じて校長に連絡が入り、そん後の学校の会議は、この内容でほぼ一色になります。 2.2023年2月から始まった、教育予算削減に関するリスク分析  記憶が正しければ、うちの学校の定例水曜日大会議(学校中の先生が集まって30分の会議がある)にて、詳しい説明を受けました。どのくらいの削減で、どう影響をうけるのかなど。記憶しているユニークな説明は以下の通り。 ストックホルム市の予算が厳しいのは世界情勢や物価高もあるが、スルッセンの工事にお金が予想以上にかかってしまったこと。もちろん、この理由は公では言われませんので、冗談半分でいわれる事実であると私は認識していますが、時折出てきます、この話。。。スルッセンとは、ストックホルムの旧市街とその隣の島を結ぶ地域で、数年...

2023年を振り返り

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  2023年も残り数日となりました。AIに年の瀬に書くとよいブログのテーマを提案してくださいと頼んだら、ちゃんと素晴らしい候補をいくつか挙げてくれ、その中から、今年の出来事や成果を振り返り、新しい年に向けての抱負や目標を語る記事を書きたいと思います。今年は、年初めから波乱万丈で、私のSNSをフォローしてくださっていた方は、ご存じの通り、ツイッターは閉鎖し、Youtubuチャンネルは休止、このブログは不定期更新、かろうじてインスタグラムが更新され、連動してフェイスブック更新という感じで、アウトプットが少なめの年でした。そんな2023年の締めくくりにまとめる今年の出来事は以下のようになるかなと思います。 1.特別支援教育士(Specialpedagog)資格習得  2023年の大きな出来事は、やはりこちらになるかと思います。長らくとるか取らないかと、うだうだしていた資格をついに取り終えました。一区切りついた感はありますし、最後の論文書くのが大変でした。二人で書く予定が、途中から一人で書くことになり、書き始めたと思ったら、義理の父が心臓発作で倒れ、その後亡くなりまして、もうあきらめようかなと思ったのですが、何とか書き終えて卒業したという、こうして振り返ると、なんてことない感じですが、実際には大変でした。  資格習得をして何か変わったかというと、何も変わっていません。この資格で働ける仕事に転職しようというプランや起業しようという考えはありますが、今受け持っている生徒たちを卒業させたいのと、学校でかかわっているプロジェクトは終わらせたいという思いもあり、現状維持しています。特別支援学校で働いているので、学んだ知識は日々に生かしつつ、今後を考えていこうと思っています。 2.世界情勢と財政削減の影響を深く受けた1年  2023年は、世界情勢の不安定さ、それにより財政削減の影響を深く受けた年であったと振り返ります。職場は、ストックホルム市の予算により、年明け早々に人員削減の影響を深く受け、それに伴う会議や対策に追われました。夏前には、かなりの数の職員が削減され、その余波を秋学期は深く受け、仕事量も心労も多かったと振り返ります。こうした世界情勢などの影響は、ニュースなどを通じて自分が思う以上に、心身に影響を与えているのだと実感した1年でした。 3.今後の人生を深く考えた1年...

2022年のスウェーデンのPISA学習到達度調査の結果考察

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  今学期も残り僅かになり、私も疲れを感じるノーベル章授賞式の日曜日です。今週は、2022年のPISA学習到達度調査の結果が公開され、スウェーデンの教育界では大きなニュースとなっています。せっかくスウェーデン語もわかりますし、学校庁のメディア向け報告や様々なニュースをまとめて考察してみようと思います。 1. 学校庁がまとめたPISAの結果  スウェーデンの学校庁がメディアを集めてPISAの学習到達度調査の結果を発表したのが火曜日でした。そこで発表されたのが以下の結果です。 スウェーデンの15歳児の数学的リテラシーと読解リテラシーが低下した。科学的リテラシーは前回と同位。この結果は、多くの他国と同様の傾向にある。 数学的リテラシーと読解リテラシーは、2012年の「PISAショック」の時と同じレベルまで低下した。 スウェーデンの15歳児の数学的リテラシー、読解リテラシーと科学リテラシーの結果は、OECD平均を上回った。 スウェーデンの学校教育の均等性は悪化した。OECDレベルではあるが、スカンジナビア諸国に比べると劣化している。 順位を以下の表から見ると、数学的リテラシーは、日本が1位でスウェーデンは、18位です。読解リテラシーは、日本は2位で、スウェーデンは14位。科学的リテラシーは、日本は1位で、スウェーデンは17位です。スカンジナビア諸国を比べると、フィンランドとデンマークはスウェーデンより良く、ノルウェーとアイスランドはスウェーデンより悪いという結果になっています。 2.2012年のPISAショックの記憶  スウェーデンの2012年のPISAショックの記憶は私も思い出すことができるほど、大きなニュースでした。あの2012年並みまで、今回は結果が下がったということで、またまた、スウェーデンの教育界は揺れそうです。少し、2012年と比べて結果を見ていきます。  数学的リテラシーは上記の図にあるように、2012年にドーンと落ちた後回復傾向にあったのですが、今回またドーンと落ちました。  読解リテラシーも、同様の結果です。せっかく回復したのに、それがまた落ちたということですが、学校庁側はこれを新しいトレンドとかショックという風には言いたくないようで、そんな感じがいたるところで読み取れます。2012年のあの大騒ぎとその後の様々な対策を考えると、教育現場にいるものと...

スウェーデンの特別支援学校の教育も様々

 私は、現在スウェーデンストックホルム市の公立の基礎特別支援学校で勤務しています。これまでに、2つの基礎自治体の基礎特別支援学校で働いた経験があります。学校見学は、いくつも見てきているので、それなりに国内事情は知っているのではと思います。スウェーデンでも、学校によって教育の仕方や特色には違いがあり、それは、在籍している生徒のニーズに合わせてというのが、大きいように思います。今の学校で行われていない、前の学校で行われていた内容で思い出すのが、例えば、 「車いすダンス」 の授業。車椅子利用の生徒が多かったので、車いすダンスは、人気がありました。金曜日の最後の授業が車いすダンスだったときもあり、みんなでダンスを踊って終える1週間は、楽しかったなあと思いだします。生徒たちも笑顔がいっぱいで。  一番長く勤めていた学校は、まだ経済的に余裕があった時代で、ICTの先生が特別支援学校専任でいて、その人が行って カラオケ の授業もありました。衣装まで変えてノリノリでやっていたことを思い出します。ああいう授業もやっぱり特別な先生がいるからこそできるものという感じがします。  あとは、「アフリカ太鼓」の授業。どんなふうにたたいても楽しめるアフリカ太鼓を、職員でみんなで音楽博物館に学びに行って、授業に取り入れてと、思い出します。同僚たちと楽しんでいたなあと思います。  今の学校は、基礎学校と併設していて、その良さはありますが、経済的に一緒に運営されているので、たまに疑問に思うこともあるのが事実です。また、いつかそんなこともかければと思います。

世界障害者デーと車椅子と雪

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 今年のスウェーデンは、早々と雪が降り、ストックホルムのあたりも雪で真っ白です。11月は日照時間も少なく、薄暗い日が続くので、この雪の白さは心を和ませてくれます。しかしながら、困るのが、車椅子での移動です。   雪道って、本当に大変です。特に、こっちでは、滑り止めに土と砂利を混ぜたようなものをまくので、それが余計に車椅子の移動を困難にします。先週も、特別支援学校の高校のオープンハウスへ出かける予定でしたが、キャンセルし、再来週も特別支援学校の高校に行く予定なのですが、どうなることかと思っています。  今日は、国際障害者デーです。あまり注目されることがない日のように感じるのは私だけでしょうか。その歴史は、実は割と長く、1982年12月3日に国際連合総会において、「障碍者に関する世界行動計画」が採択されたことを記念して、1992年から毎年国際デートして12月3日に国際障害者デーを設けています。スウェーデンでは、年によっては、デモが行われたりとするのですが、今年は、そんな話も聞いていません。雪のために車いすでのデモが難しいためかなとか勝手に思っていますが、こうした国際デーに注目して、少しでも障碍者問題の理解や促進を行っていくことは大変重要であると思います。   美しい雪景色と太陽です。