夏の休暇に入る少し前、久しぶりに日本語のオーディオブックを聞き始めました。私は、Audibleが気に入っています。今年度は、本当に忙しくて、秋学期も春学期も仕事と勉強に追われていたためか、聞きたいオーディオブックは、穏やかな文学・フィクションを好む傾向にあるようです。もう何冊も聞いたのですが、それらの本から思うのは、描かれている子どもや若者が、勉強というものに追われ、苦しんでいる姿が多いなあというものでした。スウェーデンでも、子どもや若者の勉強疲れは珍しくありません。それでも、夏の休暇でのんびりしていると、スウェーデンの子どもたちよりも、日本の子どもたちが置かれている状況は、自己肯定感を高める、自己を確立する過程を複雑なものとしていると感じます。
前回の投稿で、スウェーデンのインクルーシブ教育最新情報ということで、自治体国際化フォーラムの「世界の幼児教育の今」の寄稿記事を紹介しました。この特集は、様々な国の幼児教育の今が書かれていて、大変興味深いです。そこから、少し思うことを書いていこうと思います。
1.中国の宿題と学習塾の禁止
中国の宿題と学習塾の禁止は、スウェーデンの宿題論議に通じるところがあり、興味深いです。スウェーデンは議論には何度もなっていますし、宿題を実際に無くした学校もありますが、国を挙げての政策は出しておらず、中国の宿題の制限時間や小学1・2年生の宿題禁止は、驚くとともに、実際にはどうなっているのだろうかと思いました。学習塾は、スウェーデンにはなく、家庭教師に近いものはありますが、一般的ではありません。宿題の支援や援助は学校で行っており、私の勤務校でも、そういう時間が設けられています。中国の脱学力重視は、少し意外な感じもしましたが、学力や学歴という意識が強い国では、こうした国を挙げた考え方の転換をしていく必要があるだろうとも思います。
2.韓国のヌリ課程
韓国の幼児教育の今も興味深い。ヌリ課程と呼ばれる、「新しい世の中(ヌリ)を切り開く子どもたちを育てていく願いの込められた課程」が目指す人間像が描かれている。(2019年の改定にて)
- 健康な人
- 自主的な人
- 創意的な人
- 感性豊かな人
- 共に生きる人
の5つが明示されたそうである。これらの目指す人間像は、当然のことながら、小中学校で目指す姿とリンクしたものであり、スウェーデン、日本における目指す姿と重なるものであると感じます。言語化されて理解の難しい内容ではないけれど、現実的に現場でどのように教育実践を行い、子どもたちを育てていくかは、かなり難しいとも感じます。そこには、目指す姿に向かって、具体的に何をしていかなければならないか、何をしていくかを、ともに働くものと一緒に現場で話し合い、作り上げていく必要があり、難しいところだと感じます。
3.フランスの義務教育年齢の引き下げ
フランスでは、義務教育年齢が引き下げられたという内容が載っています。確かイギリスも同様のことをしたと記憶しており、同様の議論は、スウェーデンでも頻繁に聞かれます。理由も、今回の特集に書かれていた内容と一致するところで、勉強についていくことができない数%の子たちをどうするかというのは、どの国でも問題とされているのだと感じます。これ以外にも、フランスで行われた政策を、スウェーデンでも取り入れたらどうかという議論は聞くので、今後もフランスやヨーロッパの諸外国の政策には注目したいところです。
4.日本の事例より思うこと
日本の事例も取り上げられており、鳥取県幼児教育センターと信州幼児教育支援センターの話が載っています。日本は、少子化の影響を今後さらに受けていく中で、幼児教育という枠の中でいかに連携を深めていき、そこにある専門性のある知識や経験を生かしていくかが、その地域のカギになるように思います。地域によっては、小学校といった義務教育や、幼児の保健医療とつなげていくことで、限りある経済的、人的な支援を有効活用しつつ、未来の子どもたちの健やかな成長を協力し合いながら作り上げていくことができるのではと感じます。
今回は、特集を読んでの感想を少しですか、まとめました。興味深い特集ですので、ぜひ、皆様もご一読ください。