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「Kristina från Duvemåla」に見るスウェーデンの移民の歴史

 スウェーデンは秋休みに入っています。私は、月曜日と火曜日にアシスタント向けの研修を受け持ち、水曜日は、学校統一の研修を受けてきました。アシスタント向けの研修の準備は大変でしたが、好評だったので、詳しく書いてもらったアンケートなどを読むのが楽しみです。水曜日は、今スウェーデンの学校で注目されている、「lågaffektiv bemötande(感情に注意を払った対処の方法)」の研修でした。うちの特別支援学校では、もう3年ほど前から取り入れているんですが、春先に出た小学校向けの本をもとにした研修が行われました。感情に注意を払った対処方法を書きましたが、子どもたちが持っている成長過程での感情に表出に注目し、その感情の波を周りの大人の対処法によって緩和する方法で、私は、効果の高い方法であると思っていて、今までも自分の生徒に多く取り入れてきました。  前置きが長くなってしまったのですが、秋休みということで、ずっと見たかったミュージカルを見てきました。スウェーデンに移住した頃、親友がこのミュージカルのCD3枚組をプレゼントしてくれて、その当時、よく聞いていました。いつかこのミュージカルを見たいと思っていたので、とっても感慨深かったです。  ミュージカルの名前は、「Kristina från Duvemåla」で、1995年にABBAのBenny Anderssonによって音楽が作られました。とにかく音楽はその才能を感じるもので、移住したばかりでスウェーデン語がわからなかったのに、ものすごく気に入って何度も何度も聞いていました。ミュージカルの元は、スウェーデンの有名な作家、Vilhelm Mobergの「Utvandrare(移民)」シリーズ。現在多くの移民、難民を受け入れているスウェーデンですが、国が貧しく多くの人々が国から逃げて行ったのは、そんなに遠くない昔の話。そんなスウェーデン人が、生活の厳しさから、他の国を目指して行った話であるこのミュージカル、難民問題を抱えるスウェーデン社会に一つの考えをもたらすものであるとテレビやニュースでも取り上げられました。  以下のサイトで、ヨーテボリオペラでの映像が見れます。 https://www.youtube.com/watch?v=g1JMY_XVABk   何と言っても、この 「Guldet blev til...

スウェーデンで起きた学校襲撃事件

 もう直ぐ秋休みだと生徒も教員も楽しみに過ごしていた今週の木曜日に、スウェーデンに、スウェーデンの学校社会に大きな衝撃を与える事件が起きました。なんてことはない普通の日が、一瞬にしてスウェーデンの歴史に残る闇の日となりました。  事件が起きたのは、スウェーデン第2の街、ヨーテボリから北に少し行ったところにある「トロールヘッテン(Trollhätten)」という街の学校でした。トロールヘッテンといえば、スウェーデンの車会社サーブがあった街として有名です。6歳児教育のクラスから9年生まである「クローナ学校」に、覆面をし、仮装した21歳の若者が刀のような刃物を持って現れ、教員と生徒を襲いました。スターウオーズのキャラクターによく似た格好で現れたため、ハロウィンが近いこともあり、冗談だと思った生徒が犯人と一緒に撮った写真は、世界中に配信されることとなり、この写真を撮った後に、刃物で生徒アシスタント1名と生徒1名を殺害し、2名に重傷を負わせました。  事件から数日たち、背景や動機などが少しずつ明らかにされています。2名の尊い命を奪った21歳の若者は、警察によって発砲された2発のうちの1発が胸に当たり、搬送された病院で数時間後に亡くなりました。犯行の動機は、移民排斥と人種差別であることが明らかになり、ここ数日続いている難民のための施設放火事件と重なり、難民や移民の問題が深刻であることを明確に表しています。この学校は生徒の半分ほどが、移民の背景を持つということで、殺害された2名も肌の色が白くない教員と生徒であったということでした。目撃情報によれば、犯人は、肌の白い生徒には危害を加えることなく通り過ぎたということに加えて、動機などを書き記した文書を残しており、そこにも人種差別、移民に対する感情が書かれていたとあります。    スウェーデン語で「PK」と言葉があります。意味は「Politisk Korrekthet」、「ポリティカル ・コレクトネス、政治的に正しい」で、スウェーデン人たちが、よく使っています。この間、研修があったのですが、その時にも話し合いの際に、担当者が「PKである必要は無い」と付け足していましたが、この言葉が会話に出てくるたびに、私はスウェーデン社会にある表と裏が象徴されているように感じます。毎日やってくる大勢の難民を受け入れる、人道的に助けるのが...

やっと一息、検査局への改善案

 秋休みまで残り1週間になりました。今週末は、学校の仕事は少し落ち着き、他の仕事をせっせと片付けております。ここまで、大変だった。。。  このブログでも何度か書いているように、うちの学校に検査局が来たのが5月のこと。その報告書が夏休みの終わりにメールで届き、ふーんと思ったのもつかの間。学校が始まり、学校検査局に報告会議に行き、改善案を提出しなければならないので、その仕事に取り掛かりました。ああ、これって私の仕事なんだなと思いつつ、小中学部と高等部では、学校形態が変わり、管理文書も違うので、2つに分けて改善案を提出しなければならず、結構な負担が。。。  代理の校長は、組織内の2つの小学校の方で手一杯で、私ともう一人の特別支援担当は、ほとんど自分で行うことに。ということで、私も6プラン?改善案作りました。この案をもとに来週校長、副校長ともう一人の第一教諭との会議をし、その後他の先生方と半日会議をします。それで、決まったものを秋休みの間に2回アシスタントに行う研修で話します。なんとかそこまでやってしまえば、後は、まとめの文書をつけて検査局に提出し、通ればいいけど、通らなければ、さらに改善案の改善を行うことに。うまくいくことを願うばかりです。  どういう風にやろうか悩んだのですが、新しい生徒が2名入り、バタバタしている上に、小中学部と高等部に分けて話し合いをすることも難しく、結局自分で下案を作ってから話し合うパターンにしました。これが吉と出るか凶と出るかはわかりませんが、(というのももう一人の先生は、話し合ってから案にするパターンにしたので)、そんなことも楽しめる余裕が少し出てきました。アシスタントには、色々決めるすぎるとか、ああだこうだと言われ、めげる日もありましたが、受け持ちの生徒の一人が、初めて自分の名前を言えたことに感動し、持ち直しました。この生徒の名前、長いんです。だから難しいかなと思っていたけど、偶然、本当に偶然撮影もできて、何度も見ては感動を噛み締めてしまいました。高等部に入った生徒がどのくらい言語的に伸びるのか未知数ですが、可能性がある限り、頑張って教えていきたいと思いました。  

スウェーデンの就学前クラスの義務化

 気がつけば、10月も半ばに入ろうとしています。2週続けて土曜に仕事が入っていたので、久しぶりにゆっくりしている週末です。今週は、うちの学校に日本から訪問客があり、3人の日本人の方がいらっしゃいました。再来週も違う方がくるので、結構な頻度だなあと思います。  この間、就学前クラスに関する調査結果が出たので、それについて書こうと思います。就学前クラス、0年生と呼ばれる6歳児が主に通うクラスがスウェーデンにはあります。幼稚園と学校の間みたいなので、前々から、この1年間の0年生をなくして、義務教育を10年生にするかどうか議論されてきました。現在、スウェーデンの6歳児の96%がこの就学前クラスに通っています。4%はどうしているかというと、1%くらいの6歳児は、1年早く小学1年生をしており、1%くらいは、もう1年幼稚園で過ごしているということで、どこにも所属していない子供は、約2%くらいと考えられます。  今回の調査では、就学前クラスの形式はそのまま残し、義務化だけを導入するのが良いだろうとなりました。就学前クラスを小学校の中に組むこむとなると、学習時間の調整や到達目標の見直しなどが学校法自体を大きく変更する必要性があるようで、そこまでするよりは、現在の形を残したまま、義務化のみを導入したほうが良いとなった模様です。この点、理解できます。スウェーデンの学校は、大きな改革をしてまだ数年なので、ここでまた、変わるとなると大変だろうと思います。それよりは、義務化のみを導入して様子を見た方が賢いかと。この調査と同時進行で、就学前クラスのカリキュラムの見直しも行われていたはずなので、その程度でいいんじゃないかと思います。  今回の調査では、高校入学の単位が取れていない生徒には、9年生の後に1年間学校に残って勉強することができるようにしたら良いとか、8年生と9年生で単位が取れない可能性のある生徒には、休みの間の補習授業を提供するとかいう案も含まれていました。  今後どのような決定がされていくのか興味深いところです。