火曜日の午後、電車でヨーテボリに向けて出発し、夜19時半にはホテルにチェックインし、早速みんなで夕食。プライベートなことから、仕事のことまで、ありとあらゆる話で盛り上がりました。水曜日、木曜日と2日間の研修で学んできたのは、PODDと呼ばれるコミュニケーションシステムです。PODD(ポッド)は、オーストラリアの教育者、ゲイリー・ポーター(Gayle Porter)によって開発された絵を用いたコミュニケーションシステムで、英語では、Pragmatic Organisation Dynamic Displayと呼ばれ、この頭文字をとってPODDと呼ばれています。彼女が障害を持った子どもたちに使い始めたのは、約30年ほど前だと聞きましたが、それから試行錯誤が繰り返され、ここ数年、北欧に広がってきたもののようです。私が最初に知ったのは、昨年の秋頃で、ストックホルムのハビリテーリングで1回研修を2時間ほど受けました。今回は、2日間、基礎的な知識を得るというもので、想像以上に興味深いものでした。簡単に説明するならば、以下のように絵がその意味と一緒に並んでおり、これがカテゴリー別に組織的に並んでいることによって、いわゆる言語の習得が難しい子供でも会話をすることができる、言語発達が促せるというものです。
こんな感じで、絵とその意味が書かれているコミュニケーション本です。
こんな9つの絵が並んでいるものが、最初の段階で使われるものです。
(現在は、12の絵が並んでいるものを最初の段階に使うように進めているとのこと)
使い方を簡単に説明すると、最初のうちは、会話の援助をする人が指を指し、どの絵を指しているかを確認していき、例えば、何かが欲しい場合は、真ん中の列の一番上の絵を指差した時に、子供がYesの反応をし、次に、その絵の右上にある11番のカテゴリーのページに移り、そのページの絵の中にあるものを順番に見せながら、何が欲しいのかを会話していくというものです。興味のある方は、以下のビデオを。英語ですが、どんな感じで会話するのか、イメージが掴めると思います。(ものすごく簡単に説明しましたが、色々と段階ややり方などがあります。。。)
このコミュニケーションシステムのいいところは、子供の語彙力と言語発達に注目し、今まで会話をすることは難しいとされてきた重度の子供たちにも会話をする可能性を見出したことと、考える力を育てる可能性を見出したことにあると思います。
使い始めるのは、子供が小さければ小さいほどがよく、コミュニケーションシステムの習得とともに12の絵のものから20、40、70と1ページの絵が増えていき、語彙力が増えていきます。視覚に障害がある場合は、以下のような感じのものを用いることもできます。
子供によっては、1ページに絵が一つというようなものを使う場合もありますし、絵の配置が違うものを使う場合もあります。
スウェーデンは、障害を持った子どもたちにも、自分の意見を持つことを教えることに感銘を受けてきましたが、長く関わってきて思うのは、やりたいことを伝えることができるようになっても、自分の思考を全て伝えられるようになるわけではないのだということです。コミュニケーションというのは、「リンゴが欲しい」というものだけではなく、昨日何をしたのか、何を考えているのかと、様々なことが含まれています。そういった部分をカバーできるコミュニケーション支援の方法が、重度の子供には少ないのです。PODDは、そこを補える可能性を秘めていると思いました。これから、学校で一緒に行った先生と色々開発していこうと話していて、どんな成長が子供たちに見られるのか、今からたいへん楽しみです。
雨が降り、風が強かった、ヨーテボリ、ホテルと研修の会場の往復のみでしたが、同僚とサウナに入ったり、美味しい食事をしたりと、楽しい研修でした。
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