前回ゲームに夢中になってしまう若者について書きました。ここ数年、スウェーデンでは、「hemmasittare(家で座っている人)」という言葉がよく聞かれるようになりました。学校に行かないようになり、家で座っている人、引きこもっている人というスウェーデン語の言葉です。ただ、この言葉、学校関係の間では問題を適切に表した言葉ではないということで、学校局の定義では「Elev med lång ogiltig frånvaro (長期にわたって適切な理由がないのに欠席をしている生徒」とされています。こういった登校してこない生徒の理由の中のひとつに先のhemmasittareがあると考えられています。
では、こういった生徒がどのくらいスウェーデンに存在するのかというと、2010年の統計で、2008/09年度に適切な理由なしで1ヶ月以上学校を休んだ生徒は、1650人とあります。男女比はそれほどなかったということです。学校を長期にわたって休む生徒の多くは、神経の衰弱や不安、社会性不安障害などの精神的な問題を抱えている場合が多くあるとあります。
記事の中で登場するアダムくん。学校に初めて通った時から、無駄なことが多く行われていると思ったそうです。自分のそういった考えを人に話すこともなかったし、周囲の大人も誰も彼の様子に気がつかなかったと。友達もいたし、先生との関係も良好、得意な教科は算数と、いわゆる普通の子だったようです。しかし、2011年1月17 日、6年生の時に、学校に登校しなくなった。そして、「hemmasittare(家で座っている人)」とあります。
登校拒否というと、いじめにあったなど大きな出来事がきっかけと思いがちですが、実際には、こんな感じで学業に対するやる気や意味を失い、学校に行かなくなる子ども、多いのではないかと思いました。現在16歳になるというアダムくんは、その当時のことを、一時的な神経の衰弱状態と未熟、学業に対するやる気の欠如が原因であったと述べています。親はしかるというようなことはなかったそうですが、とても悲しがったようで、それが辛かったとあります。最初のうちはなんとか学校にいってもらおうと努力したようですが、そのうち、それもなくなり、結局4年もの間学校に行くことなく過ぎて行きました。4年間、部屋に閉じこもり、パソコンでゲームをやって過ごしたそうです。
学校は何をしたかといえば、週に何回か、生徒のアシスタントが家にやってきて、算数を見てくれたそうです。でも、今振り返れば、学校にはもっと責任があったのではないかと彼は言います。もっと手助けをする必要があったのではないかと。こういった登校をしてこない子どもに対して、学校が十分な支援や援助を行わなかったということで、学校検査局が検査をして、最終的に罰金をとられた学校もあり、この辺りの支援援助は未だに不十分である場合が多いのが現状です。興味深いのは、彼がこうなったのは教師のせいではないけれど、なにかしらできたことはあったのではないか」というところ。おそらく登校拒否になるというのは、教員のみの責任という場合は少なく、複合的な要因である場合が多いように想像します。それでも、教師という職業的な責任から、子どもたちにできることは多くあるのだと感じます。
友達が成績の話をするようになったころ、彼も学校に戻って成績をと思ったようですが、さすがにそれから成績をとるのは難しく、結局家の中に閉じこもったままだったそうです。そんな彼を助けたのは、こういった状況に置かれた子どもたちに対する治療プログラムで、2名の男性が家を訪問して彼の話を聞くようになり、彼との関係を徐々に気づき、散歩に連れ出したり、レストランに行ったりするようになったそうです。そうして、部屋の外に出られるようになり、今は、義務教育の単位をとるための高校に通って勉強しているとあります。
やるべきことがわかっているのに、やる気が起きないできないという辛い気持ちを抱えながらの4年間、辛かっただろうと思います。スウェーデンでは、こうした子どもたちを援助するためのプロジェクトチームがコミューンで作られるようになってきました。今後、これらの動きがどのような成果をだすのか、興味深いところです。
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