1.入学が厳しいスウェーデンの特別支援学校
スウェーデンでは、特別支援学校が一つの学校形態となっています。「スウェーデンの学校教育システム」はこちらの投稿を是非。この特別支援学校の対象児童生徒になることは、大変難しくなっています。これには、移民や難民でスウェーデン語が十分に話せないといような「間違って、支援学校にいれられた生徒」が増えた時期があり、現在のように入学が厳しくなりました。入学するには、以下の4判定とともに知的障害の判定があり、初めて、特別支援学校対象児童生徒になり、入学することが可能になります。
- 医師による医療判定
- 心理学者による心理判定
- 社会福祉士などによる社会判定
- 特別支援教育士などによる教育判定
重要なのは、「入学しなければいけない」ということではなく、「特別支援学校に行く権利」を与えあれることになります。親の希望が優先されるので、特別支援学校対象児童生徒であっても、基礎学校で、支援学校のカリキュラムに沿って学んでいる子どももいます。
2.「分離統合型」のスウェーデンのインクルーシブ教育
スウェーデンの知的障害は、知能指数70で判定が出ます。この知能指数70が分け目となり、特別支援学校と基礎学校(普通学級)に児童生徒を分けています。どんな障害を持っていても、知能指数が70を越えると基礎学校で学び、知的な障害がない、自閉症や肢体不自由、視覚障害などの子どもたちは、全て基礎学校で必要な配慮や支援を受けて学びます。
私は、このスウェーデンのシステムを「分離統合型インクルーシブ教育」と呼んでいます。知能指数70で「分離」して、「統合」する教育というふうに説明しています。スウェーデンの特別支援学校は、2011年の学校法の改訂に基づき、現在のように特別支援学校に通える条件に必ず知的障害があることということを明確に打ち出しました。{それ以前は、知的障害がない自閉症児も特別支援学校に通うことができました。)
3.2コース制のスウェーデンの特別支援学校
スウェーデンの特別支援学校は、2コース制です。基礎学校(小中学校)の教科に準じた教科学習をする「教科学習コース」と、教科を5領域に分けた「領域学習コース」です。各コースの内容は次のようになります。
教科学習コース:スウェーデン語(第2言語としてのスウェーデン語)、算数、英語、自然科学(理科)、社会科学(社会)、体育、音楽、手仕事、美術、テクニック(技術)、家庭科、母国語(希望者)
領域学習コース:芸術領域、運動領域、言語領域、日常活動領域、社会理解領域。
教科学習コースは、希望者に成績を出しますが、領域学習コースは、評価のみです。この2コースの生徒は、各コースごとでクラス編成されることもありますし、両方のコースを混ぜたクラス編成もします。私が受け持っているクラスは、混合型なので、常に両方のコースカリキュラムをもとに授業を行っています。
4.多様な学びができるスウェーデンの特別支援学校
- 教科学習コースで学んでいるAさんは、英語がとても得意で、英語だけは、基礎学校の同じ学年の生徒と一緒に学んでいます。最初は、特別支援学校のカリキュラムで学んでいましたが、支援学校の到達目標に達したので、今は、英語だけ、基礎学校のカリキュラムで、基礎学校のクラスで学んでいます。
- 領域学習コースのBさんは、教科学習コースの生徒が一緒の混合クラスになり、コミュニケーションの補助器具の支援を受けたこともあり、興味がある自然科学と社会科学は、教科学習コースのカリキュラムで勉強しています。
- 基礎学校の3年のクラスで学ぶCさんは、支援学校の教科学習のカリキュラムで基礎学校の生徒たちと一緒に学んでいます。
これは一例ですが、その子の特性やニーズに合わせて、その子が興味を持っている1教科からでも、多様な学びの形を追求できるカリキュラムになっています。スウェーデンの分離統合型インクルーシブ教育の素晴らしい点は、この「全ての子どもの持っている能力を最大限に伸ばし、発達と学びの保障」を可能にするインクルーシブ教育です。この分離統合型インクルーシブ教育は、インクルーシブ教育の理想を、「いかに現実化していくか」という点においても、一つの形として価値のあるものであると思います。
時事ドットコムの「学びと発達の権利」とは?福祉の国、スウェーデンの特別支援学校事情も併せて是非。
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