2016年7月24日日曜日

やっぱり家族が面倒を見るスウェーデンの介護問題

 「スウェーデンの老人ホームの種類とは?」と「スウェーデンの老人ホームの変遷」の続きです。老人ホームのあり方が変わり、在宅介護という考え方になり、老人ホームに入るのが難しくなってきた近年、スウェーデンでも、かなり多くの娘や息子が親の介護をしているという現状が明らかになりました。


 ストックホルム大学のペトラさんが行った研究結果によると、


  • すべての男性と女性の四人に一人が、どちらか片方の親の面倒を見ている。
  • 中年の男性と女性のどちらも同じくらい親の面倒を見ているが、女性の方がネガティブな影響を受けることが多い。
  • 女性(娘)で48%、男性(息子)で27%が、精神的に辛いと感じ、女性(娘)で27%、男性(息子)で16%が、仕事に集中できないと回答。
  • 男女共に7%の人が、介護のために労働時間を短縮し、1%の人が仕事を辞めた。


 1990年代の大きな改革で在宅介護が推進されたことによる社会の変化が、彼女の研究で明らかになりました。それまでの研究結果では、女性が親の面倒を見るというのはありましたが、この研究では、男性(息子)が今までよりも多く介護の責任を持つようになったとあります。しかしながら、年老いた親は、息子や娘の力を借りることを望んでおらず、それよりは老人福祉を利用したいとあります。その昔は、スウェーデンの個人社会の所以で多くの人がそう思うのだろうと思ってきましたが、少ない私の日本の情報でも、日本でも同じような傾向があるということで、どんなに血の繋がった親子でも面倒をかけたくないという気持ちは同じなのだろうかと考えさせられます。

 ホームヘルパーさんの利用で在宅という形が増え、娘や息子たちに加え、友人たちや隣近所の力を借りている人も多いようです。親の介護の責任を持ち、いろいろと手伝いをしている人は、私の周りにも多いのですが、研究結果にもあるように、ネガティブな影響を与えている場合も多いようです。興味深い研究結果がもう一つ出ていて、ウメオー大学のオーサさんによれば、勤務時間を短縮したりして親の面倒を見ていて、もうダメだとなって、老人ホームにやっと入れたとしても、罪悪感を感じて、精神的にストレスを感じる人が多いということでした。この結果、ちょっと意外でした。親は望んでいるのだし、子供も大変だったのだから、やっと入れてよかったとならないところに人間の奥の深さが見える気がしました。


 彼女の研究では、現在のシステムでは、当然のことながら、入所した老人に対してはいろいろケアが行われますが、家族や親類には何もケアが行われていないことが問題であるとして、罪悪感の緩和を目的とした「健康援助のためのトークセラピー」を行ったとあります。研究にか変わった看護師からは、家族の置かれた状況を客観的に理解する良い機会となり、効果があったとあります。


 歳をとったら、国が面倒を見るというのが当たり前であったスウェーデン、社会が変わり、人々がそれに合わせていけれればいいのですが、そんなに簡単ではないのだろうと思います。こうした研究結果により、新たな老人ホームの形が生まれたり、介護者のケアに目を向けられたりするようになり、高齢者にとっても介護者にとっても良い形が生まれればと思います。


読んだ新聞の記事:"Vuxna barn tar över omsorgen", DN, 2016-02-10, "Samtal får anhörigas skuldkänslor att lätta", DN, 2016-06-22

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