2021年7月4日日曜日

ドキュメンタリー映画「Crip Camp」

友人より、アメリカの障害者運動のドキュメンタリー映画を教えてもらい、早速見ました。教えて下さって、ありがとうございます。とても興味深かったです。映画の名前は、 



「Crip Camp: A Disability Revolution」

と言います。クリックすると、YouTubeのトレイラーが見れます。日本語名を調べてみると「ハンディキャップ・キャンプ:障害者運動の夜明け」とありました。Netflixで配信されており、制昨年は、2020年と新しいドキュメンタリー映画であることが分かりました。この映画は、元大統領夫妻のバラク・オバマ氏とミシェル・オバマ氏がが製作総指揮を務めているとありますね。 

1970年代初めにアメリカで起こった障害者運動、障害者も同じ市民と認め、その権利をと、障害者が立ちあがりました。ドキュメンタリーは、障害者たちのサマーキャンプの様子から始まり、そこで、様々な障害がある人々が集まって自由に夏を謳歌する姿とは裏腹に、いかに普段虐げられてきたか、学校や社会で「他との違い」を意識して生きてきたかが語られます。映画では、個人に焦点を当て、個人が語る部分が多くあるのですが、初めの部分で印象的だったのが、「普通学級」に通うことになった息子にお父さんが「自分から前に出ていかなければいけないよ。向こうからはこっちにはこないから。」と話したというところ。こうした「障害者は人一倍頑張らないといけない」という暗黙の了解を、アメリカのこの時代には、親が子に話したというのは、歴史を感じ、印象的でした。


スウェーデンの障害児者の歴史をたどると、障害者が分けられてきたことが分かります。障害者でも「学ぶことができる」人々と、「学ぶことができない」とされた人々です。多くの場合、前者の学ぶことができる人々は、知的障害がない、もしくは比較的軽い人々で、後者が重度の知的障害を含む重複障害の方たちというような分け方です。今回のドキュメンタリーの中に、少しだけ、この後者の人々の様子が描き出され、それは、胸をえぐる映像でした。大型施設に収容され、服も十分に着せてもらえず、食事は一人当たり3分で食べさせるといった、ひどいものでした。こうした大型施設の脱却を訴えたのもこの時期で、スウェーデンも最後の大型施設がなくなったのは、80年代の終わりだったので、同じような流れであると感じます。

ドキュメンタリーでは、1970年代の障害者差別禁止に関する法改正と導入にあたり、1973年にリハビリテーション法で差別禁止条項が含まれたにも関わらず、現実的には、施行が遅れ、また様々な問題点を抱えていたために、障害者団体が一丸となって、デモンストレーションやオキュペーションを行った、その様子が描かれています。中心となった障害者の多くは、前出の中の「学べることができる障害者」であり、当事者の中でも発言ができる人たちでした。当事者が声を上げることは、やはり大きな原動力になり、人を動かす力が大きいように思います。立ち上がることが難しい当事者も多くいるので、その代弁者が必要となる場面も多いのですが、こうした当事者が当事者の代弁者となり、大きな変革ができたと感じました。また、つながることの大切さを強く感じました。自分の思いや考えを伝え、同じような思いを持っている人とつながり、仲間を見つけていくなかで変えていけれるものは大きいように思います。現代では、SNSやインターネットを使って多くの方とつながることを可能としており、私たちには、多くの可能性があるのだと感じた点でもあります。


私はその昔書いた大学の卒論が、このアメリカの1975年の全障害児教育法だったので、振り返りながら、この運動とあの法律を考えていました。私が今スウェーデンで特別支援教育の教員をするにあたっても、あの時に考えた統合教育の意味と願いが根底にあり、改めて原点を振り返ることができたドキュメンタリー映画でした。


最後に疑問点を述べるならば、やはり、前から気になっている、アメリカで、子ども権利条約や障害者条約の批准がなかなか進まないことでしょうか。こうした権利や自由に関わる運動の先端となってきたのが、アメリカなのですが、この国だからこそ、署名はするけれど批准がなかなか進まない国としての考え方や思いがあるように感じます。その国の歴史や文化というのが思わぬところで引っかかってくることがあり、そこには、何かしらの意味があるように思えるのです。その意味は、もしかしたら、他の国が見落としてしまっていることなのかもしれないとも考え、法律や権利などに思いを馳せる夏の日でした。


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