2015年9月6日日曜日

スウェーデンの学校の宿題事情

 新学期が始まって2週間ほどたち、金曜日は学校総出で近くの島に遠足に行ってきました。雨が少し降りましたが、たいしたことはなく、楽しい1日になりました。夜は、姉妹校の先生が遊びにくるということで同僚たちと食事にと盛りだくさんです。

 今日はスウェーデンの宿題論議について。夏前に新聞で宿題についての特集が組まれました。私は特別支援学校で働いているため、宿題に関しての議論に実際に参加することは少なく、併設する小学校の先生方の話を聞きながら頷く程度です。うちの小学校では、昨年だったかに宿題を学校で行う時間を設けたので、その時はかなり白熱していました。

 宿題についてスウェーデンの法律などではどうなっているかを見ると、

  • 宿題に関して記述した法律やルールなどはないが、学校法には、義務教育は土日や祝日に学校活動を行うことを禁止しています。また、授業日であっても1日8時間以内と定めています。(低学年は6時間まで)
  • 「宿題」といってもいろんな形があり、定義はなく、いわゆる復習型と予習型に加えて、遅れを取り戻すためのものの3種類くらいが一般的。
  • 昨年教育庁の方から宿題に関する指針が出された。


 スウェーデンの宿題に関する議論で私がスウェーデンらしいなあと思うのは、宿題は「平等でない」という点。生徒の家庭環境は様々なので、宿題を手伝ってもらえる子供もいれば、全く手伝ってもらえない子供もおり、それが学校の成績に影響するのは不平等であるという点。これはその通りで、


  • 宿題を自分でできる子供は、親も気にしないし、子供も気にしない。おそらく学校の勉強もついていけている
  • 家庭で宿題を見てもらえる子供は二通りあり、やりたがらない子供に苦戦しているかしていないかで変わってくるが、それでも、見てくれる親がいるだけよくて、学校の勉強にもなんとかついていけているだろう。。。
  • そして、宿題を自分ですることができず、家庭でも見てもらえない子どもたち。この子たちが宿題によって受ける不平等は計り知れないだろうと思う。そんな宿題によって成績が左右されてしまう。。。

新聞のシリーズは何回かに渡ったのですが、その中でも研究者たちの言葉にあった、
「宿題の質と内容をしっかりと議論することが重要だ。」

という点。ありがちなのが、宿題を出さなければいけないような感じだから出すというもの。授業を聞いていればできると思われる復習型の宿題でも、授業自体についていけていない子どもにとってはものすごく苦痛で、家で見てくれる大人もいない場合、翌日学校にくるのだって気が重いと思います。教員として、宿題を出す以上はそこに意味がありそれなりの質を考えなければと思った次第です。


 シリーズの中では宿題を無くした学校の例と、宿題をうまく取り入れた学校の取り組み例が紹介されており、どちらも大変興味深い内容でした。特に宿題を全く出さないと決めた学校の方は、教員の授業だけで教えなければならないという気持ちと、生徒のこの時間で学ばなければという思いが重なりあい、授業時間が密なものになっている印象を受けました。一方で宿題をうまく取り入れている学校では、教員間で連携をして宿題が分散して出すようにしたり、学校に自習時間を設置し、宿題でわからない点や家庭で行いにくい生徒を助けるシステムが取り入れられていました。家庭教師のような家庭での補助教育が多少増えてきたスウェーデンですが、塾はなく、子供達の教育は義務教育が担っている部分が大きいです。そこをいかに平等にするかという点で議論が行われるスウェーデンは、私にとって興味深いもので、「そういう考え方もあるなあ」と思わされます。


 特別支援教育と宿題という観点から考えると、子どもがADHDというお母さんが宿題はとにかく大変と話していました。学校に行って帰ってくるのだってやっとな子どもたちにとって、家で宿題と格闘するのは大変であろうと想像します。障害が有る無しにかかわらず、宿題が生徒たちの健康に与える影響に関しても書かれており、あって当然のように思っていた宿題ですが、今後さらに研究が進んでいく必要があると痛感しました。


2 件のコメント:

  1. このような視点での宿題の問題点も色々あったんだなと考えさせられます。
    きっとこれは日本でもどこの国でも同じように言えるのでしょうね。
    しかし私がスウェーデンに住んでいて思ったことは、スウェーデン人は宿題に対するモチベーションが低いということでしょうか。
    日本では宿題は成績評価に影響するので、必ずやらなければいけないような存在ですから、皆毎日宿題をやるのは当たり前です。
    親から叱られずとも宿題を自分からやる習慣も自然と身についています。
    しかしスウェーデンでは宿題をやらなくても成績に影響がないそうで、殆どの人がやらないそうです。
    旦那が教師をしていますが、やはりそうで授業も嫌ならサボって逃げる人も多く…。
    むしろ上流家庭や親がしっかりしてる人は子供に宿題をさせていて、そういう人は成績がやはり良いようです。
    そしてやはり宿題をやらない・授業から逃げてばかりの人が多いので自分もそうしようと流されて、結果殆どのスウェ人は逃げ癖が付いているようで…大人になってから、あの頃勉強すればよかったと後悔する人が多いようです。
    ある意味人に優しい…キツイ言い方をすれば甘やかされた福祉は人のモチベ等を下げてしまうものだなと思っています。

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  2. 匿名様、コメントをありがとうございました。
    宿題といってもいろいろあると私も感じます。日本にいたときは出して当たり前、やって当たり前だった宿題も国が変わると大きく考え方が変わりますね。

    成績に直結しないとしても宿題をしたかしないかによって、結局授業での理解度が変わり、成績が左右されるのであれば、宿題は影響を与えているのであり、不平等であるといえると思います。塾だ宿題だと追われる日本の子供たちと比べると、宿題をやらないというスウェーデンの子供たちもいいかなと思ってしまうのですが、だめですよね。。。

    私の周りには、逃げグセがついているスウェーデン人や福祉によってモチベーションが下がっている人がいないのであまりいないので、よくわかりませんが、福祉によってある程度の安心感を得て人生を送れるというのは、私は良いことであると思っています。逃げグセというとマイナスのように思うのですが、何度もやり直しがきく社会というのは羨ましいとも思います。日本のようにどこかでつまづくと最後という社会は、多くの人にとって辛いのではないかと思うのです。物事って考えようだと思います。

    スウェーデンに住んでいらっしゃる匿名様とこうしてお話しできるのを嬉しく思います。コメントありがとうございました。

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コメントをありがとうございます。